
おー、この礼服めちゃくちゃキレイじゃん。

やな、ソラはんにはきっとぎょうさん似合っとるはずやで。

これだったらアタシも女優になるって言っとけばよかったなー。

あんたは無理やて、まったく演技っちゅうもんを分かっとらんもん。

このキャラのまま出ればオールオッケーじゃん。

シラクーザにあんたが演じれるようなサンクタはおらんわ!

そんなことないよー!だって聞いたよ、シチリア夫人の傍にも一人は――

ん?

シャーリー嬢、俺たちのボスからお食事のお誘いだぜ。

えっ……でも……

シャーリー嬢はこれから劇場に行かなきゃならんのだ、そこをどけ。

ボスは今すぐシャーリー嬢に会いたがってるんだ、劇場なら後にしろ。

じゃあ先に、ディレクターに伝えてさせちょうだい……

ディレクターだぁ?前までだったらこっちもあいつのメンツに免じてそうしてやってたけど、こんなことになっちまったらなぁ……

イヤ、やめてちょうだい……

おい、こんな連中に遠慮することなんてないだろ?

ボスはお前に会いたがっているんだ、少しはありがたいと思え。痛い思いをしたくなきゃ大人しく俺たちについてくるんだな。

おいちょっと待て、ボスはそこまでやれとまでは……

まだ兄貴の考えが分かってねえのかお前は?昔っから俺たちはベッローネに辟易していただろ。

ベッローネはもう落ちぶれた。上の連中も見直そうとしてるだろ、今が俺たちのチャンスだろうが!

それもそうか。おいテメェら、この目障りな野郎どもをぶっ殺しちまえ!

チッ、シャーリー嬢を守れ!
(ガードマンとファミリメンバーが戦闘を始める)

エクシア、あっちなんか……ってあれ、どこ行った?

もう行っちゃったよ、あたしたちも手伝いに行こ!

ぐふッ……
(ガードマンが倒れる)

フンッ、こんな程度でガードマンが務まるかよ?

……ううぅ……

んじゃシャーリー嬢、来てもらうか。

わ、分かった……
(ファミリーメンバーの一人が銃撃で倒れる)

えっ、あなたたち――

誰だ!?
(ファミリーメンバーの一人が銃撃で倒れる)

こっち!

クソォ、追え!
(クロワッサンが追いかけるファミリーメンバーを盾で殴る)

邪魔すんなテメェ!

ほら逃げるで!
(エクシア達が走り去る)

キミ確かシャーリーだったよね、大丈夫?

あなたたち……

一体自分らが何をしたのか分かっているのッ!?

なんで私を助けたのよ、むしろいい迷惑だわ!これで余計あいつらの恨みを買うことになっちゃったじゃないの!

じゃあどうやってあの場面を丸く収めるつもりだったのさ?

……我慢するしかなかったでしょ。

えぇ?でもキミ、ケガしそうだったよ……

それでも……ケガするだけで済むでしょうが。

彼らが私を攫おうとでも思ってたわけ?フッ、向こうはただ時期を見計らって面倒事を吹っ掛けに来ただけよ。

でもさ、あそこは助けを呼ばないとダメでしょ。

呼んでもムダよ。ファミリー同士の争いに手を貸してくれる人なんていないもの。

あのラヴィニアって裁判官がいるじゃん?あの人いい人だと思うけど?

……ラヴィニアさんなら確かにいい裁判官よ、めったにいないけど。でもね、彼女でもどうにもならないことってがあるの。

それにもし私がこの公園から出なかったら、周りに私はファミリー間の争いに巻き込まれて消されたと思われちゃうでしょ?

だから……我慢しなきゃならないんですか?

