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【アークナイツ大陸版】春分「ファン・シャオシー 帰郷への不安」 翻訳

店員
憤る村人

おいシャオシー!梁の上に登って何をするつもりだ!さっさと降りてこい!

店員
憤る村人

ほかんとこで暴れるのならまだしも、ここは“移山廟”なんだぞ!

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

ケッ、イヤなこった!

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

こんな広い村なのに、なんでよりによってウチの“三畝三”にこんなボロい廟を移さなきゃならねえんだよ、イジメだイジメ!周六(ジョウ・ロウ)、なんでお前んとこに移されねえんだよ!

店員
憤る村人

ガキのお前は何も分かっちゃいないんだ!移山廟は千年もこの村に流れている気脈を守ってくれているんだぞ、だから御廟を移す場所もしっかりと見極めなければならないんだ!

店員
憤る村人

これはもう村のみんなで決めたことだ、お前一人が駄々をこねて止めるわけにはいかないんだよ!

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

ペッ、見極めなければならないだァ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

ウチの“三畝三”は昔から草も生えねえ荒れた土地だった、なんでそん時にそこは風水がいいって言わなかったんだよ?ここ数年父ちゃんが一生懸命土地を耕してきたついでに、風水も回ってきたってか?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

結局はおれの一家が村で唯一違う苗字だから、みんなでたかってイジメようとしてるだけなんだろ!言っておくけどな、んなもんそうは行かねえぜ!

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

父ちゃんは言いなりだが、おれサマは違う!

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

お前らみーんな、このぼろい廟で豊作を祈ってるんだろ?なら今日は、そんな廟を炸薬で吹っ飛ばして、みんなのために畑を耕す土地を作ってやるよ!

店員
憤る村人

なッ、よせ!そんなこと許されるわけが――

(爆発音)

チュウバイ
チュウバイ

村に戻ってすぐ囲まれるなんて、一生分の借金を負った賭博のクズでしか見たことがないぞ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

チュウバイ
チュウバイ

だが一つだけ本当のことを言ってくれたな。確かに君は村に歓迎されていないようだ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

だから連れ戻さなくていいつっただろ。

チュウバイ
チュウバイ

だが、こうなった原因はまだ教えてもらっていないぞ。

小さな村の中庭には村人でごった返しており、みんな言葉をかけることもなく、ただひたすら仇白と方小石の二人を囲い込む。まるでどこからか現れた珍しい獣を見つけ、逃がすまいと言わんばかりに。

???
???

ゲホッ、ゲホッ……ちょっと、どいとくれ……

???
???

みんなここに集まってどうしたんだ?小石が満一か月になった時の宴会よりも賑やかじゃないか……

人混みを掻き分けて二人の前に現れたその男は、痩せぼそった背丈をしており、足元もおぼつかず、呼吸も荒い。木材を背負っているからか、背中はまるで腰にぶらさげている弓のように曲がってしまっている。
そんな男はファン・シャオシーを目で捉えれば、最初はしばらく呆然とした後、すぐさま目線を小石から外して去っていった。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

父ちゃん……

耕作する村人
緊張した村人

おい、マタギ……

耕作する村人
緊張した村人

おめー、忘れちゃいねんだろうな……

マタギ
マタギ

自分で言ったことぐらい憶えちゃいるさ。

マタギ
マタギ

だがシャオシーは三年ぶりに帰ってきてくれたんだ。一口ぐらい水を飲ませてやったり、飯を食わせてやってもいいんじゃないのか?

マタギ
マタギ

さあさあ、みんな畑仕事に戻ってくれ。あとでちゃんと親子二人で、村に弁明してやるからさ。

マタギ
マタギ

今だって畑仕事は遅れてしまっているんだ。あと数日もすれば、春分の日も過ぎてしまうぞ……

(村人達が散り始める)

マタギ
マタギ

……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

チュウバイ
チュウバイ

今まであんなに口煩かったのに、自分の父の顔を見た瞬間に口が開かなくなってしまったのか?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

