
アーミヤさん、このままだとトーマスさんがまたダブリンの手に渡っちまいますよ!

……

いっそ助けにいったほうが……

面倒臭ぇ野郎だな!

俺がとっとと連れ戻してくる。

……ダメだ。

手ぇ放せよ?あの人は俺たちが救出してきた人だろうが?

状況が変わった。敵がいる前でシージの存在をバラすわけにはいかないだろ。

じゃああいつは放っておけって言うのかよ?そんなの俺たちグラスゴーギャングのやり方じゃねぇぜ!

二人共、ここでケンカはやめなさい。

ヴィーナ、どうする……?

……ドクターとアーミヤの指示に従う。

――

狙撃オペレーター、ターゲットを捕縛している敵を狙ってください!

あの術師がカギだ。

術師……

術師……そうだドクター、思い出しました。

Miseryさんからの情報とバグパイプさんの報告によれば、彼女がロンディニウムにいるダブリン部隊の頭領のはずです。

……つまりヒロック郡で起きた事件の首謀者の一人でもあります。

ロドスはOutcastさんの犠牲をすべて彼女一人になすりつけるつもりはありませんが、Miseryさんもバグパイプさんも、こちらのオペレーターたちの多くは彼女に猛烈な敵意を抱いているのも事実です。

マンドラゴラか。

バグパイプさんが言うには、とても厄介な相手とのことです。

今ここでダブリンと交戦し、トーマスさんを救助した上で、マンドラゴラという今後の行動に甚大な影響を及ぼす強敵を排除することならできます。

しかし……

サルカズ兵が寄ってきました!

……もう間に合いませんね。

各隊、引き続き身を潜めてください――

それからいつでも戦闘できるよう準備もしておいてください。

……こっちで何かあったのか?騒がしいぞ。

ッ……

……

ほほう、誰かと思えば、売国奴じゃないか。

その名で我らを呼ぶな。

我々は一切ヴィクトリアとは無関係だ、魔族め。

なら――テメェは誰の許しを経てその呼称で俺たちを呼んでいるんだ?

フッ……追い立てられた有象無象風情が、たかが混乱に乗じて他人の都市を奪っただけなのに、さも自分がロンディニウムの主人とでも勘違いしているのか?

フフ、俺たちがテメェら同様、ロンディニウムを気に掛けている、とでも思っているらしい。

そりゃここはキレイだし整備もされているもんな?死の匂いだってない。だが言わせておくが、こんな都市も廃墟になったほうがまだサマになるってもんだ。

サルカズがここにいるのはな、あくまで魔王がここにいるからに過ぎないんだよ。

……魔王?

・テレシスのことか?
・摂政王も堪らず自分に名を冠するようにしたのか?

……まだ関連する情報を入手していないのでなんとも言えませんね。

ただ、数々の情報はどれもある既存の事実を指し示しています、かつてテラの至るところに分布していたサルカズたちが今ロンディニウムへ集ってきているという事実を、私たちがよく知る一般の傭兵だけが引き寄せられているのではありません。

さらに古く……強大な力が今、この都市の中心に居座っています。

ドクター、感じるんです。

この辺りに来た後、私たちが一歩一歩進んでいくにつれ、私の心の中に流れ込んでくる……私の思考に纏わる付いてくる情緒が躍起になり、さらに激しさを増していくのを感じるんです。

・アーミヤ!
・平気なのか?

平気です、ドクター。

ただ……あの一瞬……私なんだか……

あのサルカズたちが“君主”を呼んだ時、私の中に流れ込んでいた情緒……その中のほんの一部が、弾け飛び、そっと私を掴んだように感じました。

ごめんなさい、どうやって言葉にすればいいか……

それについては少し話し合ったほうがいいな。

私も時間をかけてドクターと話し合いたいとは思っていますよ……けど今じゃありません。

もし本当に……サルカズの君主が今のロンディニウムを掌握していたとしても、私たちの使命に変わりはありません。

戦争を阻止する、そのために私たちはここに来たんですから。

彼らが今なにをしようとしているのか、何を企んでいるのかをはっきりと見定めましょう。

――テレシスが自分にどんな名を付けようが、関係はありません。

つまり、死体を包む打覆いみたいに臭くて長ったらしい俺たちの協力関係は終わりということでいいんだな、ダブリン?

ならさっさとそいつをこっちに渡せ。

なぜお前たちに渡さなきゃならないんだ?

俺たちがテメェら先祖代々伝わってきた土地を管理してやっているからだ。

貴様――!

やめなさい。

マンドラゴラ長官……!