それ以外に方法を知らないから仕方ないでしょ。私たちはずっとそうやって暮らしてきたんだから。

向こうが決着をつけるまでどこかに隠れて、それから勝った側についていく、そうするしかないのよ。

そんな……

……

ごめんなさい、別に本気であなたたちを責めるつもりはないの。でもまあ、正直生まれて初めて、本当に守られたんだって気持ちになったわ。

さっき吹っ掛けてきたファミリーなら別に大したとこじゃないから、ディレクターが代わりに処理してくれると思うわ。

それでも忠告しておくけど、もしシラクーザにいたいのなら、今度はそんなマネしないほうが賢明よ。

特にこれからは……

これからは?

ニュース見てないの?建設部部長のカラッチが死んだのよ。

ウチは見たで、暗殺されたって。

可哀そう……

あなたたちの優しさに免じて、もうちょっとだけ教えてあげる。

私も普段から一部のファミリーの相手をしてやってるから、多少は彼らから聞いた話ではあるのだけれど。

カラッチを殺した犯人ならまだ見つかっていないわ。それにどうやらカラッチが殺されたと同時に、ベッローネのお坊ちゃまも襲われたっぽいの。

えっ?ベッローネが!?

そう、今までベッローネが一番デカいところだったんだけれど、今回のは明らかにそこを狙った襲撃だわ。きっと前々からずっと企んでいたんでしょう。

おかげで諦めていたほかファミリーも、今じゃみんなまた動き出したわ。

あの、その際彼らがテキサスって名前を挙げていたりしていませんでした?

テキサス?ここシラクーザでその名前を知らない人はいないと思うわ。

でも、確かに向こうがなんか、“最後のテキサス”とか言ってた気がするわね……

ホントですか!

あなたも変な人ね、あれはどう聞いてもウソよ。テキサスファミリーの人間がまだ生きてるわけないでしょうが。

でも……いや、そうですね。

とにかく、あなたもすでに知ってると思うけど、ウチの劇団はディレクターのおかげもあって、多少はベッローネとも関わりを持っているの。

さっきの連中もそうだけど、前までだったらみんなディレクターの顔を立てていたんだけど、今は……

まあ、見ての通りね。

シラクーザのファミリーってみーんなこんな好き放題やっちゃってる感じなの?

……いい?これだけは憶えておいて。

シラクーザで暮らしたいのなら、ファミリーの一員になるか、もしくはそういった人たちからできるだけ離れるしか方法はない。

……それでこう自分に言い聞かせるのよ、ウソだったとしても。彼らから遠ざかれば面倒に巻き込まれることはないってね。

まあこんなところかしら、それじゃあ私は劇場に行かせてもらうわね。

あっ、はい。
(女優が立ち去る)

イヤアアアアア!!!

今度はなに!?

ここに……誰かが縛り付けられているわ!

上手くいきゃ、そろそろあの可愛そうな野郎が見つかる頃だな。

にしても分からねえ、なんでわざわざあんなヤツを生かして、今またそいつを解放せにゃならねえんだ。本当にそこまで特別な人間なのかよ、あいつは?

それがあの胡散臭いバーテンのクソ野郎の考えだよ。

なんでかって言われても……普通に考えりゃあれは罠だろうが。

チッ、まったく陰湿なクソ野郎だぜ。

だがもしあれで成功したら、あいつの評価も陰湿から知略に富んだってことに変わるだろうな。

フンッ、下らねえ。

……はは。

なに笑ってんだよ。

急に思い出したんだ。随分と昔、俺たちがまだガキだった頃も、よくこうしてケンカしてたっけなって。

それがまさかこんなに歳を食っても、あちこち回り道しても、お前とつるむことになってるとは。

運命ってモンは、ほんと掴みどころがねえモンだぜ。

……フンッ、そうだな。

龍門であんなことが起こるたぁ、考えもしなかったさ。

それがあんなことが起こった後に、シラクーザに戻ることになるなんてよ。

なあガンビーノ、もしも、もしもの話だ。もしラップランドが本当に最後に俺たちを解放して、生きるなり死ぬなり好きにさせてくれるとしたらだ。

お前、このままシラクーザに残るつもりなのか?

なんだよ、龍門が恋しくなっちまったのか?

