
ここから出せ。

お伝えすることならすでに伝えたはずです。

将軍から命令が下りており、玉門の安全を考慮するため、戒厳令が敷かれている間は、誰であれ勝手に街から出ることは許されません。

ですので、どうかお戻りを。

この俺に玉門の安全を語るだぁ?

俺たちがこの玉門を守っていた時、テメェはまだ刀すら触ってもらえねえぐらいのガキだったんだぞ!

……

今は非常事態なため、どうかここはご理解ください。

ご理解くださいだと?

あの時、盗賊どもは街に流れ込んで金銀財宝を奪いながら、たくさんの一般人に危害を加えてきたんだ。

突発的な事態だから、具体的な状況を把握するまでテメェら軍は下手に動けねえって言うもんだから、俺たちが連中を三日三晩も追いかけてきたんだぞ!砂漠の中数百里をな!

そんで半分になっちまった、今にも死に絶えそうな兄弟らを背負って、俺たちはようやくその盗賊連中を街へ引きずり戻してやった!

そんな兄弟が、街の外で死んだんだ!骨さえ拾ってあげられてねえんだぞ!それをここで待てって言うのかァ!?

荊(ジン)さん、あなたが玉門のために尽くしてくれたことなら私たちもよく耳にしていますし、あなたのことも尊敬しています。

しかし左将軍が命令した通り、今は都市内部で犯人を捜索してるため、将軍からの直々の許可がない限り、誰だろうと玉門を出入りすることはできません。

偉くでたもんだな、あのクソ野郎が!

ならその左宣遼に会わせろってんだ!

やめんかお前ら!

鋳剣坊の親方……

遠くからでもお前らがギャーギャー騒いでるのが聞こえてきてるぞ。こいつらも上から命令を貰って従ってるだけだ、困らせるんじゃねえ。

でも、納得がいないだろ……

お前らはみんな、長らくこの玉門と一緒に過ごしてきてくれた連中だ。

何回も都市を守ってきてくれたし、天災が起こってる中トランスポーターを何回も送り迎えしてくれた。こうして玉門が安寧でいられるのもお前らのおかげだ。

だが今の玉門には平祟侯も宗帥もいるんだ、いつからお前らがギャーギャー騒ぎ立てていい番になった!?

親方、あんたまさか……

イイ男ってのは自ら武勇伝を語り出さないもんなのさ。そんなもの、わざわざ口に出さんでも、憶えてくれている人はちゃんと憶えてくれている。知らねえヤツに語ったところ無意味だろうが。

いいから今日はもう帰りな、騒ぎ立てるんじゃない。ここは俺に任せてくれ、死んでいった兄弟たちのことならちゃんと伝えておく。

……

……分かった。
(武人が立ち去る)

うちがしっかりと躾けられていなかったみてぇだ、みんなに迷惑をかけちまったな。

いえ、孟さんのせいではありませんよ。

あの四人の方々のこと……気の毒に思います。

あいつらの遺族なら俺が面倒を見ておくから、平祟侯の手は煩わせねえよ。

だがあいつらは玉門へ情報を届けるために死んでいったんだ。だからみんなに代わって平祟侯に一つ聞いておきたい、あいつは今回の事件に対してどう考えているんだ?

それぞれの事態には軽重の度合いが異なりますから、市内でのさばっている刺客を捉えた暁には、平祟侯も必ずや盗賊どもを一掃してくれましょう。

そうか……“軽重の度合い”ね、言いたいことは分かる。

だがあいつがなんて言うと、俺はそっくりそのまま兄弟たちに伝えておくからな。

事が済んだら、みんなまた鋳剣坊へ来て酒を酌み交わそうや。

あ、ユーシャさん。

そっちはどうだった?犠牲者の家族は見つかったかしら?

四人のうち二人は独身、ないし独り暮らしだったわよ。

んで残りの二人、家の人がちょうど留守をしていたものだったから、勝手に家に上がらせてもらったんだけど……

ただ、家の中の様子がいつもとなんら変わっていなくて、変でした……

もしかしたら、ちょうど外出中だったとか……?

トランスポーターの部隊が襲撃された報せなら昨日すでに市内に出回って、もう丸一日は過ぎているっていうのに留守だった?