父ちゃん……いたんだ。

チュウバイ
チュウバイ

……

マタギは白くなってしまった唇をすぼめるだけで息子の言葉に返事をすることもなく、静かに家へと入って行き、背負っていた木材を壁際に置いていく。
少年はその場に立ち尽くすだけであったが、仇白が剣柄で軽く彼の背中を押してやった。

マタギ
マタギ

ここまで来るのも大変だったでしょう、お嬢さん。こいつをここまで送り届けてきてくれて本当にありがとうございます。どうぞ座ってください、お水を入れてきますんで。

チュウバイ
チュウバイ

お構いなく。親子の再会によそ者は邪魔でしかありません、ここは失礼いたします。

チュウバイ
チュウバイ

私はしばらく村を見て回ってきますので。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

じゃ、じゃあおれが案内して――

チュウバイ
チュウバイ

君は家に帰るんだ。

(チュウバイが立ち去る)

???
???

そこのお嬢さん、お待ちください。

チュウバイ
チュウバイ

……

(老人が近寄ってくる)

周族長
穏やかな老人

武侠の麗人がシャオシーを村まで送ってくださったと周六たちから聞いたものでしてね、ぜひともお礼を申し上げたいと思って駆けつけた次第です。

周族長
穏やかな老人

その恰好を見るに、お嬢さんは……

チュウバイ
チュウバイ

チュウバイです、ただのしがいない江湖を渡る輩に過ぎません。

周族長
穏やかな老人

謀善村の主な住人らはみな周の姓を持っておりまして、わしは周順(ジョウ・シュン)と申します。ここの村長と族長をやっている者です。

ジョウ族長
ジョウ族長

うちの村は炎国北西にある山間にひっそりと構えているものですから、よそから人が来られることは滅多になくてね。

チュウバイ
チュウバイ

ご安心ください。江湖を練り歩いているとはいえ、狼藉者ではありません。

ジョウ族長
ジョウ族長

申し訳ない、誤解をさせてしまいましたな……

チュウバイ
チュウバイ

たまたま独りでいるあの子を見かけたものでしたから、遠回りついでに、こうしてここまで送り届けた次第です。

ジョウ族長
ジョウ族長

なんてお優しいお方なんだ、本当にありがとうございます……

ジョウ族長
ジョウ族長

お嬢さんはお客人ですので、本来なら手厚くもてなさなければならないのですが、見ての通り貧しい場所でして……もしそちらさえよろしければ――

二人から数メートル離れた場所に、井戸が掘られている。
その井桁に置かれていた木桶に、何かがぶつかったようだ。滑車は激しく揺れ、木桶も一気に井戸の中へと落ちていく。
だがそこへ一本の長い剣が滑車を抑えつけ、縄を締め付けた。
そうしてチュウバイは、井戸の底から木桶を引っ張り上げたのである。

チュウバイ
チュウバイ

どうやら一匹の子駄獣が驚いて井戸に落ちてしまったようです……

ジョウ族長
ジョウ族長

こいつは周大至(ジョウ・ダージー)んとこの子のようだな……

ジョウ族長
ジョウ族長

以前彼が飼っていた母駄獣が難産で死んでしまいましてね。連れ添う母親がいないものですから、こうして小さい頃から躾けることになっているんです。きっと何かに驚いて逃げ出してきたのでしょう……

チュウバイ
チュウバイ

怪我は見当たりませんね。少し水が入ってしまったせいで、気を失ってはいますが。

ジョウ族長
ジョウ族長

その、さっきはどうやって一瞬で井戸の傍へ?なんだか一瞬だけ目の前が霞んだように見たのですが……

ジョウ族長
ジョウ族長

武術の類なのでしょうか?

ジョウ族長
ジョウ族長

……

チュウバイ
チュウバイ

井戸の中を覗いてみたのですが、泥水だらけでしたよ。

ジョウ族長
ジョウ族長

あぁ、それは……先週立て続けに大雨が降ったせいでしょうな。中に溜まった泥や枯葉などの清掃に、まったく手が付けていない状態なんです。

ジョウ族長
ジョウ族長

はぁ、二年前の干ばつで、大半の作物が獲れなくなってしまったことがありまして。

チュウバイ
チュウバイ

どうりで村の至るところに井戸が掘られているわけですか……

ジョウ族長
ジョウ族長

お天道様もひどいものだ。まったく雨を降らせないと思ったら、水害を起こすまでひっきりなしに降らせてくるのだから。。

ジョウ族長
ジョウ族長

ところでお嬢さん、どちらからいらしたので?

