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【アークナイツ大陸版】空想の花庭 HE-5「主は聖殿にあり」行動前 翻訳

レイモンド
レイモンド

……そいつはどういう意味だ?

レイモンド
レイモンド

俺を疑ってんのか?

パニクる住民
パニクる住民

そういう意味じゃなくて……

レイモンド
レイモンド

お前らはどうなんだ?お前らもこいつと一緒で俺を疑ってんのか?

冷静な住民
冷静な住民

……

焦る住民
焦る住民

人聞きの悪いことを言わないでくれ、レイモンド。疑ってるとかそんなこと……

レイモンド
レイモンド

言っとくが、俺は放火なんざしてねえ。

パニクる住民
パニクる住民

じゃあ、どうしてここに現れたんだ?

パニクる住民
パニクる住民

普段から俺たちとお祈りをするわけでもないし、聖堂に来ることなんか尚更だ。お、お前たちは信仰ってものを持っちゃいないから……!

レイモンド
レイモンド

確かに何も信じちゃいないが、それと放火とは別だろうが。

レイモンド
レイモンド

信じるも信じないのもお前らの勝手だが、俺はただ……ちょっとした用事で、たまたまここを通りかかっただけだ。

パニクる住民
パニクる住民

用事って?

レイモンド
レイモンド

教える義理はねえ!

パニクる住民
パニクる住民

お前……!

レイモンド
レイモンド

もういいもういい!なんだよ、俺たちはこの近くに来ちゃダメってか?ゴチャゴチャと遠回しに言ってるが、結局は俺たちが放火したって言いたいだけなんだろ!

焦る住民
焦る住民

なんだとこの野郎!?

冷静な住民
冷静な住民

……この季節で失火してしまうことなら、これまでもなかったわけじゃない。今回はたまたまって可能性もあるわ。

パニクる住民
パニクる住民

それにしちゃ都合が良すぎる!おい、そこのサンクタのあんちゃん、お前さっきこの火事は放火が原因って言ってたよな?お前はどう思って……

フェデリコ
フェデリコ

はい。依然、これは人為的な火災だと考えています。

レイモンド
レイモンド

テメェもこいつらと同じように、俺がやったって思ってんのか?

フェデリコ
フェデリコ

いいえ、そうではありません。

レイモンド
レイモンド

そいつはウソだな。

フェデリコ
フェデリコ

ここで嘘の発言をしてもなんら意味はありません。

フェデリコ
フェデリコ

助燃性の物体を使用した前提として、火を点けてから広がっていく際の所要時間は非常に短いものでした。その場合放火犯は、当時まだ聖堂の近くにいたはずです。

パニクる住民
パニクる住民

じゃあやっぱり、レイモンドがやったんじゃ……!

フェデリコ
フェデリコ

誤解しないでください。私が伝えたいのは、火が起こった際、この場にいた者たち全員に放火の容疑がかかっているということです。

フェデリコ
フェデリコ

それは一番最初ここに現れた皆さんと、私も含まれます。

パニクる住民
パニクる住民

な、何を言ってるんだお前は……!

冷静な住民
冷静な住民

私たちも放火した可能性があると疑ってるわけね?でも私たちはサンクタよ……サンクタが自分たちの聖堂を燃やすことなんてある?

フェデリコ
フェデリコ

種族の相違は冤罪の証拠にはなり得ません。もし聖堂を破壊する必要があれば、私の場合、躊躇なく破壊することもあるでしょう。

冷静な住民
冷静な住民

……

フェデリコ
フェデリコ

ですので、そちらのサルカズへ向けられた非難に対しては、まだ現場で関連した証拠は見つかっていません。

荒っぽいサルカズの住民
フェルナン

ヘッ、お前は話が分かるみてーだな。

クレマン
クレマン

フェデリコさんの言う通りだ……証拠を掴んでいない間は、無闇に誰かを疑ってはダメだよ。

パニクる住民
パニクる住民

じゃあそれでいいのかよ!?聖堂が燃やされちまったんだぞ!それにここの花だって、お前がずっと心血を注いで育ててきたものだろ……!

