アークナイツストーリー翻訳

【明日方舟】吹雪過ぎ行く BI-8「チェックメイト」行動後 翻訳

(戦闘音)

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

……お前、以前はサルゴン宮廷に仕えていたのか?

Sharp
Sharp

……前の仕事でな。

Sharp
Sharp

まさかアンタがサルゴンの剣術を知ってるとは思わなかったぞ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

私はアーツに興味はないが、武に関わる物事であれば、嫌でも憶えてしまうものでな。

Sharp
Sharp

どうりで黒騎士は天性の武者だと称されるわけだ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

天性?

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

フッ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

“アーツを使えないリターニアの欠陥品”から、“天性の武者”になるまでどれだけの時間を費やさなければならないか、お前にわかるか?

(戦闘音)

“ガキン”
Sharpが持つ盾に切り裂かれた痕が現れた。
一方デーゲンブレヒャーにもいくつもの傷口が現れたが、彼女はどうやらまだそれに気づいていないようだ。

Sharp
Sharp

痛みは感じないのか?

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

お前も幼年の頃から、寝る時以外は痛みに耐え忍ぶ毎日を送っていれば慣れるさ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

お前はどうなんだ、何度死と隣り合わせになったことがあるんだ?

Sharp
Sharp

戦争で数なんざを数える余裕のある人間は俺の知る限りじゃみんなすぐに死んじまった。

(戦闘音)

Sharp
Sharp

聞いた話によると、黒騎士は商業連合会に協力しなかったために、三連覇王者でありながら、追放や暗殺に遭い、最後にはカジミエーシュの辺境で姿を消したらしいな。

(戦闘音)

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

それがどうした?

Sharp
Sharp

かつて強権に屈しなかった象徴が、今じゃ陰謀家のボディーガードにまでなって、国家簒奪に加担しちまってる。

Sharp
Sharp

道徳的な評価はしないが、それでもちょっとばかし残念に思うよ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

お前たちロドスならエンシオディスの考えに理解を示してくれると思っていたんだがな。

Sharp
Sharp

理解は理解だ、受け入れるかどうかはまた別の話さ。

Sharp
Sharp

まあ実際、ドクターはエンシオディスのことを理解してやってると思うぞ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

私は私自身とエンシオディスになんら申し開きするつもりはない、実に面倒だ、それにそんな必要もない。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

ヤツが何をしようとしてるかはお前の目で確かめてみるといい――今を生き長らえたらな。

幾度の苦難を越え、エンシアはようやく崖の淵へ、次の一歩で登り詰めるところまでやってきた、しかしその時、そう遠くない場所から話し声が伝わってきて、彼女の登る手がピタリと止まった。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士A

はぁ、麓も山頂もメチャクチャだ。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士B

そうだな、大長老はぶっ倒れてしまったし、下ではアークトスが部隊を引き連れて襲ってきてるし。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士A

この先もう大きな出来事は起こらないと思っていたんだが、こりゃ何が起こるのか見当もつかなくなっちまったよ。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士B

俺は最初から穏便に済むとは思っちゃいなかったけどな、ただ、こんなことまで発展しちまって、ちょっとは悲しく思っちまうぜ。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士A

そりゃなぜなんだい?

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士B

俺たちが曼珠院に進駐してから、お嬢様、いやいや、巫女様は明らかに主導権を握ってるだろ。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士B

大長老が倒れてしまったあと、今じゃ曼珠院は彼女の言いなりだ。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士B

それに麓では、エンシオディス様が大局を握っているだろ。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士A

……

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士A

そう言われてみれば、確かにそうかもな。山の上では巫女様が、山の下ではエンシオディス様が。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士B

お前の言葉を借りると、この先どう発展するのかてんでわからなくなっちまったってことだ。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士A

……俺たち下っ端が、そんなこと考えても意味はないからな。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士B

そうだな、こんなことを考えたところで。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士B

もう二回巡回しておこう、下手したら俺たちも後で麓に加勢しに行くハメになるかもしれないからな。

(シルバーアッシュ家の戦士たちが立ち去る)

エンシア
エンシア

……お姉ちゃん。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士C

おい、なんかあったのか!?

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士D

食料貯蔵庫で火事が起こったんだ!

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士C

なにィ!?はやく消火しに行くぞ!

(シルバーアッシュ家の戦士たちが立ち去る)

スキウース
スキウース

フンッ、楽勝ね。

ブラウンテイル家の戦士
ブラウンテイル家の戦士

さすがはスキウース様、実にあなたらしいやり方で……

スキウース
スキウース

どれどういう意味よ!?