俺は……いやいい、お前に言ったところで分かってもらえるわけがねえんだし。

現実的な話に変えよう。お前、本当に雇い主を変えるつもりはないのか?

新聞を見てみろよ、昨日俺たちがぶっ殺そうとしてたの、あのベッローネのお坊ちゃまだぜ。それに、どうやら同じタイミングでえらいヤツが死んじまったみたいだ。

俺たちはどう見ても、どっかしらの素性の知らねえファミリーの手先として扱われてる。

そいつらの手先になりたきゃなりゃいいさ。

だが俺は今のままがいいね、ちんけな小口の仕事になんざ興味はねえ。

いいねぇ、シラクーザに戻ってすぐ十二ファミリーのうち一つんとこのお坊ちゃまを暗殺しにいったなんて、キミたちも結構成長したもんだ。

……平穏な日々もこれでおしまいか。

……ラップランド。
(ラップランドが近寄ってくる)

おやおや、結構いい朝飯を食ってるじゃないか。

……食いたきゃ自分の金で注文しろ。

それがボスに向けていい態度なのかな?

お前、これまでの間どこをほっつき歩いてたんだ?

ちょっと実家に挨拶しに帰っただけだよ、久しぶりに家の雰囲気を味わったね。

うちのあの憎たらしい顔を久しぶりに見て反吐が出そうになったもんだから、ボクも安心したよ。

家?

あれ?言ってなかったっけ?ボク、サルッツォだよ?

サルッツォ?

サルッツォって、あのサルッツォか?

……

ねえカポネ、ボクが三番目に嫌いなことがなんなのか、知ってる?
その時カポネは急に寒気を感じたが、自分は錯覚していたのかと疑ってしまうほど、それは瞬く間に消え去った。

ボクのファミリーネームを聞いて驚いたような反応を見せて――

“あぁ、だからやり口が似てるのか”って、思われることだよ。

じゃあ二番目と一番目はなんなんだ?よかったら教えてくれないか?知らないまま殺されちまっても死にきれねえよ。

キミはいい感じにボクとの付き合い方が分かってきたようじゃないか、アハハ。

でも、今のはさっき思いついたヤツだよ。

なんなんだよ、クソが。

まあ下世話はこんなところにして。そろそろ教えてもらおうか、なんでキミたちがベッローネの暗殺に関与してるのかな?

どうぞ、入って。
(ラヴィニアが入ってくる)

失礼します、ルビオ部長。

ラヴィニア裁判官じゃないか、これはまた珍しい。

……執務室、中々豪華ですね。

ワハハ、いつもお客人をもてなす際、みーんなこうやって着飾ろうとしているからね。だからワシもいっそのこと真似してみようと思ったんだよ。

それで、ワシになんの用かな?

カラッチの死について少しお伺いしたことがあって参りました、ルビオ部長。

ん?証言ならもう記録してもらったはずだと思うが。

ええ。

ただ――私の個人的な理由で、もう少しお話がしたいと思いましたので。

……ふむ、聞いたよ。犯人を見つけ出してカラッチを弔ってやるんだってね。

いいじゃないか、若者はやっぱり勢いを持たなきゃ。

それで、進展はあったのかね?

……残念ながら、まだ。

そうか、それは残念だ。

ルビオ部長はカラッチ部長とかなり親交があったと聞きましたので、それで……

あぁ、それは確かに。カラッチは市民の暮らしをとても気に掛けていたからね、飲食とか、衛生環境とか。

でも、君の助けにはなれないかな。

ワシは本当の意味で、彼の内輪には入っていなかったからね。

いやぁ、情けないことだ。

疑わしい点や、政府関連で注意すべき人物などがありましたら、なんでも構いませんので。

それがまた多すぎるのだよ、言ってること分かるね?

……裁判官殿、カラッチが死ぬ前にも、どれだけの建設部部長が死んだか、憶えているかね?

七人か?いや八人だったか?