チュウバイ
チュウバイ

玉門のほうからです。

ジョウ族長
ジョウ族長

それにしては、姜斉弁の訛りがあるようですが……

チュウバイ
チュウバイ

生まれがそこでして。

ジョウ族長
ジョウ族長

あぁ、なるほど……玉門でしたら、北からこちらへ来られたのかな?もう少し南へ進めば、きっと一部が土砂で流されてしまった馳道が見えるはずですぞ。

チュウバイ
チュウバイ

世知辛い世の中ですね。

ふと咳払いが聞こえてチュウバイの腕の中を見てやれば、幼い駄獣が目を覚ましていた。女剣客が地面に降ろせば、駄獣はすぐさま曲がり角へと消えていき、枯れたエンジュの木だけが目に残った。
もうすでに三月末の時期ではあるものの、春は未だこの北西に位置している小さな村にはやって来ていないようだ。

ジョウ族長
ジョウ族長

確かに世知辛い世の中だ。先ほど小石は独りでいたと仰っておりましたが、きっと外で色々と大変な目に遭ったことでしょうな……

ジョウ族長
ジョウ族長

そこで少しお聞きしたいのですが、シャオシーは外で……また何か悪さでもしませんでしたか?

チュウバイ
チュウバイ

……悪さと言えるようなことならしていませんよ、独り荒野で迷っていただけです。

ジョウ族長
ジョウ族長

あの子ったら、小さい頃からとにかくわんぱくでしてね……

チュウバイ
チュウバイ

ところで族長殿、方小石のことで一つ聞きたいことがあるのですが。

チュウバイ
チュウバイ

村の者たちは、何やらあの子に対して敵意を剥きだしているようですね?

マタギ
マタギ

……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

沈黙がしばらく続いた後、マタギの男が部屋の中へと入って行ったが、獣の皮やら骨を抱えながら再び部屋から出てきた。

マタギ
マタギ

持っていきなさい。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

父ちゃん、これは?

マタギ
マタギ

家の全財産だ。まだ春が来たばかりで獣も活発化していないだろうから、少しは金になるだろう。これで彼女に弁償してやりなさい。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

マタギ
マタギ

なんだ、これでも足りないのか?

マタギ
マタギ

なら少しでも軽くしてくれるように、父さんが頭を下げてこよう……あまり引き受けてくれる人のようには見えないが。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

違う!あの人は弁償を請求しに来たわけじゃねえって!

マタギ
マタギ

盗みか物を壊したから、こうして遠路はるばる村までお前をつまみ返してきたわけじゃないのか?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

おれ、そんなに悪さしかできない子供に見えるのかよ?

マタギ
マタギ

今まであれだけの悪さをしていればな……

(爆発音)

ショックを受ける村人
ショックを受ける村人

なんてことを!門も梁も……ほとんど崩れてしまったわ……

ショックを受ける村人
ショックを受ける村人

数百年よ!移山廟がここに移されてから、ずっとあたしたちを守って来たのに!それがこんな形で破壊されるなんて……なんてバチ当たりな!

耕作する村人
憤る村人

ふぅ~よかったぁ、ご先祖様の像が無事で。おい、もうやめろ、地面に頭をしきりに叩きつけやがって。謝る前にまずはあのガキをとっ捕まえるぞ。

ショックを受ける村人
ショックを受ける村人

そ、そうだったわ……で、シャオシーはどこよ!どこも見当たらないんだけど?

耕作する村人
憤る村人

自分も炸薬で怪我をしちまったみてーだ。血が流れていたし、足を引きずりながら村から逃げて行ったところをさっき見たぞ。炸薬をあんなしこたま用意しやがって、因果応報だってんだ……

ショックを受ける村人
ショックを受ける村人

逃げたですってェ!?

