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【明日方舟】吹雪過ぎ行く BI-7「アイスブレイク」行動後 翻訳

エンシア
エンシア

……チェスター叔父さん、どうして出ちゃダメなの?

チェスター
チェスター

総裁の指示だ、彼が戻ってくるまで、あちこちには行かすなと。

エンシア
エンシア

じゃあお兄ちゃんはいつ戻ってくるの?

チェスター
チェスター

総裁は今ちょうど霊山へ向かわれてる途中だ、二日ぐらいしたら戻ってくるよ。

エンシア
エンシア

ちょっとした散歩でもダメなの?

チェスター
チェスター

屋敷の近くなら構わないが……付添人にも着いて行ってもらうぞ。

チェスター
チェスター

エンシア、今のイェラグは情勢が不安定なんだ、これも君のためだよ。

エンシア
エンシア

……はぁ。

エンシア
エンシア

お兄ちゃん……どうしてもこうしなきゃダメなの?

エンシア
エンシア

ドクター、あたしどうすれば……

エンシア
エンシア

オーロラ!?

オーロラ
オーロラ

シーッ――すごい厳重な警備だから静かにね、せっかく潜り込んでこれたんだから。

エンシア
エンシア

Sharp隊長と一緒にドクターのところに行ったんじゃ?

オーロラ
オーロラ

うん、でもここに来たのは、ドクターからあなたへ伝言があったからなの。

ノーシス
ノーシス

それは本当か?

メンヒ
メンヒ

はい、アークトスは領地内で兵を大量に集結させています、ただ、その部隊の指揮官はアークトスではなく、ドクターです。

ノーシス
ノーシス

アークトスは?

メンヒ
メンヒ

わかっていません……まだ目視で確認しただけですが、あの部隊の指揮権をドクターへ譲ったあと、姿をくらましました。

ノーシス
ノーシス

……あのドクターの部隊はまさか囮か?いや、そんな簡単なものじゃないはずだ。

ノーシス
ノーシス

部隊の規模は?

メンヒ
メンヒ

ペルローチェ家の領地内でアークトスの召集に応えた一族はノーシス様が想定していたのと大差はありませんでした、それを鑑みると――アークトスがあれと同じ規模の部隊をもう一つ集結させてる可能性はないかと。

ノーシス
ノーシス

だが彼は後方で待機するような人間ではない、ほかの部隊が存在する可能性は大いにある。

メンヒ
メンヒ

ペルローチェ家の戦士はもとより山地での行動に長けております、確かに可能性がないとは言い切れませんね。

ノーシス
ノーシス

しかし、囮だろうと主力だろうと、どちらの部隊も放っておくわけにはいかない。

ノーシス
ノーシス

ヴァイスに伝令、戦士たちを山の麓に集結させて、待機させろ。

ノーシス
ノーシス

それからその大部隊を見張るように監視役を送っておけ、君には主にアークトスの行方を探ってもらいたい。

メンヒ
メンヒ

承知しました。

エンシア
エンシア

ドクター……あたしが霊山に登ったあと、曼珠院に潜入してお姉ちゃんを探してほしいだって?

オーロラ
オーロラ

うん。

オーロラ
オーロラ

つまりドクターが言うには、今ペルローチェ家とシルバーアッシュ家の間で起こる衝突は不可避なものになった。

オーロラ
オーロラ

でも、もしそれを阻止できる人がいるとすれば、その人は必然的にあなたの姉、当代の巫女、エンヤ・シルバーアッシュしかいないってこと。

エンシア
エンシア

でも……

オーロラ
オーロラ

本来なら、ドクターはロドスの内政不干渉の方針に従って、傍観をするつもりだったの。

オーロラ
オーロラ

でも、エンシオディスさんがただの見せかけとして執政権返還を目論んでいたのなら、必然的にイェラグの信仰を眼中に置くことはないってドクターは指摘していたよ。

オーロラ
オーロラ

それにもしシルバーアッシュ家の部隊が本当にペルローチェ家の部隊を倒したら、イェラグを手中に収める彼を阻止してくるのは残りは曼珠院しかいない。

オーロラ
オーロラ

つまりイェラグ人たちの信仰の対象、巫女しかいないって。

オーロラ
オーロラ

ドクター言ってたよ、あなたに巫女を説得して彼女に何かさせたいってわけじゃなく、以前自分に兄妹同士の関係を修復してほしいって頼んできたからとか。

オーロラ
オーロラ

だからドクターはイェラグにきてからなにも手伝ってあげられなかったことにずっと自責していたんだって。

エンシア
エンシア

そんなのドクターのせいじゃないって!こっちこそドクターとみんなに謝らなきゃならないよ、本当なら初めての楽しい旅行になるはずだったのに、結局お兄ちゃんのせいでこんなことになって……

