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【明日方舟】10章 破砕日輪 10-17「堅牢なる城壁」行動後 翻訳

マンフレッド
マンフレッド

もはや残り数人といったところだな。

マンフレッド
マンフレッド

以前の戦いで私を止めたければ、ヴィクトリアは少なくとも蒸気騎士を二人向かわせる必要があった。

マンフレッド
マンフレッド

しかしお前たちときたら――

マンフレッド
マンフレッド

所詮はただの雑兵だ。

ホルン
ホルン

――陣形を維持!

ホルン
ホルン

まだ盾にエネルギーはある、私と動きを合わせて!

ホルン
ホルン

狙撃手、火力支援をそのまま維持、敵を牽制して!

ヴィクトリア士官
ロッベン

了解!

ホルン
ホルン

言ったはずよ――いくら強くても、彼とて人の身体をしたサルカズの感染者に過ぎない、アーツにも限りがある!

マンフレッド
マンフレッド

アーツを使わせて私の体力を消耗させる算段か?

マンフレッド
マンフレッド

しかし私が疲弊した際は、お前たちもすでに灰となっていることだろう。

(マンフレッドのアーツ音)

ヴィクトリア士官
ヴィクトリア兵

がはッ!

ホルン
ホルン

ブレイク!

ヴィクトリア兵
ヴィクトリア兵

ホルンさん、どうか私の剣を――

ホルン
ホルン

――ありがとう。

マンフレッド
マンフレッド

兵士たちは倒れてもなお、お前に希望の眼差しを向けるか。

マンフレッド
マンフレッド

その輝き、もうとっくロンディニウムから消え去ったと思っていたんだがな。

マンフレッド
マンフレッド

しかしだ、その微かな輝きもいつまで続くかな?

ヴィクトリア士官
ロッベン

ホルンさん、危ないッ!

(マンフレッドのアーツ音)

ホルン
ホルン

……ロッベン?

ヴィクトリア士官
ロッベン

ハァ……ゴフッ……死は恐ろしくありませんよ……ロンディニウムの地に……帰れるん、ですから……

ホルン
ホルン

……

ホルン
ホルン

サルカズぅぅぅぅぅッッ!!!

(複数の爆発音)

マンフレッド
マンフレッド

……一度に残った弾薬をすべて吐き出したか?

マンフレッド
マンフレッド

素晴らしい。私の歩みを止めたのはお前が初めてだ。

マンフレッド
マンフレッド

だが、ここでチェックメイトだ。

マンフレッド
マンフレッド

仲間たちが一人ひとりと倒れていく様を見て、お前も戦意を喪失してしまったのではないか、白狼?

ホルン
ホルン

……

リタ。
君がお父様に失望した気持ちは分かる。
ああ、我らには戦士の血が流れているものだからな。
しかしヴィクトリアが蒸気機関車を発明し、また数十年後にその蒸気の技術を捨て去るのと同じように――
今日のヴィクトリアは尊ばれる王冠を外し、もはや私や君の曾祖母のような戦士を必要としなくなったのだ、殺戮をもたらす戦士をな。
そしていつしか、白狼も追随したパーディシャの獅子と共に、ついには歴史の朧気な影となる。
君のお父様はそれを見て、一族が時代の波に取れ残されないように、己が爪を鈍へと削り取ったのだ。
だが君は違う。
君は変わりゆくヴィクトリアに生まれ、育った。
リタ・スカマンドロス、君はもうアスランのために戦へ赴く必要はない。
根を張るのだ、ヴィクトリアこそが君の故郷なのだから。

ホルン
ホルン

サルカズ……あなたたちが私たちの街を占領し続ける限り、私は戦い続ける。

ホルン
ホルン

私もヴィクトリア人も思いは同じ、あなたを倒す。

マンフレッド
マンフレッド

その無用の長物と化した盾でか?

ホルン
ホルン

盾が使えなくとも、私にはまだ剣がある。

マンフレッド
マンフレッド

剣……フッ、至極平凡な剣だな。

マンフレッド
マンフレッド

そのような剣で私と相対すると?

ホルン
ホルン

ハッ……私もこいつも、舐められたものね。

ホルン
ホルン

あなたの記憶に刻まれた蒸気騎士たち……

ホルン
ホルン

ヴィクトリアが彼らのために作られた鎧を脱ぎ捨てた後……

ホルン
ホルン

彼らとて――

ホルン
ホルン

私たちと同じ、ヴィクトリア人だッ!