クレマン
クレマン

ッ……!それを言わないでくれ!

クレマン
クレマン

私は……ここにいるみんな、誰一人だって疑いたくはないんだ。

パニクる住民
パニクる住民

クレマン……

フェデリコ
フェデリコ

論争はここまでです。

フェデリコ
フェデリコ

サンクタとて、自らの聖堂を破壊しないとは限りません。ですので真犯人を探し当てるまで、引き続きこの事件の経緯を調査させていただきます。

レイモンド
レイモンド

おい、羽付き野郎。さっきは、その……

フェデリコ
フェデリコ

はい?

レイモンド
レイモンド

さっきは全部お前のせいだかんな!お前が燃えやすい物とか放火とか言わなきゃ、みんなも疑心暗鬼になることはなかったんだ!

レイモンド
レイモンド

それにお前、結局俺のことは信用してねえんだろ!

フェデリコ
フェデリコ

はい。

レイモンド
レイモンド

……テメェもうちょっとは反応を見せてもいいんじゃねえの!?

レイモンド
レイモンド

オッホン、まあいい。つまりだな……

レイモンド
レイモンド

……フンッ、感謝なんかしねえから。

フェデリコ
フェデリコ

必要ありません。

アランデール
アランデール

(コソコソ)このおにいちゃん、ありがとうが言えないんだね。

エステラ
エステラ

(コソコソ)かわいそう……

アランデール
アランデール

(コソコソ)うん、かわいそう!でもこのおにいちゃんに教えることはできるじゃん、ありがとうを言うのはむずかしいことじゃないって!

エステラ
エステラ

(コソコソ)うん、でもこのおにいちゃんちょっと怖い……

レイモンド
レイモンド

バカ言うな!ありがとうくらい言えるっつーの!

レイモンド
レイモンド

おい羽付き野郎、このガキは一体なんなんだ!?見ねえ顔だぞ!

???
アランデール&エステラ

ぴゃー!

(アランデールとエステラがフェデリコの後ろに隠れる)

フェデリコ
フェデリコ

この子たちを知らないのですか?

???
アランデール&エステラ

……

レイモンド
レイモンド

それどういう意味だよ、知らないほうがおかしいってか?

フェデリコ
フェデリコ

ちょうどいい、このサルカズの集落にいた子供たちのことについて、あなたにも質問したいことがあります。

レイモンド
レイモンド

なんだよ質問って?一体なにを……

(ジェラルドが近寄ってくる)

ジェラルド
ジェラルド

それについては、私が代わりに答えよう。

レイモンド
レイモンド

ジェラルドさん!さっき聖堂で大火事が……!

ジェラルド
ジェラルド

ああ、全部知った。よくやったな、レイモンド。

ジェラルド
ジェラルド

それに……また会ったな、執行人殿。

フェデリコ
フェデリコ

……なぜです?

フェデリコ
フェデリコ

あなたは近くでずっと傍に徹していました、てっきりこのまま顔を出すことはないと思っていたのですが。

ジェラルド
ジェラルド

……執行人殿の目は誤魔化せられんな。

フェデリコ
フェデリコ

なぜ姿を見せるようにしたのです?

フェデリコ
フェデリコ

あなたは私を避けていたはずでしょう。

ジェラルド
ジェラルド

穏やかな毎日をずっと過ごしていれば、人も多少は畏縮してしまうものなのさ。

ジェラルド
ジェラルド

一つどうだい?一緒に私たちが暮らしているところに行ってみないか?