オーロラ
オーロラ

あなたのせいでもないよ、クリフハート。

オーロラ
オーロラ

とにかく、ドクターが伝えたいのは、本当なら今回の件については全然気にする必要はなかったんだけど、最初からエンシオディスさんによって巻き込まれたってこと。

オーロラ
オーロラ

それと、あなたはエンシオディスさんの妹だってことも。

オーロラ
オーロラ

だから、ドクターはなにか手を打とうって動き始めたの。

オーロラ
オーロラ

あなたを山に行かせるのは、巫女を守ってほしいためなんだよ。

オーロラ
オーロラ

ドクターは必要な時にあたしにお兄ちゃんを止めてほしいんだね。

オーロラ
オーロラ

あるいは必要な時に巫女を連れて逃げてもらうとかかな。

エンシア
エンシア

……

エンシアは無意識に握っていたロープを撫でていた。
これは小さい頃、姉が自分のために編んでくれたものだ。

エンシア
エンシア

……

エンシア
エンシア

わかった、行くよ。

オーロラ
オーロラ

今回は潜入行動になるから、私やほかのオペレーターたちが一緒に協力するね。

エンシア
エンシア

……大丈夫。

エンシア
エンシア

もっといい方法を思いついたから。

エンシア
エンシア

みんなはあたしを麓まで送ってくれれば大丈夫、あとのことはあたしに任せて。

グロ
グロ

ドクター、なぜ行軍速度をこんなにも遅くしているんだ?

ドクター
ドクター

・私たちを見張ってる人たちにもうちょっと楽しませてあげるためさ。
・今はまだ速度を上げてはいけないからだ。

スキウース
スキウース

あのさ、もしかしてグロは今私たちがなにをしようとしてるのかを理解していないわけ?

グロ
グロ

シルバーアッシュ家の目を惹くためだろ?それにしてもここまで行軍速度を落とす必要はないと思うが。

スキウース
スキウース

どうせあなたは一直線に突っ込んでシルバーアッシュ家とドンパチしたいだけなんでしょ。

グロ
グロ

当然だ。

グロ
グロ

以前はヴァレスに裏切られたんだ、それもあって今でも胸の中がムシャクシャしているからな。

イェラグの戦士
ペルローチェ家の戦士

ドクター、祭典で捕らえられたユカタンの居場所を突き止めました。

イェラグの戦士
ペルローチェ家の戦士

ドクターの予想通り、シルバーアッシュ家の領地には連れていかれておらず、山の麓にある村に監禁されておりました。

ドクター
ドクター

ご苦労。

グロ
グロ

ドクター、お前すごいな、こんな短時間でユカタン様が収監されてる場所を突き止めたとは。

スキウース
スキウース

フンッ、それぐらいの情報収集、私たちブラウンテイル家にだってできるわよ。

スキウース
スキウース

とりあえず、ユカタンの居場所もわかったんだし、私とこの筋肉だるまもそろそろ動いていい頃なんじゃないかしら?

ドクター
ドクター

そうだな。

グロ
グロ

……

スキウース
スキウース

黙っちゃってどうしたのよ?

グロ
グロ

いや、私のことを呼んでいたのか?なにが筋肉だるまだ、違うぞ!

スキウース
スキウース

(深呼吸)

スキウース
スキウース

グロッ!将軍ッ!フンッ……これで満足?

スキウース
スキウース

一応聞くけど、あなた自分の役割は分かってるんでしょうね?

グロ
グロ

分かっているさ、付近にある列車駅の破壊、ついでにお前の旦那の救出だろ。

スキウース
スキウース

分かってんのならいいのよ。

スキウース
スキウース

ドクターに代わって言っとくけど、絶対死者は出さないでちょうだいよ。

グロ
グロ

フンッ、列車駅にいるのは一般人だけだ、このグロがその人たちに手を出すなど絶対にありえん。

グロ
グロ

しかし、ドクター、もしシルバーアッシュ家の兵が来たら――

グロ
グロ

なるべく手加減だけはしよう、なるべくな。

オーロラ
オーロラ

クリフハート、探してたのって……登山道具のことだったの?