ショックを受ける村人
ショックを受ける村人

そんなに自分ん家の土地に移されるのがイヤだったら、話し合えばよかったでしょうが!こんなことまでして、一体どう責任を取ってくれるのよ……

耕作する村人
憤る村人

怒る気持ちも分かるが、今はとりあえず族長に報せに行ってくれ。俺はマタギんとこに行ってくらぁ……

ショックを受ける村人
ショックを受ける村人

ちょっと、あいつ村から逃げたってさっき言ったわよね?

耕作する村人
憤る村人

あんなひどい怪我をしていたんだぞ!まずは人を呼ばなきゃならねえだろうが!

チュウバイ
チュウバイ

自分が作った炸薬で村の御廟を吹き飛ばした?

チュウバイ
チュウバイ

三年前なら、あの子はまだ十二歳ですよ?

ジョウ族長
ジョウ族長

彼の父親がマタギをやっていまして、獣の巣穴を吹き飛ばすために炸薬を作る時があるんです。あの子も小さい頃から頭が回るうえ、度胸もデカいものですから、こっそり作り方を盗んだんでしょうな。

チュウバイ
チュウバイ

それについてなら私も身をもって知りました……あの子らしいと言えばそうなのでしょうが。

チュウバイ
チュウバイ

御廟というのは村の入口に構えているあの建物のことですよね。ここへ来る際に一目見たのですが、面白い御廟でした。何を祀っておられるのですか?

ジョウ族長
ジョウ族長

わしら謀善村のご先祖様ですよ。

ジョウ族長
ジョウ族長

その昔……とは言っても、わしもいつの頃の話かは憶えていなくて。何代も何代も伝わってきたものですから、数百年かな?いや、千年か?

ジョウ族長
ジョウ族長

まあともかくその昔、この辺りは四方が羽獣すら飛んで越えられそうにない大きな山に囲まれていました。

ジョウ族長
ジョウ族長

そこでご先祖様が、その身一つと鍬一本で土地を耕し、山をも削り取ってくれたおかげで、この村が生まれたのです。

ジョウ族長
ジョウ族長

道中でも見たかと思いますが、周りは荒れた土地しかなくてね。山間の奥にポツンと天災も防げて苗も植えられるような土地があるおかげで、わし含めた村の数百人が辛うじて生きることができているわけです。

チュウバイ
チュウバイ

鍬一本で、お天道様から生きる道を勝ち取ったわけですか。

ジョウ族長
ジョウ族長

御廟のお名前は“移山廟”と呼びましてね。ご先祖様へ感謝の気持ちと、いつまでもわしら子孫がそのご先祖様の精神を忘れないように建てられた御廟なんです。

ジョウ族長
ジョウ族長

もう百千年もの間、この謀善村を守ってきてくれました。

ジョウ族長
ジョウ族長

道理ならみんなもちゃんと理解していますよ。ただの建物じゃ天候を操ることはできないし、それで収穫が増えるわけでもないからね。

ジョウ族長
ジョウ族長

けどこの村のみんなは、代々そうやって祈ってきたわけです。平穏と豊穣というものを……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

怒るんだったら怒ってくれよ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

そうやってずっと見つめられても、逆に気まずいだけだって。

マタギ
マタギ

……見ないうちに大きくなったが、背はあまり伸びていないな。

マタギ
マタギ

この数年ずっと外をうろついて、ロクに飯を食えなかったのだろう。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

なんで今そんな話をするんだよ……

マタギ
マタギ

生きていたのならそれでいいんだ……父さんはただ心配してただけで……

マタギ
マタギ

二人はどうやってここまで戻ってこれたんだ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

歩いてきたんだ、馳道に沿って。そこでたまたまキャラバンと遭遇したもんだから、途中まで車列に乗っけてくれたんだよ。

マタギ
マタギ

ここまでどれくらい掛かったんだ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

一か月ぐらいかな。

マタギ
マタギ

そんな遠くまで行っていたのか……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

父ちゃん……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

ここ数年、父ちゃんは……

マタギ
マタギ

食いっぱぐれてはいないさ、少なくともな。

マタギ
マタギ

ここ数年なぜだかは知らないが、収穫は減るばかり。虫に食い荒らされたと思ったら、お次は干ばつが起こって、井戸を掘っても水が出てこない始末だ。

マタギ
マタギ

おまけに今年の春分の日、ちょうど種まきの時期だってのに、よりによって連日大雨が降りしきったせいで……

マタギ
マタギ

どこもこんな感じなのやら、それともお天道様があえてこんな小さな場所を狙い撃ちにしているのやら……

マタギ
マタギ

それか移山廟に祀ったご先祖様が、もうこの村を守ってくださらなくなったのだろうか……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

全部おれがあの廟をぶっ壊したせいだって、そう言いたいんだろ?

