アークナイツストーリー翻訳

【明日方舟】阿呆船 SN-ST-5「上陸地点」翻訳

ティアゴ
ティアゴ

ハァハァ……なんなんだ、この気持ち悪い地面は?何が起こってんだ?

ティアゴ
ティアゴ

これも恐魚の仕業なのか?

(アマヤが近寄ってくる)

アマヤ
アマヤ

ティアゴさん。

ティアゴ
ティアゴ

……アマヤ。

ティアゴ
ティアゴ

これは一体どういうことだ?あの深海教徒、お前は現れないって言ってなかったか?アイツら、ここを滅茶苦茶にしやがって……

アマヤ
アマヤ

ティアゴさん、お別れを言いに来ました。

ティアゴ
ティアゴ

なに?

アマヤ
アマヤ

そろそろ時間なうえ、せっかくの機会と思いまして。

ティアゴ
ティアゴ

どういうことだよ……

アマヤ
アマヤ

ティアゴさん。

アマヤ
アマヤ

審問官が現れました、それも三人。

ティアゴ
ティアゴ

――!

アマヤ
アマヤ

ジョディが彼らに拘束されています。

ティアゴ
ティアゴ

クソッ――!

アマヤ
アマヤ

落ち着いてください、ティアゴさん。ジョディは自分の意志でここに戻ったのです。審問官は三人、あなたに何ができると?

ティアゴ
ティアゴ

あいつは裁判所に見つかったらどうなるのか理解していないのかよッ!?

アマヤ
アマヤ

あなたから何度も言われているので、彼ならきちんと理解してるはずですよ。

アマヤ
アマヤ

しかし人とはそういうもの、害を避けるのは倫理的に推敲して得られた結論に過ぎません。人は複雑な生き物です、その複雑さは安易に推し量れなるものではない……なにもジョディはバカという意味で言ってるわけではありませんよ。

ティアゴ
ティアゴ

今はそんなお行儀よく道徳を説いてる暇はねえんだ――!

アマヤ
アマヤ

いま私が話してるのは人の性質であって、道徳ではありません、ティアゴ町長。

アマヤ
アマヤ

人の性とは美しいもの。時間とてそれを否定することはできません。

ティアゴ
ティアゴ

……結局なにが言いたいんだ?

アマヤ
アマヤ

裁判所が憎いですか?

ティアゴ
ティアゴ

……

アマヤ
アマヤ

今や町中は恐魚が蔓延っています。しかしティアゴさん、思い出してください。

アマヤ
アマヤ

あの夜、懲罰軍は町へやってきて、家々の扉という扉をこじ開けた。叫び声は絶え間なく、シンシンと降り注ぐ雨の音をかき消して……

ティアゴ
ティアゴ

やめろ、それを言うんじゃねえ……

アマヤ
アマヤ

――それが今はどうです?

アマヤ
アマヤ

海の痕跡はこの町に広がり――叫び声が、あなたには聞こえているのでしょうか?理不尽な殺戮と狩りが、見えているのでしょうか?

アマヤ
アマヤ

いいえ、あなたは見えても、聞こえてもいません。

ティアゴ
ティアゴ

……

アマヤ
アマヤ

今のグラン・ファロは――

アマヤ
アマヤ

――ただ、静寂に留まるのみとなってしまったのですから。

ジョディ
ジョディ

海って、こんなに広かったんだ……

海風が吹きすさぶ。
信じられないといった様子で、ジョディは辺りを見渡す。水平線の果てが、空の終わりだと彼は思っていたからだ。
その目で果てのない海を目にした時、ジョディは――このエーギル人は忽然と疑問が生じた。

ジョディ
ジョディ

なぜ人は海を探索するという欲に掻き立てられなかったんだろう……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

……星々が規則正しい地図でない限り、二つの月が目印となってくれない限り、私たちはこの広大な海で位置や方角を確認することができないからです。

ジョディ
ジョディ

えっと、星々は規則正しく動かないものなのですか?

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

それは天文学の専門家にでも聞いてください。

ジョディ
ジョディ

ではもし……本当に海の下にエーギルがあるのなら、エーギルはどれだけ巨大な国なんでしょうか……イベリア以上ですか?

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

あちらに本物のエーギル人がいますよ、彼女らに聞いてみては?

ジョディ
ジョディ

あの人たち、なんだか怖い顔をしていますね。考え事をしてるようというか。

グレイディーア
グレイディーア

サメ、どうかしたの?何か聞こえてるのかしら?

スペクター
スペクター

……風。

スペクター
スペクター

海風に血族からの餞別が混ざっていて……安心できます。

スカジ
スカジ

彼女、海に近づくとこうなるの。

スカジ
スカジ

サルヴィエントの時はあんなに……

グレイディーア
グレイディーア

……

スカジ
スカジ

原因、分かる?