エンシア
エンシア

そうだよ。

オーロラ
オーロラ

まさか、カランド霊山を登るつもり?

エンシア
エンシア

うん……君の言う通り、今は霊山どころか、山の麓も人でたくさんかもしれない。

エンシア
エンシア

もし正面から登ろうとしても、あのSharp隊長であっても潜入は困難だと思う。

エンシア
エンシア

でもあたしにしてみればへっちゃらだけどね~。

エンシア
エンシア

麓まで連れてってくれたら、残りはあたしに任せて大丈夫だからね。

オーロラ
オーロラ

でも……そしたら、私もほかの人もあなたを守れなくなっちゃうよ。

エンシア
エンシア

大丈夫大丈夫。

エンシア
エンシア

あたしだってロドスでたくさん訓練を受けてきたんだから、普通の相手ならあたしでもなんとかなるよ。

オーロラ
オーロラ

でも……

(チェスターとイェティが近寄ってくる)

チェスター
チェスター

エンシア、どこに行くつもりだ?

エンシア
エンシア

チェスター叔父さん……

エンシア
エンシア

山に登りに行くつもりだけど。

チェスター
チェスター

どの山だね?

エンシア
エンシア

カランド霊山。

チェスター
チェスター

あそこはもうじき戦場になる、行ったら怪我じゃ済まされないぞ。

チェスター
チェスター

何しに行くんだ?

エンシア
エンシア

……

エンシア
エンシア

チェスター叔父さん、あたしね、登山にハマったあと、ずっと自分の足でカランド霊山を登ってみたいって思ってきたんだ。

エンシア
エンシア

お姉ちゃんが巫女になってあたしたちから離れていった後も、その思いはどんどん強くなってきたの……いつか山頂まで登って、お姉ちゃんは家に連れ戻すって。

エンシア
エンシア

だから、今はその絶好のチャンスなんだ。

チェスター
チェスター

君にできっこない、エンシア。

エンシア
エンシア

……お姉ちゃんを連れ戻せなかったとしても、せめてこんな時だからこそ、お姉ちゃんの傍にいてあげたんだ。

エンシア
エンシア

お兄ちゃんは色々しでかしたから、きっとお姉ちゃんも悩んでると思うから。

エンシア
エンシア

あたしはお兄ちゃんを止める術はない、ならせめて、あたしはお姉ちゃんの傍にいてあげたい!

チェスター
チェスター

……

オラヴィル、君の末の娘だが、随分と大きくなったな。

戦士たちのボス
シルバーアッシュ家の士官

エンシアお嬢様、申し訳ありません、これは旦那様の命令でございます、あなたの安全のためにも、どうかこの屋敷に留まってくださいませ。

チェスター
チェスター

……行かせてあげなさい。

エンシア
エンシア

えっ。

エンシア
エンシア

チェスター叔父さん!

戦士たちのボス
シルバーアッシュ家の士官

チェスターさん、それでは旦那様の命令に反します!

チェスター
チェスター

ここで起こった責任はすべて私が負う。

戦士たちのボス
シルバーアッシュ家の士官

しかし……そう言われましても、エンシアお嬢様の安否が……

チェスター
チェスター

シルバーアッシュ家の人間は、決して無意味な冒険はしない。

チェスター
チェスター

ここは、この子を信じてあげよう。

戦士たちのボス
シルバーアッシュ家の士官

しかし……わかりました。

チェスター
チェスター

さあ、お嬢様とロドスのお客様のために最高の駄獣を用意してあげなさい。

戦士たちのボス
シルバーアッシュ家の士官

承知致しました。

エンシア
エンシア

ありがとう、チェスター叔父さん!

オーロラ
オーロラ

ありがとうございます、チェスターさん。

オーロラ
オーロラ

てっきりあなたは……

チェスター
チェスター

礼には及ばないさ。

チェスター
チェスター

さあ行きなさい、もう時間がない。

エンシア
エンシア

うん!

チェスター
チェスター

エンシア。

エンシア
エンシア

なに?

チェスター
チェスター

気を付けるんだよ。

エンシア
エンシア

……うん!