……
(山海衆の影が付近をうろつく)

誰ですッ!?

ひゃああああ!何よッ、ビックリしたじゃない!

一瞬、誰かに見られている気配が……

こんな人の往来が激しい街中でよく気付けたものね。

一先ず、宿屋に戻りましょう。
(タイホーが近寄ってくる)

リン・ユーシャ、待たれよ。

えっと、こちらの方は一体……?

この人と少し話があるから、少し待っててちょうだい。

……わかった。

まさか粛政院の観察御史がまだ私のことを憶えてくれていたなんてね。最後に顔を合わせたのって、確か五年前じゃなかったかしら?

あの頃の対面は、実に忘れ難いものであった。

あんまり愉快だったとは言えないけどね。

互いにやらねばならぬ事柄を有していたために、致し方あるまい。

して、リン特使。ここにおられるということは、そちらも玉門での異変の調査にあたっているのか?

何かそちらに不都合でも?

ない。今の私は、官人として介入している訳ではないゆえ。

ただ平祟侯の元部下として、大炎の臣民として、民の安生を乱す奸徒を捉えようとしているだけだ。

あら、今回もタイホー殿から“首を突っ込むな”って言われると思ったのだけれど、意外ね。

今のリン特使は責務を抱えておられる、ならばこちらから制止する理由はない。

しかし、一つだけ訊ねたいことがある。初めて玉門へ来られたため、あまり市内の情勢には詳しくないはずだ、如何ように事件の調査にあたるつもりだ?

私には私なりのやり方があるのだから、タイホー殿が気を配る必要はないわ。

リン特使が他人よりも優れた手段を用いて事態にあたってくれていることなら、こちらも承知している。

もしよかったら、もう少しだけ分かりやすく話してくれないかしら?

先ほど述べた通り、互いにやらねばならぬ事柄がある、という意味だ。

ここへ来たのは、一つリン特使に忠告しておきたかっただけである。敵の素性は未だ不明慮だ、十分に気を付けられよ。

では、ここで失礼する。
(タイホーが立ち去る)

……

あのデカブツ、尚蜀で会ったことがあるわ……粛政院の人間らしいわね。

あんた、一体どれだけの大物と仲がいいのよ?

仲がいいというわけじゃなくて、少しだけ付き合いがあるだけよ。

そんなの、どこに違いがあるの?

付き合いがあるとしても、その全員と仲がいいわけではない。そこが違いよ。

さあ、私たちも戻りましょう。
薄暮。
早春の時期は、まだ日暮れも早く、気温も冷たい。
そこで老人は、炉の中に薪をくべた。
鍛錬することもできず、かといって暖を取ることもできないほどの小さな火だ。しかし、工房に備わっている設備にすべて源石で火を点けておきながらも、老人は執拗にこのような無用の炉を一つだけ残してやっていた。
炉の炎が燃え上がるまで、彼は箒を持ち、昨夜のうちに中庭に積もった砂を丁寧に掃き集める。石レンガのどの隙間さえも見逃さずに。
こんなに綺麗に掃除してやっても、どうせすぐにまた砂が積もってしまう。それぐらいのことは、この老人も当然分かっていた。
しかしそれでも彼も眉間に皺を寄せることもせず、しっかりと中庭を掃いていく。まるでこの工房が綺麗になった様を、もう一度目に納めようとするために。

これで足も温まってきたな。冷えて関節を痛めてしまっちゃ適わねえぜ。
(ドアのノック音)

今日はもう店仕舞いだよ。急ぎじゃないのなら、また明日にでも来てくれや。
(ドアのノック音)

あぁ……?

嬢ちゃん、来る場所を間違えてんぜ?ここは鍛冶屋だ、医館じゃないぞ。

話に出てくる……場所を探してるんだ……

そんなボロボロの様子で、あちこち走り回ったりするもんじゃないよ。

あんまりこんなことは言いたくねえんだけどよ、いま街中は戒厳令が敷かれてるんだ、そこに全身傷だらけの人間が家にやってきたらどう思う?

俺が嬢ちゃんをとっ捕まえてサツに突き付けなきゃ、咎められるのは俺のほうだぜ。

俺も面倒事は嫌いなんだ、だから嬢ちゃんがどういう来歴なのか教えてくれねえか?

