アークナイツストーリー翻訳

【明日方舟】阿呆船 SN-ST-4「臨海の街」翻訳

私は湿った住処からこの乾燥した新天地へ上がった時、そこのすべてが私を驚かし、そして悲痛に見えた。
雲は言い伝えのような美しいものではなく、大地と空は苦痛に満ち、エーギルの都市すら滅ぼしかねない天災が跋扈していたのだ。
おまけに陸の人たちは今でも不治の病に喘いでいる。昔、科学院で漁った様々な文献から鉱石病と源石の存在は知っていたが、今目にして分かった、それがすでに陸の一部となり、深く根を張っていたのだと。
それでもこの者たちは強く生きようとしていた。独自の方法で科学と真理、そして生存の証を探求しに。
裏切者の烙印を焼かれても、私は陸に上がったことに後悔はない。シーボーンは今もなお群れを広げている、十年もすれば、エーギルは食われてしまう。そしていつか、私は私の遊歴を終え、イベリアへ戻る。
エーギル人のためにも、この文献は残すつもりだ。貴族なんぞは信用ならん、今日に島民と称されてるこのエーギル人たちも、いずれは数々の理由でイベリアの尊厳を失うことだろう。
黄金の船、文明の瞳、進化の理、命の石碑。海と陸は必ずや繋がり、波を阻んでくれる。
その先駆けになるつもりはないさ、私はただ運命より一歩先んじてだけなのだから。

――イベリアの著名な建築士にして、首席船舶設計者ブレオガン氏が残した手記の副本。難解なエーギル文字で書かれている。

ウルピアヌス
ウルピアヌス

これはエーギル人同士の事情だ、お前には関係ない。

大審問官
大審問官

貴様がイベリアの土を踏んでいる限り、ここの法に従う必要がある、そのための私たちだ。

ウルピアヌス
ウルピアヌス

フンッ……

大審問官
大審問官

貴様とあの三人の狩人とはどういった関係だ?

ウルピアヌス
ウルピアヌス

スカジはお前に傷をつけられた。おかしな話だ、となれば彼女から争い事を避けていたのだろう。

大審問官
大審問官

……

ウルピアヌス
ウルピアヌス

彼女の血は特別だ、俺たちの誰よりも特別だ。己の得物を拭う際は気を付けることだな。

大審問官
大審問官

質問をしてるのはこっちだ。

ウルピアヌス
ウルピアヌス

それを答えるかどうかを決めるのは俺だ。

大審問官
大審問官

狩人の自由行動ならカルメン殿が許可してくれている、サルヴィエントの戦いで立場を表明したエーギル人に限るがな。

(斬撃音)

ウルピアヌス
ウルピアヌス

……フッ、まぐれで彼女に触れられたわけでもなさそうだ。

大審問官
大審問官

彼女なら弱くはなかったさ。

ウルピアヌス
ウルピアヌス

……弱くはない?

(斬撃音)

ウルピアヌス
ウルピアヌス

身の程知らずといった評価だな。彼女はまだ陸に慣れていない、だから陸の者を傷つけまいと手加減してやっただけだ。

???
???

動くな、エーギル人。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

長官の調査に協力してちょうだい。アビサルハンターと裁判所は契約を結んでいるの、あなたの一挙手一投足がその協力関係を壊しかねないわ。

ウルピアヌス
ウルピアヌス

……協力だと?

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

どうか。

ウルピアヌス
ウルピアヌス

イベリアにはどれぐらいお前ほどの戦士がいるのだ、審問官?

大審問官
大審問官

貴様に教える筋合いはない。

ウルピアヌス
ウルピアヌス

三千人前後といったところか?

大審問官
大審問官

……

ウルピアヌス
ウルピアヌス

となれば、イベリアもまだまだだな。

(ウルピアヌスが立ち去る)

大審問官
大審問官

逃がさん!

海のバケモノ
恐魚

(鋭い摩擦音)

大審問官
大審問官

なに?どこから湧いてきた……

(斬撃音)

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

長官!ご無事ですか?

大審問官
大審問官

私は平気だ、しかしあのエーギル人……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

申し訳ありません、私の落ち度です!