ジェラルド
ジェラルド

何も出してやれんが、座るところはある。お前も直接、私たちサルカズがどういう風に暮らしているのかを見ることができるだろう。

ジェラルド
ジェラルド

それとお前が気になっていることも……可能な限り答えてやれるかもしれんしな。

レミュアン
レミュアン

ふぅ……

レミュアン
レミュアン

こんなに身体を動かしたのは久しぶりだわ。でもこういった追いかけっこ、私苦手なのよね。

レミュアン
レミュアン

でも……

レミュアン
レミュアン

やっと捕まえたわ!

歪なバケモノ
歪なバケモノ

(不気味な声)

レミュアン
レミュアン

シッ、静かにしてちょうだい。ここは住宅地よ、大声を出したら近所迷惑だわ。

歪なバケモノ
歪なバケモノ

(呻き声)

歪なバケモノ
歪なバケモノ

オナカ……スイ……

レミュアン
レミュアン

あら、あなた話せたの?じゃあまだ意思疎通はできるってことかしら?それだったら非常にやりやすいのだけれど……

歪なバケモノ
歪なバケモノ

(不思議な鳴き声)

レミュアン
レミュアン

……まあ、そう簡単にはいかないわよね。

レミュアン
レミュアン

ごめんなさいね、もうこれ以上あなたを逃がすわけにはいかないの。危険を野放しにするわけにはいかないから。

レミュアン
レミュアン

イベリア裁判所のほうがあなたのことを理解してるでしょうし、あとで連絡を入れておくとしますか。もしまだ人間の意識があるのなら、向こうの修道士とお悩み相談くらいはできると思うのだけど……

(レミュアン達に刃物が飛んでくる)

レミュアン
レミュアン

ッ……!

(バケモノが走り去る)

レミュアン
レミュアン

誰!?

レミュアン
レミュアン

こら、待ちなさい!

(レミュアンの行く手を剣が塞ぐ)

???
???

そこのお方、どうかお待ちを。

夜に包まれた暗闇が、突然と一筋の光に切り裂かれた。
レミュアンが構えた銃の銃身にも、重い力が圧し掛かる。
光の筋を繰り出した黒い人影は静かにその場を立ち尽くし、自身に向けられた銃口からゆっくりと手にしている怪しい造型をした剣を引っ込めた。
やがて月光を遮っていた暗雲が晴れ、レミュアンの目の前でその人の姿が明らかとなる。

レミュアン
レミュアン

……今日はホント、次から次へとイヤなお客人が訪ねてくること。

レミュアン
レミュアン

そこの修道士さん、道を譲っていただけないかしら?ここで時間を無駄にして、挙句に負傷者でも出したら、私とっても……とっても頭にきてしまうわ。

アウルス
アウルス

申し訳ありませんが、それは無理です。

アウルス
アウルス

どうかあの、哀れな魂を見逃してやってください。

フェデリコ
フェデリコ

ん?

ジェラルド
ジェラルド

どうした?

フェデリコ
フェデリコ

……物音が聞こえます、詳しいことは分かりかねますが。

フェデリコ
フェデリコ

人数はそこまで多くはありませんね。

ジェラルド
ジェラルド

これでも多いほうさ、まだ外出して戻ってきていない人もいる。

ジェラルド
ジェラルド

さて、今日はこの辺りにして、みんなもう帰っもらっても構わない。夜も深まったことだ、しっかり休んでおきなさい。

慎重なサルカズの住民
慎重なサルカズの住民

じゃあボス、本当に明日出発するんすか?まだ帰ってきていない人もいやすけど……

ジェラルド
ジェラルド

この前伝えたように、翌朝のミサを終えた頃に出発する。

慎重なサルカズの住民
慎重なサルカズの住民

……分かりやした。

アランデール
アランデール

ねえ、フェデリコおにいちゃん。

フェデリコ
フェデリコ

なんでしょう?

エステラ
エステラ

ねむい……

アランデール
アランデール

ねむいし、おなかも空いた!

アランデール
アランデール

フェデリコおにいちゃんは、ぼくたちをお家まで送ってくれるの?