ブラウンテイル家の戦士
ブラウンテイル家の戦士

いえその、称賛してるんですよ。

スキウース
スキウース

フンッ、これが終わったらあとで私が資金を出してアイツらの貯蔵庫をもう一回建ててあげるわよ、今は任務が最優先!

スキウース
スキウース

ほらもたもたしないで、アイツらが火事に注意を向けてる隙に動くわよ、ユカタンが捕らえられてる場所はすぐ目の前なんだから!

ブラウンテイル家の戦士
ブラウンテイル家の戦士

はっ!

エンヤ
エンヤ

……ヤール。

ヤール
ヤール

はい、巫女様。

エンヤ
エンヤ

祭典の時、確か群衆の中であなたを見かけた気がします、それにあなたの傍にもう一人フードを被った人もいましたよね。

ヤール
ヤール

はい。

エンヤ
エンヤ

ほかの人から聞いたのですが、どうやらその人はエンシオディスが招いたロドスのお客人、皆さんはドクターとお呼びしてるようですね。

エンヤ
エンヤ

同時に、今アークトス側に加勢し、エンシオディスと対抗してる人だとも。

ヤール
ヤール

……巫女様には誤魔化せませんね。

エンヤ
エンヤ

どうやって知り合ったのですか?

ヤール
ヤール

下山してあなたの手紙を届けた時に、偶然知り得ました。

エンヤ
エンヤ

……そういうことにしておきましょう。

ヤール
ヤール

どうして急にその人のことを?

エンヤ
エンヤ

……

エンヤ
エンヤ

会ってみたくなったんです。

ヤール
ヤール

おやまあ?

エンヤ
エンヤ

理由は分かりませんが、それでも彼はエンシオディスに対して鮮明に反旗を掲げてることは分かります。

エンヤ
エンヤ

ですのでその人が何を考えているのかが知りたいんです。

ヤール
ヤール

……

エンヤ
エンヤ

私はもう自分のやりたいという意志を疑ったりはしません、それよりも自分が決心した頃には何事も遅くなってしまうことのほうが怖いんです。

エンヤ
エンヤ

私にもこの手で掴むべきものがありますから。

ヤール
ヤール

それについては……ご心配なく。

エンヤ
エンヤ

なぜですか?

ヤール
ヤール

だって彼の使者がもうあなたの後ろにいますからね。

エンヤ
エンヤ

!?

エンシア
エンシア

お姉ちゃん!

エンヤ
エンヤ

エンシア……ついに私も幻覚を見るようになってしまいましたか。

エンシア
エンシア

ちょっと、お姉ちゃん、幻覚じゃないよ、正真正銘お姉ちゃんの妹のエンシアだってば!

エンヤ
エンヤ

!?エンシア、本当にあなたなの!?

エンシア
エンシア

そうだよ、お姉ちゃん、なんなら触って確かめてみてよ。

エンヤ
エンヤ

……!!

エンヤは震える両手で目の前にいるエンシアに触れようとした。
彼女は突如自分の目の前に現れた妹が偽物なのではと恐れていたのだ。
しかし彼女の手がエンシアに触れた時、エンシアはすでに脇目もふらずに彼女の胸の中に飛び込んでいた。
彼女もまたすぐにわかった、自分の胸の中にいる人は、間違いなく最愛の妹なのだと。

エンヤ
エンヤ

……

エンヤ
エンヤ

本当にあなたなのね、エンシア。本当に。

エンシア
エンシア

お姉ちゃん、ずっと会いたかったよ。

エンヤ
エンヤ

私もずっと会いたかったよ、エンシア。

エンヤ
エンヤ

外でちゃんと元気にしてた?

エンヤ
エンヤ

病気はどうなったの?

エンヤ
エンヤ

ロドスはどういう所だったの?

