8:15 a.m. 天気/曇り
ロンデニウムより数km離れた付属区画

クロージャさん、ドローンから信号が届きました!

はやくはやく、アタシに見せて!

ほ~う……ほうほう、いいねいいね、新しく付け加えたカメラの稼働は正常、少なくとも100m以内はバッチリ見えるね。

続航能力もばっちし!うん、このまま飛ばし続けたら、壁を超えてコッソリ中の様子も見えちゃったりして……

待ってください、それだと絶対に敵の防衛軍にバレて撃ち落とされますって!

そんなリスクにみんなを巻き込むことなんかしないから、心配しないでよ。

まあ当然、それでもステルス塗料の開発は急がなきゃならないんだけど……

クロージャさん、ドローンから警報が!

誰かが警戒範囲に近づいてきた……自動攻撃モードに切り替え……

いや待った、あれは救助隊だ!警報を解除!

アーミヤちゃーん、ドクター、インドラとダグダたちが帰ってきたよー!

・クロージャのドローンも役に立ってきたもんだな。
・……
・こちらの偵察チームはまだ救助隊を目視できてないようだが。

ええ、クロージャさんってばここまでずっと、ドローンの研究開発に没頭していましたからね。

ドローンの偵察能力を引き上げようとしているんですよ、そうすれば、こちらが敵の接近に気付いていないという状況もなくなります。

ドクターもホッとしたんじゃないんですか?

なんせこれは私たちがロンデイをに接近した後の最初の任務ですからね、私……実は今でもちょっと心配してまして。

ドローンがもっと遠い距離を見てくれているんですよ。

ドクター、私たちがロンディニウムに入った後、もしかしたらクロージャさんと彼女のドローンは肝心な場面で役に立ってくれるかもしれません。

なぜなら……中の状況は、こちら側にとってほとんど未知数ですからね。目は多いほうに越したことはありません。

ドクター、クロージャさん今ちょっと緊張してるんですけど気付きましたか?

元から彼女はほとんど本艦を出るような任務に参加することはなかったんです、ましてや今回は、どれだけ外にいることになるのか誰にも分かりませんからね。

でも大丈夫ですよ、私はクロージャさんを信じていますし、一緒に行動してくれてるオペレーターの皆さんのことも信じています。

私たちについて来ているこの十数名のオペレーターだろうと、MiseryさんとLogosさんと一緒に先行してる両小隊だろうと……

全員がこの任務の目標を承知した上で、自らこの任務に参加してくれましたからね。

今のところ、第一フェーズと第二フェーズの行動はすでに成功しています、この先の第三フェーズはいよいよ――

――市内に入ります。

・どうやってロンデニウムに潜入するつもりなんだ?
・今回もまた下層の基礎構造区画から入るのか?
・また強行して登るっていうのなら、こっちも心の準備をしておかないと。

残念ながらチェルノボーグに登った方法ではロンディニウムに入ることはできません。

ドクター、ここからロンディニウムの都市城郭が見えていますよね、目の前にあるあの高い壁を見てください。

ロンディニウムの壁を突破できた国は今までに一つもありません、あのウルサスの高速戦艦でさえもそうです。

ロンディニウムがかつて、テラの経済の中心であったことは周知の事実ですが、この都市を自分の目で見た人でしかはっきりと理解することはないでしょう、経済の中心である以上に決して陥落することのない堅牢な城塞であることを。

ほとんどの移動都市において、排水機構は外部から突破される弱点となっています、しかしロンディニウムを建造した建築士たちはむしろその弱点を利用したんです。

地下の基礎構造区画に自動化した工業排水ラインを作ったと耳にしたことがあります――

ロンディニウムの全盛期、そのマシンたちが休むことなく稼働したおかげで、一時代に続くヴィクトリアの栄光が生み出された、とか。

さらには戦時中において、その排水ラインは途切れることなく壁に設けられた都市防衛システムに武器弾薬を供給した、とも。

そのような精密に設計された地下構造ですので、設計の際に用いられた青写真から密かに外部から侵入できる欠け口を見つけ出すことは不可能です。

なにより、ロンディニウムを基礎設計する際の青写真を入手することすら不可能ですからね……

・じゃあLogosとMiseryたちはどうやって侵入したんだ?
・……
・ケルシーなら入手できると思っていたんだがなぁ。

ドクター、エリートオペレーターの実力を侮っちゃいけませんよ。

ブレイズさんが機動戦に長けていて、ロスモンティスさんが殲滅戦術における要とすれば、アーツマスターであるLogosさんとMiseryさんは紛れもなく一番潜入任務に長けていると言えます。