(ホルンがマンフレッドに斬り掛かる)

フェスト
フェスト

俺たち……入り込んだのか?なんで壁がこんなブヨブヨに……

クロージャ
クロージャ

だよね、ついさっきまでアタシの脳みそが危うくロンディニウムの城壁で花開くのかと思ってたよ!

アーミヤ
アーミヤ

Miseryさんのアーツによるものですね、クロージャさんも安心してください、彼らには傷一つ付けさせたりしませんよ。

Misery
Misery

ああ……お前の脳みそはロドスの重要財産だ、ケルシーからそう言われてる。

クロージャ
クロージャ

いやアタシの腕も同価値ですけど!

クロージャ
クロージャ

いやでも、もうこんな体験しちゃったら君にヒッチハイクを頼む気もなくなったよ……ブレイズに抱えられたほうがまだ快適だもんね!

クロージャ
クロージャ

でしょ、ドクター?

ドクター
ドクター

・まだマシなほうだろ、その間君はずっと手を動かしていたのだから。
・ブレイズのほうも快適とは言えないが。

ドクター
ドクター

助かったMisery、しばらくは休んだほうがいい。

アーミヤ
アーミヤ

そうですよ、Miseryさん、私見えていましたからね……危うくマンフレッドに斬られるところだったじゃないですか。

Misery
Misery

ありゃ咄嗟の斬撃さ、殺傷力はそれほどでもない。

Misery
Misery

お前があいつを煽ってくれたおかげで、こっちもお前たちに接近できた。あいつが言った通り、同じ手は二度も通用しないからな。

アーミヤ
アーミヤ

わざと煽ったわけじゃないんですけどね……

アーミヤ
アーミヤ

確かに彼から怒りは感じてましたよ、私を問い質していた時に。あの怒りは私に向けられたものでした。

Misery
Misery

もしマンフレッドが全力を出していれば、あそこに残った兵士たちじゃ長くは持たないだろう。俺がはやく支援に……ゴホッゴホッ……

アーミヤ
アーミヤ

Miseryさん、あのヴィクトリア兵たちを助けに行きたい気持ちは分かりますが、今日みたいに連続して大規模な物質転換アーツを使用したせいで、体力の消耗が激しすぎます、休んだほうがいいです。

Misery
Misery

……安心してくれ、アーミヤ。

Misery
Misery

俺はそんなコロッと死ぬようなヤツじゃないさ。それにケルシーとも約束してるからな……

アーミヤ
アーミヤ

約束って……あなたたちエリートオペレーターは、もう十分すぎるほどケルシー先生と約束を交わしてるじゃないですか、それでもまだ足りないと?

アーミヤ
アーミヤ

はやく応急薬剤を打ってくださいね。ロンディニウムの戦いは始まったばかりなんですから、また人目のつかないところで、一人で勝手に吐きかけた血を飲む込むMiseryさんなんてもう見たくありません。

Misery
Misery

それよりアーミヤ、敵が接近してる。

ドクター
ドクター

アーミヤ、彼らを止めるんだ!

ドクター
ドクター

フェスト、ロープを六本ほど縛ってくれ。

ドクター
ドクター

クロージャ、爆弾を仕掛けに行くぞ。

アーミヤ
アーミヤ

分かりました、Miseryさんがせっかくロンディニウムの都市防衛システムの弱点を見つけてくれたんです、その努力を無駄にしてはいけません……私たちで必ずこの制御室を破壊しましょう。

マンフレッド
マンフレッド

素早いな――これがお前の本来の力か、白狼?

マンフレッド
マンフレッド

かような鋭い爪と牙を持ちながらも、ヴィクトリア貴族の作法儀礼に飼いならされるなど……お前は本当にそれでいいのか?

ホルン
ホルン

……そのセリフそっくりそのまま返してやるわ、あなたのその礼儀とやらも、文明によって包まれたものじゃないのかしら?

ホルン
ホルン

昔のあなたたちはそんなお淑やかな連中じゃなかったって聞いたけど?

(ホルンとマンフレッドの剣が混じり合う)

マンフレッド
マンフレッド

お前がいくら全力を出そうが、私を殺すことは叶わんさ。都市防衛システムが稼働し続ける限り――

マンフレッド
マンフレッド

いや待て、白狼、お前もただの時間稼ぎなのか!

マンフレッド
マンフレッド

貴様――またロドスの肩を持ったな。

マンフレッド
マンフレッド

貴様はヤツらの正体を分かっていないのか?ロドスを導いてるあのコータスは……

(マンフレッドがホルンを押し出す)

ホルン
ホルン

……彼らがあなたを止めてくれる、私が知ってるのはこれだけよ。

(ホルンがマンフレッドを押し返す)

マンフレッド
マンフレッド

白狼、仮に貴様らが作戦を成功させれば……この城壁が崩れ行く様を目にすることになるぞ。

マンフレッド
マンフレッド

本当に貴様はそれを望んでいるのか?永久に堕ちぬロンディニウムの神話もその時に終わりを迎えるぞ――

ホルン
ホルン

……終わりを迎える?