グレイディーア
グレイディーア

わたくしが憶測してもあなたの判断を鈍らせてしまうだけですわ、今は戦いに集中しましょう。

グレイディーア
グレイディーア

陸に上がった後、海に戻った試しは?

スカジ
スカジ

あるわ、でも失敗した。

スカジ
スカジ

アイツら、次から次へと無尽蔵に出てきて、私を囲ってきた。おかげで少し泳いだだけで体力を消耗しきってしまったわ。

スカジ
スカジ

何度も何度も、帰ろうと試したのに……

グレイディーア
グレイディーア

けどあなたは生き延びたじゃない。

スカジ
スカジ

……

グレイディーア
グレイディーア

わたくしたちの身にどういう変化が生じたか、あなただって理解してるはずよ。

グレイディーア
グレイディーア

サメはあんな風にされてしまわれたけど、それでも彼女は狩人、そう簡単にやられるようなヤワな人でもない。

グレイディーア
グレイディーア

あんな姿でも、わたくしたちと一緒ですわ。

(大審問官が近寄ってくる)

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

“スペクター”、かつてのアビサル教会の被害者。オリジニウムは海に存在しないがため、彼女にもなんらかの影響が及んでしまったか。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

なぜ彼女という不確定要素を連れてきた?

グレイディーア
グレイディーア

わたくしたちは故郷に帰るだけです、あなたとはなんら関係がありませんことよ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

故郷?エーギルの現状とてイベリアと大差ないではないか。

グレイディーア
グレイディーア

ランタンを掲げなさいな、審問官。まずは敵をお迎えに参りましょう。

(恐魚が現れる)

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

フンッ、やはり現れたか。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

最後に一つ聞く。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

貴様ら狩人は、本当に三人しか生き残っていないのか?

グレイディーア
グレイディーア

ほかに生き残っていたのなら、とっくに見つけているはずでしてよ。

グレイディーア
グレイディーア

……なぜそれを?

海のバケモノ
突如現れた恐魚

(不気味な蠢く声)

(恐魚が斬撃を受け倒れる)

グレイディーア
グレイディーア

航行の方角はこれで合ってますの?

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

問題ない。

グレイディーア
グレイディーア

……イベリアの眼に近づくにつれ、明らかに恐魚の敵意も明確になってきましたわね。

グレイディーア
グレイディーア

そこはおそらく、もうヤツらの巣窟と化しているのでしょう、船で戦うなんて時間の無駄ですわ。

グレイディーア
グレイディーア

スカジ、サメ、この船を守ってちょうだい。ついでにあの原始的なナビゲーション設備もね。

グレイディーア
グレイディーア

わたくしは海に潜りますわ。

スカジ
スカジ

一緒に行く。

グレイディーア
グレイディーア

海に潜ればあなたは強くなるけど、それは向こうも同じことよ。それに海での流血は絶対にあってはならないこと、危険すぎるわ。

ジョディ
ジョディ

な、なんですか!?またバケモノが襲ってきたんですか?

(グレイディーアが海に飛び込む)

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

分かりません!水面下で何かが起こってるのかしら?でも……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

この悶えるような響く音は……!下で何が起こってるの?まさか戦ってる?

スカジ
スカジ

いいえ。

スカジ
スカジ

彼女はただ……移動してるだけよ。水の中だからね、陸よりは速い。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

……水の中のほうが速く移動できるなんてそんなこと……

スカジ
スカジ

慣れってやつね、もしくは身に着けた技ってやつかしら。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

恐魚が彼女に引き寄せられた。道が開けたぞ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

アイリーニ、ブレオガンの末裔を監視しながらそのまま舵を取れ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

速度を上げろ、敵に包囲されてしまう。

ケルシー
ケルシー

彼らが出発した、海が騒がしくなるな。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

心配なら、こちらもさっさとやるべきことを済ませよう。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

グラン・ファロは元より灯台を修復するための前哨基地だ、それを我々は今一度再現するだけのこと。

ケルシー
ケルシー

イベリアはすでに溟痕の侵略を阻めるほど、エーギルの技術を使い慣れているのだな。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

ヤツらの進化の速さはどんな科学者の脳よりも速い、勝ちたければ手段を選ばないことだ。

ケルシー
ケルシー

軍を動かしてでも、か。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

……ここは目立たない小さな町だ。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

ここのほかにも、多くの戦略的な要所が待っているのかもしれん――裁判所による接収を。よりよい作戦拠点を作るために、あるいは高い壁と城塞を建てるために。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

しかしだね、時には手元にある仕事から取り掛かることは、なにも悪いことではない。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

海と最後まで抗おうとする者たちがイベリアに存在し続ける限り、我々は死なんさ。

聖徒カルメン
聖徒カルメン

さあ、この町を清潔にしょう。

海のバケモノ
恐魚

(長引くうめき声)

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

ねえ……まだ着かないんですか!?