どうしてそう言えるのかは、Miseryさんのアーツを見たら分かりますよ。

もしかしたらラヴァさんから空間アーツに関する話を聞いたことがあるかもしれませんが……それ一概にMiseryさんのアーツの神秘性を説明することはできても、全部ではありません。

ロドスに加入する前、彼はあのサルゴンの古い王朝に作られ地下墓に潜入したこともあったんですよ。

それにLogosさんにも……彼なりの特殊な手段があります、同じく訓練を経ていない術師が扱えるようなものじゃありません。

もし理論上どの都市にも人が出入りできる可能性があるとすれば、あの二人を止める壁は存在しないに等しいです。

それと後で私たちが市内に入った時ですけど、彼ら以外にもう一人の特殊オペレーターと合流することになっています。彼女の手段も私たちでは扱えるようなものじゃないでしょうね。

ドクター、そんなに心配する必要はありませんよ。

私たちはなにも策を講じずに行動してるわけではありません、あなたもご存じのはずです、このプランが成功すれば、私たちは安全になりますから。

それにたとえこのプランが失敗したとしても、そのまた次のプランを実行すれば済む話です。

ドクター……皮肉ってるだけなのは分かりますよ。

この一年余り、私たちは数百回もの情報分析会議を、数千回もの戦術模擬テストを経てきましたけど……ケルシー先生は今回の行動のためにご自分の精魂をすべて尽くしてきたんです。

先生だろうと、ロドスだろうと、はたまた超絶技巧を持つエリートオペレーターだろうと……死力を尽くしても成し遂げられないことは必ずあるものです。

・だから今回は案内役を探してきたんだね。
・初っ端からドンパチに発展することはないようだ、嬉しいよ。

はい……先に安全な方法を試してみたくて。

ドクター、出発する前の会議で、確か私たちは奇妙にも同じ観点で意見が一致していましたよね。

――いくらロドス本艦が傍にいようと、私たちがロンデニウムの都市防衛能力と対峙することは、卵で石を打つようなもの、そういった観点が。

本番の相手に備えるためにも、今は力を蓄えることが最善の選択だと言えます。

ドクター、ロンディニウムに日に日に近づくにつれ、皆さんどんどん緊張してきているのが分かります……

それでもこれから何が起きようと、戦闘の準備はもう用意できていますから。

・アーミヤはどうなんだい?
・……
・アーミヤが心配だ。

ドクター……

もしここに誰かが先導する必要があると言うのでしたら、それはクロージャさんでも、ましてや各々の信念のためについて来てくれたほかの人たちでもありませんよ、ドクターも分かってると思います。

その人は私……いいえ、向こうにいるシージさんなのかもしれませんね。

……インドラ。

おやヴィーナ、起きちゃったの?丸一日も寝ていないんだから、市内に戻る前に少しだけでも仮眠を取ったほうがいいよ。

寝つけないんだ。

そろそろインドラとダグダが戻ってくる頃合いじゃないか?

まったく、あの二人を羨むべきなのか、本来ならあんたを休ませるためにあえて任務に志願したのに、かえって心配をかけるハメになっちゃたとはね。

……私も彼女らと一緒に行くべきだった。ここに戻ってから目を閉じると、私たちが逃げていた頃のことを思い出す。

もし危険に遭うものなら、なおさら彼女たちの傍に……いや、彼女たちを守ってやらなければならん。

あんたねぇ……いつもいつもそうやって心配しすぎだっての。家に帰る前のウォーミングアップみたいなもんでしょ、危険なんかあるかってんだい。

ダグダならともかく、ハンナのあの焦り具合を見りゃ……フッ。

少しは息抜きしてやらないと、市内で敵を目に入れる度に、我慢が切れて真っ先に殴りかかることになると思うね。

……彼女ならもうかなり大人しくなったほうだ。

フンッ、本当に大人しくなったのなら、いつまで経ってもダグダとケンカなんかしてないよ。あんたがまったく休めていないのを知っててあれだ、全然止める気配がない。

ねえヴィーナ、あの二人がいないうちにさ、吾輩たちだけでも市内にコッソリ戻らない?