あなた……名前はモン・テーイー?

そうだけど、今時俺を直接名前で呼べるような若者なら、みんな印象に残ってる。

でもお前は見ねえ顔だな。

師匠が言ってた、この移動都市のどこかに工房があるって。その工房の親方は、とても技量が高い名人だとも。

色んな武器や鎧を作ることができるし、趣のあるおもちゃを作っては街の子供たちにあげたりするようなことも……

……

俺をそんな風に言ってるくれる人、ほかに誰かいたっけな……

そして工房の中庭には、一本のエンジュの木が植えられている。私たちがずっと遠い場所から持ってきた木だって。
その言葉を聞いて、老人は思わず首を振り向かせた。
中庭の一角に植えられたエンジュの木が一本、夜風を迎えながら微かに枝葉を揺らしている。北の地の春は到来が遅い、その枝には未だに新芽を付けてはいなかった。

ここへ来てようやく、此度の戦も終わりを迎えたな。

こちらも多くの死傷者を出してしまった……だが少なくともこれから二十年ぐらいは、あの盗賊共もロクに活動はできないだろう。

古人は遠征で大勝を収めた際に、一番遠くにある岩山に自らの功績を彫り込むと聞く。此度の戦も、我々が古人に倣うに相応しい戦だったとは思わないか?

ははは、それも悪くない。だが見渡す限り一面の砂漠だ、文字を刻める場所などどこにないぞ……

そこに寂しく一本だけ生えている木があるじゃないか、その木に彫れば――

そりゃいい!名案だな!

何が名案ですか!今すぐにでも枯れてしまいそうな木ですよ!これ以上苦しませるつもり?

なら、ほかに何かいい考えでもあるのか?

移動都市は文字通りずっと移動し続けているんですよ、こんな決まった場所に功績を彫ったって無意味でしょう。

いっそのことこれを持って帰って、玉門に植えてやったほうがいいのでは?

玉門で一日でも長生きしてくれれば、私たちの功績も一日多く記されることになるでしょう?

(手をさする)

うむ、いい。実にいい案だ。

おいおいお前ら、太陽にカンカン照りされて頭がおかしくなっちまったのか?ここは玉門から百里は離れてるんだぞ、なのに木を一本担いでいくつもりか?

まあいいじゃないか。来た時に持ってきた大量の水と食料は底を尽きたんだ、帰りに木を一本多く持ち帰ったところで気にすることもない。

さあズオ殿、テーイー、手を貸してくれ。おっと、根っこを折らないように気を付けてくれよ。
……

……

お前、あいつのことを師匠だって呼んでいたよな……?

うん。師匠は荒野で私と私の一族を助けて、定住の仕方を教えてくれたんだ。

お前、名前は?

ジエユン。

俺の見間違えじゃなきゃ、お前アナサだろ……なんでそんな雅な名前がついてるんだ?

師匠がつけてくれたんだ。

そりゃどうりで。

“雲が動かすは千里の雨、これこの山に截(た)っては晴れ渡る”か。これ以上お前らにあてもなく彷徨ってほしくはなかったんだろうよ。

師匠はもっと上手に詠んでくれたよ。でも、込められた想いは一緒だと思う。

……はは、そりゃそうさ。

言われてみりゃ、宗帥の今の名前もあいつがつけてやったものだったな。

チッ、あの薄情者が!

おいおい、そりゃまたどっから出てきたんだ……?

ちょっと待て、お前その剣は……

宗帥のとこから剣を盗んできたのか?

私はこの剣を、師匠の墓前に供えてあげるんだ。
吹きかける風に葉は揺れ動き、エンジュの木が葉擦れの音を奏でる。
炉に焚かれた火はすでに消えて久しく、空模様も殊更に暗くなってきたが、老人は一歩たりとも動かなかった。
そんな老人の表情を、少女は見えていない。

あいつは――死んじまったのか?

うん、あまりにもひどい病気だったから。

だから最後に、もう一度あの剣が見たいって……それが師匠の願い。私はそれを約束したんだ……あなたも剣を奪うつもりなの?