大審問官
大審問官

ヤツなら隙を見て私の腕を斬り落とせたはずだが、逃げるとはな。

大審問官
大審問官

どうやら後を追う暇もないらしい。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

町の方向からです!こいつら、土の中に隠れていたなんて!

大審問官
大審問官

いいや。

大審問官
大審問官

もうここ土地全体が穢されている。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

そ、そんな……

大審問官
大審問官

あの灰色の土地を見てみろ、険悪な気配を漂わせている。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

ええ。

大審問官
大審問官

グラン・ファロは今にアビサル教会の侵略を受けたわけではない、もうとっくに陥落しているのだ。

大審問官
大審問官

迎撃するぞ。速やかにカルメン殿の安否を確認せねば。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

この蛍光を放つ溟痕、まるでヤツらの都市といった具合かな……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

実に不可思議だ、ヤツらはこの溟痕より産まれ、溟痕によって広まっていく。

海のバケモノ
恐魚

(不気味な蠢く音)

聖徒カルメン
聖徒カルメン

すべての命が独り立ちを望んでいるわけはない、どうりでこの薄汚いモノが町に潜めたわけか……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

……しかし、一体誰がこの者どもを陸へ打ち上げたのだろうか?

Alty
Alty

あーあ、本来ならこの海辺の旅でインスピレーションなりなんなり得られると思ってたんだけど、これで全部パーね。

Frost
Frost

(賛同するギターソロ)

Dan
Dan

海が大地を撫でてやがるぜ。アタシにゃ感じる、やべーぞこりゃ。

Aya
Aya

ケルシーから聞いた話だと、エーギル人は一度勝ったらしいね、あの狩人たちはその戦いの孤児なんだとか。でも今の状況、全然勝ててる雰囲気じゃないんだけど。

Aya
Aya

あっ、ケルシーで思い出したんだけど、モノはもう渡した?

Alty
Alty

ええ、きっちりと。

Aya
Aya

それまで結構遠回りしちゃったね。なんで直接あのグレイディーアって言うエーギル人に渡さないのかしら?そっちのほうが断然早いのに。

Frost
Frost

(疑いのギターソロ)

Alty
Alty

彼女はあの鍵で私たちを引き寄せようとしていたのよ。そんで私たちはまんまと引き寄せられたってわけ。

Aya
Aya

あるいは彼女、私たちに何かを探させたり、私たちの手を借りようと考えてた。でも考えが変わったと。

Alty
Alty

あら、考えが変わったの?いつも計算深い彼女が?

Aya
Aya

……そうじゃないの?彼女は多くの知識を持ってるけど、ほとんどは知らないほうがいい知識よ。そうじゃなきゃ彼女、何度死ねば足りるのかしら。

Aya
Aya

ちょっとDan、何してるの?

Dan
Dan

この礼拝堂、ライブハウスにはうってつけだな!

グレイディーア
グレイディーア

スカジ、恐魚は?

スカジ
スカジ

確認できる限りは倒した。

スペクター
スペクター

……姿なき波がここで広がっていく、まるで砂浜の潮汐のように。

スペクター
スペクター

悪い兆しですね。私たち、ここにいるべきではありませんわ。

グレイディーア
グレイディーア

どうやらゴミを処理しただけでは、目を覚ましてくれないようね、彼女。

スカジ
スカジ

これからどうするの?

グレイディーア
グレイディーア

ここを清潔にした後、イベリア人の手を借りてあの船を見つけ出す。

スカジ
スカジ

コイツらの身体、私たちの知らないナニかを宿していたわ。

グレイディーア
グレイディーア

それも恐魚の一部なんでしょう。

スカジ
スカジ

……前からずっと思ってたんだけど……

スカジ
スカジ

どうしてコイツらはこんなにはやく進化できるの?なんでこんなに元気なの?

スカジ
スカジ

だって私たちはもう……

グレイディーア
グレイディーア

それを帰って確かめるのよ。そのためにわたくしはケルシーと手を結んだんですから。

スカジ
スカジ

ケルシーは……

グレイディーア
グレイディーア

無事よ。

グレイディーア
グレイディーア

さあ、もう一仕事頑張りましょう、狩人たち、太陽が沈むまでに。海の声が聞こえていない恐魚など所詮はただの下等生物にすぎませんわ。

スカジ
スカジ

わかった。

スペクター
スペクター

あら……グレイディーア?来ていたのですね、ならあなたに従いましょう。

グレイディーア
グレイディーア

……サメ。

グレイディーア
グレイディーア

持ってるそれ、手に馴染むかしら?

