朝、私はいつものように自分の部屋を出た

ソニア、顔はもう洗った?

母さん、私だってもう子供じゃねえんだから。
台所から母の声が聞こえてくる。彼女は台所で忙しいようだ。
すると、テーブルの前に座って待っているだけで、温かい朝食を食べることが出来る。
朝食はいつもはおかゆ一杯にパンとハムが付いてくるが、母さんは最近ダイエットをしたいらしく、朝食のおかゆはほとんど肉が無いオートミールのようだ。
私はそれでも良いんだが。
父はいつものように新聞を読みながら座っている。新聞にはつまらないことばかり書かれている。
経済、政治、国は全く好きじゃない。
何故あいつらは私の偉大な功績を掲載しないんだ?

ソニア、最近学校はどうだ?
またか。
毎日この時と朝食の時にしか現れない象徴的な関心に彼は本当に飽きないのだろうか?それとも気にしていないだけか?

…いつもどおりだよ。

もう7年生にもなるんだから、前のように乱暴してはいけないぞ。
どうして?私はまだ7年生だ。

それに、9年生で卒業した後の進路はもう決まっているのか?

…決まってない。
9年生で卒業をしたら、そのまま勉強するか、それとも技術学校で技術を勉強するかを決める。
私は父が技術学校に言って欲しいと言っているのは分かっている。

お前という子は…。

娘に向かって威張らないで、あなた仕事は?
母さんは朝食を持って台所から出てきて、父の話を中断させた。

…今日は面接があるんだ。
失業してからというものの父は母さんの前では頭が上がらない。当然、以前のように何処か行くということも無い。

ピエール、そんなしょうもない態度は捨てることを学ぶべきよ。尊厳ではご飯は食べられないのよ。

分かっている、試してみてはいるさ、アンナ。
母さんは実のところ父さんよりも私の学業には関心を持っている。
卒業後も勉強を続けて欲しいみたいだ。
彼女はいつも彼女の時代には9年生までタダで行けるというような良いことは無かったと言っていた。
そしてその話をするたびに、自分が幸運だったという経験を語る――貴族のメイドだったということを。
女子学校で学業を終えたということで彼女は今の不況の市場の中だろうといつでも良い仕事を見つけることが出来る。
時々、私も彼女の口から出るいい子になりたいとは思うが、残念ながら私はそうじゃない。

本当に分かって欲しいですね。はい、ソニア、早く食べちゃいなさい。でないとスクールバスに間に合わないわよ。

分かっているよ、母さん。
私は頭を下げて朝食を食べようとはしたが、変なものを見てしまった。かわいそうなほどに少ないおかゆ、半切れのパン、いびつな形のハム。

…母さん、これは何だ?

何を言っているの、ソニア。毎日食べているものでしょ?

私達が毎日こんなものを食っている訳ないだろ!?

お前は忘れたのか?
私と同じような人が急にテーブルのそばに現れた。

お前は誰だ、何故私と同じ顔をしている?

私はお前だ。
あいつが私?おかしいだろ、なら私は誰だ?

お前はソニアだ。
訳が分からない。
でもおかしい、私と同じ人がいるのに、父さんと母さんは何の反応もしない。

ソニア、何をボーッとしているんだ。早く食べてしまいなさい。
ああ、分かった。これはきっと悪夢だ。それで説明がつく。
はっ、しょせんは食べ物。私は夢の中でもっと怖いものだって直面したことはある。

いいや、怖いものは漫画やゲームから得た妄想だけだろう?

確かに以前は世の中で一番怖いものは比類のないものだと思っていたよな。

鋼鉄の洪水、巨大な怪獣、父親の拳、簡単な乱暴。
こいつは何を言っている?何故こいつは知っているんだ?

それがどうした?お前も私の夢だ。でなければ私が何を考えているのか何で知っているんだ?

手に持った食べ物をよく見てみろ。

お前は何を言って…!?
これはお粥じゃない。母さんが作ったお粥じゃない。
パンは…確かにパンだが、臭いがする。ちゃんと保存をしていない何日も経ったような。
…どうして何にも経ったようなっていうことが分かるんだ?
ハムは巨大な肉から無理やり千切られたような、それに…生臭い臭いがする。待て、これは…血の跡か!?

…おえっ。

これはただの悪夢だ!

だがお前はこんな夢を見たことはない、それにこれはまるで真実のようだなあ…
もう一人の私は私をあざ笑っているような気がしたが、先生は人を傷つけることは自分を幸せにする行為だと言っていた。
でも、こいつは幸せそうには見えない。
とにかく、私はこいつに話をしてはいけないという予感がした。
私は必ずこいつを黙らせなければいけないし、学校にも行かなければならない!