マタギ
マタギ

そういうつもりで言ったわけじゃ……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

そんなこと、バカなヤツが考えることだぜ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

「手元にある農具と土と水を弄る知識があって始めて畑を耕すことができる」って、父ちゃんは昔そう言っていたじゃねえか。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

廟の中に祀られてる石像なんか動けるわけでもねえんだし、おれたちのために少しでも刈り取り作業を手伝ってくれるとでも?

マタギ
マタギ

そういうことじゃない……うまく言えないが、それでも悪いのは俺たちのほうだろ……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

そうやって強気に出られないから村の連中にイジメられるんだよ、父ちゃん!

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

山が少しづつ田んぼを食っちまってるとか、移山廟はいずれ土砂に流されるとか訳の分かんねえことを言って。廟の場所を移すんなら、なんで周六んとこの広くて痩せた土地に移さなかったんだよ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

あいつらはおれたちがよそ者だからイジメてきやがるんだ!

マタギ
マタギ

はぁ、もうこの話はよそう……

チュウバイ
チュウバイ

なるほど、だから村人たちは方小石を見かけるなりあれだけ騒ぎ立てていたのですね。

ジョウ族長
ジョウ族長

……

ジョウ族長
ジョウ族長

そういうわけでもないさ。

ジョウ族長
ジョウ族長

あの子が村から逃げてから、わしはてっきりあの子はもうすでに……

チュウバイ
チュウバイ

……

ジョウ族長
ジョウ族長

あの時御廟を壊し、荒野へ逃げて行った際……重傷を負っていたものですから。

チュウバイ
チュウバイ

捜索はしなかったのですか?

ジョウ族長
ジョウ族長

しました。

ジョウ族長
ジョウ族長

人手を募って何日も何日も、何十里もの範囲をしらみつぶし探し回りましたが、それでも見つかりませんでした。

チュウバイ
チュウバイ

……

ジョウ族長
ジョウ族長

聞くところによると、江南の地はどこも栄えていて、多くの村がひしめき合っているとか。

ジョウ族長
ジョウ族長

それに比べてわしらが住んでいるところは、どこを望んでも灰色の山か黄砂ばかりで、冬になれば一面まっ白に。人が住んでいたとしても、鬼ごっこでもしてるのかと思えてしまうぐらい分かりづらい。

