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【明日方舟】11章 淬火塵霾 11-2「一筋の光」行動後 翻訳

(戦闘音)

数時間後

ジャスミン
ジャスミン

ラルフ――どこにいるのラルフ?

ジャスミン
ジャスミン

もう、こんな状況でどこに行ったのよ!

純粋な子供
純粋な子供

ラルフなら、大人たちがいつも言ってる火砲がどんなものか気になるから見にいくって言ってたけど……

ジャスミン
ジャスミン

ウソ、じゃあ街に出たってことですか?

ジャスミン
ジャスミン

どうしてこんな状況下で外に出て行っちゃったのよ!もし砲弾が飛んできたら――

(爆発音)

ゴールディング
ゴールディング

私が探してきます。

(ゴールディングが走り去る)

ジャスミン
ジャスミン

あっ、ゴールディング先生!今出たら危険です!

(ゴールディングが駆け回る)

ゴールディング
ゴールディング

ラルフ!

やんちゃな子供
やんちゃな子供

ふえぇぇ……

ゴールディング
ゴールディング

はやくこっちに来て――

やんちゃな子供
やんちゃな子供

うぅ、ゴールディング先生……

ゴールディング
ゴールディング

よしよし、もう大丈夫、先生はここにいますから。

(閃光と爆発音)

やんちゃな子供
やんちゃな子供

うわぁ!

(やんちゃな子供がゴールディングに抱きつく)

ゴールディング
ゴールディング

はやく戻りましょう――学校に戻れば大丈夫ですから。

ジャスミン
ジャスミン

ゴールディング先生、ラルフ!無事でよかったぁ……

やんちゃな子供
やんちゃな子供

ごめんなさい、ジャスミン姉……

ジャスミン
ジャスミン

もうラルフ、私を驚かさないでください!

ゴールディング
ゴールディング

子供たちは全員集まりましたか?

ジャスミン
ジャスミン

はい、全員揃っています。

ジャスミン
ジャスミン

それで、さっきのは一体……

ゴールディング
ゴールディング

……近くに砲弾が落ちてきました。

ジャスミン
ジャスミン

そんな……一体誰と誰が戦っているんです?

ジャスミン
ジャスミン

午前中は普通に暮らしていたはずなのに、どうしてこんな……

ジャスミン
ジャスミン

うぅ……

ゴールディング
ゴールディング

落ち着いてください、ジャスミン。子供たちの前で泣いてはいけません。

ジャスミン
ジャスミン

はい……

ゴールディング
ゴールディング

皆さん、手を握りましょう。少しでも恐怖が和らげますから。

ジャスミン
ジャスミン

都市防衛軍……そうよ、私たちには彼らがいます、それに蒸気騎士だって!

ジャスミン
ジャスミン

彼らがきっとロンディニウムを、ヴィクトリアを守ってくれるはずですもんね!

やんちゃな子供
やんちゃな子供

蒸気騎士……

やんちゃな子供
やんちゃな子供

さっき見た気がするんだ!デッカくて真っ黒な影を……

純粋な子供
純粋な子供

それ街灯の影とかじゃないの?

やんちゃな子供
やんちゃな子供

違う!本当に見たんだ!

やんちゃな子供
やんちゃな子供

靴職人のトムだっていつも言ってた!あの者たちこそがヴィクトリアの偉大なるシンボルなんだって!

やんちゃな子供
やんちゃな子供

「山を越え、川を越え。ゴーゴーゴロゴロ、何響く?稲妻にあらず、狂風にあらず。それは偉大なる騎士、偉大なるヴィクトリアなり」って!

ジャスミン
ジャスミン

その歌、私も小さい頃よく聞きました。

ジャスミン
ジャスミン

毎年国王の生誕日の時、みんな広場に押し寄せて一目蒸気騎士を見ようとしていたって、歌の先生が教えてくれました。

やんちゃな子供
やんちゃな子供

蒸気騎士ってマジで飛べるの?

ジャスミン
ジャスミン

動きはとても素早いとしか言ってなかったわね、落雷や疾風よりも速いって。それに吹き出る蒸気も相まって、まるで雲を渡り歩いてるようだったとも。

やんちゃな子供
やんちゃな子供

そっか。でもなぁ、もうオレたちに王様はいないんだし、この先閲兵式も見れないんだろうなぁ。一回は見たかったのに。

ジャスミン
ジャスミン

その先生の先生はもっとすごいものを見たことがあるとも言っていましたよ。

ジャスミン
ジャスミン

その年はちょうどガリアに戦争で勝った頃でしたから、当時の王様の生誕日を祝う際に、何十名もの蒸気騎士が全員ロンディニウムへやって来たらしいんです。

ジャスミン
ジャスミン

甲冑にはヴィクトリアの旗があしらわれてて、足並みを揃って聖王会西方大聖堂の階段を降りてくる様は、それはそれはまるで巨大な旗が敷かれていたようだった――

ジャスミン
ジャスミン

それからその場にいた全員が、雷よりも大きな雄叫びを上げたんだとか。

やんちゃな子供
やんちゃな子供

雄叫び?