ジョディ
ジョディ

こ、航海図によれば、もう見えてもおかしくないはずなんですけど……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

長官!このまま進んでも、恐魚に囲まれる危険性が……

(恐魚が斬撃を受けて倒れる)

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

いいや。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

上を見てみろ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

え?辺りは真っ暗ですけど、何も……

ジョディ
ジョディ

いや違う……あれは……空じゃない、あれは……

(グレイディーアが海から上がってくる)

グレイディーア
グレイディーア

あそこがヤツらの巣窟ですわ。岸にも近い、どうりで町でわんさか現れたわけね。

スカジ
スカジ

そんなのぶった斬ればいいでしょ、昔みたいに。

グレイディーア
グレイディーア

……そうね、昔のように。

グレイディーア
グレイディーア

どうしたのサメ?

スペクター
スペクター

……

スペクター
スペクター

あれが……彼らの眼ですの?どうしてこう……馴染み深く感じるのしょうか?

グレイディーア
グレイディーア

そうよ、あれが眼。

グレイディーア
グレイディーア

しかしもう穢されて久しいし、目も盲いてしまっているわ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

私が道を開く。ジョディ、貴様もついて来い。

ジョディ
ジョディ

あっ、はっ、はい……ボクでもお力になれれば……

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

いいや、力になるんだ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

さもなければ、こちらは戦略を変えざるを得ない。裁判所の技師たちを安全にここへ送り届けなければならないのだ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

今は戦いのさなかだ、ブツブツと独り言を話してるエーギル人ひとりに構ってやれる暇などこちらにはない。心してかかれ。

ジョディ
ジョディ

はい!

グレイディーア
グレイディーア

焦ってるようですわね。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

貴様にこの島へ再上陸する意味など理解できないさ、エーギル人。

グレイディーア
グレイディーア

意味?

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

……懲罰軍が残存した灯台からの信号をキャッチしてから今に至るまで、我々はすでに十七回もの上陸を試みてきましたが、成功したのは八回のみです。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

それまでの間に数百名の戦士たち、そして審問官が三名、犠牲になってしまいました。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

まさか英雄に対する尊敬と偲ぶ心などは忘れよと、あなたたちエーギル人の優越感と道徳心がそう教えているのですか?

グレイディーア
グレイディーア

……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

長官も私も……イベリア人はみな、その海に沈んだ偉大なる魂たちを祀っているというのに。

グレイディーア
グレイディーア

あなた方の美徳などにいちいち口を差すつもりなど毛頭ありませんわ。しかし、我々が今いるは海の上、この人数では相手になりません。

グレイディーア
グレイディーア

お説教したいのならどうぞご勝手に、けど我々に余裕などはありませんことよ、それをお忘れなく。

岩礁に足を踏む。
漆黒の風の中に潜む巨大な被造物。首を上げることでしか、この昏い空の中でそれの輪郭を認識することはできない。

それはイベリアの眼。
閉ざされた眼だ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

……なんて高さなの……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

あの街にある彫刻、絶対比例の大きさを間違えているわ……

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

……長官。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

ああ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

これが、私たちかてつの……

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

ああ、私も初めて直接見た。

黙りこくってしまった二人は、文献と記録の中にしか存在しないこの大いなる情景を推し量ろうとしていた。
イベリアの強靭な現実は、やはり己が受けた教育のそれをはるかに超えるものであったと、アイリーニは思った。あの狩人たちが我々を軽んじていようとも、国が確かに崩れかけていようとも。
だがこの灯台はまるで象徴でもあった。過去にあった風の音と野心の、欲望と未来への驕りの、象徴であった。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

いま何を考えていようが構わないが、心に刻んでおくのだ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

この建築物を、この錆びた剣と灯りを、この岩礁を、そしてこの海を。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

人が争いの中で建てたものが何なのか、それを心に刻んでおけ、いついかなる時でも。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

犠牲に畏敬を抱かざらば、天秤に意味はなし。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

はい!

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

警戒しながら進むぞ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

はい!

(スペクターが水に触れる)

スペクター
スペクター

……

スカジ
スカジ

何してるの?

スペクター
スペクター

帰られたのですか?