ホルン
ホルン

なら、あなたがここに立ってる時点で、その神話も……たかが見てくれだけの笑い話だったってことになるわね。

マンフレッド
マンフレッド

クソッ!もし外にいる大公爵共に気付かれてしまったら――

ホルン
ホルン

あら、ようやく焦った顔を見せてくれたわね?

ホルン
ホルン

じゃあ私の選択は正しかったってことかしら。

ホルン
ホルン

もしこの壁の存在意義が……壁内にいるヴィクトリア人たちの阿鼻叫喚を遮ることにあるんだとしたら、もうとっくに最初に建てられた時の意義はなくなってるわね。

ホルン
ホルン

だったらなおさら大公爵たちにも聞かせてやろうじゃないの!

ホルン
ホルン

よく耳を澄ましてみることね……私たちの同胞がいかにしてあなたたちの虐殺に泣き喚いているのかを!

(斬撃音)

ロンディニウム市民
ロンディニウム市民

あの……あとどれぐらいすれば出られるんですか?

(崩壊音)

ロンディニウム市民
ロンディニウム市民

ひぃぃ……こ、ここの通路も崩れるんじゃ……も、もう私たちはみんな、ここでおしまいなのよ……

ハイディ
ハイディ

足元は見ないようにしてください、振り向いてもダメですよ。

ハイディ
ハイディ

どうしても怖いのなら、目の前の道だけを見て進んでください。

ハイディ
ハイディ

信号はまだ灯っています、私たちの戦士たちが灯してくれた希望の灯りが。

ハイディ
ハイディ

その灯りが徐々に光を取り戻した時……私もまたロンディニウムの太陽を再びお目にかかれるはずです、ですので頑張りましょう。

(爆発音)

自救軍の戦士
自救軍の戦士

クソ、サルカズ側の火力が高すぎる――

自救軍の戦士
自救軍の戦士

ロックロック、このままじゃ列車に近づけられないぞ!

ロックロック
ロックロック

……

(爆発音)

自救軍の戦士
自救軍の戦士

砲撃もまったく止む気配がない……下の連中が大丈夫なのか?俺たちに残された時間もあとどのくらいある?

自救軍の戦士
自救軍の戦士

クソッ、指揮官からの連絡も途絶えちまってる……

ロックロック
ロックロック

アタシは……アタシの家族を信じる。

ロックロック
ロックロック

それでアタシはここまでやってこれたんだから。

(シージ達の走る足音)

インドラ
インドラ

クソが、まだしつこく追ってきてやがる!

モーガン
モーガン

ねえインドラ……あいつの歩く速度、見た?

モーガン
モーガン

わざと歩く速度を落としてるみたい、まるで……まるで吾輩たちにもっと逃げ惑ってほしいかのように……

インドラ
インドラ

なんなんだよその変態な趣味は……

???
???

ふむ……貴公らの呼吸と心拍数を聞くに、とうとう疲れてしまったのかな?

シージ
シージ

貴様がしでかしている虐殺とも言うべき行為……それがサルカズの栄誉というものなのか?

シージ
シージ

もはや戦いですらない。

???
???

……戦い?

???
???

なにやら誤解しているようだな。

???
???

“魔王”がこの場にいないとなれば、もはや私と相対する者もいないというわけだ。

???
???

貴公は獣どもと栄誉なんぞを語ったりするのか?狩るための刺激をもたらし、ついにはディナーの前菜として登場するだけの獣どもと。

シージ
シージ

我々はただの獲物……と言いたいのか?

シージ
シージ

個人の趣味趣向のために殺戮を行うなど、サルカズとて野蛮極まれりだ……

???
???

貴公らが持ち合わせているその文明人として態度で私を推し量るな。最上の侮辱として見なすぞ。

???
???

薄汚い瓦礫によって肉片に潰される前に、私に抗ってみるといいさ。

???
???

貴公らの恐怖、悔しさ、憤怒……貴公らの血と共に、それらもまとめて吸い取って差し上げよう……さあ、存分にその感情を私にぶつけるがいい!

インドラ
インドラ

ヴィーナ、はやくこっちに――

シージ
シージ

いい。

モーガン
モーガン

冗談言ってる場合じゃないよヴィーナ!