スペクター
スペクター

これですか?よくこの武器を持ってること自体忘れてしまいまして……これとダンスしてるように思えるんです。

グレイディーア
グレイディーア

これはあなたの過去よ、過去がもうすぐ追いついてきているわ。

グレイディーア
グレイディーア

待っていますから。

海のバケモノ
恐魚

(震える声)

(斬撃音)

聖徒カルメン
聖徒カルメン

ふむ、進軍速度にしては悪くないか。ダリオ、君に任せた仕事は進んでいるかね?

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

ええ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

懲罰軍が我々の代わりにイベリアの眼へ向かう船を手配してくれました。海岸からも出ており、すでにこの町を包囲してくれています。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

あの入り込んだ者たちも、もはや逃げられるはずもないでしょう。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

あの賊共は恐るるに足らんさ、だがヤツらがもたらした脅威は驚かざるを得んな。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

我々の技術でなら、この穢れを洗い流すことも造作ではないかと。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

これは一時的な勝利にすぎんさ、ダリオ。それと“エーギルの技術”であって我々のではない。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

仮に次から次へと押し寄せる潮汐、それの水しぶき、そして砂粒のすべてが恐魚とその延長線だった場合、我々はどうやって国を守ればよいのかね?

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

それが起こる前に対処できます、我々であれば。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

そうとも、我々なら成し遂げられる。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

それとあの狩人たちについてですが、裁判所もすでに交戦の備えはできています。彼女らをこの辺鄙な海岸線で抹殺しましょう。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

ふむ、墓場にしては適した土地だ。彼女らが賢明で、ケルシーもまた約束を守ってくれることを願っているよ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

その子が君の弟子かね……噂は裁判所内で聞いているよ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

はっ、はい!審問官のアイリーニと申します、カルメン様!

聖徒カルメン
聖徒カルメン

ダリオが廃墟で君を見つけた時、傾斜した家屋にいながらも君は無事であってと聞いている。なにやら家の梁に分厚い巻物が挟み込んでいたとか。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

左様でございます!

聖徒カルメン
聖徒カルメン

若いの、君がここにいるということは、ダリオがすでに君には前線へ赴くに値する意志があると判断してくれたからなのかね?

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

はい!

聖徒カルメン
聖徒カルメン

まだまだ未熟ではあるが、貪欲でいるな。活気もあり、身体も健やかだ。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

しかしグラン・ファロの任務はサルヴィエントの比ではないぞ、ここはより悪の巣窟に近い。それでも覚悟はできているかね?

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

イベリアの潔白と美徳を守るため、私は剣と灯りを高く掲げております。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

私にとって、これは何もただのモットーの限りではありません。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

彼女ならすでに覚悟ではできております。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

ふむ……では君の判断を信じよう、しかし運命とは往々にして備えの暇を与えてくれないものだ。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

私はまだケルシー先生と処理しなければならないことがある。狩人たちをイベリアの眼へ向かわせる任務は、君に任せよう。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

イベリアの眼……カルメン様、具体的に何をすればよろしいのでしょうか?

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

……野営地を立て、道を修復するのだ、技師たちが無事大灯台へ行けるために。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

グラン・ファロの一番近い海岸線から出発すれば、およそ50海里で残った最後のイベリアの眼へ辿りつける。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

だが前提として、その灯台がまだ地図に記された場所にあればの話だ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

50海里……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

かつての海面は静かなものだった、大艦隊が海を渡ろうとしてもな。だが大いなる静謐の後、海はまるで煮えたぎった劇毒のように、触れたモノすべてを融かしていく。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

過酷な任務であることに間違いはないだろう。しかし最後の灯台を取り戻すことは、我々にとっても重大な意味を成す。頑張りたまえよ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

じ、尽力致します!