あんたもよ。サルカズ、あんたもそこまでにして。

テメェのことは知っているぞ、フェリーン、そいつらの指揮官だな。

だがなんでテメェの指図に従わなきゃならねぇんだ?

私が聖王会の西方大聖堂に行ったことがあるからよ。

ハハハ、聞いたことあるぜ、お前殿下に会おうとしたが、追い出されちまったんだよな。

サルカズからすれば自分はナニかしらの価値があるとでも勘違いしてやがんのか?

……

長官、あのまま魔族に侮辱されていいのですか?

私はもう耐えられません、ロンディニウムに来てから、我々は毎日毎日この薄汚い劣等種族に……

あんたはもう黙ってて。

本来ならリーダーをお呼びすることだって……

黙っててって言ったでしょッ!

いいかしらサルカズ、あんたがどれだけ煽ったところで、私はここから離れるつもりはないわ。

ダブリンはサルカズの客人、あんたらの殿下、そしてその殿下の側近たちから直々に言われたことよ。

俺たちサルカズが礼儀を弁えない“客人”をどうもてなすのか、どうして知りたいようだな?

じゃあ私たちの中には少なくとも礼儀を弁えてる人もいるってことね。

そっちの王様と将軍とは約束してるの、ダブリンがロンディニウムの中央に足を踏み入れることはないって。

けどそれは、あんたらがここで私たちを足止めにする理由にはならないわよ、サルカズ。

それともあんたら魔族は最初から信義に背くことを是としたり、“約束を守る”って言葉も知らないのかしら?

フッ、威勢だけはいいフェリーンめ……テメェらとお友だちになれって命令さえなければ、とっくに今ここでぶった斬ってやってたぜ。

ケンカに夢中で本来の目的を忘れていたのなら、そのサルカズはとっくに戦場以外のバーで死んでいたさ。

俺たちがここに来たのは言うことを聞かない虫けら共を探しにきたためだ、コソコソと周りに隠れたクソ虫共が調子に乗って、そこら中で俺たちの妨害をしてくるもんでな――

どうやら、サルカズたちはトーマスさんを探していたようじゃありませんね。

まさかトランスポーターが言っていた、私たちの任務を手助けしてくれる仲間を探しているのでしょうか?

もしその人たちなら、確かにサルカズから目の敵にされてもおかしくはありませんね。

仮にここにいるのなら、私たちで助け出さないと……

……人の流れが止まった。

争いの騒ぎが聞こえるけど、サルカズたちが誰かと衝突を起こしたらしいわね。

中尉、例の制服を着た連中が見えました……ダブリンです!

……あいつだわ。

中尉が言ってた例のダブリンの術師ですか!?

なっ……なんであいつがここに……

何人もの仲間があいつに殺されました。あいつはどこからか湧いて出てきた石柱に人を串刺しにするんです、サルカズよりも惨い!

知ってるわ。

中尉も相手したことがあるんですか?なら……あなたはダブリンからこんなにも多くの仲間を助けてくださったのですから、きっとあいつを倒したことだって……

負けたわ。

……それでも、あなたはあいつの魔の手から生き延びた、それだけでも大したことですよ。

あいつがなんであの時、私をすぐに殺さなかったのかは分からないけど……少しだけ見当はつく。

ロンディニウム外にある駐屯地で、あいつらはとある伯爵のトランスポーターと数度に渡り秘密裏に顔を合わせたことがある。

多分だけど、あいつはわざとその情報を私にバラしたんだわ。

……それかあいつじゃないのかもしれないわね。私の祖父とその伯爵の父君がかつての親密な戦友だったって情報を、あいつが知るはずもないもの。

それとその伯爵……記憶が正しければ、彼は昔、とある公爵の従者だったはず。

中尉……

ごめんなさい、あなたたちの前で言うような話題じゃなかったわね。

ずっと長い間都市の……暗いところに隠れていたの、そこの下水道にいるカニたちと話し相手するのに、慣れちゃって。

あの頃は、他人が気を落とすような話をしても気にする必要がなかったから。

だから忘れないようにしていたの、繰り返し口に出すことで。

いやいや中尉、別に聞きたくないって意味じゃありませんよ!

むしろもっと教えてほしいです、はやく知りたいんですよ、一体誰がこの惨状のすべてを操って、私たちをこんな目に遭わせているのかを!

