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【アークナイツ大陸版】12章 驚霆無声 12-8「前線での再会」行動後 翻訳

シージ
シージ

……

シージ
シージ

だいぶ様変わりしてしまったな、ここは。

“グレイハット”
“グレイハット”

あたり一面、廃墟に屍、そして死体から飛散してくる源石粉塵だらけですからね。

“グレイハット”
“グレイハット”

ロドスの皆様は鉱石病の専門家です、私からあえて防護するように進言する必要もないかと思います。

アーミヤ
アーミヤ

戦争が新たな感染者を生み出しているんです……こんな環境ではますますひどい境遇になるばかりでしょう。

イネス
イネス

病の苦しみにしろ、戦争の傷跡にしろ……いきなりこんな状況に放り投げだされたら、なかなかそれらに気づくことは難しいかもしれないけれど……

イネス
イネス

でもすぐにも理解するはずよ、一気にね。

イネス
イネス

どうやって人々の思考が腐り果てていくのか、あるいは戸惑いの中で死んでいったり、怒りによって集った人々のことなら、想像に難くないはずよ。

イネス
イネス

そういった怒りが宿った人たちのことなら、あなたも見たことがあるはずだわ、ドクター。

ドクター
ドクター

レユニオンのことか。

イネス
イネス

戦争はそうした人々に想定外の言い訳を与えてくるのよ。生活の保障がなければ、もっとひどいことになるでしょうね。

アーミヤ
アーミヤ

原因はなんであれ、私たちでテレシスを阻止しなければならないのです。

アーミヤ
アーミヤ

……それと、テレジアさんも。

(無線音)

“グレイハット”
“グレイハット”

……了解。

“グレイハット”
“グレイハット”

どうやらここで一旦お別れをしなくてはならなくなりました。あなた方の任務は先ほどお伝えした通りです、これから忙しくなるでしょう。

“グレイハット”
“グレイハット”

では、私はしばらく失礼させていただきます。

“グレイハット”
“グレイハット”

くれぐれも、サボらないようお願いいたしますよ。

(グレイハットがその場から消える)

インドラ
インドラ

あいつ……マジで気味悪すぎてゾッとしちまうぜ。

インドラ
インドラ

昔出会ったあの警察署長のホイットマンだってあんな薄気味悪くなかったぞ。

インドラ
インドラ

まあ、あんなやつのことは放っておくとして。みんな、ようこそ俺たちグラスゴーのシマへ。少なくともシマ“だった”場所だ。

インドラ
インドラ

俺たちがここを出ていって随分経つが……ベアードのやつ、ちゃんとジムで留守番をしてくれているといいんだがな……

インドラ
インドラ

……

インドラ
インドラ

おいシージ、それにモーガン。なんで急に黙り込みやがったんだよ?