エンシア
エンシア

もう、お姉ちゃん、それ全部手紙で書いたじゃん……

エンシア
エンシア

あのね……

(戦闘音)

Sharpは数歩退き、微かに息を吐く。
彼は生涯で多くの相手と対峙してきた、ロドスにいる多くの手練れたちとも切磋琢磨してきた上、あるいは少なくとも彼らを観察してきた。

自分はデーゲンブレヒャーみたいな相手、もしくは、デーゲンブレヒャーみたいなこれほどまでに単純な相手を見たことがないと、彼はそう認めざるを得なかった。
スピードとパワーというものは、どの戦士でも当然ながら備わっている素質だ。

デーゲンブレヒャーはそれ以外のものは備わっていない、だが彼女には明らかにそれ以外のものなど必要なかったのだ。
大半の人よりも凌駕するそのスピードとパワーを備えていれば、それ以外のものなど必要あるだろうか?
幸いにして……Sharpがエリートオペレーターになれたのも、その二つの素質のおかげだった。

Sharp
Sharp

……

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

……

Sharp
Sharp

アンタ、エンシオディスをとても信頼しているんだな。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

なぜそう思う?

Sharp
Sharp

金のためだけにここまで動く人は少ないからだ。

Sharp
Sharp

それにアンタ、本来なら金で動くような人じゃないだろ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

お前はどうなんだ?口では仕事とばかり言っているが、お前のやってることは優に仕事の範疇を越えているぞ。

Sharp
Sharp

俺は自分の気に入った仕事しか受けないもんなんでな。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

……私はカジミエーシュが嫌いだ、あそこは騒々しすぎる、そこにいる人々も。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

本来ならイェラグも好きになれないと思っていた。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

だが、悪くはなかった。

Sharp
Sharp

そいつはよかったな、隠居の場所がいいかどうかは非常に重要なことだからな。

期せずして、二人は同じように数歩引いた。
双方とも気付いていたのだ、相手を倒すには、さっきのような攻め方ではダメだと。
もっと本領を発揮しなければ、と。

デーゲンブレヒャーは剣を適当に投げ捨て、腰に佩びていた鐧(カン)を取り出した。
Sharpもまた手に支えていた盾を投げ捨て、両手にナイフを切り替えた。

青々と茂った木の上、積雪の重さに耐えかね一本の木の枝が、“パキッ”と音を立てて折れる。
それと同時に、Sharpとデーゲンブレヒャーはつい先ほどまで立っていた位置から姿を消した。

エンヤ
エンヤ

エンシアったら、本当になんて言ったらいいか。

エンヤ
エンヤ

まさか人目を避けて、麓から一気にここまで登ってくるなんてね。

エンシア
エンシア

えへへ、そうでもしなきゃお姉ちゃんに会えないもん。

エンヤ
エンヤ

それでさっき、ドクターに言われて来たって言ってたよね。

エンヤ
エンヤ

何か用でもあったの?

エンシア
エンシア

ドクターがね、お姉ちゃんの傍にいてあげてって、必要な時はあたしがお姉ちゃんを守ったり、お姉ちゃんと逃げてあげてって言われたんだ。

エンヤ
エンヤ

必要な時って?

エンシア
エンシア

……お兄ちゃんはもしかするとお姉ちゃんに良からぬことをするかもしれないって、ドクター言ってた。

エンヤ
エンヤ

……

エンシア
エンシア

あたし……

エンシア
エンシア

お姉ちゃん、あたしね。

エンシア
エンシア

お兄ちゃんにもお兄ちゃんの考えがあるんだし、あたしじゃどうにもできない。

エンシア
エンシア

でももしお兄ちゃんがお姉ちゃんを傷つけるような考えを持っていたら……

エンシア
エンシア

命を賭けてでもあたしが絶対お兄ちゃんを止めてみせるよ。

エンヤ
エンヤ

……

エンヤは忽然とあのドクターがなぜ妹を自分の傍まで送ってきたかを理解した。
守る、逃げる――この二つの理由は妹を納得させるだけの表向きの理由に過ぎない。
あのドクターも自分の考えを分かっていたのだ、自分が妹に会うという行動自体に、意味があったのだと。

エンシアが私を守る?
エンシアが私を逃がす?
いいや、むしろその逆だ。

私がエンシアを守る人なんだ。
私がエンシアを逃がしてあげる人なんだ。
私が――戦わなくてはいけない人だったんだ。

エンヤ
エンヤ

エンシア、私が昔編んであげたミサンガ、まだ着けてくれていたのね。

エンシア
エンシア

そりゃもちろんさ、これからもずっと着けるよ。

エンヤ
エンヤ

時間があったら、また新しいのを編んであげるね。

エンシア
エンシア

ホントに!?

エンヤ
エンヤ

ええ。

エンヤ
エンヤ

だからね、エンシア。

エンシア
エンシア

ん?

エンヤ
エンヤ

お姉ちゃんのお願いを一つだけ聞いてくれないかしら?