シージ
シージ

モーガン、お前は下がっていろ。

シージ
シージ

ッ……

クロウェシア
クロウェシア

一人でヤツに歯向かうつもり?

シージ
シージ

……そうだ。

クロウェシア
クロウェシア

敵わない相手よ。

シージ
シージ

知っている。

クロウェシア
クロウェシア

一瞬に引き裂かれ、自分の血肉がこの配管の地味なシミになってとしても、逃げないつもり?

シージ
シージ

お前たちが私よりもはやく逃げてくれれば……私も逃げるかもな。

クロウェシア
クロウェシア

それはなぜ?

シージ
シージ

なぜなら……

シージ
シージ

いや、なぜも何もない。私がそうしたいからだ。

シージ
シージ

私が率先して抱擁してやりたいのだ、頭上で崩れ行く都市を。

クロウェシア
クロウェシア

そう、だったら…

配管内にある信号灯がなにやら少しだけ光を増したようだ。
目が疲れているのか?なぜロンディニウムの地下に光が灯っている?いや……地上にいようと、私たちは暗雲の後ろに隠れてしまった星の輝きを見なくなって、どのくらい経ってしまったのだろうか?
シージは瞬く。
そして忽然と理解した、あれは星の光ではない。

あれはボタンだ。
本来なら泥がこびり付いていたが、それも今では揺れによって振るい落とされ、光を発している。そしてシージはそれがなんのボタンなのか知っていた。

三歳の頃、彼女は初めて宮殿の地下へと連れて行かれた。
彼女の師が彼女を背に負い、大きな掌で彼女にボタンを押させた。
そして、ロンディニウムの地下空間は己が筋骨を広げ、未来の王に熱く鼓動する血管を露にした。

それから二十数年後に――
彼女はもう一度、そのボタンを目にしたのであった。

クロージャ
クロージャ

電子回路が束になってる箇所全部に爆弾を仕掛けておいたよ!

フェスト
フェスト

ドクター、こっちも撤退の準備ができた!

サルカズの戦士
サルカズの戦士

ここだ、ここにいたぞ!はやくあいつらを止めるんだ――

(アーツ音)

アーミヤ
アーミヤ

くっ……

クロージャ
クロージャ

アーミヤちゃん!?しまった、どんどん敵が集まってきてる……もしかしてMiseryが間に合わなかった?マンフレッドがこっちに向かって来ているんじゃ……

アーミヤ
アーミヤ

私が彼らを足止めします、あなたたちははやく!

アーミヤ
アーミヤ

ドクター、その起爆装置を私に――

ドクター
ドクター

ダメだ。

アーミヤ
アーミヤ

私がここで敵を止めないと、ドクターたちは撤退できないんですよ!

アーミヤ
アーミヤ

無事撤退できたのを確認したら、私がこの制御室を起爆して――

ドクター
ドクター

ダメだ。

アーミヤ
アーミヤ

もうこれ以上は待てないんですよドクター!私たちだけじゃありません、自救軍たちも、ヴィクトリアの兵士たちも、それからハイディさんやシージさんたちも……

アーミヤ
アーミヤ

砲撃を受けているヴィクトリア人全員は、もう待ってはいられないんです!

(アーツ音)

ドクター
ドクター

アーミヤ、私の手を掴め。

ドクター
ドクター

いつ起爆スイッチを押すかだけ教えてくれ。

アーミヤ
アーミヤ

ドクター……!

(黒いアーツ音)

サルカズの戦士
サルカズの戦士

ゴホゴホッ……黒い線があちこちを覆って……周りが見えねえ!

アーミヤ
アーミヤ

今です!

(爆発音)

アーミヤ
アーミヤ

ドクター、どうして……私の前に立つような真似を……?

そうしたかったからさ。

アーミヤ
アーミヤ

でも私はもう……あの頃の弱い子供じゃないんですよ……

アーミヤ
アーミヤ

もうドクターの足は引っ張りません。アーツも爆炎も防げるぐらい成長したのに。

知ってるさ。
今のアーミヤはすごい、もしかすれば私よりもすごいのかもしれない。
だが私に選ぶ機会が与えられたのなら……
ドラコの炎、あるいはこの爆炎と対峙することになっても……
私はそうするさ。

アーミヤ
アーミヤ

ドクター……

フェスト
フェスト

ふぅ……捕まえたぜ二人とも!

フェスト
フェスト

ドクター、お前の腰にロープを六本縛ってくれって言ったのはこの時のためだったのか?

フェスト
フェスト

ちょいとばかし動きにくいかもしれねえけど……まあいいや、どうせ普段のお前もあんま動けるタイプじゃないし……

クロージャ
クロージャ

さあドローンたち、飛んだ飛んだ!