……そんなことはしねえよ。

だが、今の玉門は危険だぞ。

そんなの分かってる。この剣を奪ったから、軍は私を捕まえようとしているんだ。

いいや、これからここは危なくなるっていう意味で言ったんだ。

ここはこれから一つ試練を迎える。だがそうなる前に、少なくともお前をここから出してやらなきゃならねえな。

お前の師匠は待ってるんだ、俺たちも……申し開きってヤツを。

でも、どうすればここから出られるの?

入って来る時はまったくの無計画だったんだ。それに今は城門も閉ざされてるし、無理にそこを突破するには……私もこんなボロボロだし。
そこでふと、風が吹いた。
細砂は老人の顔に吹き付け、歳月が刻んでいった深い溝の中へと入り込んでいく。
早春の湿気と、ふんわりとした柔らかさを帯びながら。
それを老人は少しだけ拭き取った。

……

方法はある。

おっと、お帰りなさい。

どうでしたか?

医館の中なら誰もいなかったよ。ただ朝廷役職の服装をした若いボンボンの兄ちゃんがいたから、何しに行くんだって聞かれたぐらいかな。

それで、どう答えたんです?

あんたに言われたまま言ってやったさ。「昨日お店の商品棚が崩れて、家の者が頭をぶつけちゃったからここで診てもらったんだけど、慌てて来たものだからお金を忘れて、今日それを払いに来た」ってね。

それを聞いたらそのボンボンの兄ちゃんもどっか行っちゃったよ。よく分かんないけど。

はいこれ、払う用に取っておいたお金も払えなかったから返すよ。

いいんですいいんですぅ、チップだと思ってもらえれば。

そう?じゃあ頂くけど……変ね、玉門の観光シーズンってこんなに稼げたもんだったっけ……
(パシリにされた通行人が立ち去る)

人を丸め込むことに長けたリー殿ともあろう方が、よもや若輩者すら騙すようになったとはな。

なぁにが若輩者ですか、あの人は司歳台の持燭人ですよ?彼を騙すような肝っ玉は生えちゃいませんよ……

今は代わりに、誤解を解いてやっただけですって。

で、リンさんは今何をしてらっしゃるんですか……?

散歩じゃ。

龍門の市民公園でお会いして、散歩だって言われたら信じますけど、ここでその散歩ってのはちょっと……

まあまあ、そちらは何か進展はあったかな?

これがまた変な話でしてね、リンさんから仰せつかった依頼はまったく目星がつかないんですが、なぜその代わりにおれが探してるヤツの手掛かりが出てきたっぽくて。

いいことじゃないか。

おれにこの仕事を依頼してきたのはいいんですけど、ご自分がそう気が気でないのなら、なんでまたご自分でやられないんです?

儂がこの一件に手を出すこととなれば、直接あのウェイの面を引っぱたくことになるのでな。

それにちょうど見ておきたかったんじゃよ、あの子ならどう対処するのかをな。

さすがはリンさん。こんな節目になってもまだ余裕をかましているだなんて。

備えあれば患いなし、とも言う。それにリー殿は信頼に値する人物じゃからな、儂もこうして安心して任せられる。

お前さんを近衛局へ入れられなかったこと、あのウェイもずっと悔しい思いをしてるぐらいだしのう。

まあまあ、その話は別にしなくても……

ウェイ総督は……有能な人なら決して手に入れるまで諦めないお方ですからねぇ。

ところで、リンさんはもうすでにユーシャ嬢に後を引き継がせるおつもりなんですか?

それは儂が決めつけられことではないよ。

あの子が残りたいと言うのなら、龍門にはあの子の居場所があるから心配はいらん。独り立ちしたいと言うのであれば、龍門をあの子の憂いの種にしてはならんわけじゃ。

だからそこでリー殿に頼みたいことがある。あの子がどちらの道を選んだとしても、どうかしばらくの間だけ面倒をかけてやってはくれぬか?

林さんにそこまで信頼して頂けるのは、身に余るほどの光栄ですよ。

雨霞嬢のことなら、こちらもできるだけ手を貸してあげましょう。ご安心ください。

ありがとう、助かるよ。

なら、儂はもうしばらく散策しておこう。そちらの仕事の邪魔をしてはならんしな。
(リンが立ち去る)

はぁ、テンペイよテンペイ、同じ父親だっていうのにお前ってヤツはどうして……

はぁ……

ここへ来るまで、巡防営が市内全域に出した通告は見たか?