エンシア
エンシア

何?

エンヤ
エンヤ

もう少しだけ一緒にいて。

ユカタン
ユカタン

……

ユカタン
ユカタン

(外がやけに静かだ、だがあの二人の看守はまだそこにいるはず。)

ユカタン
ユカタン

(窓……この角度から気付かれないようにするには、外にいる看守を移さないといけないな。)

ユカタン
ユカタン

(巡回のルートは……毎日五回はここを経由している、ならもうそろそろこっちに来る頃かな。)

ユカタン
ユカタン

(いや、無理やり鎖を壊しちゃダメだ、これをこじ開けられたら……)

ユカタン
ユカタン

(……まだチャンスはあるはずだ。)

???
若い看守

……エンシオディス様……今度こそ……

ユカタン
ユカタン

(――来た!)

???
若い看守

御三家……衝突は免れないだろうな……でも……

???
若い看守

……ブラウンテイル家の……焼き……スキウース夫人……

ユカタン
ユカタン

(ルース……!?)

ユカタン
ユカタン

(ルース、ルースがなんだ……?まさかなにかあったのか!?)

ユカタン
ユカタン

(クソッ、遠すぎる、よく聞こえない。)

ユカタン
ユカタン

(……いや、きっと大丈夫だ。とにかくなんとかしてここを脱出しないと、スキウースと大奥様のところはそのあとだ……)

???
シルバーアッシュ家の戦士

止まれ、何者だ!

???
シルバーアッシュ家の戦士

はやくそいつらを止め――ガハッ。

ユカタン
ユカタン

――!?

ユカタン
ユカタン

(入口から声がする、一体何が……)

(扉が壊れる)

スキウース
スキウース

ユカタン、大丈夫!?

ユカタン
ユカタン

ルースッ!?なんでこんなところに……

スキウース
スキウース

なんでこんなところにですって?バカ言わないでちょうだい、あなたがこんなところに閉じ込められているからでしょうが!

スキウース
スキウース

ほかの連中じゃ頼りにならないから、私がこうして助けにきたってわけ!

ユカタン
ユカタン

でもそれじゃあ危険すぎる!

ユカタン
ユカタン

ルース、人は何人連れてきたんだ?き、君が来なくたっていいんだ、ぼくのせいでこんな危険を冒してほしくはない……!

スキウース
スキウース

……

スキウース
スキウース

ユカタン。

スキウース
スキウース

これ以上そういうの言ったら、ぶん殴るわよ。

ユカタン
ユカタン

えっ。

スキウース
スキウース

よく聞きなさい!あなたが私のために危険を冒していいのなら、それは私だって同じよ。

スキウース
スキウース

分かったわね、忘れるんじゃないわよ!

スキウース
スキウース

……また私を一人にしたら許さないんだから。

ユカタン
ユカタン

ルース……

ユカタン
ユカタン

ぼくがそんなことしないのは君だって分かるだろ。

スキウース
スキウース

フンッ、当ったり前でしょ!

スキウース
スキウース

さあ、あなたが無事なら何よりだわ……今はね、まだちょっと野暮用があるの、ラタトスと約束したから、あなたを救出したらついでに他の任務をやっておきなさいって。

ユカタン
ユカタン

任務?

ブラウンテイル家の戦士
ブラウンテイル家の戦士

スキウース様、シルバーアッシュ家のヴァイスが部隊を引き連れて向かってきています。

スキウース
スキウース

ほら、噂をすれば。詳しいことはあとでゆっくり話してあげる、とにかく、私たちの任務はシルバーアッシュ家に面倒をかけるってことよ。

スキウース
スキウース

それと……人を探しておきたいの、もういいわ、これもまた後で話すから!

スキウース
スキウース

状況はあまりよろしくないわね、それにあのヴァイスも厄介な相手だわ……でもあなたなら手を貸してくれるわよね、ユカタン?

ユカタン
ユカタン

……

ユカタン
ユカタン

もちろん、君が必要とあらば、ずっと傍にいてあげるよ。

ヤーカ
ヤーカ

包囲しろ!

ヤーカ
ヤーカ

アークトスを山道に上がらせるな!

イェラグの戦士
ペルローチェ家の戦士

旦那様、このままでは包囲されてしまいます!