クロージャ
クロージャ

へへ、驚いちゃったかなドクター?君の要望にお応えしてついに――ドローンに滑空機能を付けておいたよ!

クロージャ
クロージャ

航続距離はそこまでじゃないけど、それでもせめてアタシ達を安全に着地させるぐらいのことならできるさ――

ドクター
ドクター

ではそろそろもっと大きな爆発を起こしてやろう。

(崩壊音)

マンフレッド
マンフレッド

バカなッ、制御室が――!

ホルン
ホルン

やった……のね……

(斬撃音)

ホルン
ホルン

ッ……

マンフレッド
マンフレッド

貴様……本当はとうに力尽きていたのではないのか?剣を振ることすらままならないそのザマを見れば……

マンフレッド
マンフレッド

なのに……力尽きてもなお立ち上がってくるとは。

マンフレッド
マンフレッド

貴様が受けてるその傷……ほかの者であれば、十回は死んでもおかしくない傷を貴様を負っているのにッ!

ホルン
ホルン

……今更気付いたの?遅いわね。

マンフレッド
マンフレッド

……

サルカズの戦士
サルカズの戦士

将軍、制御室の爆発で砲台にも影響が!砲台と繋がってる城壁の箇所がひどく損傷しています――

サルカズの戦士
サルカズの戦士

このままでは全員下へ真っ逆さまです!

マンフレッド
マンフレッド

……総員撤退だ!

サルカズの戦士
サルカズの戦士

しかしあの兵士がまだ……

マンフレッド
マンフレッド

……ヤツならすでに敗れている、倒すには一工夫必要ではあるがな。

マンフレッド
マンフレッド

だが今はもうヤツに構ってる暇はない。

ホルン
ホルン

フッ……はは……

マンフレッド
マンフレッド

ヴィクトリアの白狼、貴様は尊敬に値する相手だ。

マンフレッド
マンフレッド

もしこの城壁から生きて帰れたのなら――

マンフレッド
マンフレッド

その時は我が剣で貴様に授けよう……勇敢なる戦士の死をな。

(マンフレッドが立ち去る)

ホルン
ホルン

次、ですって……?

次……そんなの、私にあるのかしら?
ロンディニウムの城壁が崩れていく。
彼女もまた落ちていく。

ホルン
ホルン

あなたたち……やってやったわよ。

ホルン
ホルン

あなたたちが……去っていくまで……

ホルン
ホルン

私は……倒れ、な……

流血で彼女はほぼすべての知覚を失いかけた。
しかし彼女の身体はまるで剣と盾の一部になったが如く、鉄よりも硬く、そして打ち砕かれない限り、決して曲がるもない。
ヴィクトリアが打ち出された刃は、今もなおロンディニウムの城壁を守っている。
ヴィクトリアが産み出した戦士たちもまた、ロンディニウムの城壁を守り続けていく。
城壁の一角がロンディニウムの地に落ちていくと共に――
彼女もまた、生まれ育った地へと戻っていくだろう。

ホルン
ホルン

この壁……えらく高いわね?

ホルン
ホルン

なんで私……

ホルン
ホルン

……上に向かって落ちてるの?

???
???

ホルンさああああん!私の手に掴まってください!

ホルン
ホルン

……ロッベン?

ホルン
ホルン

あなた……死んだんじゃ……

ヴィクトリア士官
ロッベン

ええ、死んじゃいませんよ!運がよかったんです、落っこちましたけど、外壁の構造物に捕まった後、またMiseryさんに助けてもらったんです!

Misery
Misery

さあ、手を伸ばしてくれ兵士さん、お前の戦はまだ終わっちゃいないぞ。

ホルン
ホルン

……フッ、あなたたち、少しは私を休ませてくれたらどうなの?

ヴィクトリア士官
ロッベン

それはできません!

ヴィクトリア士官
ロッベン

ホルンさん、目を閉じないでください!あなたの兵士たちはまだここにいるんですから、だから倒れちゃダメです!

ホルン
ホルン

ロッベン、あなた……なんだか私の部下の一人に似てきたわね。

ホルン
ホルン

でもまあ……最初からじゃじゃ馬で聞く耳持たなかったんだし、言っても仕方ないか。

ホルンの視界が回復していく。
目に映ったロンディニウムの城壁は依然とそこにあった、最上部が微かに欠けてしまってはいたが、それでもその佇まいは堅牢無比だった。

(崩壊音)

モーガン
モーガン

……何の揺れ?