だってほら、所詮あの二人は脳みそケンカまみれじゃん、なら必然的に頭脳を持ってる吾輩が一番の頼りになるってのが筋でしょ。
(インドラが戻ってくる)

テメェまた俺の悪口を言ってただろ!?

ほら見なさいよヴィーナ、こいつ任務に行く前よりも余計元気になってない?

ふふっ。

ヴィーナ、お前笑ったのか?

今までずっと眉を顰めてたのに、ようやく笑ってくれたんだな……

ちょっとハンナ、そういう話はもうやめにしてくれない?吾輩がせっかく――

ありがとう、モーガン。

ただ、お前も休んだほうがいい。もし私の情緒のせいでお前に余計な心配させてしまったとしたら、私はボス失格だ。

分かったよ、休むことにするよ。

ダグダ。

ここに。

血が流れているぞ?

問題ない、それにこの血は敵のものだ。

ならいい。

その敵……ダブリン、だったな?どう感じた?

正規軍に近い実力を持っていた。それに、私とインドラで一緒に倒した小隊長の話になるが、ヤツの作戦手法からは明らかにヴィクトリア軍の訓練を受けた形跡が見て取れる。

つまり……

本当に裏切り者かもしれないな、ヤツらは。

ヤツらはサルカズと手を結んでいるのか?

ヤツらならサルカズを見下していた。だが、それでヤツらがサルカズ側に立っていないという説明にはならない。

……ロンディニウムをパイ分けするつもりなんだろう。いや、ロンディニウムだけじゃないのかもしれない。

外にいるあの公爵たちは……どれぐらいがダブリン、またはサルカズを支持しているのだろうな?

あの恥知らずな輩共め!外敵の旗がロンデニウムの空に掲げられようとも、己の利権のために足を引きずり合い、争い合うなどと。なんて私利私欲な連中か!

ヴィクトリアを今日の危機に晒したのは、紛れもなくあの公爵共とヤツらの軍の仕業だ!

だがそのような混乱も、我々の帰還により終わりの日を迎える。

何度も言ったように、私も我が剣もすでに用意はできている、塔の騎士として。

あとはあなた様が私たちをロンデニウムまで導き、あなた様のために戦ってくれる戦士たちを集わせば……

ダグダ!

言ったはずだ、帰るまでそういう話はなしだと。

だが今の我々はすでにロンディニウムの入口に立っているではないか。

だから言ったろ、モーガン、こいつには耐えられねぇって。この野郎最近ずっとこの調子だ、いつも訳分かんねぇことをペラペラと喋りやがる。

おいダグダ、お前また剣とか騎士とかを口にしていやがったぞ。お前が今どういう得物を持ってるのか、誰の傍に立ってるのかはっきりと目に焼き付きやがれや!

私は……

……

モーガン、インドラ、あまりダグダを責めてやるな。

私たちはみな……忘れがたい過去がある。だがそんな過去に追いやられてきたために、私たちは今日まで共に歩んできた。

ダグダ、お前たち含めて誰一人とて失望させたくはない、私はそう言ったはずだ。

我が王……

……すまない。お前を……最善の策を出してくれるお前を信じると……私は誓ったはずだ……だが今日はどうしても抑えられなかった、すまない。

自分を責める必要はない。

我々の目標は依然としてロドスと共に、ロンディニウムに入ることだ。

お前たちが先ほど救出してきた人だが、今アーミヤの前にいる人がそうなのか?

そうだ。ホワイトホールがアーミヤとドクターにその人を会わせようと。

至ってロンディニウムの一般市民しか見えないが。

……偽装してる可能性もある。

ダブリンの兵が言うには、彼は以前サルカズのために働いていたが、逃れてきたらしい。

そのサルカズ共は……相手したことがある。ヤツらがほかの塔の騎士たちを殺したんだ……

……ダグダ。

平気だ。ただ、ヤツらの実力を甘く見てはならない。そんなヤツの目から逃れられたということは、外見と違ってそれなりの素性があると言える。

仮にもし本当にただの一般人であれば、ダブリンが彼を誘拐することも、ロドスが彼を救出することもなかった、ということだな?

