
……

モニーク様。

三番隊は全員私との同行だ。

セントレアがどこに行こうが、知ったこっちゃない。

……あいつを引き留めるんだ、生死は問わない。

了解!

いいか……絶対に関係者以外の人にこの件を悟られるな。

任務開始だ。

……

これはお前が選んだことだからな。

セントレア。

ふぅ……

もしロイ様もいたら、チャンスなんか皆無だったはずだ……

今のラズライトは片方だけ、逃げ出すだけなら、少しは……上手くいけそうかな……

フッ……

まさかあの無冑盟のプラチナが、監察会が掌握したゼロ号地に隠れる日が来るなんて誰が想像できたことやら……

……

少しは休憩しておくか……
(プラチナが走り去る)

本当にこんなとこに逃げ込んだのか?

ほかの場所ならもうすでに捜索しただろ。

それもそうか……

あまり物音を立てるんじゃないぞ、ここを巡回してる征戦騎士たちに悟られれば厄介極まりないからな、今のこの場所はとても敏感なんだからよ……

わ、わかった!

(一番近い港からはまだ距離があるな……)

(ゼロ号地から工業地区を抜けた後、居住地区か商業地区を通って港まで行ってもいいけど……)

(それじゃあ遠すぎるなぁ……)

(でも工業地区さえ抜ければ、もう少しは持ちこたえられそうだ……)

あっちに人影が見えないか?

おい、コソコソしてないで出てこい!

……

(クロスボウを構える)

……

……

感染者か、それともほかの連中か?

(そうだ、そのままもう少し寄ってこい……)

(小声)どうだ、なんかいたか?

(小声)あっちの曲がり角に誰かいるっぽいぞ。

(小声)援護は任せろ。


これは……

プラチナの矢筒だ、きっとまだ近くにいる。
(矢に射られ三番隊隊員Bが倒れる)

動くな!

うっ、うぐ……

言え、モニークの居場所はどこだ?どの作戦行動パターンを応用している?

言ってくれたら、命だけは残してやる。

し、知らない……

はぁ……オマエだって無冑盟だろ、私の言ってることならわかるはずだ。

そしたら思い出すかもしれないね。

報告!

言え。

ゼロ号地を捜索していた隊員が監察会の人間に取り押さえられました。

……取り押さえられた?

任務中に征戦騎士とばったり出くわしたようで、負傷もしていると。

ですので……

……連中ならきっと私たちが連合会に代わってゼロ号地の証拠を隠滅してると勘違いしてるはずだ……そのまま勘違いさせておけ。

今回はただの任務じゃないんだからな。

……

さっき連絡を入れたゼロ号地捜索の先遣隊は今どこで集合している?

居住地区です。

……よし。

商業地区にも入れと住宅地区にいる包囲部隊に連絡を入れろ。

報告!

なんだ。

プラチナの位置を特定しました!

……フンッ。

囲い込みを始めろ。

了解!

(あいつの捕縛なら三番隊だけでも十分だろう。でもあいつ……私たちの捕縛手段を熟知してるはずだ、だとしたらどこまで?)

(それにもし街中にでも逃げられたら……)
(無線音)

……私だ。そんなに暇してるのなら、少しはこっちを手伝ってくれたらどうなんだ?

あはは……お互い別の任務を抱えてるんだし、こっちだって忙しいんだって。

それで、そっちは今どうなってるんだ?

私の隊がじきにあいつを炙り出す。その後は、私自ら手を下す、それでちゃっちゃと終わりだ。

今日は絶好の狩猟日和だからな。

ならいい。けど念のために、一つだけ言っておくぞ。

――連合会がすでにクロガネたちの暴走を察知した、だがこっちはまだなんの準備もできていない、俺たちがどちら側についてるか悟られないように注意しろ。

……わかってる。

セントレアは一応まだ理事会直属の無冑盟のプラチナだ、できれば口実も作っておけ。

……ロイ。

ああ。心配すんな、もし万が一が起こったら……ウチらの優しい三人のボスが手を貸してくれるさ。

はぁ……はぁ……

あと少しだ。

商業地区さえ抜ければ、カジミエーシュから出られる……
(矢の射る音)

うぐっ……!

