
なんか市内が騒がしいな、会議がもうそろそろ始まるからなのか?

そうかもね、いろんな場所で爆発が起こってるし、みんな興奮してるんでしょ。
(オーロンとウキウキなラテラーノ市民がぶつかる)

いてッ、誰だよ!

……
(フェデリコが走り去る)

あれって……執行人と、万国トランスポーター!?

何やってんだあいつら、パルクールでも競ってんのか?

盛り上がってるわね?参加する?

行こうぜ!追いかけてみよう!
(オーロンがフェデリコが放った弾を弾く)

ここならいいだろ……

はぁ、まったく諦めが悪いヤツだな、フェデリコ。

そちらこそ。

調べたんだが、お前確か今はほかに任務を抱えていないんだろ……本当は非番で休暇中のはずだよな!?

まったく分からねぇヤツだ、こんなしつこく俺を追い掛け回してなにがしたんだ?なんかお前の恨みを買うことでもしたのかよ?

私の前の任務は、シラクーザにいるサンクタの遺品をラテラーノに回収することでした。

その遺品の中にはあるノートがありまして、とあるサンクタの女性とサルカズが接触してる場面が記載さていました。

そうかい、ならお前が調査するのも当然の話だな、だが俺になんの関係がある?俺ァ男だぜ?

各種手がかりを遡ったところ、その女性の住所がラテラーノ市のステファノ区セルヴァンティウス街7-265号であることを突き止めたんです。

……

んでお前がそこに行った時、その女性はすでに亡くなっていたと。

その通り。

……だからお前は彼女の外出記録を調べるしかなかった、そしたら疑わしい外出記録が出てきて、彼女は外出した際、いつも万国トランスポーターである俺と連絡を取っていたことが分かったと……

あははははは!面白れぇ、面白れぇじゃねぇか!

てっきりヴィクトリアでヘマをかいたんじゃないかって思ってたぜ、それかアンドーンとの連絡に痕跡を残してしまったんじゃないかって。それがまさか良かれと思ってフィリアにちょいと手を貸したあの時だったとはな……

これも運命ってヤツなんかね。

感心は済みましたか?

なぁ、フェデリコ、もし俺の予想が正しければ、今のお前は俺の情緒を感じ取れていないはずだよな?

はい、けど気にしてはおりません。

逮捕する際の相手の情緒がどうであれ、私には一切関係はありませんので。

それはお前がしょっ引く相手じゃなければ、気にするってことか?

……いいえ。

お前は俺と同じだな、形は違えど共感性を拒否している……俺からすれば、俺たちはもしかしたら友だちになれるかもしれねぇな。

実を言うとな、ラテラーノにはお前みたいな人も多少は必要なんだと思ってるんだ。

情緒に流されず、法に則り行動するような人が。

その観点は否定しませんよ。そちらの裁判を終えたら、監獄で話相手になってあげても構いません。

それがあなたの言い分なのね、オーロン?

……一番厄介なヤツが現れちまったか。なんで俺みたいな一日一善してるようなヤツに限ってこんな面倒なことに……

ご機嫌よう、ヴァイエリーフ枢機卿。

こんにちは、執行人フェデリコ。

反逆者オーロンの処置はこれから第七庁が取り仕切ることになったから、公証人役場はもうこのヤマから降りていいわよ、その際本件の報告は第七庁と第一庁までコピーを送ってちょうだい。

はいこれ、私の認証コードね。

正規のコードであることを確認しました。

それと、このまま休暇を続けるか、それとも臨時的にロストシープの逮捕に加わるかは、そちらの好きにしてちょうだい。
(フェデリコが立ち去る)

なぁヴァイエ、フェデリコが別れの挨拶を言ったところを見たことはあるか?

近寄らないで。

俺を助けにきたんじゃないのかよ?

俺をお縄につかせたければ、このままフェデリコに俺を捕まえさせればよかったんだろ?

まあ当然だが、フェデリコが俺に敵わない可能性もありえたが……それでもお前はあいつを追いやる必要性はなかった、そうなんだろ。

あなたにまだ有用価値があることを見出しただけよ、私が思ってたのよりもほんの少しだけね。

フェデリコの報告で、てっきりあなたはただのアンドーンに手を貸すだけの下っ端かと思ってたけど……そうでもないみたい、少なくとも無能ではなさそうね。

ありがたいお言葉。

ラテラーノにとってセシリアという存在は脅威そのもの、あなたはその脅威が抹消されてほしくないと思っていた……その脅威を実現したいからではなく、その脅威で交渉したいと思っていたがために。

誰も天が賜ってくれた金を使おうとしないからな、見ていて心が痛んじまうよ。

こんなこと言ってるが俺のラテラーノへの忠誠心は一級品だ、お前なら知ってるだろ。

一番教皇猊下の理想を支持してるのは俺なんだぜ。

けど猊下のやり方には賛同できない、でしょ?

例えば今回の会議、あなたは心底これが一体なんの役に立つのかと考えている。

……

お前はあんなモンが役に立つとでも思ってるのかよ?

ヴァイエリーフ、お前はヴィクトリアの現状をどこまで理解している?