エステラ
エステラ

お家にかえりたい……ママに会いたいよぉ……

ジェラルド
ジェラルド

この子たち、まさかここまでずっと腹を空かせたままだったのか……?

エステラ
エステラ

うん……

エステラ
エステラ

ママずっと食べないから、おなか空かないって言ってた……

アランデール
アランデール

でもぼくたち、今日なにもたべてないのに、おなかすっごく減った。

エステラ
エステラ

変なのぉ。

フェデリコ
フェデリコ

摂食は人の基礎的かつ正当で合理的な欲求の一つです。長期間エネルギーを過剰摂取したり、または怠った場合、身体は不調を起こしますがおかしいことではありません。

???
アランデール&エステラ

うううん……

???
アランデール&エステラ

よくわかんない……!

アランデール
アランデール

つまり食べものを食べないと苦しくなるのは、ふつうってこと?

エステラ
エステラ

じゃあママは……ママなにも食べてないから、ずっと苦しんでるってこと……?

フェデリコ
フェデリコ

もしお二人が供述したことが事実であるのなら、そうなります。あなた方の母親は継続的に身体の不調を抱えていることになります。

ジェラルド
ジェラルド

待ってくれ執行人殿、もうそこまでにしてやってくれないか?

フェデリコ
フェデリコ

事実を述べただけですが。

???
アランデール&エステラ

……ひっく。

???
アランデール&エステラ

ひっ、うええ……

???
アランデール&エステラ

うえええええん!

ジェラルド
ジェラルド

時にはな、事実だったとしても口に出しちゃならんことだってあるんだ。

フェデリコ
フェデリコ

……

エステラ
エステラ

ひっく……

エステラ
エステラ

ママは……ママは今もつらい思いをしてるの?

フェデリコ
フェデリコ

……

フェデリコ
フェデリコ

あなた方の母親の状態でしたら、私では確認できかねます。

執行人が周りから注視される中、彼は身を屈めた。彼自身の身分を象徴する外套の裾とサッシュに土汚れが付着しても、この時は誰の注意をも引くことはなかった。
そしてフェデリコ・ジャッロは子供たちの両目を直視する。

フェデリコ
フェデリコ

ラテラーノ公証人役場執行人の任務の一つとして、私はこの修道院に隠されている真相すべての調査、及び秩序の安定維持をするためにやって来ました。

フェデリコ
フェデリコ

しかし住民が失踪した事件の調査も私の職務範疇のうちにあるため、任務と言えるでしょう。

アランデール
アランデール

それじゃあつまり……

エステラ
エステラ

……わたしたちのママを探してくれるってこと?

フェデリコ
フェデリコ

はい。一緒に母親を探してあげましょう。

???
アランデール&エステラ

ほんとに……?

???
アランデール&エステラ

やったぁ!

ジェラルド
ジェラルド

はは、こいつは予想外だな……

ジェラルド
ジェラルド

それなら執行人殿、この子たちのことはしばらくこちらに預からせて貰えないか?

フェデリコ
フェデリコ

私にそれを決定する権利はありません。

ジェラルド
ジェラルド

……それもそうだな。

ジェラルド
ジェラルド

では君たち、あっちにいるお兄さんとしばらく一緒にいるつもりはないかな?

レイモンド
レイモンド

……えっ、俺?

レイモンド
レイモンド

でも俺にはまだ……いや、まあいっか。聖堂も燃やされちまったことだし、とりあえずこいつらを預かることくらいなら問題はないっすよ。

アランデール
アランデール

(コソコソ)フェデリコおにいちゃんよりも怖いおにいちゃんだ。

エステラ
エステラ

(コソコソ)うん、とっても怖いおにいちゃん……

レイモンド
レイモンド

お前ら、聞こえてるぞ……!

ジェラルド
ジェラルド

まあまあ、レイモンド。

ジェラルド
ジェラルド

このお兄さんがあとで食事を持ってくるから、食べ終わったら今日は大人しくおねんねしよう。それでどうかな?