なら私たちもその人に会いに行ってみよう。

その人が本当に――我々をロンディニウムへ導いてくれるのかどうかを。

アーミヤさん、BSWのチャンネルから通信要請が入っています。

分かりました、繋げてください。
(無線音)

アーミヤさん!

ジェシカさん、信号受け取りましたか?申し訳ありません、駆けつけた時にはすでに、あのBSWの雇われパイロットさんは殺害されていました。

そんな……

ソープさん……分かりました、ほかの隊員にも伝えておきます。

それと、飛行装置も奪い返せませんでした。あの近距離飛行装置は……その、戦闘中に破壊されてしまいまして。

あー、その飛行装置は借りてきたものですので……たぶん……大丈夫かなと、こちらにはまだほかの乗用装置があるので、これからの行動に影響が及ぶことはないと思うので大丈夫ですよ。

それでそのトーマスさんは今ご一緒なんですか?

はい、外傷は見当たりません、ただかなり怯えてしまっているようなので、こちらの医療オペレーターが面倒を見ています。

彼がその、ジェシカさんが言っていた私たちのロンディニウムへの潜入を手助けしてくれるキーパーソンなんですか?

そうです。

トーマスさんは以前ロンディニウムのサディオン区でキャンディ工場を営んでたんです、彼の叔父はクルビアに長い間住んでいたので、一家ともにBSWとの長期的な協力パートナーでした。

ですので彼の叔父がトーマスさんをクルビアまで連れて帰るようこちらに依頼してきたんです。前回連絡した時にもすでにトーマスさんと話し合われました、どうにかしてロンデニウムから出たい、だから迎えに来てほしいって。

それがまさか……

まさかダブリンがあなた方の飛行装置を奪うことになるなんて、ですよね。そうだ、ダブリンのほうもトーマスさんに興味津々な様子でしたよ。

え、そうなんですか?

それは多分……トーマスさんはサディオン区――つまりアーミヤさんたちの今いる位置から一番近くにあるロンデニウムの検問所が置かれてる地形を熟知してるからだと思います。

彼なら必ず適切な入口を探してくれますからね、同じような目的を持ってるということは、ほかの勢力も彼を探してるんじゃないでしょうか?

そうですね、では彼を少し休ませた後に、本人の意志を聞いてみます、私たちに手を貸してくれるかどうかを。

……えっ、なんですって?大使館と交渉するはずだった隊員との連絡が途絶えた?わ、分かりました……すみません、アーミヤさん、ちょっとこちらにも色々と……

お構いなく、そちらを優先してください。後程トーマスさんと話してみますね。

が、頑張ってください……あっ、頑張るはちょっとおかしかったかな?やっぱり別の言い方のほうが……

アーミヤさん……それとドクターも、グッドラックです。
(ジェシカとの無線が切れる)

……

トーマスさん?

君が……例の人だな。

……例の人?

こんなにも早く来てくれるとは。ッ……不幸中の幸いと言ったところか。

こんなにも早く……?

あの、BSWから連絡が入って以降、こちらもすごくトーマスさんの安否を心配しておりました。

それでトーマスさん、どこか気分でも悪いのですか?

その、情緒が少々……乱れてるように感じまして。

あぁ……ふふっ、それは多分ちょっと興奮してるからだろうな。

感謝してるよ、そう言いたかったんだ。

君と君たちの部下は私を救ってくれた、ならきっといい人に違いない。

礼には及びませんよ、私たちはBSWとの協力パートナーですので、必然的にあなたも私たちの協力パートナーみたいなものですから。

ただ……トーマスさん、一つ、あなたの意見をお聞かせください。

任務の需要により、私たちはどうしてもロンディニウムに入らないといけません。ここに来るまでの間、すでに市内の状況はちらほらと耳にしてきています。

今のロンディニウムは、すでに未承認の人物または団体を例外なく入城させない対応を取っていますよね。

私たちみたいな異邦人からすれば、目の前にあるこの壁はあまりにも高すぎます。

すでにいくつか入る方法は試してみたのですが、仮に軍の封鎖を突破しようにも、私たちみたいな小さな企業には困難です。

トーマスさんもご覧の通り、今ここにいるメンバーには普通の事務方の人も多く混じっています、ですので今のロンディニウムに……安全な入口がないか知りたいんです。

君たちは……ロンデニウムに入りたいのか?中にいる人たちは必死こいて外に逃げ出してきたんだぞ……あのサルカズ共ときたら……思い出すだけでも恐ろしい!