聖徒カルメン
聖徒カルメン

だがその前に、あのエーギル人の手を借りる必要がある。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

何か思うところがあるようだね。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

彼女はすでに裁判所地下にある牢獄を目にしておりまして。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

そうか、我々が未だ答えを得ていないながらも、君はすでに裁判所が探し求めている真実を目にしたのだね。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

まあよい、さあ任務に取り掛かるといい、若い審問官。時間は人を待ってはくれない、必要とあらば、君たちが裁きを下したまえ。

海のバケモノ
恐魚

(大きな蠢く声)――!

エリジウム
エリジウム

危ない!

(エリジウムがジョディを押し倒す)

エリジウム
エリジウム

大丈夫!?

ジョディ
ジョディ

だ、大丈夫です。ごめんなさいエリジウムさん。また足を引っ張って……

エリジウム
エリジウム

はは、気にしないで。

ジョディ
ジョディ

あの恐魚……

エリジウム
エリジウム

(同じ傷痕、それとあちらこちらで叩き潰されてる。このやり方、スカジたちだね……)

ジョディ
ジョディ

……町が、しっちゃかめっちゃかです……

エリジウム
エリジウム

あはは……そうだね……

エリジウム
エリジウム

ッ――止まれジョディ!

ジョディ
ジョディ

うわあ!

ジョディ
ジョディ

な、なに?

エリジウム
エリジウム

――蛍光色の、植物の床?いやプランクトンの類か?それとも……サンゴとか?

ジョディ
ジョディ

この先の道も塞がれています……待ってください、ナニかが屋根から……

エリジウム
エリジウム

――!避けて!

エリジウム
エリジウム

そ、そんな――

(恐魚が蔓延る)

エリジウム
エリジウム

――すでにここで巣を作っているのか!?こいつらはただ単にアビサル教会に操られて攻めてきたわけじゃないの?

エリジウム
エリジウム

(それにこの数……まさか産まれたばかりとか!?なんて成長スピードなんだ……)

エリジウム
エリジウム

ジョディ!

ジョディ
ジョディ

あっ、はっ、はい!

エリジウム
エリジウム

はやく逃げるよ!反対の方向に行こう!

ジョディ
ジョディ

でも後ろにもいますよ、エリジウムさん!

エリジウム
エリジウム

――チッ、こいつらの巣作りの速さ、カニなんかと比べ物にならないぞ――

エリジウム
エリジウム

こうなったらイチかバチかだ。ジョディ、なんでもいいから武器になれそうなものを探してきてくれ――

ジョディ
ジョディ

か、傘はどうですか?

エリジウム
エリジウム

……雨が降りそうな今日にはピッタリだよ、とにかくしっかり掴まっててね!

海のバケモノ
恐魚

(大きな蠢く声)

エリジウム
エリジウム

――!行くよ!

(アーツ音と共に恐魚達が倒れる)

Mon3tr
Mon3tr

(得意げな鳴き声)

ケルシー
ケルシー

――焼け、部屋ごとだ。

Mon3tr
Mon3tr

(楽し気な鳴き声)

(Mon3trが辺り一面を焼き飛ばす)

ケルシー
ケルシー

どうやらこの溟痕、エーギルの技術でなければ駆除できないわけでもなさそうだ。

(エリジウムがケルシーに駆け寄る)

エリジウム
エリジウム

ケルシー先生!

ケルシー
ケルシー

無事で何よりだ、何があった?

ケルシー
ケルシー

……この落胆しきっているエーギルの方は?

聖徒カルメン
聖徒カルメン

見事な働きっぷりだ、狩人たち。

グレイディーア
グレイディーア

お褒めは結構、さっさと次の話へ移りましょう。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

ここしばらく、ケルシーは随分と君の代わりに色々と苦労したものだ。

グレイディーア
グレイディーア

わたくしたちを庇ってくれたことは今でも心に留めておりますわ、あなた方がやったすべても……含めてね。

スカジ
スカジ

……

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

……

グレイディーア
グレイディーア

ですけれどこの狭い海辺の小さな町で、わたくしたちが相見えたのも、彼女の手配によるものですわ。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

なら彼女の名誉に免じて、まずは平和的に話し合おうじゃないか。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

君はブレオガンの遺産、ストゥルティフェラを探し求めているのだろう。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

――!

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

(ストゥルティフェラ、“阿呆船”?大いなる静謐で沈没した艦隊の旗艦名……?それって、いつの時代の話よ!?)