この席に座ってる人たちはみんな所詮ただの操り人形なのさ、どこのファミリーも自分たちの人をそこに座らせようとしている。

で、最後はほかのファミリーに殺されるのがオチだ。

分かりやすく言おうか。あれだけ重要なポストに、どこのファミリーも自分のモンを座らせることをせず、逆にどことも繋がっていないカラッチを座らせた。

このまま次から次へと死んでもらっては、都市の建設が進まなくなるというのが理由だよ。それだけのことだ。

こっちの人間が上がれなくても、お前んとこの人間も上がってくることはない。そういうこともあって、カラッチはあの席に座ることになった。

確かに、彼はベッローネと近しかった、なんならそこのお坊ちゃんを秘書として傍に置いたぐらいだ。でもね、彼はほかのファミリーとも同じぐらい近しかったのさ。

炎国にこんな諺がある、“朱に近づけば赤になるし、墨に近づけば黒になる”。そりゃワシも彼は実直な人間だと思うよ、でもそれがなんだと言うのだね?余所から見りゃどうだっていいことだ。

シラクーザ人から見れば、ワシらは所詮どこかしらのペットに過ぎんのだよ。

カラッチの死は決まっていたのさ、どのファミリーが計画してる将来にも彼の姿はいない。それを本人が知らないと思うかね?

彼が今日死のうが、一か月前に死のうが、あるいは一か月後に死のうが同じことだ。

しかし彼は多くの貢献をしてくれました、それを知らないあなたではないでしょう。

]貢献して、彼は何か得られたのかね?

いや、今は君の言うようにしておくか。仮に彼が無私の人間だった場合、彼が貢献してやった人たち、彼がいつも口にしていた“市民”たちとやらは、最後彼に何か分け与えてやったのかね?

……

裁判官殿、君のことはよく聞いている。

色々と素晴らしいことをやってきたようじゃないか。

しかしだね、その内のどのくらいが君のやったことで、どのくらいが君の後ろにいるあの方の影響から出たことなのか、君自身では理解していないのかな?

何を――

正直に言おう、裁判官殿。君がベッローネに代わって、探りを入れにここへ来たわけではないという保証はあるのかね?

そのつもりだけは絶対にありません。

……私からすれば、そうであってほしいんだがね。

一つ忠告をしよう、裁判官殿。

死んだ人はもう戻らない。

自分らが今抱えてる面倒事だけでも精一杯なんだから、死んだヤツのことなんかはもう放っておきなさい。

……それがカラッチ部長と深い親交を築けてきた人間の態度ですか?

もしヴォルシーニでもう少し長く生きていきたいのであれば、君はもう少し学んでおいたほうがいい。
(電話が掛かってくる)

もしもし?あぁ、まだ仕事中だが、そっちはもう準備できているのか?

分かった、じゃあ今からそっちに向かうよ。

はい、分かった。
(ルビオが電話を切る)

今晩新しく開いたお店から、そこの食材をチェックしてほしいと依頼があってね。

だからここで失礼させてもらうよ。

……

そうそう、レオントゥッツォの坊やにも伝えておいてくれないかな。もし美味しいものに興味があったら、いつでも私に言ってくれ。

……憶えておきます。

では、失礼するよ。

……はぁ。
(携帯のバイブ音)

もしもし?はい?人が気絶して縛り付けられているですって?トラットリアで襲撃を行った人たちの主犯ですか?

分かりました、今すぐそちらに向かいます。

だから、俺たち二人はたまたまあの襲撃に加わっちまっただけなんだって。お前の欲しがってる情報なら持ってねえよ。

俺たちに命令したヤツがどこのファミリーの所属かはまったく分からねえんだ、まあ羽振りはよかったけどよ。

向こうは明らかにキミたちみたいな経歴不明の殺し屋を必要としているのさ、そうすれば死んでもどこに雇われたのか調べれても出てこないからね。

もしかしたら、たまたま加わってしまったと思っていても、向こうはとっくにキミたちに狙いを定めていたのかもしれないよ。

まあ、ありえない話ではないが。

そこでだ、その雇い主が誰なのか考えてみよっか?