モーガン
モーガン

……

モーガン
モーガン

吾輩……なんか踏んじゃいけないものを踏みつけちゃったように……

インドラ
インドラ

は?こんな街中で踏みつけるもんなら、どうせどっかん家が飼ってるペットかなんか……

インドラ
インドラ

――

インドラ
インドラ

なんなんだよこりゃ……

ドクター
ドクター

アーミヤ、見るんじゃない。

アーミヤ
アーミヤ

……

アーミヤ
アーミヤ

すみません、もう目に入ってしまいました。それと、ここよりもさらに悲惨な場面なら過去の幻影で見たことがあるので大丈夫ですよ。

アーミヤ
アーミヤ

こうした事態を引き起こさないためにも、私たちはここまでやって来たんです。

アーミヤ
アーミヤ

あのハット帽を被った人が私たちをここまで連れてきて、しかも取引に関わらないことであれば好きに動いてもいいと仰っていた以上、彼の目的も伺えます。

アーミヤ
アーミヤ

私たちがここを放っておけないことを、彼は分かっていたんです。私たちの行動を彼が奉仕する公爵の手柄として仕向けていることも。

アーミヤ
アーミヤ

けど、そんなことは気にしません。

アーミヤ
アーミヤ

その公爵がどんな風に私たちを利用していようが。どんな名声を積み重ねていようが。

アーミヤ
アーミヤ

それでほかの公爵たちが人心の奪い合いに発展しようと。私たちになんらかのアクションを引き起こすことになろうと。私はまったく気にしません。

アーミヤ
アーミヤ

ただ、ここを見過ごすわけにはいかない。それだけのことです。

アーミヤ
アーミヤ

これは私たちとなんら関係のない国で、関係のない街で、関係のない場所で起こった出来事……というわけではありません。

アーミヤ
アーミヤ

こういうことは、誰の身にも起こっていることなんです。

アーミヤ
アーミヤ

信頼というのは、いつだって脆弱なもの。一度でもひび割れてしまえば、元通りにすることは極めて困難です。

アーミヤ
アーミヤ

さあドクター、多くはないですけど薬を持ってきています。できるだけはやくここにいる人たちを助けてあげましょう。

憤慨する市民
重傷を負った市民

……

アーミヤ
アーミヤ

よし、これでもう大丈夫なはずです。

アーミヤ
アーミヤ

すみません、こういった基礎的な応急手当しかできなくて。私は専門のお医者さんではないものですから。

アーミヤ
アーミヤ

今はとりあえず、あなたの鉱石病の感染状況と傷口の悪化を抑え込んでおきました。

アーミヤ
アーミヤ

あとは運次第です。しっかり栄養を取って、養生してくださいね。

アーミヤ
アーミヤ

あっ、もしよろしければ、家まで送って差し上げましょうか?

憤慨する市民
重傷を負った市民

い、いや!全然そんなことしなくても大丈夫だよ!

憤慨する市民
重傷を負った市民

ちょっと空腹で気が失いそうだったから、道端で寝てただけだ。

憤慨する市民
重傷を負った市民

それより……見返りはなんなんだ?俺……何も持っていないぞ……

アーミヤ
アーミヤ

……見返りはいりません。

憤慨する市民
重傷を負った市民

えっ……なにもいらないのか?

アーミヤ
アーミヤ

はい、何もいりません。さっ、今日はもう帰っていただいて結構ですよ。

アーミヤ
アーミヤ

(小声)それとこれを。少しばかりの食料です、ほかの人にバレないように隠しておいてくださいね。

憤慨する市民
重傷を負った市民

……

憤慨する市民
重傷を負った市民

わ、分かった。じゃあ帰らせてもらうよ……

アーミヤ
アーミヤ

(小声)かなり空腹期間が長かったので、急いで食べないようにしてくださいね。まずはゆっくり身体を回復させてあげましょう。

憤慨する市民
重傷を負った市民

……わ、分かった。

憤慨する市民
重傷を負った市民

……ありがとう。

(市民が走り去る)

イネス
イネス

アーミヤ、周りからすごく見られているわよ。

イネス
イネス

ほとんどが良からぬことを企んでる連中だけど。

イネス
イネス

そのうち二人が動き出したわ、いま火炎瓶を用意してるところ。

アーミヤ
アーミヤ

分かりました。

アーミヤ
アーミヤ

でもそれって、絶望した人たちや今にも亡くなりそうな重症者が私たちを見つけたことってことにもなりますよね。

アーミヤ
アーミヤ

私たちがここにいるだけでも、きっと僅かな希望を見出してくれるはずです。

ドクター
ドクター

だがここは何もかもが崩壊してる、慎重に動いたほうがいい。

アーミヤ
アーミヤ

ええ。

アーミヤ
アーミヤ

今は私たちへの信頼を築くことが目的ではなく……あくまでここにいる人たち同士の信頼を回復させることです。

アーミヤ
アーミヤ

そうでもしない限り、社会は再び動かすことはできませんから。

(何者かが駆け寄ってくる)

イネス
イネス

アーミヤ、誰か近づいてきてるわ。

シージ
シージ

私が対応しよう。

シージ
シージ

ここは私たちの街だ、この憎悪入り乱れる混乱から救い出してやらねば。

ダグザ
ダグザ

誰が来ようとなぎ倒すだけだ。

ダグザ
ダグザ

気を付けてくれ、そろそろ来るぞ。

(ベアードがダグザに襲いかかる)

モーガン
モーガン

お待ち!

インドラ
インドラ

お前は――

ベアード
ベアード

(小声)騒ぐんじゃない。でないと一発ぶん殴ってやるよ、ハンナ。

ベアード
ベアード

(小声)よくもまあ堂々とこんな派手なことを……ここにいる人たち全員から狙われたいわけ?

ベアード
ベアード

(小声)今は黙ってあたしについて来て。

飢えた暴徒
飢えた暴徒

あいつらが逃げるぞ!

飢えた暴徒
憤慨する暴徒

チクショ!グラスゴーの連中に先を越された!

飢えた暴徒
飢えた暴徒

囲い込め!

イネス
イネス

邪魔しないでもらえるかしら?

シージ
シージ

イネス、今はまだ手を出すな。

シージ
シージ

このうちのほとんどが……顔見知りなんだ。彼らはただ恐怖によって頭がおかしくなってしまっただけに過ぎない。

シージ
シージ

今はまだ殺すな。

ベアード
ベアード

(小声)いつもビリヤードをしに通った道を通ろう、入口はあの時のままだから。

シージ
シージ

(小声)分かった。

シージ
シージ

(小声)また後でな……ベアード。

シージ
シージ

よし、みんなついて来てくれ!