聖徒カルメン
聖徒カルメン

一介のよそ者が、なぜ彼女はまだ沈んでいないと断定できるのかね?実に気になるところだ。

グレイディーア
グレイディーア

ではイベリア人の観点に訊ねましょう、ストゥルティフェラ号は沈んだとお思いですか?

聖徒カルメン
聖徒カルメン

……ふむ……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

沈んでいない可能性なら、大いにあり得る。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

――!

聖徒カルメン
聖徒カルメン

だが、港にも帰ってはいないさ。

グレイディーア
グレイディーア

六十年余りも沈まず、かつ陸の港にも帰ってきていない一隻の船。

グレイディーア
グレイディーア

それが今漂っている居場所を、あなた方は確かめられるのですか?

聖徒カルメン
聖徒カルメン

過去ならできていたが、今はもう無理だ。

グレイディーア
グレイディーア

そうとなれば……

グレイディーアは傍らに佇む彫刻に目をやる。
この彫刻に思うところはない。彼女が陸へ上がった頃にはすでに、この被造物は靜寂の中へ消えていったからだろうか。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

“イベリアの眼”。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

かつて美しく設計された礎石の奇跡。それが今では、ほとんどの灯台は大いなる静謐へ消え、残ったのは一基のみ。

グレイディーア
グレイディーア

あれはあなた方のものではありません。エーギルのものですわ。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

……確かに設計者のブレオガンはエーギル人であり、海より出でて、無私の精神で貢献してくれた。彼はイベリアの海洋探索にとっての大功労者と言えよう。

グレイディーア
グレイディーア

けど災いの後、民衆はエーギル人に怒りを向け、あなた方はそれを見て見ぬフリをした――それを経た彼もまた、その愚行によってあなた方を見限った。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

エーギル人は大いなる静謐となんら関わりはない、とでも言いたいのかね?

グレイディーア
グレイディーア

……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

……

(ケルシーが近寄ってくる)

ケルシー
ケルシー

隔たりと恨みが消えることは永遠にない。もしお二方がまだこの話題を続けるつもりであれば、イベリアもエーギルも等しく滅んだも同然と言えよう。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

ケルシー医師、カルメン殿への言葉遣いに気を付けろ。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

構わん、彼女とはすでに色んな言葉を交わしてきた仲だ……しかし、君はいつもこんなことをしているのかね、ケルシー?

聖徒カルメン
聖徒カルメン

大いなる運命の中から肝心な個体だけを選び、目当ての者たちを君の考えで説得させるというやり方を。

ケルシー
ケルシー

私が今考えてるのは君たちを救うことだけだ。拒否するのであれば構わないさ、イベリアもエーギルも。

グレイディーア
グレイディーア

……

ケルシー
ケルシー

もしそちらの前途有望な少女も加えたとすれば、ここにいる六名のうち、それぞれハンター側と審問官側が三人ずつになるな。

ケルシー
ケルシー

広場にはエーギル人が建てたイベリアの景観が佇んでいる、示談の場としては申し分ない。

ケルシー
ケルシー

我々がこうして話している間にも、溟痕は広がり、恐魚たちは町に巣を作っている、今までとは大いに形態が異なる恐魚たちだ。これだけの“相違点”だけでも、人を震え上がらせるには十分と言えよう。

ケルシー
ケルシー

もしこの場にいる諸君が未だに海から来た脅威の全貌を把握していないのであれば、各々一歩退いておくといいさ。ハンターたちが稼いでくれた時間をただただ無駄に費やすのも諸君らの自由だ。

スカジ
スカジ

……その場合勝てたとしても、意味なんてあるの?