……どうせロッサーティかサルッツォだろ。十二ファミリーはこの街でずっと争ってきたんだ。ベッローネを除けば、そんな気力が残ってるのはこの二つぐらいしかいねえよ。

確かに、普通ならそう考えるだろうね。

でもね、サルッツォにそんなつもりはないって、キミたちもう分かったでしょ。

じゃあ――ロッサーティか?

ほかにも可能性はあると思うなぁ。

どういう意味だ?

最初キミたちにやられたあのツいていない連中がいたでしょ?あいつらの本来のターゲットは建設部の人間だったんだよ。

で、ベッローネのお坊ちゃまは今や建設部で働いている。つまりキミたちが片付けたあの連中は、ベッローネを目障りに見ていた連中だったのさ。

……つまり、俺たちはあの時ベッローネを助けることになってたが、その後ベッローネに盾突くようなあの襲撃にも加わっちまったってことか。

……だからなんだよ?ファミリー同士の軋轢なんざ珍しくもねえだろ?

それは……まあそうなんだが、でもたまたまだろ。俺たちが片付けたのは所詮、周りが見えてないバカに過ぎなかったのかもしれない。

でもあれは“口滅ぼし”だったよ、間違いない。

それってまさかッ!?

まさか、ベッローネの中に裏切者がいるってことか?

まだ可能性に過ぎないけどね。

でも、こうじゃないと面白くもないでしょ、アハハハハ。

まっ、とりあえず今はそう考えておこっか。

建設部部長のカラッチは死んだ。その前にも、建設部に関わってる人たちは次から次へと暗殺されてしまっていた。

普通ならこの二つの事件は結びがちだ、特にあの可哀そうな裁判官だったら。

でも、一つ前の暗殺を企てたヒットマンは口を封じられてしまったし、そいつらを率いてたボスも未だに見つかっていない。捜査のしようがない彼女は一体どうすればいいんだろうね?

こんな時に、都合よく手掛かりが出てきてくれればいいんだけど。

まっ、キミたちが見逃してやったあのヒットマン、あれが一番の手掛かりなんだけどね。

だからこのタイミングであいつを見逃すように言ってきたのか……

しかしまあ、筋は通ってる。

じゃあその後、待ち伏せなりなんなり仕込んで、あの裁判官を危険な目に遭わせれば……

“バーン”!
ラップランドは大袈裟に、両腕を大きく広げながらそのままソファーへ倒れ込んだ。

みーんな仲良く巻き込まれるってわけさ。

アハ、中々考えたね。

もしそうやって事が進まなかった場合でも、ボクがそうなるようにしてあげたいぐらいだよ。

……じゃあお前らが言うには、これはベッローネの自作自演ってことか?

まだ可能性だけどな。

なんせ一番ベッローネのことを分かってるのは、ベッローネだけだ。

ハッ、俺から言わせりゃ、そいつは無理があるぜ。

ファミリーの未来に関わるようなこんな節目に、自分のモンを手にかけるバカなんざシラクーザにはいねえよ。

そろそろ気付けよ、ガンビーノ。そういう根拠もない自信のせいでシチリアーノは消えちまったんだろうが。

んだとテメェ――

だが、今回ばかりはお前と同意見だ。癪に障るが。

アハッ、向こうは自作自演して、周りにいる全員に“こいつはもうダメだ”って思わせるようにするため、あえて弱みを見せているのかもしれないね。

……でも、ベッローネはほぼ勝ち確だったろ。

まさかお前、ベッローネは実は内側ですでに話をつけていて、手に入れられたはずの都市を手放してまで、この街をしっちゃかめっちゃかにしようと企んでるとでも言いたいのか?

]イカレやがったのか、あいつら?