お気持ちは理解できます。

ですので、私たちに手を貸してくれとは言いません。

私たちとの行動は危険を伴いますので。

ただもし案内して頂けるのでしたら、任務を済ませた後、こちらからトーマスさんをBSWの引き揚げ部隊まで護送致します。

もうあそこに戻りたくないと思っておられるでしょう、けど責めたりはしません。ここで私たちと別れても全然大丈夫です、私たちは別の道を探しますので。

そんなの当然……

・別れたら、またほかのダブリンと鉢合わせになるかもしれないぞ。
・逃げ道もあんまり安全じゃないってどっかで耳にしたな。

そんなの当然、君たちと一緒に行くに決まってるだろ!

・感謝するよ。
・これからよろしく頼む。

ドクター……

(私は彼を脅すつもりなんてなかったんですからね。もしイヤだと言ったら、ちゃんと護送するつもりでしたのに。)

・(分かっているさ。)
・(こっちだって事実を述べただけだ。)
(シージが近寄ってくる)

どうやらガイド役は見つかったようだな?

・ああ、これでアーミヤの計画も一歩前進だ。
・トーマスさんがついさっき一緒に行くと言ってくれた。

……

我が家に帰る時がいよいよ来たのだな。

クロージャさん、そろそろドローンを呼び戻しましょう。

ほほ~う……ようやく動くんだね?

市外に留まり続けても安全ではありませんから。

Miseryさんの情報によると、私たちはすでに可能な限りダブリンの部隊との接触を避けてきましたとのことです。

たださきほど接触したダブリンですが、今までの交戦経験から見るに、ダブリンの頭領は……相当根に持ってるようです。

こちらの後を追いかけてくる可能性は?

まだはっきりとは。このままトーマスさんを諦めてくれるかどうかもまだ分かりません。

たとえ無事市内に入ったとしても、市内にいるサルカズ軍とダブリン軍、この両勢力と同時に鉢合わせする可能性も否めません。

やれやれ、人体にもステルス塗料が使えたらよかったのにな~……

大丈夫ですよ、この日のために、私たちはできる限りのことをしてきたんですから。

ドクター、私の傍に。前と同じように、敵が誰であろうと、ドクターを傷つけさせたりはしませんから。

では……進みましょう。

アーミヤ特別行動隊の総員に告げます――

これより、ロンデニウム・シドナム区の検問所へ進みます!

長官、隈なく調べたところ、付近にあのロンデニウム人の形跡は見当たりませんでした。

……

つまり、あんたら一つの部隊でかかっても、あの数人程度すら阻止できず、あまつさえ重要なターゲットまでを連れていかれた、ってことね。

それは……

役立たず……この役立たず!
(マンドラゴラが岩を破壊する)

マンドラゴラ長官……

黙ってて、いま目に入るだけでも鬱陶しいのよ。私が自分の人間に手を出すとでも思った?それに、怒ってるのは私自身、あんたにじゃない。

こんなちんけなこともできないなんて……ロンディニウムに来てから、なに一つ上手くいっていない。

あの忌々しいサルカズ共め……ウザったい貴族もそう……

特にあの一番クソッたれなヴィクトリア兵……ホルンとかいう女……

全部アルモニのせいだわ、なにがなんでも私に無理矢理あいつをロンディニウムに連れて来いって言ったからよ、自分ならきっとあの兵士と引き換えに中道派の貴族の支持を得られるとかぬかしたこと言いやがって……

今やあいつに逃げられただけでなく、立て続けにこっちに妨害してきた、それを知ってたらあの時ヒロック郡で彼女をぶっ殺しておけばよかったわ!

長官、今回は、その……彼女じゃないようでして……

あいつじゃないの?