黙れ!
分かっている、私はどういう方法で人を黙らせば良いのか分かっている、そうだ、私の拳を使えば良い!

まるで、お前が本当に食べたようだ。
握りこぶしを握ってあいつに突っ込んだが、私は一歩遅れていたようだ。
目の前の人の顔に拳をぶつけた。
骨と相手の顔が触れ合う感触に安堵する。

ぐあ!!

つ、強すぎる。十数人でならきっと解決出来ると思っていたのに一人で全滅されてしまうなんて。

*ウルサススラング*お前たちのような軟体エビでも人を虐げたいと思っているのであれば、また練習でもしておくんだな。

ちっ、いくぞ、冬将軍。覚えてろよ、これで終わらねえからな!
実は冬将軍というあだ名は嫌いじゃない。
ああ、かっこいいからだ。
でも、この人達はいつも昼寝の時に来て私に迷惑を掛ける。彼女達は私が午後の授業に行かないということを知らないのか?

あの、ありがとうございます。冬将軍。

ん?まだいたのか、お前を逃がそうとした訳じゃないんだがな?

今回は感謝をしたくて。
今回は?

あの、やっぱり私のことは分かりませんか?私はバレリアと言います。前にもあなたは私を助けてくれました。
えっと、この女の子、頭に結んでいる黄色いリボンが印象的だな。
先週か、それとも先月か?たぶん彼女助けたことがあるんだろう、多分な。

あなたは前に友人も助けてくれたみたいで。私達はあなたを敬愛しているんです。
彼女の嬉しそうな顔を見ると私もそれに伴って少し嬉しくなった。

私は自分たちに力があることを笠に着て人をいじめる奴らが気に食わねえだけだ。

お前も勇気を出すべきだ。勇気があればあいつらはむしろお前に驚くだろうよ。

はい…そうですね。今度試してみます。

それじゃあもう行け。

はい、本当にありがとうございました!
その女の子はそう言って飛び出していった。

うん?
教室の机と椅子と黒板がずいぶんと汚れているが、私の錯覚だろうか?
それともこの教室は元々こうだったか?
まあいい、それよりも昼寝でもするか。
私は4つの椅子をつなぎ合わせて横になった。

何だ?
背中を小さな何かが押しているようだ。
手を伸ばしてみたら、それは黄色いリボンだった。
このリボンには見覚えがあるが、上のほうは汚れているし、片方は折れてしまっている。

ん!?
リボンの裏にはとても濃い黒色、これはまるで…
血痕だ。

…きっと、ケチャップだろ。
私はリボンを横に置いて昼寝を続けることにした。
私が眠りに落ちようとしていたところで、自分の声が聞こえてきた気がした。

あの後、お前は学校のある教室でこのリボンを見つけた。

お前は実は彼女が死んでしまっていることを知っているんだ。
教室のドアが突然押し開けられて、私の昼寝は中断してしまった。
本を持ってメガネを掛けた女の子が立っていた。制服はこの学校のものでは無いはずだが。

すみません、この教室には誰かいますか?

ここは私が占領した場所だ、他の人は歓迎しないが。

ごめんなさい、私と私の友達には今居場所が必要で…。

あれ、あなたは…ソニア?

お前は…アンナか?
アンナは私の以前の隣人で、彼女が引っ越してからというもの、私達は何年も会っていなかった。だが…。

別の教室を探しにいこう。
実際のところ、彼女はとても礼儀正しい。
私達の過去の関係もそれほど悪いものでは無かったので彼女を無下にはしたくなかった。
だが、最初の火災が発生してからというもの、学生たちの雰囲気は以前よりも危ないものとなっている。今日だけで私はもう3組の奴らを叩きのめしている。

ソニア、これはあなたを困らせることになるかもしれません、ですが…。

アンナ、中には一人しかいないんでしょ。そいつを追い出せば良いじゃないか。
ああ、そうか、それが正しい。また喧嘩ってことか。

それでは私達は他の人のものを奪う人と同じでしょう?だめです。
…アンナは相変わらず、人と平和に過ごすことが好きみたいだ。

そうだ、あの、ラダは料理が上手だから、ご褒美として美味しいものを作ってあげてもいいかな?
これは少しそそる提案だと言わざるおえない。ここ数日は圧縮ビスケットと缶詰を食べていたから少し飽きてきていたんだ。

いいぜ、ここに滞在することは許してやるが気をつけろよ。ソニアってのは手出ししづれえからな。

待って、ソニア…もしかしてあの「冬将軍」?