武器を下ろして頂こうか、プラチナ。

モニーク様から許可は得ている、もしこちらの言うことに従って引き返してくれれば、無冑盟はあなたの裏切りに目を瞑ってやると。

ゴフッ……お互い無冑盟なんだから……そんなお世辞はよそうよ。

抵抗しても無駄だ、この建築途中のビルはすでにこちら側が包囲した、逃げ道はないぞ、それよりも――

うぐっ――!

はぁ……はぁ……交渉ならほかの専門家に任せな、それよりも……射撃の腕を磨いたほうがいいよ。

(ここから商業地区の人混みに紛れ込めば……)

(まだチャンスはある……)

(あと少しだ……)
(矢の射る音)

こちらの一部がすでに出口を塞いだ。

相手はあのプラチナだ、楽な相手じゃない。

はやく追うぞ、モニーク様に恥をかかせるな。

いつまで逃げてるおつもりだ?

……

大人しく投降して頂きたい、プラチナ。

もうちょっとだけ、頑張ってみるか……

私は師匠みたいに、こんな場所で死にたくはないね……うーん、死ぬんだったらせめて青空が見れる場所で死にたいし。

やれ。

ハァッ!
(爆発音)

うわぁ!
(三番隊隊員が倒れる)

ゴホッ、ゴホゴホッ……

矢もこれで最後の一本か……

……チッ。

こんな平和な時代で騎士競技がもたらす毒に侵されてないで、若い騎士ならもっと鍛錬に励むべきです!

ロドスは信用できる企業です、グラベルが彼らの信頼を得たのなら、あの子を外に出してもっと世間を見させてあげましょう。

――と、大騎士長はお爺様にそうおっしゃいました。

……わぁ、グラベルさんってすっごく声マネがお上手なんですね……声の雰囲気は全然変わってないのに。

・ああ、確かに不思議だ。
・……
・そんな特技があったなんて初耳ですよ?

コツは特徴を捉えることです。それに特技って程でもありません、そのまま伝えろとお爺様からそう強く言われてるだけです、なんせあんな性格ですから。

お爺様って、グラベルさんを引き取った騎士一族の首席騎士さんのことですか?

……はい。

結局OKはもらえたんですか?

私からは……まだお爺様には伝えておりません。けど必ず行きます。

この前たまたまそのことを伝えたら、怒って私を追い出しちゃったんですけどね……

そうなんですね……
(プラチナの足音)

ゴホゴホッ、はぁ……はぁ……

あと少し……あともう少しで……
(ハイビスカスとプラチナがぶつかる)

イタッ――

イタッ――

――!
瞬く間に、グラベルのナイフがプラチナの喉元に当てられた。
彼女がすぐ手を下さなかったたった一つの理由は、目の前のこの強敵はすでにいとも簡単に殺せるほど、疲労困憊していたからだった。

大丈夫ですか?

い、いててて……大丈夫です……ってうわっ、すごい怪我じゃないですか!

……

……なにかあったようね、プラチナ。

……あんたたちには関係ない……ぐっ。
(プラチナが倒れる)

ちょっ、歩くことすらままならないじゃないですか、大きな外傷は見当たりませんけど……ただの疲労ですかね?それとも……

……無冑盟、もう追いかけてきたとは。

裏切りっぽいけど、もしかしてあなたがその張本人かしら?

ど、ドクター!
あなたはその地面に倒れている無冑盟を見て、今まで抱いていた瀟洒な暗殺者とはまったく異なる印象を覚えた。

・……
・……
・……

……ロドスのドクター……

外の大地って、みんな……あんたたちみたいな人たちばかりなの?

グラベル。

ここに。

・私たちも無冑盟に狙われるかもしれないな。
・監察会の庇護から抜ければ、私たちにも危害が及ぶかもしれない。
・商業連合会はただの後ろ盾だ、時効付きのな。

私もちょうど、それについて話そうと思っておりました。

なにせここは敵の本拠地です、カジミエーシュにいる限り、無冑盟はいくらでも一企業を葬る手段を持ち合わせておりますので。

そうだな。

・ハイビスカス、はやく彼女の救助を!
・グラベル、無冑盟を足止めしてくれ!