お前に分かるはずもねぇさ。俺たちがどれだけ戦争に近づいているのかを。

猊下はそんな時期に、数十年仕込んでおいたモノを動かそうとしている、それでほとんど国を動かせたとしても、一部の人たちには……なんも響かねぇよ。

もっと平和な時期でなら、あるいはそれを元手に、ゆっくりと仕込むことはできかもしれねぇ。

だが現実はそうはいかなかった。もし猊下の理想を実現するのなら、俺たちにはこんなのほほんとしてる時間なんざねぇぞ。

俺はヴィクトリアでこれでもかと言うほどの汚ねぇ手段を見てきた、あれが正しいとは言わねぇ、だがその正しさのせいで目的を果たせないっていうのなら――

教えてくれ、ヴァイエリーフ、お前はそんな正しさのために目的を捨てるような崇高な人になりたいか?

オーロン、いつもより口数が多いわね。

なにを待ち続けているの?

さっきので考えが変わったんだ。

あら?

長い間外を歩き回ってきたおかげで、ますますサンクタが特別だとは思えなくなってきた。

俺たちはただお互いに感情を読み取ることができる、それだけのことだ。

だとしても今しがた、そんな俺でも感じとっちまったんだ……とても古いナニかが、果てしないナニかが、俺の心の奥から湧き上がってきているのを。

それに、俺たちは切り札を一枚手に入れた。

各国の使節がラテラーノに集った日に、ラテラーノに神の奇跡が降りた……

これが何を意味するのか、何を意味しているのか、俺たちはこれから色んな事を起こすことができる、違うか?

一点だけ、間違っているわ。あなたは万国サミットがこんな事件が連発してる時期に開かれるべきじゃないって考えているけど……逆に考えてみることをオススメするわ。

まあ、あなたもそれなりに考えているってことね。教皇猊下じゃ手が出せないこともあるかもしれない。だから私に言わせれば、両方の用意を済ませたほうが何かと融通は利く。

運がよかったわね、オーロン、私がまだあなたに価値を見出せていて。

出てきなさい、パディア。

まだ自分たちにオツムが残っていたことに感謝することね、自分たちのサルカズの仲間たちを市内の騒動に関与させなくて……

もし使節たちがラテラーノ市内で“万国サミットを破壊しに来たサルカズ”を目撃することになったら……この事件は収拾がつかなくなっていたかもしれないし。
(パディアが姿を現す)

……何が言いたいの、フィアメッタ。

アンドーンはもう大聖堂に向かっているんでしょ。

何を掴んだ!?

それを教える義理はないわ、パディア。

けどあいつをコテンパンにする前に、あなたを止めないといけないわ、これ以上馬鹿馬鹿しくてウザったい小細工をするのはやめてちょうだい。

もしかしたら本当にまだオツムが、万国サミットに手を出さない程度のほんの僅かなオツムがあなたたちに残ってるかもしれないけど……

それでもそこまでしてリスクを冒すことはオススメしないわ、自分たちが期待してるように事が進むことはないんだから。

へぇ……?今度はそっちがアタシを“説得”しにきたってわけ?

ほんの少しだけ忠告しにきただけよ、聞きたくないのなら、別に構わないけど……

……

フィアメッタ、そう言うアンタはどう思ってるのよ。

どう思ってるってなに?私は自分の仕事を全うしてるだけ……自分のケリをつけてるだけよ、そんなに分かりにくい?

……八年前、なんで護衛隊から抜けたの?

……護衛隊は外部派遣ができない、外部で活動するには公証人役場の下につかないといけなかったからよ。それがなに?そんなことが気になってたの?

…………

パディア、あなたが何を気に掛けているのかは知らないし、もしかしたら私に何か根に持っているかもしれないけど、あなたが言ってるリーベリはどうこうとかいう大それた理屈なんか知ったこっちゃないわ。

そんなこと私にはどうでもいいの、パディア。

私が信頼していた隊員が仲間を裏切った、私の友だちはそのせいで傷を負い、追放された、もしかしたら裏切者どもに狙われていた可能性だってあった。

私はもう過ちを一回起こしてしまった……だからそれを二度も起こさせるわけにはいかない。

彼女たちは私が守る、考えれば簡単なことよ。

それがあなたの抱いてる幻想に合っていなかったとしても、謝ったりはしないから。

……プッ。

……調子に乗らないで、モスティマ。あんたに代わっても、同じことは考えるはずでしょ?

その通りだね。

……アンタの言う通り、あれはただの幻想。

でも幻想だからなに?幻想にしろ、理想にしろ、もし今まで信じてきたものを追いかけていなかったら、アタシは今日まで走り抜くことはできなかった。

他人にその理想を預けられるって考えてた自分は甘かったかもしれないけど、後悔はしていないわ、フィアメッタ。

ホント理解に苦しむわ、あなたのその思考回路。

だから今、アタシは退かない。たとえアタシがやってることが……アンタからしたら“馬鹿馬鹿しくてウザったい”おままごとに見えたとしてもよ。これはアタシが請け負った任務、ならその任務を全うするまで。

アタシと止めたければ、アタシを倒すことね。

……

なら手加減はしないわよ、パディア。