ジョウ族長
ジョウ族長

そこら中で獣たちが跋扈しているうえ、山道も険しいものです。なんなら、逃げてきた盗賊共と鉢合わせることもしばしば……

ジョウ族長
ジョウ族長

ですのであんな重傷を負った子供が独りで村から出て行ってしまえば、わしらも仕方なくそう思えてしまって……

チュウバイ
チュウバイ

なら、彼もしぶといものですね。今はあんなにピンピンしているのですから。

ジョウ族長
ジョウ族長

無事ならそれでいい、それでいいんです。

チュウバイ
チュウバイ

そこで一つ、族長殿に伝えしたいことがありまして……

ジョウ族長
ジョウ族長

なんなりと。

チュウバイ
チュウバイ

私はあくまであの子を村まで送り返しただけですので、あなた方のやり方についてあれこれと口を挟む資格はないでしょう。

チュウバイ
チュウバイ

しかしこうしてあの子を村まで送り返してきた以上、私もあの子の対する責任というものが出来るはずです。

ジョウ族長
ジョウ族長

……そうでしょうな。

チュウバイ
チュウバイ

“人を見る目がある”とは言いませんが、あの子としばらく共に過ごしてきて、多少なりともあの子の為人を知ることができましたよ。

チュウバイ
チュウバイ

確かに少々やんちゃなところはありますが、性根までが腐っているわけではありません……

チュウバイ
チュウバイ

ですので、どうかあまりあの子を責めないでやってください。

ジョウ族長
ジョウ族長

おぉ、てっきりその逆かを言うのかとばかり……

ジョウ族長
ジョウ族長

それについてはご安心ください。ここは貧しいヤツらしかおりませんが、それでも最低限ヒトとしての心というものを持ち合わせておりますよ……

ジョウ族長
ジョウ族長

恨みというものは……追い求めれば、一体最後に誰への恨みに辿りつくものなのでしょう?この四方を囲む山々への恨みでしょうか?お天道様への恨みでしょうか?それとも……

ジョウ族長
ジョウ族長

たった十何歳しかなっていない、子供への恨みでしょうか?

ジョウ族長
ジョウ族長

チュウ殿も先ほど仰ったように、この世は世知辛い。我々もただ村のみんなが少しでも安心していい暮らしができるようにと、御廟の遷移に思い立っただけ。だがいま考えれば、それも度が過ぎていたようです。

ジョウ族長
ジョウ族長

それもすべて、このわしがマタギ一家に申し訳が立たないことをしてしまったせいだ……

チュウバイ
チュウバイ

族長殿は実に物分かりがいいお方だ。

チュウバイ
チュウバイ

ご自分を責める必要ならありませんよ。シャオシーは間違ったことをしたのは事実ですし、この三年間もさぞ辛い思いをたくさんしてきたことでしょう。それでも反省していないのであれば、叱り付けて当然です。

チュウバイ
チュウバイ

過ちを犯し、痛い目に遭い、物を憶えてこそ、真人間になれるというものですから。

ジョウ族長
ジョウ族長

チュウ殿も、実に筋が通ったお方だ。

チュウバイ
チュウバイ

そんなことはありません。

チュウバイ
チュウバイ

しかし族長殿の理解も得られたことですし、私も一安心しました。

ジョウ族長
ジョウ族長

そう、ですな……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

廟を壊したのはこのおれだ、そんなおれが三年ぶりに村に帰ってきた。それでも恨みを抱いているのなら、おれに突っかかってくればいいだけの話だろ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

だがもし今もそんなことを思っているのなら、またもう一回ぶっ壊してやるけどな!

マタギ
マタギ

ああそうか、なら好きなだけ暴れ回ればいいさ!

マタギ
マタギ

三年前にあれだけのことをしでかしたんだ、なら三年後の今はさぞかしもっとけしからんことができるはずだろうな。

マタギ
マタギ

お前は一体ここに何しに戻ってきたんだ?もう一回そうやって暴れ回って、また逃げ出すつもりで帰ってきたというのか?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

もういいよ。

マタギ
マタギ

はぁ……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

それより父ちゃん、なんで木材をこんなに家まで運んできているんだよ?

マタギ
マタギ

……

マタギ
マタギ

……棺を作るためだよ。

マタギ
マタギ

父さんは日に日に身体がダメになってきているんだ。数年前置いてあった棺桶の木材なら、すべて御廟修復のために村に出してしまったからな。

マタギ
マタギ

自分の息子は行方も生死も不明になってしまったんだ。ならいっそのこと、この中で横になってしまったほうがいい。それでどれだけ楽になれるものか。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

そんなこと言わないでくれよ、父ちゃん……

マタギ
マタギ

父さんはな、まるまる一か月ずっとお前を探し回ってきたんだぞ……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

あん時ひどい怪我をしたけど、馳道んとこまで持ちこたえたんだ。そこで気絶しちまったけど……

マタギ
マタギ

そういうところは冴えてる。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

んでそこを通ったキャラバンに見つけてくれて、飼料を運ぶ駄獣に運んでもらったんだ。そっから目が覚めたら、もう移動都市の中だった。

マタギ
マタギ

いい人に出会えて本当によかったな、獣じゃなくて。

マタギ
マタギ

それで、怪我が治った後はどうしたんだ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

そ、それなりのオトナになってから帰ろうと思って。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

おれが移動都市で何をしたのかって、聞かないのか?