ケルシー
ケルシー

無論だ。さもなくば大いなる静謐の後、イベリアは虫の息すら許されていなかっただろう。

ケルシー
ケルシー

つまるところカルメン殿、今しばらくはエーギルへの先入観を隅に置いてほしい。あなたの――

聖徒カルメン
聖徒カルメン

――私はもう老いたよ、ケルシー。時間は無駄にしたくない。

グレイディーア
グレイディーア

……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

もう勝ちに無頓着になったほど、言葉で栄誉を守る気力もないほどに老いてしまった。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

生存こそが最大の栄誉だ、現状なら誰よりも理解しているさ、君が言うまでもない。狩人たちへ協力しよう、あの失われた船を探しに。

スペクター
スペクター

……黄金の……船。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

……

グレイディーア
グレイディーア

異論はありませんわ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

イベリアとエーギルの接触を毛嫌いするのかと思ってたぞ。

グレイディーア
グレイディーア

接触ですって?あぁ……もしあなたが水の中でも呼吸ができ、装置を頼らずわたくしたちの町までたどり着けるのであれば、見せて差し上げても構いませんよ、正真正銘のエーギルの技術を。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

それは期待だな、執政官殿。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

では後程、大規模な懲罰軍と陸海両用の軍艦数隻がグラン・ファロに到着する。彼らのために野営地を立て、港を清掃してやろう。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

ダリオ、アイリーニ、君たちは狩人たちと一緒に。イベリアの眼へのルートを優先して確保するのだ、本隊が到着した後にまた改めて判断を下す。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

承知しました。

グレイディーア
グレイディーア

ケルシー、もし……

グレイディーア
グレイディーア

もしどうしてもという場合は、エーギルとの連絡の再構築を優先させもらいますわ。

ケルシー
ケルシー

海へ入ることは誰にとっても危険なことだが、君たちからすればただの帰省だ。

ケルシー
ケルシー

船も、エーギルへ戻る方法もきっと見つかるさ。判断は君に委ねる。

グレイディーア
グレイディーア

次に会う時は随分と先になるかもしれませんわよ。

ケルシー
ケルシー

私たちが言ったことを忘れないでくれればそれでいい。エーギルに戻った後、もう一度エーギルが遭った一切を目に焼き付けてくれ。

グレイディーア
グレイディーア

……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

話は済んだかね?では――

ジョディ
ジョディ

あっ……

エリジウム
エリジウム

……すみませんケルシー先生、灯台の部分を聞いてから彼が……

(大審問官がジョディに近づく)

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

……エーギル人か。ちょうどいい、色々と聞きたいことがある。

ケルシー
ケルシー

待ってくれ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

貴様は何者だ?

ジョディ
ジョディ

……こ、この町の住民の、ジョディと言います……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

なぜグラン・ファロにまだエーギル人がいるのですか!公文書によれば、ここにいるエーギル人は深海教会と結託してるとあるはずなのに!

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

両親は何者だ?

ジョディ
ジョディ

両親は……灯台の技師でした。イベリアの眼のための犠牲に……

ジョディ
ジョディ

家には当時の図版が残っています……ボク自身、あの灯台を見たわけじゃありませんけど……

ジョディ
ジョディ

だから見てみたいんです……ボクの故郷の意味を、両親が生涯をかけて戦った意味を……だからその……

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

それはできない相談だ。まずは裁判所の尋問を受けてもらう。

グレイディーア
グレイディーア

この事態の中でひ弱な労働者を守るなんて、非生産的ではなくて?

ケルシー
ケルシー

しかし、彼がブレオガンの末裔だったら?

グレイディーア
グレイディーア

なんですって?けど彼、映像記録に残ってるブレオガンの姿とはまったく……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

仮に本当だとしても、まずは家宅に残されてる図版とやらを、裁判所が精査する必要があります。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

長官!

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

エーギル人、名は?

ジョディ
ジョディ

……ジョディ、ジョディ・ファンタナローサ、ティアゴさんから教えてもらった名でして……

聖徒カルメン
聖徒カルメン

では、自ら裁判所に出頭すればどういう目に遭うか、理解しているはずだね?

ジョディ
ジョディ

はい……理解しています。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

アイリーニ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

はっ!

聖徒カルメン
聖徒カルメン

彼を取り押さえよ。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

……君と同行させたまえ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

了解し……えっ、今なんと?

聖徒カルメン
聖徒カルメン

そうしてほしいのだろう、違うかね?

ケルシー
ケルシー

感謝する。だが、それよりもできることなら、エーギルもイベリアも真に手を結んでいる場面を見せてもらいたいとは思うがな。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

千里の道も一歩より、だ。

ケルシー
ケルシー

では行こう。再びイベリアの眼に、この穢れた海を映し出してもらおう。

この記事を書いた人
おーちゃん

フロストノヴァ推し

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