アークトス
アークトス

……フンッ、どうやら突進が通用するのもここまでのようだな。

ヤーカ
ヤーカ

アークトス様、どうか投降されよ。

アークトス
アークトス

ヤーカ家の小僧、エンシオディスがお前になにを吹き込んでそんな意固地になったかは知らん。

アークトス
アークトス

お前たちヤーカ家は、我らペルローチェ家領内でもそれなりの名声はあった。

アークトス
アークトス

それがまさかエンシオディスに手を貸してイェラグ簒奪に加担したとはな!

(戦闘音)

ヤーカ
ヤーカ

……

アークトス
アークトス

投降だと?

アークトス
アークトス

それは無理な話だ。

ヤーカ
ヤーカ

アークトス様を捕らえろ……なるべく殺さないようにな。

“イェティ”
“イェティ”

……

アークトス
アークトス

来るがいい、シルバーアッシュ家の雑兵ども、私を一戦交えたいのはどいつだ!?

“イェティ”
“イェティ”

……!?

(イェティがオーロラの攻撃を受け倒れる)

ヤーカ
ヤーカ

……オーロラ!?

ヤーカ
ヤーカ

まさか――

ドクター
ドクター

・どうやら間に合ったようだな。
・やあ。
・(フードを深く被る)

ヤーカ
ヤーカ

ドクター――!?

ヤーカ
ヤーカ

デーゲンブレヒャーを向かわせたはずでは……

アークトス
アークトス

ドクター、ようやく来たか!

ドクター
ドクター

・突然の雪で、少々手間取ってしまった。
・シルバーアッシュ家の目を避けるために、少し時間を無駄にしてしまった。

アークトス
アークトス

はは、お前のような異郷人からすればイェラグの雪は確かに目障りだろうよ。

アークトス
アークトス

フッ、援軍が到着したのなら、もはや我らを止められるものはいなくなった!

エンシオディス
エンシオディス

アークトス、今喜ぶのはまだ早すぎるのではないか?

アークトス
アークトス

エンシオディス!

エンシオディス
エンシオディス

ドクター、久しいな。

ドクター
ドクター

・確かに“久しい”な。
・本当に“久しい”か?
・ようやく会ってくれたな。

エンシオディス
エンシオディス

お前とはまだたくさん話したいところではあるが、生憎今はまだその時ではない。

アークトス
アークトス

エンシオディス、待っているがいい、今すぐ貴様の包囲網を突破し、巫女を救出したあと、イェラグ全土に証明してやる、貴様こそが裏切者だとな!

エンシオディス
エンシオディス

期待しておこう。

アークトス
アークトス

戦士たちよ、我らペルローチェ家が古より背負ってきた責務はなんだ?

「イェラグを外敵から守り、この地の安寧を守護することなり!」

アークトス
アークトス

なれば今日、エンシオディスは巫女を己の道具に利用しようと企んでいる。

アークトス
アークトス

それを我らペルローチェ家は承知してやれるだろうか!

「否!否!!断じて否ァ!!!」

アークトス
アークトス

援軍はすでに来た、私と共に霊山へ赴き、エンシオディスを打倒し、巫女を救出せしめん!

「エンシオディスを打倒し、巫女を救出せしめんッ!」
「エンシオディスを打倒し、巫女を救出せしめんッ!!」
「エンシオディスを打倒し、巫女を救出せしめんーッ!!!」

“イェティ”
“イェティ”

……

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士

巫女様、何をなさるおつもりですか!?

エンヤ
エンヤ

山を下ります。

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士

しかしエンシオディス様からは――

エンヤ
エンヤ

私のやることに、いつからエンシオディスの同意を得なければならなくなったのですか?

“チリン”“チリン”“チリン”――
空に木霊する鈴の音が寺院内に響き渡る。
次の瞬間、エンシアを除いて、その場にいた全員が地面に倒れ込んでいた。

エンヤ
エンヤ

お姉ちゃん……すごい。

エンヤ
エンヤ

ヤール、出てきなさいヤール。

ヤール
ヤール

巫女様、私がこの場にいるのを知っていたとは驚いたわ。

エンヤ
エンヤ

あなたは利口な人ですから、どうせまたどこかに隠れていたんでしょう。

エンヤ
エンヤ

少しの間山を下りますので、ここは代わりに片付けといてください。

ヤール
ヤール

あら、こんな面倒なことを私に預けるの?