……!

ウフッ、仰せのままに。

しっかり掴まってくださいね、えっと、無冑盟さん――!

……なんで……

・説明なら後だ、その時は報酬も話し合わなくちゃな。
・……
・人を助ければ自分を助けることにもなる、私は優しいのでね。

はやく追え、絶対に彼女を逃すな!モニーク様に連絡を入れろ!

クソ!なんでお前らまで邪魔するんだ!?

……さあね~。

耀騎士がロドスを信頼してるのって、もしかしたらこういうところから来てるのかもしれないわね。

チッ、お前らに付き合ってる暇は――

その通りだ。

お前らに付き合ってる暇はない。しかもよりによって、この一件が征戦騎士にバレてしまったとは。

……もしかして、黙らせるつもりかしら?

はぁ。

……どうやらいつからか、私が仕事を始めようとするたびに、邪魔が入るようになってしまったようだ。

ウフッ、それは申し訳ないわね、ラズライト。

私ね、仕事よりも大事と言えるほど、ドクターからの嘱託を受けているの。

相手としてあなたに敵わなくとも、あなたが狙いを定めている時の邪魔になるぐらいには十分だと思うわ。

ロドスか。

今ここに耀騎士とあの変なサルカズたちがいないにしては、ちょっと高を括り過ぎじゃないか?

この距離でも、私なら簡単にそこにいる医者とプラチナを射抜いてやれるぞ――難しいことじゃない。

……

自分たちの勝手な行動でいらぬ犠牲をも生んでしまったようだな、征戦騎士。

私を止めたいんだろ?ならやってみろよ。

――ハァッ!
(戦闘音)

させるか!

モニーク様!

わかってる!私に命令するな!

……私たちにはもう、プラチナは必要ない。

邪魔をしてるそのサルカズの医者と一緒に死ね。

チッ!
傲慢さにより彼女はもはや二度も失敗するわけにはいかなかった。
モニークは精一杯弓を引く。
ロドスの医療班も人間を殺すって、どこのどいつが言ったのかしら?

――なに?
矢先の金属が錆びていく、矢柄も新芽を帯びた木の枝のように縮こまってしまい、ぽとっと彼女の手に落ちた。
遠くから人影が現れた、だがそんな影を見ただけでモニークの全身にある感覚が走る。
警告にも似たとある感覚だ。
現れたそのキャプリニーは背丈が低く、歩く歩幅もとても小さかった。アーツを放ってる時の姿勢もゆったりとしていて、とてもじゃないが戦場映えするような姿ではなかった。

……本来なら本艦の近くを通るんだし、ついでに顔を出そうと思って来てみたら、まさかこんな面白い場面に遭遇できたとはね。

誰だ?

あんたに教える筋合いはないよ、無冑盟。

任務と無関係なことに首を突っ込むのは私のタチじゃないんだけどね、それでもあんたさっき、逃げようとしていたうちの子に明確な敵意を示したわね。

……

それは見過ごせないなぁ、無冑盟。

うぅ……

ひどい怪我をしてましたよ、無冑盟さん。

うぅ、私……

安心してください、ここの商業地区を抜ければ、ロドス本艦です。

……
自分の住処から逃げ出し始めて、プラチナはもう三日三晩起きっぱなしだった。
水も食料も一度も口にしなかった、自分が買った飲食物は、もしかしたら無冑盟に毒を盛られているのかもしれなかったからだ。
ロドス……

……
彼女が少しだけ振り向いた視線の先には、ロドスのドクターがいた。
彼女の任務を台無しにしてくれた国外組織の指導者。
しかし彼女の救世主でもあった。

……皮肉だなぁ。
ドクターの前ではせめてメンツは保つべきかと彼女は考えていた、さらには大騎士領から連れ出してくれないかと聞いてみるべきかどうかとも、だがその前に彼女は……
このどんよりとした空と同じように、ぼんやりとしたままだった。
(戦闘音)

……んー。

やっぱ二人だけでラズライトを足止めするには、ちょっと無理があったかな……

そうかしら?これでもよくやってるほうだと思うわよ、あっちはあんなに数がいるんだし。

……クソ。なんで征戦騎士はあんな手傷を負ってるのにまだ動けるんだ、お前のアーツが原因か?