エステラ
エステラ

でも、わたしフェデリコおにいちゃんと一緒がいい……

アランデール
アランデール

こーら!フェデリコおにいちゃんは忙しいんだ、わかるだろ?わがまま言っちゃダメ!

エステラ
エステラ

う~ん……わかった!怖いおにいちゃんについてく……

ジェラルド
ジェラルド

ワハハハハ!

レイモンド
レイモンド

ジェラルドさん!

ジェラルド
ジェラルド

オッホン。いやぁ、すまんすまん。

ジェラルド
ジェラルド

それじゃあレイモンド、すまないがまたひとっ走り頼むよ。先に子供たちに食事を与えて、それから休ませてあげなさい。

レイモンド
レイモンド

それは別にいいんすけど、でもこいつら……寝床はどうするんすか?

ジェラルド
ジェラルド

ヘルマンの家を借りればいい。

ジェラルド
ジェラルド

ヘルマンすか、確かにあそこは今留守だし、ちょうどいいっすね。でも、もしあいつが夜帰ってきたら……

ジェラルド
ジェラルド

気さ、そこまで送ってあげなさい。

レイモンド
レイモンド

分かった、そうする。

アランデール
アランデール

フェデリコおにいちゃん、また明日!

エステラ
エステラ

明日こそ、ママが見つかりますように……

フェデリコ
フェデリコ

明日迎えに行きます。

アランデール
アランデール

やったー!じゃあおやすみなさい、フェデリコおにいちゃん!

エステラ
エステラ

おにいちゃん、おにいちゃん……

フェデリコ
フェデリコ

ん?

エステラ
エステラ

と、とどかない!

エステラ
エステラ

もうちょっと、もうちょっと屈んで……!

フェデリコ
フェデリコ

なんでしょうか……?

(エステラがフェデリコの頬にキスをする)

エステラ
エステラ

えへへ……

エステラ
エステラ

お、おやすみなさい……!

(エステラが走り去る)

フェデリコ
フェデリコ

……

レイモンド
レイモンド

チッ。

ジェラルド
ジェラルド

ワッハッハッハ!モテモテじゃないか、執行人殿!

レイモンド
レイモンド

何を考えてんだか今のガキは、さっぱりだぜ……こいつのどこがいいんだか。

レイモンド
レイモンド

おーい、お前らそんな急ぐなよ!ったくよぉ……

(レイモンドが走り去る)

フェデリコ
フェデリコ

……

フェデリコ
フェデリコ

……おやすみなさい。

レミュアン
レミュアン

本当はね、てっきり今回の出張は修道院にいる同胞たちをラテラーノへ送り返すだけの、のんびりとした旅行気分でいたの。聞くだけは簡単な仕事って感じでしょ?

レミュアン
レミュアン

……いや、オレンがいるから、ちょっとくらいは厄介事も起こるかもしれないけれど。

レミュアン
レミュアン

でもまあ、それくらいなら私でも片付けられる自信はある。オレンと言っても、まったく融通が利かない人ってわけでもないし。

アウルス
アウルス

確かにあなたの銃を扱う腕前なら、ほとんどの厄介事は造作もないでしょう。

レミュアン
レミュアン

でもあなたが相手だと、この程度だけじゃまだまだ不十分みたいね。

アウルス
アウルス

恐縮です。

レミュアン
レミュアン

褒めてるわけじゃないんだけどなぁ……

レミュアン
レミュアン

わざわざここに来たのは、さっきいたあの異様な姿をしたヤツを守るためなんでしょ?もしそうなら、修道士さまはイベリアからいらしたのでは?