生き残った人が言うには、今回仕掛けてきたのは完全に初見の連中で、ヴィクトリア兵にも見えなかった、とか。

……つまり、そこら辺のぽっと出のモブみたいな連中に、ターゲットが奪われたと言いたいわけね。

こ、こちらの落ち度でした!今すぐ探しに向かいます……

待ちなさい!そんなことはもういい、今すぐ帰還するわよ。

帰還、ですか……

じゃなかったら何するのよ?ずっとこの道でも見張ってるつもり?今はまだサルカズ共と仲たがいする頃じゃないんだから。

それと、こっちはアルモニと約束したの、外の公爵連中にもメンツを残すようにってね。

これもすべて……ダブリンのため、リーダーのためなんだから。

分かりました、長官。

あんた口では分かりましたとか言ってるけど、頭ではちっとも理解してないじゃない。じゃなきゃあのロンディニウム人に逃げられることもなかったわ。あの人がどれだけ重要な情報を持ってるか分かってるの?

えっと……サルカズたちのために運転手を務めていることなら……

……運転手。

サルカズ共のために運転手をしてあげてるってことは、道が分かってるってことよ!

あの人なら私たちが探してる人物のところまで案内できた。今もなおサルカズ共の手に落ちた……私たちの大事な同胞たちのところまでね!

私が何のためにロンディニウムであの気持ち悪いサルカズ共と接触してきたと思ってるわけ?あいつらが私たちに向けてるあの目つき、思い返しただけでも岩で100回は貫いてやりたいぐらいよ!

これもすべては……せっかくここまで来たんだから、どうにかしてリーダーのために役に立たなきゃならないでしょうが!

本当に……申し訳ございませんでした、長官……

運転手、運転手ねぇ……チッ、逆にそれで気付かされたわ。

私たちからあの人を奪っていった連中、そいつらもその人に道案内してほしいんじゃないかしら?

それはつまり……

今すぐ市内に戻るわよ。

市街地への出入り口で待ってみましょ、もしかしたら知った顔が見れるかもしれないわ。

たとえば……あの死に損ないのヴィクトリア兵とかね。

……大人しくしてろ。

……

長官が戻って、こちらが有力な情報を掴んだら解放してやる。

正直こちらも武器を向けたくはないんだ。ずっとサルカズの奴隷をやってるお前らなんざはもはや兵士ですらない。

だが仕方がないんだよ。いくらお前らを絞ったところで有力な情報は出ない、どのみち長官はお前らを活かすつもりはないだろうな。

だからここで逃がすわけにはいかない。万が一お前らがサルカズの手に渡れば、すぐこちらの計画をサルカズ共にバラすだろ?

だからよ、そんなことをするぐらいなら……

お前らもダブリンに加わらないか?

……

まあいい、お前らがターラー人なら、とっくに長官に着替えさせられていたはずだ。

信じるかどうか勝手にしろ。ここでお前らをいたぶってるより、俺は外でサルカズ共を殺してやりたいね。

見てみろよ、今じゃロンディニウムは魔族共の手に渡ってしまった。だがそれで誰かのせいにするなんてことはできないよな?なあお前さんら、聞いた話によればロクに戦いもせずに、そのまま全員サルカズの捕虜になったらしいじゃないか。

かつてテラ全土を震え上がらせたヴィクトリア軍をこうも情けない体たらくにさせたのはどこのどいつだ?

それにお前らの長官はどうした?今ごろ将校の軍服を着たまま、サルカズたちと親交を深めているんじゃないのか?

……ッ!

長官たちの言ってた通りだ、今のヴィクトリアはもはや根本から腐りきってやがる。俺たちという火がなければ、この広大な土地はいずれ燃えもしないただの腐った泥になっちまう。

喜びなよ、兵士さんよ、なんせお前の最期は同胞だった者たちの手によって決まる。

お前はあの魔族の薄汚い刃からヴィクトリア兵としての栄誉を守りきったんだからよ。

――ヴィクトリアの民を裏切ったくせに、よく口々にヴィクトリアの栄誉を語れたものね!?

……誰だ!?

私の兵士に傷をつけることは許さないわ。

人を傷つける資格なんてない、侵入者も、あなたたちダブリンにも。

貴様……貴様は……あの時逃げ出した……
(ダブリン兵が???に殴られる)

ぐはッ!!
(ダブリン兵が倒れる)

……

八つ目の拠点、制圧を完了した。

君は……私たちを助けにきたのか?

立ちなさい、兵士たち。

まずはここから離脱するわよ。

……兵士?

あなたは……中尉?どこの部隊の……?

まさかまだ生き残りが……

リタ・スカマンドロス、第七前線歩兵大隊、第二テンペスト特攻隊の隊長よ。

それか、ホルンって呼んでちょうだい。