インドラ
インドラ

とうとう地下空間が砲撃で崩れちまったのか?

モーガン
モーガン

いや違う。

モーガン
モーガン

この揺れは足元からだよ――

モーガン
モーガン

ヴィーナ、あんた何かしたの?

シージ
シージ

……逃げ道を見つけた。

自救軍の戦士
自救軍の戦士

この通路……上に上がっている?

自救軍の戦士
自救軍の戦士

そんなバカな、なぜそんな仕掛けがあるんだ?ずっと地下に潜っていた俺たちでさえ見つかっていないなんて……

クロウェシア
クロウェシア

……一部の“ネイティブ”は、いつだってほかのネイティブよりも物知りなのよ。

シージ
シージ

……

インドラ
インドラ

あのバケモノ……

インドラ
インドラ

まだ俺たちを追いかけて来るのか?

シージ
シージ

……来る。

シージ
シージ

だが今日ではない。

???
???

ほう、新たな逃げ道を見つけたのか?

???
???

ふむ……いやはや、どうりで。

???
???

この匂いは……そのフェリーンものだな?

???
???

ふん……しょせん王族とは、権威を固めるため作られた偽りの存在に過ぎん、この国の文明同様、実に滑稽な存在だ。

???
???

貴公があの時の逃げ回っていた子獅子なのか?まあ、貴公の血の味もほかのフェリーンとさほど大差はないがな。

???
???

だがこの匂いは明らかに違うものだ……

???
???

ふむ、実に面白い。

???
???

果たしてテレシスはこのことを知っているのだろうか?

確かめさせはせんぞ、もうお前にその術はないのだからな。

???
???

ほう、これは……

???
???

貴公のことは憶えているぞ。確か……テレシスの傍にいたあの学徒だったかな。しかし残念かな、貴公の師がかかってきても止められる私ではない、ましてや貴公ひとりなど。

ヤツはもはや私の師を名乗れる資格はないさ。

???
???

おや?

???
???

この呪術の気配……貴公も来ていたのか、バンシィよ?今も城の中で私の従者たちと遊んでいたのかと思っていたぞ?

三流アーツを扱う者ども風情が、我の足を止められるわけもなかろう。

???
???

やれやれ……これは参ったな。

???
???

こんないつ崩れてもおかしくない場で王たちが集うものではないぞ。

彼奴はもはや我を眼中に収めておらぬのか?我がテレシスから学を授かったこともなければ、我の身に高貴なる血も流れておらぬがゆえに。
ホントこの鬱陶しいジジイには困っていたところだったわ。爆弾百個でこいつの歓迎パーティを開いてあげるつもりだけど、構わないわよね?

マンフレッド
マンフレッド

……状況を報告しろ。

サルカズの戦士
サルカズの戦士

ロドスの連中が制御室から飛び降りました、あのコータスがいたせいで、狙撃もままならず――

マンフレッド
マンフレッド

地下にいるレジスタンス共は?

サルカズの戦士
サルカズの戦士

それが、地下で爆発を観測しまして……大君様もまだお帰りになれておりません。

マンフレッド
マンフレッド

ヘドリーは?

サルカズの戦士
サルカズの戦士

ヤツなら重傷を負って、意識が昏迷してる状態にあります。

マンフレッド
マンフレッド

……

マンフレッド
マンフレッド

残った人員をかき集めて、直ちに都市防衛システムの検査にあたった後、損害を報告しろ。いつでもより多くの砲台を稼働するための備えをしておけ……今度ばかりは主砲の使用も辞さない。

マンフレッド
マンフレッド

その他の人員は列車駅を包囲しろ。生き残ったレジスタンスは必ずそこから脱出するつもりだ。

サルカズの戦士
サルカズの戦士

その……斥候から報告がございまして、レジスタンスとは違う別勢力が列車駅に急接近していると……

マンフレッド
マンフレッド

……

???
???

あまり自責することもありませんよマンフレッド、もうすでに十分よくやってくれていますから。

マンフレッド
マンフレッド

なぜ、あなたがこんなところへ――

自救軍の戦士
自救軍の戦士

ロックロック、城壁を見てみろ――

ロックロック
ロックロック

防衛砲台が……停止した?

ロックロック
ロックロック

下に連絡を入れて!

自救軍の戦士
自救軍の戦士

おい見ろ、みんなが上がってきたぞ!

自救軍の戦士
自救軍の戦士

……おいおい、サルカズもこっちに押し寄せてきやがったぞ!

サルカズの戦士
サルカズの戦士

ヤツらを止めるんだ!皆殺しにしても構わん!