さあ、どうなんだろうね。この大地にいるイカレた連中なら、もしかしたらキミたちが想像するよりもたくさんいるのかもしれないね。

ヒヒッ、もし本当にそうだとしたら、楽しい食事の時間もそろそろおしまいだ。

諸君、存分に楽しんでやってくれよ。

おい待て、お前本当に顔を見せに来ただけなのか?

なんだい、もしかしてとうとうボクを手伝い気にもなったのかな?

そんな趣味はない。

だが少なくともこれだけは教えてくれ、お前は一体どっちについてるんだ?

それを知らないで訳も分からねえまま殺されるのはゴメンだからな。

ボクかい?そりゃもちろんテキサスについているよ、最も忠実なる後ろ盾としてね。

ちゃんと人員は配置しておいたか?

……ええ。

なんだか話がしたいって顔だね。

……俺はただ、ラヴィニアさんが可哀そうだって思っただけです。

だって彼女、なんたって俺たちファミリーと仲良くやってくれていたじゃないですか。

……もしもだ、もし彼女がレオンと、ベッローネの次期当主と仲良くやっていなかったら――

俺だってこんなことはしたくなかったさ。

正義ごっこがしたいのなら、好きなだけすればいい。

だがな、ドンが後ろについているとは言え、彼女が近頃やってきたことや、レオンに対しても……いや、俺たちファミリー全体にとっちゃもう無視できないぐらいの悪影響だ。

そんなことまで許すような情けなんざ、ベッローネには必要ない。

それを彼女にしっかりと叩き込まないといけないんだ、もちろんレオンにもな。

さもないと……

俺たちは来たるべき混乱の中から、勝利を掴むことなんざできなくなってしまう。

でも、坊ちゃまは……

あんたらが色々と心配してるのは分かっている。だが今回の一件の責任は全部俺が持つ。後でレオンに問い詰められたとしても、あんたらまでは巻き込まないさ。

……はぁ。
チェッリーニア、お前にはしばらくシラクーザに行って、そこで生活してもらう。
必ずだ。
クルビアのほかファミリーたちは、自分を着飾って、豪華な別荘に住み着いて、いわゆる上流階級に足を踏み入れれば、シラクーザと決別できたとでも思いこんでいる。
連中が言うには、シラクーザはとてもじゃないが野蛮で、自分らはそんなシラクーザよりも上らしい。
そんな浮ついた思想に、お前の父親はどっぷりと染まりきってしまった。
だからお前には、見てやってほしいんだ。
私たちがどこから来たのかを。本当に私たちと彼らは違うのかを。
(何者かが近づいてくる)

……誰だ?

チョコを持ってきてやったよ、いる?

……シラクーザにある刑務所の警備は本当に信用ならないな。

ほかの街のと比べれば、この刑務所の警備は厳重なほうだよ。

……
テキサスは軽くため息をつき、ラップランドの手からチョコを奪い取ってかぶりついた。
しかし、チョコのテイストは彼女の一番嫌いなヤツだった。

アハッ、てっきりボクを追い出すのかと思ったよ。

追い出すよりも、無視しておいたほうが何かと楽だ。

だから私の邪魔をしない限りは好きにしろ。

いやぁ、ジーンと来ちゃうね、テキサス。どんどんボクとの付き合い方が上手くなってきたじゃないか。

邪魔するなんて、ボクはそんなことしないさ。むしろ喜んでその人のために霧を払うよ、前に何があるのかを見てもらうためにね。

サルッツォはどこまで知ってる?

キミよりは少ないよ。

ベッローネは勝機を握っていたが、ロッサーティを牽制するためにわざわざ龍門からキミを呼び戻してきた。何事も未然に防ぐために。

でもよりによってそんな節目に、あの襲撃事件が起こってしまった。

あまりにもタイミングが良すぎるって、そう思わざるを得ないね。手を出した側も、本当に隠れてるつもりあるのかな?

……

でキミはどうするのさ?まさかあの裁判官に出してもらうまで、ここでぽつぽつと龍門の思い出に耽ってるつもりなのかい?