アウルス
アウルス

その通りです。

レミュアン
レミュアン

それにしては全然ラテラーノの信徒には見えないわね、いくら修道士の恰好をしてるとはいえ。雰囲気はまるっきり違うもの。

アウルス
アウルス

ふふ、ご明察。

レミュアン
レミュアン

……修道士さまはやけに素直なのね。

レミュアン
レミュアン

それならこっちも単刀直入に言うわ。普段はあんまり厳しいことは言わないのだけれど……

レミュアン
レミュアン

即刻ここから立ち去りなさい、これ以上は近づくことは許さないわ。

レミュアン
レミュアン

この楽園は、あなたが土足で入り込んでいい場所ではない。

アウルス
アウルス

申し訳ありませんが、それはできません。少なくとも今は。

アウルス
アウルス

ここにはまだ、私に残ってもらいたがっている方たちがいるので。

(アウルスがレミュアンが放った銃弾を全て剣で弾く)

レミュアン
レミュアン

(チッ、ホント厄介な相手ね。)

レミュアン
レミュアン

(彼の剣は特殊な一振りだわ。それにあの剣術、確かイベリアの……)

アウルス
アウルス

言葉よりも攻撃のほうがなおさら過激なようで。

アウルス
アウルス

私個人としては、人の相互理解に期待を寄せているのですが、あなたからすれば、これも妥当な対応なのでしょう。

アウルス
アウルス

しかし……少し気になるところが。一つお聞きしたいのですが、あなたにとって楽園とはどういう場所で?

レミュアン
レミュアン

みんなが穏やかに、幸せに暮らせる場所。特別な意味ならないわよ。

レミュアン
レミュアン

もちろん、ゴチャゴチャと騒ぎを起こすような人たちがもっと減ってくれれば、なおのこと理想ではあるのだけれど。

(アウルスが銃弾を全て避ける)

アウルス
アウルス

ではあなたから見て、ここは楽園と呼べる場所ですか?

レミュアン
レミュアン

修道士さまはまだ雑談をする余裕がおありのようで。私も舐められたものね。

レミュアン
レミュアン

なら逆に聞くけど、六十年も世俗を離れ生きてきた人々は、世間から切り離された安息の地を作り出した。そこが楽園と呼べないのなら、ほかにどこがあるの?

アウルス
アウルス

そこの暮らしが、終わりのない飢えと寒さに苛まれ続けていくものだったとしても、ですか?

レミュアン
レミュアン

確かに物は満足して手に入らないかもしれないけれど……でもそれは決して、終わりがないわけではないわ。

アウルス
アウルス

そうですね。現にラテラーノが救援の手を差し伸べてきた今、そういった苦しい日々も直に終わることでしょう。

アウルス
アウルス

一部の人間を切り捨てれば……の話ですが。

レミュアン
レミュアン

……誰それのせいというわけではないわ。

アウルス
アウルス

誤解なきよう。そのつもりで言ったわけではありませんよ。

アウルス
アウルス

ただ、常々思うのです。人と人は一体なにが違うのか?我々を隔てているのは、はたして姿と魂の差異なのか、はたまた別の何かによるものなのか、と。

アウルス
アウルス

「個」という概念が誕生してから、私たちを形作ってきたモノすべてが、私たちの思想をそれぞれ異なる方向へと駆り立て、異なる結論を導かせてきた……

アウルス
アウルス

となれば、そんな中、はたして所謂相互理解というものは存在し得るのでしょうか?

レミュアン
レミュアン

それ、本当にサンクタに聞くつもり?

レミュアン
レミュアン

そういうのは自分で確かめてちょうだいな。もし来世でサンクタになれればね。

(アウルスが銃弾を弾き飛ばす)

レミュアン
レミュアン

……くッ!