欽天監の観測所が出した最新の計算結果によりゃ、天災を避けるために玉門は航路を変更するんだとよ。

明日の申の刻から、都市は減速を開始し、おおよそ酉の刻に航行速度は最低速度まで落ちて、航路を修正した後にまた加速し始める。

そん時がお前のチャンスだ。

でも、都市が減速するば、城門の守備はなおさら厳重になるはずでしょ。

嬢ちゃん、玉門に入ってくる前にしっかりとこの都市を見て回らなかったのか?

ここの土地はどこを見渡しても砂漠で、人里は少なく、厄介事は頻発するけど大炎の領土だ。そんで玉門は、この北方を守るために設計された軍事要塞都市なんだよ。

だからほかの通常の移動都市と違って、玉門の外壁には特別に“砂渠(さきょ)”が設けられているのさ。
曰く、土木天師は江河豊かな江南の地にある“水車”からインスピレーションを受け、それに似た機構をこの要塞都市へ組み込んだ。
砂地を走れば移動都市の基盤は埋もれてしまいがちなんだが、このアーツによって駆動する巨大な水車の働きにより、黄砂は排出され、移動する際に生じる砂の抵抗も排除してくれる。
そういった“砂渠”があるおかげで、この玉門は広大な砂漠の中でもすいすいと航行することができて、情勢に従ってスムーズに移動することができるのさ。
それはまさに水を掻き分けて進んでいく船みたいなものだね、ありゃ壮観だぜ。

……

普通なら、砂渠は決して人が通れるようなルートにはならねえ。

仮にそこに飛び込んだとしても、巨大な水車に圧し潰されてしまうか、無事に下まで降りられたとしても大量の砂に溺れてしまうかのどっちかだ。

だが明日の酉の刻、玉門の航行速度は最低速度にまで落ちる。つまり砂渠も一番遅いスピードで回るようになるから……もしかしたら可能性はあるかもしれねえな。

だとしたら試さないわけにはいかないよ!私は絶対ここから出なきゃならないんだ!

だがそんなケガで動き回れるのか?

大丈夫。

でも……

この前、医館で少しだけ処置してもらったから。

そうか、ならいいんだが。

しかし、普通なら砂渠の警備はそれほど厳重なもんじゃないんだが、今は状況が特殊だからな。市内全域に戒厳令が敷かれてる、もしかしたらそこも変わってるのかもしれねえ。

ここに来るまでの間、今はこの都市の将軍が直々に軍を指揮しているって聞いたよ。

そうだな、どうやら……

やっぱりどうしても顔を合わせなきゃならなくなりそうだ。

出かけるの?

こうなったら、俺も少しだけ様子を見てくる。それに砂渠からの脱出だ、それなりの準備もしなくちゃならねえしな。

出かける際は店頭に準備中のプレートを掛けとくから、お前はその間しっかりと養生しておけ。

しばらくしたらお前を迎えに来るよ。

お嬢。

ユーシャさん?

先に私の部屋に行ってなさい、すぐ行くから。

どうだった?

お嬢が行った後、中から鍛冶師らしき人物が何人か現れまして、何やらブツを所持しながらほかの場所へ移動していきました。

俺も尾行しようとしていたんですが、相手は明らかに経験があるようでして、尾行されていると察知された後、すぐに撒かれてしまいました。

それからもう一回倉庫を調べに戻ってみたんですが、中身はもう空っきしでして。連中が何を隠し持っているかは分かりませんけど、明らかに“ナニ”かがありますよ……

お嬢の直感は間違っちゃいませんでした、やはりあの鍛冶屋が怪しいです。

今はおそらく向こうにもすでに察知されてしまった上、こちらはまだ何も肝心な手掛かりを入手できていない状況だわ。

都市上空を覆う曇雲も日に日に厚みを増していってるし、風に吹かれる砂も多くなってきた……

もう時間はなさそうね。怪しいことが分かった以上、こちらから探りに行ってみましょう。

お嬢、どうかしましたか?

なんでもない、それよりも一つ頼み事が。軍営に行って、あるブツを取り寄せてちょうだい。