さっさと龍門に帰りたかったんじゃなかったの?

待つことで帰りが早まるのなら、それだけの我慢強さなら私だって持っている。

でもさ、もしあの裁判官が危険な目に遭ったらどうする?

……

例の縛られてる人はどこですか?目は覚めましたか?

あっ、ラヴィニアさん、やっと来た!現場ならすでに取り押さえていますよ。

容疑者ならまだ目は覚めていません、街角にあるゴミ箱の中で縛り付けられていたんです。病院にもすでに連絡はしています。

発見した方は?

ルーチュ・デル・ジョルノ劇団の役者数名です。ただお稽古があるからと、先に行ってしまいました。

ルーチュ・デル・ジョルノですか……ならベルナルドのとこの人間ですね?

まったく、どこに行っても影がつき纏ってくるんですから。

ラヴィニアさん、前回報告したあの殺人事件なんですけど、殺されたのってこの容疑者の仲間でしたよね?

ええ、ただ彼らからは何も証拠は見つけられませんでしたけど。

にしてもこの人、なんでこんなところに……

私が呼び起こしましょうか?

お願いします。
(初期がヒットマンをアーツで起こす)

ゲホゲホッ……ゲホッ!

抵抗しないでください、あなたはすでに取り押さえられていますので。

……ラヴィニアか。

今自分が置かれてる状況は理解できますか?一体誰があなたをここに縛り付けたんです?

裁判官殿、そんなこと聞いてどうする?

答えなさい。

フッ、不当な尋問には黙秘権を行使することができるって、確か刑法の第十四条に書いてあったはずだったな。

……法律のことをよく知っているのですね。

なんだ、第百三十二条にある特別処置の権限を私に使うつもりか?

あなた、一体誰なんです?

ただの殺し屋さ。

いや、思い出した……あなたのことは見たことがあります。

昨日のトラットリアでだろう?あの建設部の雑務を、君は助けてやったもんな。

三年前の法律に関する弁論会で、ですよ。ソレント市のボルトロッティ氏、非常に異彩的で興味深い演説をしてくださいました。

……

そこでのあなたの報告文ですが、とても印象深かったですよ。

今の私は殺しの稼業をやっているんだ、まったく楽なもんだよ。君が言ってることなら、なんのことだか。

なぜ……あなたはそんな人じゃなかったのに。

思い上がるな、ラヴィニア。私を理解してやってるとでも思っているのか?体裁を見繕っていただけの討論会の、そこで出された根拠もない幻想まみれな報告文で?

しかし、あの時の情熱は本物でした。あなただってあの時……

あれは全部ただの戯言、幼稚な議論に過ぎなかったさ。若いうちはみんなそうだ、自分なら世の中を変えられると思い込んでいる。

私はな、ただ君よりもはやく目が覚めただけだよ、ラヴィニア。

「全員を救える最低限のラインを、私たちは見つけるべきだ」と、あなたはそう言っていたじゃないですか。

ファミリーに加わって、ボスの言うことをしっかりと聞いて、邪魔なヤツらを全員片付ければ、見つかるかもしれないな。

ボルトロッティさん、私ならあなたを助けてあげます。

ハッ!助けるだと!?

あぁそうだったよ、君の後ろにはあのご立派なベッローネがついていたんだったな。

名誉も尊厳も失うことはないし、一時的な甘っちょろい考えで攫われることも、殴られることもないだろうな!家に帰ったら、家族もろとも家が燃やさていたなんてことも!

君は何も分かっちゃいないんだ、ラヴィニア。

自分が手に持ってるその法典の重みを、我が身をも滅ぼしかねないほどのその重みを。

だが、そんな君ももうおしまいだ。

ラヴィニアさん、危ないッ!
(矢が飛んでくる)

へ……?
(テキサスがラヴィニアを突き飛ばし、矢の雨から避ける)

今すぐここから逃げるぞ。

テキサスさん?

向こうは人が多い、こっちだ。