スカジ
スカジ

いいえ、まだ。

スカジ
スカジ

でもここでケルシーと隊長が探してるものを見つけたら、帰れるかもね。

スカジ
スカジ

だからもうちょっとだけ我慢してて……すぐだから。

グレイディーア
グレイディーア

静かすぎますわ、ここ。

スカジ
スカジ

悪臭もひどい。

グレイディーア
グレイディーア

ええ、岩礁には溟痕のカスだらけ。残った人工物も、どれもほとんどは腐っては崩れてしまっているわ。

グレイディーアはゆっくりと歩き出す。昏い空へと伸びていく塔を仰ぎ見ながら。
イベリアの眼は天へ伸びていく。まるでこの有限な地で、首を長く伸ばしながら未来を望もうとする生命体のように。

グレイディーア
グレイディーア

陸の諸国が総力を挙げて複製したブレオガンの遺物、いわゆるこの灯台は、所詮エーギルの技術の紛い物に過ぎない。

スペクター
スペクター

この空っぽの海の中で、この灯台は何を待っているのですか?

スペクター
スペクター

コレはいったい海を、それとも陸を眺めているのでしょうか。

スカジ
スカジ

隊長。

グレイディーア
グレイディーア

分かっているわ。ここは元より恐魚の巣、姿を見せないということは、守りに長けた巣なのでしょう。

グレイディーア
グレイディーア

そろそろ見えてくるわ。

海のバケモノ
恐魚

(不気味な蠢く音)

スカジ
スカジ

数は……そんなに多くないわね。

スカジ
スカジ

ここは海の真っただ中、もう海岸も見えていないわ。

グレイディーア
グレイディーア

懐かしい?

スカジ
スカジ

ううん……ただ、私たちはここで血を流してはいけない。ここで流したら、危ないから。

グレイディーア
グレイディーア

ヤツらはまだわたくしたちの肌を刺し貫くには至りませんわ。ステップを止めない限り、この程度の数など、わたくしたちを殺すほどでもないのだから。

ジョディ
ジョディ

(これが灯台……やっぱり町にある彫刻とそっくりだ。)

ジョディ
ジョディ

(じゃあ家にあったあの図版も、両親が残したイベリアの眼に関するものだったんだね……)

ジョディ
ジョディ

(父さんも母さんも……ここにいたんだ……)

ジョディは振り返り、海を眺める。
毎日、彼は思い起こしていた。灰色の海を、生気のない面々を、希望を持たない人々を。
しかし、あぁ、この灯台は。
ティアゴさんの言う通りだった。彼らは英雄だった、偉大であるべきだったのだ。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

……狩人たちは近くで態勢を整えているはずだ、すぐにでも戦闘に参加してくれる。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

サルヴィエントで見聞きしたことを忘れるな。彼女らの血は特殊だ、ケルシーすら裁判所に彼女らを引き渡さなかったほどに。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

しょ、承知しております。ですから彼女らはまだ信頼には置けないと……

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

アイリーニ、裁判所の地下で何を見た?

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

――ッ。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

“シーボーン”です。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

であれば、ヤツの蠢く身体を、その生命力を、そしてヤツの……静けさをまだ憶えているはずだな。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

サル・ヴィエントの町で、彼女らはあのようなバケモノと敵対し、勝った。

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

は……はい。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

真実を目の当たりにしたのであれば、お前にはもう一度お前自身の過去とイベリアを見直す必要がある。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

脳裏にこびり付いた旧い情景を引き剥がせ!そして今一度、己に決断を下すのだ!

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

は、はい!

海のバケモノ
恐魚

――(岩礁をズルズルと這う音)――

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

ヤツらもすでに備えていたようだ。巣に戻り、機を窺っている。そして今、外敵の駆除に出てきたか。

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

ジョディ、そっちはどうだ?

ジョディ
ジョディ

は、はい!まるで奇跡です、外で野晒しにされてるパネルがまだ動いているなんて、どういう理屈で動いているかまでは定かではありませんが……

ジョディ
ジョディ

さ、探してみます!確かバッグに家から持ってきた研究ノートを入れておいたはずです!

大審問官ダリオ
大審問官ダリオ

……急いでくれ。

ジョディ
ジョディ

はい!これ……じゃない、これでもない……あれ、この本、濡れちゃってる……

審問官アイリーニ
審問官アイリーニ

長官!ヤツらが来ます!

波が滾る。
傲慢にも大波は十数メートルと高く聳えては、打ち付けられ、岩礁と三つの月に屈していく。
月の一つは明るく、そしてもう一つは仄暗く。はるか古より天に吊るされた、正真正銘の月たちだ。
そして残り一つの月光、それは海の狭間より出で、大波の頂へ昇っていく。
即ちかつて信仰されし彼の呼び名こそが、月光なのだ。

最後の騎士
???

……

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