ロックロック
ロックロック

諦めないで!このサルカズたちを撃退すれば、列車を動かせる!

サルカズの戦士
サルカズの戦士

逃がさんぞ!

(斬撃音)

ロックロック
ロックロック

うぐッ――

(爆発音)

サルカズの戦士
サルカズの戦士

なんだ?なぜ向こうにもレジスタンス共がいるのか?

ロックロック
ロックロック

えっ?

ロックロック
ロックロック

……援軍?

自救軍の戦士
自救軍の戦士

北側で何者かがサルカズの包囲を突破したらしい!

自救軍の戦士
自救軍の戦士

しかしあいつらは誰なんだ……誰が呼んできたんだ?

自救軍の戦士
自救軍の戦士

まさか俺たちが以前中央に増援を要請した時に送り出したトランスポーターが生きていたのか?

ヴィクトリアの傭兵
ヴィクトリアの傭兵

サディオン区の同志たちよ、よくやってくれた!

ヴィクトリアの傭兵
ヴィクトリアの傭兵

ここからは、専門家である我々に任せてくれ!

(爆発音)

自救軍の戦士
自救軍の戦士

あいつらおっぱじめやがった……なんか俺たちよりも戦い方がサマになってないか……

ロックロック
ロックロック

あれは……ロドスのオペレーター?

ダグダ
ダグダ

――

ダグダ
ダグダ

ヤツらを各個撃破しろ!

ダグダ
ダグダ

自救軍が地下から安全に撤退できる道を作るんだ!

ダグダ
ダグダ

狙撃手、あそこにいる通信兵を狙え――

ヴィクトリアの傭兵
ヴィクトリアの傭兵

了解だ、モンタギューさん!

ロックロック
ロックロック

……モンタギュー?

自救軍の戦士
自救軍の戦士

聞いたことがある名前だな、もしかして新聞とかに載ったことがある貴族とか?

ロックロック
ロックロック

そんなことより、今は集中して!

(ドローンがアーツを放つ)

ロックロック
ロックロック

向こうが誰であれ、私たちの心強い味方だ!

ロックロック
ロックロック

道が開いた!はやく、みんなを列車に乗せて!

ロンディニウム市民
ロンディニウム市民

うぅ……ハイディさん、私たちやっと地上に上がれたんですね……

ハイディ
ハイディ

ええ、だから言ったじゃないですか、戦士たちが必ず期待に応えてくれるって。

クロウェシア
クロウェシア

……あれは、彼女の仲間なのね。

ハイディ
ハイディ

では私たちのトランスポーターは無事彼女まで連絡が届いたのでしょうか?

クロウェシア
クロウェシア

正確に言うと、ロドスのトランスポーターね。

インドラ
インドラ

ダグダだ!おい見ろ、ダグダだぞ!

モーガン
モーガン

あいつ……

シージ
シージ

……ああ。

人混みの中にいるダグダも彼女たちと目に入った。
取り巻くサルカズを跳ね除け、一心不乱に通路の入口まで駆け寄り、煤や塵を被った仲間たちに手を伸ばした。

(ダグダがシージ達に駆け寄る)

ダグダ
ダグダ

もう……間に合わないんじゃないかと心配していたんだ。

シージ
シージ

いいや、よく間に合ってくれた。

シージ
シージ

お前の帰りに遅れなどないさ、みんなそう思ってる。

インドラ
インドラ

この野郎、テメェな……なにあっさり消えちまってんだよ、おかげで一発殴り損ねたぜ!

ダグダ
ダグダ

すまなかった……今なら殴ってくれても構わん。

モーガン
モーガン

ねえヴィーナ、あんたダグダが帰ってくるのを分かっていたんでしょ?

シージ
シージ

……ああ。

モーガン
モーガン

けどインドラにそのことはだんまりと、まあ分かるよ。もしダグダが帰ってこなかったら、今頃このバカは貴族の傭兵に助けられても受け入れられなかっただろうね。

インドラ
インドラ

俺に文句を言ってねえで、手を動かして敵を倒したらどうなんだ!

モーガン
モーガン

……手なら動かしてるでしょ!

モーガン
モーガン

それでヴィーナ、まだ話は終わっちゃいないよ……ダグダの件、せめて吾輩だけに教えてくれてもよかったでしょうが!

モーガン
モーガン

おかげで追い掛け回されてた時、ダグダはまた人目のつかない場所でサルカズと死なば諸共するんじゃなかって、心配でしょうがなかったんだからね!