エンヤ
エンヤ

これからもっと面倒なことが私を待っていますから。

ヤール
ヤール

そう言われてしまったら仕方がないわね。

ヤール
ヤール

……

ヤール
ヤール

巫女の選抜が行われる度に、私は侍女に扮し、あの試練を受ける乙女たちを陰ながら観察してきた。

ヤール
ヤール

あなたはあの年で六人目になるわね。

ヤール
ヤール

本当ならあなたにはなんの期待も抱いちゃいなかった、だって最近の巫女ってばますますつまらなくなっていくんですもの。

ヤール
ヤール

彼女たちはもしかしたら強靭な身体を持っていたかもしれないけど、意志の強さは不十分だったわ、だからみんな結局は長老たちの傀儡になって操られることになった。

ヤール
ヤール

私も時々思うの、もしかしたらイェラグがあまりにも封鎖的だから、彼女たちを、この国の人々を、その者たちの歩みを停滞させているんじゃないかって。

ヤール
ヤール

けどあなたは違ったわ。

ヤール
ヤール

あなたはとっても面白い子ね、エンヤ。

ヤール
ヤール

だってあなたは巫女になるためではなく、憤りと失望のせいでここへやってきたんだもの。

ヤール
ヤール

あなたが吹雪を被りながら霊山の山道を進んでいた時、力を使い果たしてもなお諦めようとしなかった時、あなたの脳裏ではこんなことを思っていたわね……

ヤール
ヤール

巫女に、イェラガンドの代弁者にはならい、イェラグ人のために奉仕するつもりもないって。

ヤール
ヤール

自分の兄に対する失望、ほか両家に対する嫌悪、巫女になってあいつらをギャフンと言わせようとしてる怒りを、その時あなたは思っていたわね。

ヤール
ヤール

それに驚いたのが、あなたのイェラグに対する考えだったわ。

ヤール
ヤール

もちろん、実際はあなたたち兄妹に驚かされたと言ったほうが正しいけどね。

ヤール
ヤール

あなたの兄は早い時期からすでに答えを出してくれた。

ヤール
ヤール

けどあなたは、ずっと自分だけの答えを探し求めてきた。

ヤール
ヤール

これまでの間、あなたは巫女が曼珠院で受ける冷遇に耐え忍び、自ら押し進んで民を助けする方法を探ってきた、それらは全部あなたの糧になったわ。

ヤール
ヤール

そして今、その糧はあなたの力に転じた、あなたは今回の動乱で己を見失わず、自分自身の選択に打って出た。

ヤール
ヤール

おめでとう、私の子よ、私の代弁者、私の友、私の姉妹よ。

ヤール
ヤール

あなたに道を指し示してやれなかったことを許してちょうだい。私はかつてこの地に自分の烙印を誤って押してしまったの、今に至るまでずっとそれを後悔しているわ。

ヤール
ヤール

けどせめて今だけは、あなたの始まりの道のために幾分か彩を添えてあげましょう。

静寂な道の中、ヤールは微笑みを帯びながら、二回ほど軽く手を叩いた。
“パン”“パン”と。
そして、すべてが変った。

(打撃音)

グロ
グロ

痛くも痒くもないぞ!

(打撃音)

ヴァレス
ヴァレス

くぅッ……

グロ
グロ

ヴァレス、確かにアークトス様はお前に申し訳ないことをしたかもしれない――

グロ
グロ

だがエンシオディスとてロクなヤツではないじゃないか!

ヴァレス
ヴァレス

言ったはずです――

(戦闘音)

ヴァレス
ヴァレス

イェラグは変化を迎える必要があると。

(戦闘音)

ヴァレス
ヴァレス

これもあなたのような秀でた戦士を再び無駄に犠牲させないためでもあるんです!

グロ
グロ

俺を本気にさせないでくれ、ヴァレス。

(戦闘音)

ヴァレス
ヴァレス

それはこっちのセリフです、グロ。

両者共に一歩退き、態勢を整える。
二人共わかっていた、今日、おそらくどちらか一方がここで倒れてもらわなければならないと。

グロ
グロ

……なんだあれは?

ヴァレス
ヴァレス

雲が……散った?