(エンシアが立ち去る)

チェスター
チェスター

オラヴィル。

チェスター
チェスター

君とエリザベスが逝ってしまったあと、私はずっと後悔していたんだ、あの時は私も君の領地改革に賛同すべきだった、反対するのではなく。

チェスター
チェスター

だから、君の息子が君の理想を受け継いだ時、私は何も考えずに彼を支持した。

チェスター
チェスター

エンシオディスはよくやっているよ。

チェスター
チェスター

エンヤも巫女としてイェラグ人たちから愛されているさ。

チェスター
チェスター

エンシアに関しては鉱石病を貰ってしまったが、それでも病状は抑えられてるし、いつも通り元気溌溂でいるよ。

チェスター
チェスター

ただ、ついさっき気が付いたんだ。

最後にあの子たちが一緒に集まって、兄妹同士で笑顔を見せてくれたのはいつ頃だったのだろうかって。

大長老
大長老

……

エンヤ
エンヤ

大長老様、しっかり休まれたほうが……

大長老
大長老

……

大長老
大長老

記録によれば、この正殿は三族議会が成立したあと、御三家の人々が協力し合って建てられたものらしい。御三家の存在と協力は現代に作られた御三家制度よりもはるか昔から存在しておった。

大長老
大長老

それから千年もの時を経て、それまで間に色々あったが、今のような形に収まった。

大長老
大長老

この椅子も、ここに千年も置かれてきたことじゃろうな。

大長老
大長老

十数名もの大長老たちはこの椅子に座り、彼らの生涯を渡ってきた。

エンヤ
エンヤ

……数十名もの巫女が、この山の上で次々とその生涯を終えていったのと同じように、ですね。

大長老
大長老

巫女というのは、最初から曼珠院が信仰を布教するために作られた存在じゃったのだよ。

エンヤ
エンヤ

大長老がこのタイミングで私がとっくに知ってる事実を言及したということは、今までの信仰はすべてウソだったとでも仰いたいのですか?

大長老
大長老

お前もストレートにものを言うようになったのう、だがむしろその逆じゃよ、エンヤ、いや、巫女よ。

大長老
大長老

巫女よ、ゴホッゴホッ、わしの名前は知っておるか?

エンヤ
エンヤ

……存じ上げません。

大長老
大長老

この曼珠院の中で、おそらくもう誰も憶えておらんかもしれんな。

大長老
大長老

わし自身でさえ、とっくに忘れてしもうてる。

大長老
大長老

歴代の大長老は、前代の袈裟を受け継いでから、大長老になってしもうた。

大長老
大長老

いずれお前も人々から名前を忘れられて、巫女としか呼ばれなくなる。

大長老
大長老

さすれば、大長老も巫女も気付くのじゃ――

大長老
大長老

人々が信仰しているのは、イェラガンドではないのじゃと。

大長老
大長老

人はなんだって信仰する、物語ときっかけさえあれば、人々はお前を、わしを、エンシオディスを、山を、水を、ましてや木の葉一枚すらをも信仰するようになる。

大長老
大長老

何でも信仰するようになったのなら、はたして信仰とは一体何なのだろうか?

大長老
大長老

そこで大長老たちは答えを導き出した。

大長老
大長老

人々は、信仰そのものを信仰する。

大長老
大長老

みな、信仰の対象に自らの選択権を委ねた。

大長老
大長老

自分たちが排斥する物事の責任もすべて信仰に委ねた。

大長老
大長老

人々はみな無条件に信仰が指し示した暮らしの形を信仰するようになった、とな。

大長老
大長老

つまり信仰とは一体何なのか?

大長老
大長老

信仰とはつまり怠惰であり、逃避であり、退廃であるのじゃ!信仰とは安定、停滞そのものなのじゃ!ゴホッゴホッゴホッゴホッ――

エンヤ
エンヤ

……そろそろお休みになられてください、大長老様。

大長老
大長老

いいや、巫女、巫女よ!

大長老はガッとエンヤの腕にしがみついた。
エンヤの肌に赤い跡を残すほどの力強さだ、まるで残りある命の力をすべて費やすのではないかと思うほどに。
彼の両目はしっかりと目の前にいる巫女に定まっていたが、まるで別人を見ているかのようでもあった。

大長老
大長老

信仰は醜い悪しきものなのじゃ!なのに、信仰を壊してくれる者は誰一人おらぬ!

大長老
大長老

イェラグは千年もの時を渡ってきた、御三家の関係の溝は深くなっていくばかりだというのに、誰も信仰を否定してやれぬ、なぜなら信仰はイェラグがイェラグたらしめる根幹であるからなのじゃ!