レミュアン
レミュアン

(このまま引きずっても、万が一逃げていったあいつが住民たちを襲ったら大変だわ。)

レミュアン
レミュアン

(はやくなんとかこの状況を打開しないと……)

アウルス
アウルス

そう強張らないでください。何もするつもりはありませんよ。

アウルス
アウルス

私がここにいるのは、あくまで私の同胞が助けを求めているだけなのですから。

レミュアン
レミュアン

誠実ですこと。だとしても、それをそっくりそのまま信用するわけにもいかないのよ、こっちは。ゲホッ……

アウルス
アウルス

(ため息)

アウルス
アウルス

あなたは私のかつての学生同様、なんとも頑固な方だ。悪いことではないのですが、時にはそれで頭を悩ませてしまいます。

レミュアン
レミュアン

修道士さまを困らせてしまう学生さんだなんて、それはそれで気になる人ね。

アウルス
アウルス

彼は私の教え子の中で最も優秀な一人でしたよ。しかし残念ながら彼がイベリアを去ってから、一度も再会できていなくて。

レミュアン
レミュアン

……

レミュアン
レミュアン

本当はこんなことしたくないのだけれど……はぁ~あ、こりゃまた怒られちゃうかも。

レミュアン
レミュアン

交渉……決裂ね。

レミュアン
レミュアン

と言っても正直、そこまでガッカリはしていないけど。

レミュアンの口調はとても穏やかで、動くも軽やかだ。
背後にある車椅子は持ち主に押しのけられ、ひじ掛けに吊るされたランタンもまた風に吹かれ、ギシギシと悲鳴を上げながら、たちまち地面に落っこちた。
光源が砕かれたことにより、不規則な灯火が外に向かって溢れ出し、前方でゆっくりと身体を起き上がらせた人物の背中を照射する。
こっくりとした夜の帳が、この瞬間明るく照らし出された。

アウルス
アウルス

おや、立ち上がることができたのですか?

レミュアン
レミュアン

ええ……でもまだダメって言われてるの。

レミュアン
レミュアン

けどまあ、この先のリハビリの時間が伸びて、またこっぴどく叱られるだけだから、さほど問題は……

レミュアン
レミュアン

……つッ。

アウルス
アウルス

あまり無理はしないほうがよろしいかと。

アウルス
アウルス

まだ楽観視できる身体の状態ではないのでしょう?それにこのような戦闘も、あなたが得意としているものでは――なッ!?

(アウルス目掛けて銃弾が飛んでくる)

レミュアン
レミュアン

お気遣いどうも。残念、さっきの一発は口を狙っていたのに。

レミュアン
レミュアン

お説教ばかりだと、修道士さまとて周りから嫌われてしまうかもよ?

レミュアン
レミュアン

こっちは今イライラしてるの。色々と上手くいかないせいでね。

レミュアン
レミュアン

それにここまで挑発されてきたんだから、ちょっとくらい派手にやり過ぎても、バチは当たらないわよね?

桃色の髪をした枢機卿補佐官は目を細め、その隠しきれない鋭いものをガチャリと装填すれば、ついには長年寝たきり生活から身体にかけられた暖かいウェアを穿った。
やがてレミュアンはくすりと冷笑する。

レミュアン
レミュアン

それでもすごく疲れるのよ。だから、できればさっさと片を付けさせてちょうだい。

レミュアン
レミュアン

じゃあ、もう一遍言うわ、修道士――

レミュアン
レミュアン

――そこをどきなさい。

レミュアン
レミュアン

ここはあなたが足を踏み入れていい場所ではない。

歪なバケモノ
歪なバケモノ

オナカ……ス……イ……

歪なバケモノ
歪なバケモノ

タベ……

薄っぺらいドアが外から押し開かれ、それを良しとしないことを伝える警報が夜の帳のなか引き延ばされていく。
それでも子供たちはぐっすりと寝静まっていた。
たとえ冷たい風が開き切った隙間からこの小さくボロボロな家に吹き込み、未知なる脅威が音もなく侵入し、ゆっくりと近づいてきたとしても……

歪なバケモノ
歪なバケモノ

……

歪なバケモノ
歪なバケモノ

タベ……

歪なバケモノ
歪なバケモノ

オナカスイ、タ……タ、タベナサ……

歪なバケモノ
歪なバケモノ

……

歪なバケモノ
歪なバケモノ

グキ……グジジ……

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