(戦闘音)

ユカタン
ユカタン

……

ヴァイス
ヴァイス

チッ、しぶといですね、あなたのことを舐めていましたよ。

ヴァイス
ヴァイス

しかし、今ここでぼくを倒したところでなんの意味もありませんよ。

ヴァイス
ヴァイス

あなた方では旦那様を止めることはできません。

ユカタン
ユカタン

……ぼくは気にしないさ。

ユカタン
ユカタン

今までずっと、大奥様……ラタトス姉さんはイェラグに自分の思いを抱いていた。

ユカタン
ユカタン

みんなを前へ進ませたい、みんなにいい暮らしを過ごしてもらいたいと、ずっとそう思っていた。

ユカタン
ユカタン

けど、彼女にそんな力はなかった。

ユカタン
ユカタン

だから、彼女は君たちが口にするような邪知深いラタトスになったんだ。

ユカタン
ユカタン

君たちから見たら、姉さんはもしかするとただの邪魔者かもしれない。

ユカタン
ユカタン

けどぼくの目には、永遠にぼくの最愛な姉として映ってるんだ!

スキウース
スキウース

ユカタン……

ヴァイス
ヴァイス

……

ヴァイス
ヴァイス

ぼくはあなた方に対して個人的な恩も恨みもありません、ですのでそちらが諦めてくれる限り、こちらもあなた方に危害を加えるつもりはありません。

ユカタン
ユカタン

ぼくは、ぼくとルースをエンシオディスと大奥様が交渉する際の材料にするつもりはない。

ユカタン
ユカタン

シルバーアッシュ家のヴァイス、そこをどけ、さもなければ、殺す。

ヴァイス
ヴァイス

……それはこっちのセリフです、ブラウンテイル家のユカタンさん。

ヴァイス
ヴァイス

あなたには、必ずここに残って頂きます。

スキウース
スキウース

ユカタン、頑張って!

スキウース
スキウース

ん……?

スキウース
スキウース

霊山のところ、雲が急に散った!?

Sharpは振り向き、デーゲンブレヒャーがゆっくりと腰に戻す鐧を見ていた。
彼らの傍には、まるで天災が短時間の間に大地を横切ったかのように、折れた木々、砕けた石や岩が所々に散見していた。

彼は自分の手からナイフが落ちたことに気が付いていない、なぜなら彼の右手はすでに感覚を失っていたからだ。
彼は負けたのだ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

三か月以内は、あまり右手を過度に使用しないほうがいい。

Sharp
Sharp

忠告どうも、どうやらしばらくの間は労災を申請して休暇を取るハメになったな。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

あまりしょげていないようだが。

Sharp
Sharp

この戦いで勝ち負けがあったところで何も変えられないからな。

Sharp
Sharp

あんたをここまで足止めできたのなら、俺の任務も完了ってことだ、残りはほかのヤツらがやってくれる。

Sharp
Sharp

仕事は終わった、退勤させてもらうぜ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

お前にとって仕事は、そんなに重要なものなのか?

Sharp
Sharp

俺にとって重要なのは、プロとしての精神を維持することだ。

Sharp
Sharp

いい雇用主を見つけるのは簡単じゃない、だからせめてこの仕事は大切にしたんだ。

Sharp
Sharp

あんたはどうなんだ、最初から俺が足止めするってのを分かってたんだろ、あんたもあんまりしょげてないようじゃないか。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

……

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

お前が私を止めたところで何もできやしない、そこが少々気になってな。

Sharp
Sharp

どうやら、エンシオディスのボディーガードは噂みたいにそいつのために敵を一掃するような人じゃないみたいだ。

Sharp
Sharp

みんなエンシオディスは黒騎士を買ったという事実しか知らない、それがまさか、黒騎士もエンシオディスを認めてやっていたとはな。

Sharp
Sharp

あんたもエンシオディス同様に驕り高い人間じゃないか。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

……お前の名前を覚えておこう、Sharp。

Sharp
Sharp

俺の名前なら覚えなくて結構だが、ドクターの名前は是非とも覚えてもらいたいものだ。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

ん?

Sharp
Sharp

霊山だ、何かあったのか?

アークトス
アークトス

……

エンシオディス
エンシオディス

……

アークトス
アークトス

戦士たちよ、隊列を組め。

イェラグの戦士
ペルローチェ家の戦士たち

はっ!

エンシオディス
エンシオディス

全軍――

“イェティ”
“イェティ”

――!

イェラグの戦士
シルバーアッシュ家の戦士たち

……!

(鈴の音)

エンシオディス
エンシオディス

――!?

アークトス
アークトス

何が起きた?