私の記憶にあるその公爵だけど、彼は今ロンディニウムにはいないわ。むしろ……彼は一度もこの空白の王位を気にしたことはないのかもしれないわね。

もし彼が裏でダブリンを支えてる支持者だとしたら、色々と辻褄が合う、けどそれは同時に、いま私たちの目の前にある危機がさらに難解なものになることを意味する……

よく聞いて。私がこれまでに何を話していようが、あれはただの憶測にすぎない。それでもまだ聞きたいというのであれば、一先ずは場所を変えてからにしましょ。

……その時にまだ、あなたたちが私と一緒に陰へ足を踏み入れてくれさえすればの話だけど。

今じゃダメなんですか?

今は――どうにかしてここから脱出するのが先決よ。

ダブリンはずっとサルカズからナニかを奪おうと、あるいは人を取り返そうとしている、だからサディオン区のあちこちに拠点を築いているのよ。

あなたたちみたいなサルカズに囚われた兵士以外にも、ヤツらはサルカズと関わったことにある平民たちをも連れていったことがあるわ。

マンドラゴラがどういう目的を持っているかは知らないけど……

ダブリンとサルカズが衝突を起こせば、チャンスよ。

どうやらすでに策があるようですね。

ロッベン、渡したハンドボウガンはちゃんと袖に仕込んでおいた?

もちろんです、中尉!

よし、ではあのダブリン兵を狙って、あのサルカズの隣にいるヤツよ。

どうやらダブリンも譲歩しない様子ですね。

サルカズだっていつまでも堪えられるわけではありません、このままでは一触即発です。

ドクター、こちらもそろそろプランに移りましょう。

おい、さっさとそいつをこっちに寄越せ、でなければ大人しくここで死ね――お互いスッキリさせようぜ、なあ?

……長官、もういっそのこと……

ダメよ。

なぜですか……

ダメったらダメ。

これでサルカズとの関係が決裂になってもですか?

向こうの言い分はあんたも聞いたでしょ。

私たち……いつからお友だちになったわけ?

そう来なくっちゃな、お前から言い始めたことなんだから恨むんじゃねぇぞ?

――このダブリンの弱腰どもを囲め!

ダブリンにとって、この人は必要不可欠よ。

ここでこいつを連れていけないのなら、こいつをここで始末するしかない。

うわあああああ!

黙ってて、うっさいのよ。

なんならこのサルカズ共も巻き添えにしてやろうかしら……

そろそろオレたちの出番か?

待って待って、ドローンがまだ調整してるから。

いやでも見ろよ、動かないとあの人もう殺されちまうぞ。

もうすぐだから……直線距離からして17m……16m……15m……

もうちょい近づけたほうがいい、でないと狙いづらいだろ?

いやダメだよ、これ以上近づけたらバレちゃうって!

信じろ、絶対大丈夫だって、失敗したらオレの頭を釘みたいにぶっ叩いてもいいからさ――もうちょいドローンを東にズラせ、それでちょうど日差しでドローンの羽が反射されて見えなくなるから……

ロック5 号、アタックシークエンス起動!

頃合いね。

ロッベン、やって!
(クロスボウの射る音)
(クロスボウの射る音とドローンの攻撃音)

ぐぐぐ――ぐはッ!
(サルカズの戦士が倒れる)

うぐッ……
(ダブリン兵が倒れる)

この野郎、不意打ちしやがったな!?

なに言ってるんだ?先に仕掛けてきたのは貴様らのほう――

反撃だ!撃ち返せ!

サルカズの血に染まった野郎は、それ以上の血をもって償わせてやる!

ここにいる連中は一人残らず殺せ!

言っておくけど、先に手を出したのはそっちだからね。

――やれ、この場にいるサルカズは皆殺しよ。

絶対に生きて返すな。

魔族共のボスに今日ここで起こったことを知られるわけにはいかないわ。

ぎゃあああああ――!

た、助けてェ!

アーミヤさん、サルカズとダブリンの交戦範囲内で多くの一般人が巻き込まれています!トーマスさんだけじゃない……みんなどこにも逃げ場がありません!

サルカズもダブリンも一般人が死んでいようが眼中にありませんよ!

……

ドクター、アーミヤ、すまないがこのまま見てるだけではいられん。

……私にはできない。

もうほかに選択肢はない。

分かりました。

全オペレーター、これより作戦目標を――変更します!

非戦闘員は引き続き身を潜めてください、戦闘員は安全を確保した上で、人員救助を!

……背後から矢が飛んできただと?

あの平民の恰好をしてる野郎……違反武器を所持していやがる!

何かがおかしい、いや、エレベーターのとこにも敵がわんさか隠れていやがったな!

ハッ……シッポを捕まえたぞ、このクソ虫共が。

やはりここにもレジスタンス共がいたか――

今すぐマンフレッド将軍に報告しろ!