それになぜ私の正体を知っている?カジミエーシュの人間か?

……質問攻めはよくないよ、無冑盟、一つ一つゆっくり解き明かそうじゃないか。

勝手にしろ、お前はあのサルカズよりは真っ当な医者らしいな――なら、そう長い間足止めはできないはずだ。

そんなに無冑盟を理解してるのなら、お前もわかってるだろ、無冑盟の恐ろしさを――
(バイブ音)

……

……どうぞ。

私もこの騎士さんも不意打ちするような人じゃないから。
(無線音)

……もしもし。

チッ……わかりました。

そちらの意向に従います。
(無線が切れる音)

モニーク様、どうされましたか?

……撤収だ。

征戦騎士に気づかれた、不必要な動向は極力避けろ。

え?しかしここ付近に騎士は一人も見つかっていないって偵察隊が――

二度も言わせるな。

は、はい!全員、撤収だ!

……運がよかったな。

運?

いやいや、実力によるものだよ、無冑盟。

とても気になってるんだが、ムリナール。

……

もう何年だ?

お前はもう何年も、鋤引きする駄獣のようにカジミエーシュに居座り続けてきた、セシルが死んでもなにも変わっちゃいない。

かつてのお前は、寝食もまともにできないほど敵に不安を覚えさせてやれたのにな。

お前がなにもしなくなってから、ヤツらは長い時間をかけてやっと気づくようになった、あのムリナール・ニアールの光はようやく鈍くなったのだと。

あの時、お前はまだ若かった、あの時がお前の黄金時代だったよ……だがお前はセシルのために、あの幼い姉妹のために、結局はカジミエーシュに残ると決意した。

お前はあれからすっかり諦めたんだと、私ですらそう思わざるを得なかったよ。

しかしなぜよりによってこんなタイミングに、大騎士領を出たんだ?

……お前が知る必要はない。

監察会の最高機密が、今もあの滑稽な場所、大騎士領のチャンピオンウォール展示会場の下に隠されてるのをお前は知っているんだろ?

そこの管理者はお前になにか教えたのか?いや、あの頑固者が口を割るなんて絶対にありえんな……ということは、大騎士長の意志だな?

私はただ、得るべくして得た休暇を楽しんでるだけだ。

ならその休暇後にまた返り咲くことを期待しているよ、ムリナール……

言わずとも仕事には復帰する。

……私はもう長生きし過ぎた、ムリナール。

お前がリターニア人の陰謀に火を点け、白く輝く波が敵の陣地を尽く瓦解させていった情景を今でも憶えているよ……

裏切った騎士たちも全員お前によって――斬られた、彼らがバタバタと倒れていく時のお前は、まるで麦を収穫する農夫のようだったよ。

耀騎士の光は確かに眩しい、しかし空虚だ。お前の輝きと怒りのほうが私の好みに合う。

それに、あの時から確信していたよ、お前の光をもう一度目にしたら時には、私は必ず……

お前の命を奪わなければならない、とな。

……

お前はどうなんだ?

ん?

お前が一手に立ち上げた無冑盟が、半世紀もの時を経て決断した最後の選択があんなもので本当によかったのか?

……一番賢い選択をしただけさ。お前ならわかるだろ。

ふむ、もしやニアール家に新たな未来が誕生したと、耀騎士がそう思わせてくれたのかな?まさかお前は彼女のあんな非現実的な理想の道を認めてやったのか?