シージ
シージ

すまなかったな、モーガン……

ダグダ
ダグダ

……もうあんなことはしない、誓おう。

シージ
シージ

ではシージ隊、集合だ。

シージ
シージ

ドクターがここに戻ってきてくれれば我々も脱出できる、もうしばらくの辛抱だ。

???
???

みなさーん、ただいま帰投しましたー!

クロウェシア
クロウェシア

アーミヤ!

クロウェシア
クロウェシア

えっ、なんで空から……

クロージャ
クロージャ

着地するよー!みんなどいてどいて――

フェスト
フェスト

お、おい列車にぶつかるぞ!ロープを引っ張れ、列車が壊れたらもうオレたちに逃げ道はねえ!

アーミヤ
アーミヤ

ドクターなら抱えました、着地してください!

(アーミヤ達が降りてくる)

クロージャ
クロージャ

着地せいこーっと!

フェスト
フェスト

おっとっと……夢じゃないよな?本当に戻れたんだよな?

フェスト
フェスト

ロックロック――

フェスト
フェスト

指揮官、ロックロックは無事か?みんなも上に出てこられたか?

クロウェシア
クロウェシア

想定よりも大勢が生き残ったわよ。

クロウェシア
クロウェシア

これもあなたのおかげね、フェスト、それとあなたが連れて来てくれたロドスの皆さんも。

フェスト
フェスト

はは、いやそんな……なあビル、見てくれたかい?

フェスト
フェスト

オレ……

ロックロック
ロックロック

気絶してないで叩き起こして!戦いはまだ終わってないんだから!

ロックロック
ロックロック

動ける者は全員ボイラー室まで手伝いに来て!

シージ
シージ

……まだサルカズ兵が追ってきてるな。

アーミヤ
アーミヤ

もう彼らに為せることはありませんよ。

アーミヤ
アーミヤ

私たちがここで彼らを止めます。

シージ
シージ

ああ、そうだな。

ドクター
ドクター

私たちで一緒に、だな。

(列車の警笛音)

ロックロック
ロックロック

指揮官、列車が稼働したよ――

クロウェシア
クロウェシア

みんな準備はいい?

シージ
シージ

アーミヤ、乗るぞ!

アーミヤ
アーミヤ

はい!

クロウェシア
クロウェシア

出して!

アーミヤ
アーミヤ

……

アーミヤ?
アーミヤ、列車が動いたな。
アーミヤ……どうかしたのか?

アーミヤ
アーミヤ

……

アーミヤ
アーミヤ

…………

コータスの少女は答えなかった。微動だにせず、呼吸も止まったかのように。
彼女は驚愕していた、それをあなたは知る。彼女がこんなにも強烈な感情をオペレーターたちの前で見せるのは初めてだ。

列車が動き出したのと同時に、サルカズたちも追うのをやめた。
そしてみな同じくしてある方向に身を向ける。
そこへとあるサルカズが廃墟の中から姿を現した。
硝煙が彼女の足元で消えゆく、矢を射る音も彼女の周りから潜めていく。
ただ勢いを増す風だけが吹いていた。
灰燼が吹き荒れる、一部は彼女のスカートを、そして一部は彼女の白髪を汚した。しかし彼女は気にも留めず、ただじっと荒れ果てた城壁を見つめていた。
どうやら都市防衛砲台があった箇所らしい。そこにいつの間にか漆黒なトリが飛んできて、まだ温かさを残す砲身に止まった。

しかし加速する列車に驚かされたのか、トリは翼を羽ばたかせる。
それに呼応したかのように、白髪のサルカズも身を向ける。

列車内にいる人の姿など見えるはずもない、だが彼女の表情はその列車内に誰かを見定めていた。
彼女の顔はやはり優しく、しかしその目は悲しみで満ちていた。もしかすればその悲しみは彼女だけのものではなく、彼女を見つめる誰かからのものも含まれているのだろう。

アーミヤ、元気にしてた?

コータスの少女がようやく振り向いた。
だがあなたは焦らなかった、たとえこの子から返事が返ってこなくとも。
耳元でトリの鳴き声が聞こえてくる。あなたは窓の外を見れば、トリの群れがバタバタと羽ばたき、あなたたちに先んじて、嵐の中へ飛び立っていた。

列車があなたたちを瞬く間に駅から遠ざけていく。
城壁、戦場、あの白髪の人影さえ、今でははるか後方へと消えてしまった。
ゴロン。ゴロンゴロン。
これは脳に響く砲撃の残響か、それとも列車とレールがぶつかる音か、はたまた近くに見えるあの暗雲に轟く雷鳴なのだろうか?
ロンディニウムの中央は目前だ。
あなたたちもまた、その嵐の中へと突き進んでいくのであった。

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