マタギ
マタギ

そこで真人間をきちんとやっていたのなら、こうしてあの剣客さんに家まで連れて返されるはずもないだろ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

マタギ
マタギ

前にも言ったはずだ。こんな小さな村にもいられないのなら、町や移動都市に行ってもさらに苦い思いをするだけだと。命拾いできただけでも、不幸中の幸いというものだ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

マタギ
マタギ

父さんは移動都市に行ったことがないから、そこがどういう場所なのかは分からない。あとで父さんに色々と見てきたものを教えてくれるか?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……うん。

マタギ
マタギ

それじゃあ、もうここで暴れ回らないって誓えるか?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

村の連中がもう二度とイジメてこなければな。

マタギ
マタギ

まだそうやって意固地になって……

マタギ
マタギ

お前がいなくなってからの数日間、族長が村中を総動員して、父さんと一緒に探し回ってくれたんだぞ。

マタギ
マタギ

それから父さんはずっと一人で過ごしてきたが、困らせるようなことは一回もされていない。家のあの“三畝三”の畑だって、ちゃんとそのまま残っているじゃないか。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

だったら、あいつらも最低限の良心ってもんがあったってわけだ……

マタギ
マタギ

一つだけ、父さんと約束してもらえないか……

マタギ
マタギ

ここで大人しくしていてくれ……頼む……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

わかったよ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

もう行っちゃうのか?今度は江南のほうに?

チュウバイ
チュウバイ

私にも自ずと行くべきところがあるからな。君をここまで送り届けただけでも、かなり遠回りしてきたことになるんだぞ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

だとしても急ぐ必要はねーじゃん!ほら、もうすぐ日も暮れちゃうし。いっそのこともう何日かここで休んでいけよ、おれに武術を教えながら!

チュウバイ
チュウバイ

あれだけ痛い目を見てきたのに、まだ全然懲りていないようだな?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

うっ……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

なあ父ちゃん、どうする……?

マタギ
マタギ

本当にありがとうございます、この子を無事ここまで送り届けてくれて。お礼をしたいのは山々なんですが、家には何もお返しできるものが置いてなくて……

チュウバイ
チュウバイ

いえ、お構いなく。

マタギ
マタギ

そこまでお急ぎなのでしたら、ここで引き留めてしまっても野暮なものでしょう。どうかお気を付けて。

チュウバイ
チュウバイ

ファン・シャオシー、こうして巡り合えたのも何かの縁だ。だから少しだけ君に助言をしておこう。

チュウバイ
チュウバイ

世の中は危なく険しいものだ。君も付けるべき見識を付けて家へ戻ってきたのだから、これからはもうごねないで、大人しく誠実に生きていくんだぞ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

ヘッ、どこへ行ったっておれサマはおれサマだ。いつかきっと、姉さんも江南の地でこのおれサマのファン・シャオシーの名を聞くことになるはずだぜ。

チュウバイ
チュウバイ

悪人として名を轟かせていなければそれで十分だ。

チュウバイ
チュウバイ

もし次も何か悪さをしたのなら、その時はまた私みたいな話の通じる相手と出会えるわけではない。よく覚えていくことだ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

えっ、話が通じるって、姉さんがか……?いやッ、なんでもない!ほらもう行くんだろ、はやく行きなって。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

そうだ、最後によく武侠らが言ってるあの決めセリフを言ってくれよ。ほら、よく本とかに書いてあるアレだよ、アレ……

チュウバイ
チュウバイ

アレ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

“また相見えよう”ってやつ!