大長老
大長老

信仰はイェラグの民を一つにまとめた、人々も信仰を追い求め、信仰に頼り切るようになった!

大長老
大長老

それでイェラグは千年も存続し続けることができたのじゃ!

大長老
大長老

人々はみな安定を、停滞を渇望しておる!

大長老
大長老

エンシオディスは自分が勝ったと思っているが、勝ってなどいない、勝つことはできぬ。

大長老
大長老

このイェラグが千年もの時を費やして固めた信仰に勝てるはずがない!

大長老
大長老

わしはもう朽ち果てる身じゃが、お前はまだ若い、お前はこの曼珠院の巫女であり、いずれこの曼珠院の大長老になる者じゃ。

大長老
大長老

彼に教えよ、彼に打ち勝てよ、彼に知らしめるのじゃ、信仰の御前で、彼のしてきたことは何の意味の為さないと!

エンヤはしばし沈黙した後、大長老の朽ちた手を自分の腕から払い除けた。
彼女の目には目の前にいるこの老人に対する憐憫が含まれていたが、それよりも確固たる意志を宿していた。

エンヤ
エンヤ

……それにはお応えできません、大長老様。

エンヤ
エンヤ

信仰は停滞を意味し、人々が信仰に頼り切るようになったのは、安定を渇望しているからだとあなたは仰いましたね。

エンヤ
エンヤ

けど私はそうは思いません。

エンヤ
エンヤ

事実として、人は信仰を抱き始めた時から、信仰に頼ってしまうものです。怠惰も、逃避も、退廃も……あなたが言ったそれらついては否定しません。

エンヤ
エンヤ

だからといって、信仰が停滞を意味することにはなりません。

エンヤ
エンヤ

信仰は信仰です、そこにはなにも含まれておらず、信仰の中身はいつだって授けられるものなのです。

エンヤ
エンヤ

信仰が前へ進めば、信仰する人々も前へ進みます。

エンヤ
エンヤ

信仰が止まれば、信仰する人々も自ずと足を止まります。

エンヤ
エンヤ

イェラグの人々があなたの目に停滞へ向かわれているように映るのは、イェラガンドの信仰が曼珠院の手中で千年も停滞し続けてきたからです!

エンヤ
エンヤ

私たちは決められた規則に自らを縛り付け、この雪山の中で千年も暮らしてきました、外の天地を探求することもせず、外の人々とも交流しないまま。

エンヤ
エンヤ

そんな決められた規則は、本当に信仰と言えるのでしょうか?

エンヤ
エンヤ

そうさせてきたのは曼珠院の傲慢によるものなのではないのですか?

大長老
大長老

傲慢じゃと?いいや、違う、もとからそうであるべきなのじゃ!

エンヤ
エンヤ

……この世にそうであるべきことなどはありません。

エンヤ
エンヤ

もしあるとすれば、それはきっと一度も変化を遂げてこなかったことでしょう。

エンヤ
エンヤ

私たちもそろそろ変化を迎えるべきです、大長老様。

大長老
大長老

巫女よ、お前では何も変えられまい。

大長老
大長老

信仰は、ゴホッゴホッ……イェラグをイェラグたらしめている根幹じゃからな……

エンヤ
エンヤ

私もエンシオディスに抗います、しかしあなたが思い描いてる方法では抗いません。

エンヤ
エンヤ

成功できるかどうかも未知数のままです。

エンヤ
エンヤ

しかし、巫女が最初から曼珠院が民衆を信仰へ導く道具として生まれたのなら。

エンヤ
エンヤ

私がその道具の真価を発揮させましょう。

エンヤ
エンヤ

私は巫女ですが、曼珠院の巫女ではありません、私はイェラグの巫女です。

エンヤ
エンヤ

私は私の方法で民を導きます、彼らがより自由に前へ進められるように、探究できるように、冒険に出かけられるように。

エンヤ
エンヤ

ですのであなたは、そろそろお休みください、大長老様。

エンヤ
エンヤ

どなたか、大長老様をご案内してあげなさい。

(エンヤが立ち去る)

エンヤは起き上がり、振り向くこともなく正殿の門へと向かっていく。
彼女の背後には、大長老が椅子に座っていて、彼女の背中を見つめていた。彼は手を伸ばし、何かを掴もうとしていたが、無力にも下ろすことしかできなかった。
彼は何も掴められなかった。
彼は永遠にそこに留まっていく、彼がいつまでも夢見ていたイェラグの雪山で。

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