(シージ達が走り去る)

飢えた暴徒
憤慨する暴徒

急げ!まかれるぞ!

飢えた暴徒
飢えた暴徒

む、ムリだよ……もう何日もメシが食えてねえんだから……

飢えた暴徒
憤慨する暴徒

だったらすっこんでろ!そこら辺の死肉でもかじっておけ、この役立たずが!

レイド
レイド

……

飢えた暴徒
憤慨する暴徒

なんだよ、邪魔する気か?

レイド
レイド

あいつらは?

飢えた暴徒
憤慨する暴徒

あ?ほかに誰がいるってんだ、グラスゴーギャングの連中に決まってるだろ!

レイド
レイド

グラスゴーギャング……

飢えた暴徒
憤慨する暴徒

で、お前はなにがしたんだ?こっちにつくのか、それと俺らにやられたいのか……

(レイドが暴徒を殴り倒す)

レイド
レイド

あいつらのことは以前見たことがある、あの服装……

レイド
レイド

どうやらここの情勢は想像よりも複雑みたいだ。

レイド
レイド

こっちも急がないと。

サルカズの兵士
サルカズの兵士

今日はなんだかいつもより騒がしいな?奥でまたどっか火事が起っちまったのか?

パプリカ
パプリカ

ウチが見にいこっか?

パプリカ
パプリカ

もしあちこちに広がっちゃったら……

サルカズの兵士
サルカズの兵士

いいんだよ、放っておけ。

サルカズの兵士
サルカズの兵士

お前はしっかりとヘマをせず自分の仕事に集中すりゃいい。

サルカズの兵士
サルカズの兵士

ここじゃ誰もお前を守っちゃくれねえからな。

(マンフレッドが姿を現す)

パプリカ
パプリカ

しょ……将軍!?

サルカズの兵士
サルカズの兵士

ま、マンフレッド将軍!?どうして将軍がこんなところに……?

サルカズの兵士
サルカズの兵士

す、すべて異常なしであります!な、何もご心配するようなことはありません!

マンフレッドはサルカズ兵の報告に目もくれず、封鎖区域の周辺を囲ったバリケードのもとへ行き、遠く奥にある建物を眺めた。

サルカズの兵士
サルカズの兵士

な、何かおかしな点でもありましたか?

マンフレッド
マンフレッド

……

マンフレッド
マンフレッド

戦争は今も順調に進んでいる。

マンフレッド
マンフレッド

パプリカ。この数日間、お前は何を見た?

パプリカ
パプリカ

えっーっと……

パプリカ
パプリカ

奥の人たちが、殺し合いをしてるところを見たっす。

パプリカ
パプリカ

いや、殺し合いと言うより……あの人たちはただ……怖がってるような……

マンフレッド
マンフレッド

恐怖と猜疑心は人間性を殺してしまうからな。これまでの結びつきやら風習、そして道徳心も、こんな極限な環境下ではすぐにひび割れてしまう。

マンフレッド
マンフレッド

かつてのカズデルも、まさにこれと同じ境遇にあった。

パプリカ
パプリカ

カズデル……

マンフレッド
マンフレッド

だからこそ、あのお二方が立ち上がってくださったのだよ。

パプリカ
パプリカ

それって……

マンフレッド
マンフレッド

一つ訊ねようか。どうすれば、人々はまた一致団結することができると考える?

パプリカ
パプリカ

それは……我慢することっすかね?説得し合ったり、あるいは善意を向けてあげたりして……

パプリカ
パプリカ

だから十分な時間があれば、みんな一つにまとまるんじゃないかって……

マンフレッド
マンフレッド

……そうか。しかしだ、テレジア様はその方法を取って失敗してしまわれたのだよ。

マンフレッド
マンフレッド

まとまったとしても、その結びつきはあまりにも脆弱だったのだ。

マンフレッド
マンフレッド

だがテレシス様は違った。あのお方は分かっていたのだ、最も効率的なやり方は……憎悪を利用することなのだと。

そう言い終えて、マンフレッドは淡々とこの歳若い傭兵の少女に目を下ろす。視線を向けられた少女は緊張から大きく息を吸うことも憚られ、ただ俯いてじっとつま先を見つめることしかできなかった。

マンフレッド
マンフレッド

……自分の食料品や医薬品を、こっそりこの中にいる人たちに分け与えているな?

パプリカ
パプリカ

ッ、違うんっす!あげてるのはサルカズで!ウチはてっきり……

サルカズの兵士
サルカズの兵士

なんだとォ!?テメェなんてことを……!

サルカズの兵士
サルカズの兵士

ヴィクトリアについてるサルカズなんざ、死んで当然だ!