(鈴の音)

時間はまるで、この時を境に止まったようだった。
山に木霊するのは巫女の歩く音のみ。
吹雪もいつの間にか晴れていた。

空を覆う暗雲はまるで彼女に道を開けるかのように、ゆっくりと両側へ散っていく。
暗雲から差し込んでくる日の光は巫女が行く道を照らし、その時ばかりは、まるで巫女は天から降りてきたかのような錯覚を周りに覚えさせていた。

あるいは、これは錯覚ではないのかもしれない。
奇跡だ……
奇跡だ。
奇跡が起こった!!!

その時、その場にいた戦士たちの心中には一つの思いしかなかった。
つまりそれは――巫女に最上の敬虔なる信仰を捧げることだった。

侍女
侍女

ヤールさん。

ヤール
ヤール

下がっていなさい、大長老の面倒は私が見ておくから。

侍女
侍女

わかりました。

大長老
大長老

……

ヤール
ヤール

そういえば、正殿はこれまで何度も修繕されてきたとは言え、この建物の年齢は、イェラガンドと比べても見劣りはしないわね。

ヤール
ヤール

大長老という肩書きも、そろそろ下ろしてもいい頃遺じゃないかしら。

大長老
大長老

……

ヤール
ヤール

曼珠院が存在したからこそイェラグは団結できて今日まで今の姿を保ってきた、その事実を否定する人はいないわ。

ヤール
ヤール

でも、過去で正しかったことが、現代でも正しいとは限らないのよ。

ヤール
ヤール

もしその時代に適応できなければ、いくら強さを持ち合わせても、いずれ置き去りにされる運命にある。

ヤール
ヤール

イェラグはここで止まってはならない、少なくとも、それを願わない人だっているでしょう。

ヤール
ヤール

いい夢を、大長老様。

ヤール
ヤール

本当に、お疲れ様でした。

ヴァレス
ヴァレス

……そんな。

グロ
グロ

……あれは一体?

グロ
グロ

まさかあれは、奇跡……

ヴァイス
ヴァイス

一体霊山のほうでなにが?

ヴァイス
ヴァイス

全員、撤収してください。

スキウース
スキウース

一体……何が起こったの?

ユカタン
ユカタン

あれは……もしかしたらイェラガンドが示された奇跡なのかもしれない。

ラタトス
ラタトス

……

ラタトス
ラタトス

イェラグは……この先どうなっちゃうのかしらね……

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

……眩しいな。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

これもあのドクターの計画のうちなのか?

Sharp
Sharp

さあな、俺にもわからん。

Sharp
Sharp

正直に言って、もしこれもドクターの計画だったとして、こういう可能性を予測していたとしたら……

Sharp
Sharp

うちのオペレーターたちが普段からドクターに出来ないことはないと謳っているにしても、今回ばかりはやることが派手すぎるな。

デーゲンブレヒャー
デーゲンブレヒャー

……

エンシア
エンシア

お姉ちゃん、怖いよ……

エンヤ
エンヤ

大丈夫よ、エンヤ。

エンヤ
エンヤ

お姉ちゃんが守ってあげるから。

エンヤ
エンヤ

お姉ちゃんが……イェラグを守ってあげるから。

その時、山道にいた兵士全員が武器を下ろした。
自分たちが今まで信仰してきた雪山の神がついに奇跡を示されてくれた、あのお方の御前では、どんな争いごとだろうと可笑しく映るからだ。

アークトス
アークトス

……

アークトス
アークトス

……ペルローチェ家当主、アークトス・ペルローチェ、かの代弁者、巫女様に、最上の祝福を。

しばらくの沈黙を経て、彼をゆっくりと巫女に一礼し、そして片膝をついて跪いた。
その場にいたペルローチェ家の戦士たちも、こぞって彼に従って次々と跪く。

ノーシス
ノーシス

……エンシオディス、後悔してるか?

エンシオディス
エンシオディス

何をだ?

ノーシス
ノーシス

私の最初の意見に耳を貸さず、なおかつ、あのドクターをイェラグに招いたことだ。

エンシオディス
エンシオディス

私たちが負けたとでも?

ノーシス
ノーシス

お前の観点かすれば負けだ、私はそう思うがな。

エンシオディス
エンシオディス

以前なら、そうかもな。

エンシオディス
エンシオディス

だが今は……そうとは限らない。

エンシオディスが歩みだす。
彼はゆっくりと人の群れを抜け、同じく巫女の前へとやってきては片膝をついて跪き、己の祝福を捧げた。
それからして、シルバーアッシュ家の戦士たちも、次々と跪いていく。
雪山事変は、こうして誰も予想だにしなかった形で、幕を下ろした。

この記事を書いた人
おーちゃん

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