ジャスミン
ジャスミン

そう、雄叫び。その場にいた全員が、あれは我らの御旗、我らヴィクトリアのシンボルが生きて帰ってきたんだって声を上げていたんです。

ジャスミン
ジャスミン

なぜならその日をもって、ヴィクトリアはガリアを超え、このテラで最も偉大な国家に成り上がったんですから。

ゴールディング
ゴールディング

……

ジャスミン
ジャスミン

あっ、すみませんゴールディング先生。先生のお爺様はガリアのご出身でしたよね……

ゴールディング
ゴールディング

お気になさらず、ジャスミン。私もあなたも、ラルフも、ここで育ってきたたくさんの子供たちも……みんなここロンディニウムで育ってきたんですから。

ゴールディング
ゴールディング

もしかしたら外でラルフが見たという蒸気騎士も、そうなのかもしれませんね。

やんちゃな子供
やんちゃな子供

ゴールディング先生、蒸気騎士の人とは知り合いなの?

ゴールディング
ゴールディング

……チャールズ・リッチという方なら。

ゴールディング
ゴールディング

オークタリッグ区の出身で、あのトムさんの昔からの友人です。だから彼はいつも王様や蒸気騎士のことを話したがっているんですよ。

ゴールディング
ゴールディング

あの人は先の陛下がご存命の際に、最後に選ばれた蒸気騎士でした。

ゴールディング
ゴールディング

……そしてこの国の、最後の蒸気騎士でもあったのです。

その日の夜はとても長かった。
子供たちがロンディニウムに伝わるすべての蒸気騎士の物語に耳を傾く際に、いつの間にか日が昇ってしまっていたほどに。
砲火の轟音は予想よりも早くに止んでくれた。深夜午前にはすでに、外の街も凡そは静けさを取り戻してくれた。だがここに住まう人たちは誰しもが屋内に引き籠もったままであり、外の状況を確認しようとする者はいない。
ロンディニウムの群衆は、そのほとんどが寝ずに一夜を明けたのである。
みな頭の中でグルグルと同じ問いが浮かび上がっていたのだ――朝になれば、ロンディニウムは変わり果ててしまっているのだろうか、と。

翌日

(ジャスミンとゴールディングが街の様子を見回す)

ジャスミン
ジャスミン

何も変わっていないみたいですね……大公爵の軍はどこに消えたんでしょうか?

ジャスミン
ジャスミン

しかし、これもきっと蒸気騎士のおかげですね。騎士たちがいなければこうもはやく収まるはずがありませんもの!

ジャスミン
ジャスミン

それにしてはやけに早いようにも思えますが……

ゴールディング
ゴールディング

……ひとまず、日用品を補充しに行きましょう。

ゴールディング
ゴールディング

この先なにも起こらないとは限りませんし……

(ロンディニウム市民が扉を開けてゴールディング達に呼びかける)

ロンディニウム市民
ロンディニウム市民

おぉあんたら、無事だったか!

ジャスミン
ジャスミン

アダムスさん!

ゴールディング
ゴールディング

ちょうどよかった、子供たちのためにも本を仕入れておきましょう。

ゴールディング
ゴールディング

……特に今の状況においては。

ゴールディング
ゴールディング

アダムスさん、昨日ここに置いていた本はもらえますか?それなりに貰いたいとは思っているのですが……

ゴールディング
ゴールディング

では、ここにある童話と、そこの数学と物理の入門書、あと『家庭での医療マニュアル』をください……

ジャスミン
ジャスミン

待ってください、何か聞こえませんか?

遠くない場所から軍靴と思わしく音が聞こえてきた。
ロンディニウムの住民たちが閲兵式で聞いたような音とは異なり、重く切羽詰まったような足音だ。
聖王会西方大聖堂へ。ザ・シャードへ。そして議会広場へ。
その軍靴の音は、たちまち人もまばらなオークタリッグ区の街道を、ヴィクトリアの心臓たるロンディニウムのセントラルを渡り歩いていく。
そしてその音が平凡であるほかないこの街へ近づいてきた時、路肩に隠れていた人たちはようやく迫りくるこの軍の素性を――
兵士たちの素顔を見たのだ。
白昼の光でさえ照らすことのできない、禍々しく歪な黒を帯びた異様な角を。

ゴールディング
ゴールディング

……サルカズ。

ゴールディング
ゴールディング

サルカズの傭兵だわ。

ジャスミン
ジャスミン

傭兵なら、すぐにここから出て行ってくれるでしょう。

ジャスミン
ジャスミン

その時にはロンディニウムも、またいつもの様子に戻ってくれるはずですよね?

ゴールディング
ゴールディング

……

この時、これからの数年でこの国は完膚なきまで変わり果ててしまうと、その場にいた誰もが知る由はなかった。
その一例として、サルカズの軍勢があれ以来ロンディニウムを出ることは二度となかったのである。
もしくは――
その日を以て、ロンディニウムの街中から蒸気を纏う甲冑が消え失せしまったのである。

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