サルカズの兵士
サルカズの兵士

ご安心ください、マンフレッド将軍!俺が今すぐ……

マンフレッド
マンフレッド

いいや。続けてくれても構わない。

サルカズの兵士
サルカズの兵士

……はい?

マンフレッド
マンフレッド

今はまだ、この中にいる人たちを餓死させるわけにはいかんからな。

マンフレッド
マンフレッド

この者たちは……いずれ軍事委員会のために大きく役立ってくれるだろう。

シージ
シージ

ここは……何も変わっていないな。

シージ
シージ

見ろ、モーガンの落書きもそのままだぞ。

モーガン
モーガン

今こうして思い返すと、あの時の吾輩の絵心はホントひどいもんだったよ。

インドラ
インドラ

今も大して変わんねえだろ。

モーガン
モーガン

何よハンナ!ケンカ売ってるの!?

目の前で騒ぎ立てる二人を見て、ベアードとシージは互いに目を合わせた後に首を振りながら笑みをこぼした。
封鎖した玄関口、そして木の板が張られた窓と彼女らの疲弊しきった表情さえ除けば、ここはあの時からなんら変わってはいない。
きっとこの場にいる誰もが理解しているはずだ。“何も変わっていない”はただある種の慰めであり、錯覚に過ぎないのだと。
過去におけるどんな瞬間であっても、彼女らの身に傷痕を残してしまっているのだから。

シージ
シージ

久しいな、ベアード。

ベアード
ベアード

そうだね。久しぶり、ヴィーナ。

シージ
シージ

貴様がこうして元気でいることを知れて嬉しく思うぞ。ここ最近一番の報せだ。

ベアード
ベアード

あたしは昔っからタフだからね。

シージ
シージ

ふふっ、それもそうだったな。

ベアード
ベアード

あたしも……嬉しいよ、あんたが想像する以上にね。だってこうして戻ってきてくれたんだから。

ベアード
ベアード

ずっと戻ってきてくれるって信じてたよ。なんせこの“あごズレ”の看板、あの時はあたしたちが一緒に立て掛けたんだからさ。

ベアード
ベアード

でもごめんね。今はもう周りの状況のせいで、あんまり笑う表情ができそうにないんだ。

シージ
シージ

分かっているさ。

ベアード
ベアード

……ただまあ、あたしたちのためだけに戻ってきたわけじゃないのも分かっているよ。

ベアード
ベアード

五年前急いでここから出ていった頃からすっかり、ここはあの連中が執拗にあんたを狙う狩場になっちゃっていたからね。

シージ
シージ

すまない、あの時は……まだ覚悟が決まっていなかった。

シージ
シージ

出て行ったのも、ほかの人たちを巻き込みたくないと思っていたからなんだ。

ベアード
ベアード

じゃあ今は覚悟が決まったってことでいいのかな?だってこうしてまたあたしたちの街に戻ってきたんだから。

シージ
シージ

……そう思いたい。

シージ
シージ

紹介が遅れたな、この者たちはロドス。ここでサルカズの飛空船を探しているんだ、私は彼らのオペレーターとして捜索に協力している。

シージ
シージ

とはいえ、グラスゴーの一員ではなくなったわけではない。

シージ
シージ

貴様らのことも必ずここから救い出してみせる、今まで通りな。それが私の貴様らに対する責任だ。

ベアード
ベアード

ふふっ、ヴィーナは相変わらずだね。ちっとも変わっていない。

シージ
シージ

……ちっとも変わっていない、か。

ベアード
ベアード

でも、知らなかったな……

ベアード
ベアード

……

カドール
カドール

おいベアード、こっちは食料がもうカツカツなんだ。こんな大所帯を連れてこられても困るぜ。

カドール
カドール

それともなんだ?このまま食料を食い尽くしてここを解散させたいわけか?それか俺に、どっかの警備が張り巡らされたトーチカから食料をぶんどってほしいのか?

ダフネ
ダフネ

そう言わないでよ、カドール。

ダフネ
ダフネ

まあ確かに、カツカツではあるけど……

アーミヤ
アーミヤ

あっ、それならご安心ください。自前でそれなりの食料を持ってきていますから。

ダフネ
ダフネ

うーん、この量……それなりとは言えないかな。まあ、一時的には凌げそうだけど。

アーミヤ
アーミヤ

この街を元通りにするおつもりはありませんか?私たちにもぜひ協力させてください。

アーミヤ
アーミヤ

この区画にいる住民らに団結を呼びかければ……

カドール
カドール

フッ、団結するよう呼びかけるねぇ……

カドール
カドール

簡単に言ってくれるが、そう簡単にできるもんじゃねえんだよ。まあ、やってみればいいんじゃねえの?

カドール
カドール

お前らが……そのキッカケになってくれさえすればな。

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