チュウバイ
チュウバイ

ふふっ、また相見えよう。

チュウバイ
チュウバイ

……

ジョウ族長
ジョウ族長

村の外まで送りましょう、チュウ殿。

チュウバイ
チュウバイ

いえ、そんなお気遣いいただかなくとも。

ジョウ族長
ジョウ族長

いいんですいいんです。

ジョウ族長
ジョウ族長

村の道はもう随分と手が付けられていないものですから、デコボコでして。ですので、村の入口まで送らせてください。

チュウバイ
チュウバイ

……

チュウバイは足早に進んでいき、族長は辛うじてそれに追いついていく。その間二人は一言も会話を交わすことはなかった。
空模様も徐々に暗くなってきた。思えば奇妙なことに、江湖を練り歩く者たちというのは総じていつも日が暮れた後に道を急ぐ。
村の入口に建てられた例の墓も低く地面に突っ伏しているように見え、夜の中では存外に目立たない。

チュウバイ
チュウバイ

……

ジョウ族長
ジョウ族長

周四(ジョウ・スー)、みんな出揃ったか?

???
見物する村人

もう一回数えてみますね……

???
見物する村人

大遠は今日畑仕事する際に、犂で足にケガをさせてしまったみたいなんで来ていません。それ以外はみんな揃っていますよ。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

なあ父ちゃん、ここ村の全員が集まってんぜ?ちょっと集まり過ぎなんじゃねえの?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

それにおれたちは周(ジョウ)の人じゃねえだろ。前に一族会議が開かれた時だって呼ばれなかったのに、なんで今さらおれたちが……

マタギ
マタギ

はぁ……

マタギ
マタギ

そりゃ俺たちと関係があるから呼ばれたに決まっているだろ……

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

三年越しに、シャオシーは再びこの廟の中へ入っていった。今回は手製の炸薬は持っておらず、その代わりとして歳衰えた父が傍に立ってくれている。
あの頃彼に壊されてしまった壁や山を掘っている人の石像はすっかり修復されていた。だがその石像は以前と違って、随分と滑稽な様相に直されていたため、方小石はそれを見て思わずクスッと笑い出してしまう。
一方、石畳みは何個も割れていたままだった。高所にある梁には虫が網を張っており、何層にも重ねられているそれは、まるで老木と同じように色褪せたように見える。
中が薄暗くてよく見えなかったのかもしれない。この廟は果たして本当に修復で一新されたのか、それともむしろさらに朽ち果ててしまったのか、方小石も一瞬だけ困惑してしまっていた。

ジョウ族長
ジョウ族長

……

ジョウ族長
ジョウ族長

よし、ではそうしよう。

ジョウ族長
ジョウ族長

つい先ほど、シャオシーがみんなに謝罪をしてくれたはずだ。当時はこの子もまだ幼かったうえ、マタギもここ三年ずっと御廟の修復作業に尽力してくれたため、我々もこのことについては水に流そうと考えている。

???
見物する村人

それは分かったからさ、はやく本題に入ってくださいよ、族長。

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

……

ジョウ族長
ジョウ族長

マタギ、わしらの村に来て今年でもう何年になる?

マタギ
マタギ

今年も入れれば、二十一年になります。

ジョウ族長
ジョウ族長

うむ。お前たち一家は村で唯一周の姓を持たないよそ者だった。だがわしらから嫁を貰って、しかもこれだけ長い間ここに住んできたのなら、とっく同じ家族と言っても差し支えないだろう。

ジョウ族長
ジョウ族長

これまでの誤解やお前たちとの間に生じたわだかまりも、今やもう過去のことだ。

ジョウ族長
ジョウ族長

だからわしら周一族は、お前たち一家を受け入れよう。これからはご先祖様もきっとわしらと同じように、お前たち親子を見守ってくださるはずだ。

ジョウ族長
ジョウ族長

そっちさえ良ければ、シャオシーが周の姓に改めてもらって構わんぞ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

えぇ!?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

一体どういう風の吹き回しだ……?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

いやいや、いいよ。おれ自分の名前気に入ってるし、ワケもなく苗字を改める必要なんてねえだろ?

ファン・シャオシー
ファン・シャオシー

それよりも族長、言いたいことがあるんだったらはっきり言いなよ。

ジョウ族長
ジョウ族長

まああれだ……家族であるのなら、共に手を取り合って苦難を乗り越えなければならないものだろ?

ジョウ族長
ジョウ族長

今日こうして村の全員をここに呼んだのは、主に一つ伝えたいことがあったからだ。

ジョウ族長
ジョウ族長

シャオシーよ……いっぺん、村のために死んでくれぬか?

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