……道、未来。

ニアールの騎士は他者に己の道の方向を指し示してもらう必要などない、私はただ、彼女たちにその道を歩み続けられる力があるとは思っていないだけだ。

……彼女に同伴してくれる仲間がいることもな。

だが今はもう違った。

ほう……

……ふむ、それもそうか。お前も耀騎士も同類だからな。

……

ただお前のほうが彼女よりも失望していて、この国を信じていないというだけだ。

残念だよ、私とお前が抱えてる失望と怒りは、同じものだと思っていたのだがな……

……どうにかして商業連合会に取り込んでもらおうとしてるお前が、どのツラ下げて“私と同じ”だと言えるんだ?

昔を懐かしむのもいい加減にしろ。

……なんだ、無冑盟にはすでにロドスとニアール一族に手を出すなと命令を出したではないか、ここまで誠意を示しているのにまだ満足していないのかね?

いいや満足だ。

さもなければ今頃お前は屍になって、ここで雨風に晒されていただろうからな。

……

今まで無冑盟がなにをしてきたか、お前のほうがよっぽど詳しいはずだ。

勘違いするな、私たちはいつだって敵同士なんだ……“クロガネ”。

……フッ、薄情者め、昔と相変わらずだな。

ではまた会おう、ムリナール。お前の旅に……収穫があることを期待しているよ。

・具合はよくなったか?
・……
・もう傷は大丈夫そうだな。

……ラズライトに追われたからと言って、私が無冑盟から外れたわけじゃないよ……もしかしたら今後もまだ理事会から任務を受けるかもしれないんだから……

アンタなら分かってるはずでしょ、なのになんで……

・双方に利益をもたらすと信じてやっただけだ。
・……たまたまだよ。

……

もう!皆さんここまでやってあげたんですから、素直に一言ありがとうって言うだけでいいじゃないですか!

……

あ、ありがと、ドクター……

ふぅ……

無理難題を出してくれましたね、ドクター。

肩の力を抜いて、ザラックちゃん、そうしてくれたほうが治療も効率的になるから。

ありがとう……

グラベルさん!なんでTouch先生と一緒にいるんですか!?

……たまたまです。

あの、私も一緒にお話していいですか?

どうぞどうぞ!あっ、なんならTouch先生も……

……私はいいよ、アーミヤに報告しに来ただけだから。

お疲れ様、お二人とも。

本当に苦労したんですからね、ラズライトの相手は。

ただ、それなりに成果は得られましたね。

……

また私に大きな借りができちゃいましたよドクター、うふふ。

そろそろロドスに戻ろう。

どうやらプラチナとはもう話はついたようですね。

さっきまで敵同士だったのに、もうこうして話を交わせるほどの仲になっただなんて。

本当に不思議な人。

うーん……私もそろそろ休んでおこうかしら……

……

なにを企んでるの?無冑盟。

……まーだ私のこと監視してたのか。

カジミエーシュを出るまでの間……いいえ、あなたがドクターの傍からいなくならない限り、監視の目は消えないわよ。

ウフッ……だってあなた自分で言ってたじゃない。無冑盟に裏切りが出たら、商業連合会はなおさら水面下であなたに任務を受け渡すかもしれないって……

ドクターに救われたからって、過去から逃れられると思わないことね、暗殺者さん。血がこびり付いた無冑盟なんて信用に値しないんだから。

言ってることは正しいよ。

けど安心して、少なくとも今、こっちは頑張ってドクターの信頼を得るつもりでいるよ。こういう八方美人な処世術を身に着けておかないと、カジミエーシュじゃ生きていけないからね。

……私のこと皮肉ってるのかしら?

……他人を皮肉るなんて面倒臭いことはしないよ、気にし過ぎ。

アンタもロドスと一緒にカジミエーシュを出るの?

あなたには関係ないわ。

また苦労な日々が始まるってことか……

……それにしても初めてだ……こういう陸航行艦に乗るのって。

ハッ……あのドクターって人……本当に変なヤツだ。

命の恩人を変って言っちゃダメよ。

……そうだね。

ねえ、またここに戻ってくるの?

戻りたいの?

……うーん……

どうだろ、考えたこともないや。

少なくとも今は、とっとと逃げたいかな。