あいつの名声は私達の学校でも響き渡っている。公立高校に彼女のライバルはいないって。

嘘でしょ、私達って運は悪いほうじゃないと思っていたのに…。
私はこういったお世辞が大好きだ。
でも、私が一番好きなのはアンナのようなおとなしい女性がこれを聞いて顔色を変えた時なんだ。

ありがとうございます、ソニア。出来るだけ邪魔はしないようにしますね。
…チッ、彼女が驚いているようには見えない。つまらないな。
とにかく、私の許可を得て、彼女と彼女の後ろの人が続々と入ってきた。
前の数人は男性と女声がいて、服が少し破れていて、髪の毛も乱れている。
見た所、ここしばらく、ゆっくり休んでいないようだ。
その後の何人か…
何なんだ!?
後ろから入ってきたのは歩く何枚かの制服!?
そして最後に入ってきたのは私と同じ姿の人だった。

歩く制服ってのは自己保護の想像に満ちているってことだ。

何だと!?いや、お前は誰だ!

私はお前、お前は夢を見ているんだよ、馬鹿が。
なるほどな、こんなおかしな現象、夢を見ているに違いない…いや、私はどうして私に怒られないといけなんだ!?

たしかに頭の無い死体よりはこの場面は幾分か穏やかに見えるな。

何を言っている?何が頭の無い死体なんだ?

お前が後で彼女たちを解決するんだよ。
解決する?何をどう彼女達を解決するんだ?

彼女たちがお前を襲うんだよな、イースチナ。

仕方がありませんでした。彼女たちが先に手を出してきたのですから。

ああ、理由があれば暴力ってのは受け入れられないものではない。

本当にそう思いますか?

私はいつも自分が正しいことをしているって信じているからな。
目の前にある情景は夢だったとしても変で、もう一人の私は、まだ名前しか知らない人と親しく話をしていた。本来ならば彼女たちは私の夢の中の人物だろう。
ところで自分が夢を見ていると気付いた以上は私は目を覚ますべきなんじゃないのか。
そう思った瞬間、もう一人の私を除いて、その場にいた全員と動く制服が私に目を集中させた。
彼女達の顔は笑っていないようだった。
彼女たちは私を取り囲んだ。

あなたは私達のリーダーです。ここに残させて下さい、あなたが私達を先導してください。
私は別の私を探した。
しかし彼女は消えていた。

なっ…
私は素早く起き上がった。
周りを見回してもまだ教室だ。夜はもうふけている。他の人は寝ている。私はドアの近くで寝ている。
もう一方のドアは机で塞がれている。窓も閉まっている。私の隣のドア以外は誰も入ることは出来ない。
私は今彼女たちのリーダーだ、彼女たちを守りたい。

ソニア、眠れないのですか?
近くからアンナの声が聞こえてきた。
彼女と彼女の仲間が加わってから3日が過ぎた。途中で気に食わねえこともあったが、結局のところ、アンナは私の味方を選んでいた。

ああ、悪い夢を見た。

…それを気にする必要はありませんよ、あなたは間違ってはいませんから。
悪夢の内容はよくは覚えていないが、アンナはきっと私はあの何人かの夢を見たと思っているようだ。
彼女はこのことに対してとても悲しく思っている。自分が過去に信頼していたサークルが、彼女が私を彼女たちのリーダーにしたことによって、私を襲うようなことをするなんて思っていなかったからだ。
当然、あいつらは私によって解決された。
私は他のサークルが崩壊したのを見たことはあるし、これがサークルに入りたくない理由でもある。面倒な人間関係を道理で話すよりも拳で話すほうが好きだからだ。

心配するな。
彼女はよろよろと立ち上がって私のそばに来た。
彼女が私を慰めたいと思っていることは分かってはいるが、私は彼女こそが今一番慰めが必要人だということを知っている。話題は変えるべきだ。

アンナ、前は班長だったのか?

いいえ。

どうしてこんなに多くの人を連れているんだ?

実際、私はリーダーとしてみんなの感覚に適応することは出来ません。ラダはずっと私を励ましてくれて、私も…私も何かするべきだと思って。

あ、何するんだよ。

笑わないで下さいね。

…実は前にもクラスでのいじめを見た時に、それは間違っていると分かっていたのに、いつもこっそり避けていたんです。

そいつらを殴ればいいじゃねえか。お前はとても強いのに。
そうだ、見た目はおとなしいが、アンナは腕っぷしが強い。ただ使いたがらない。

あなたのような勇気があれば良いんですけどね。私はいつも人を批判する勇気が足りないんです。
彼女はもっと落ち込んでしまった。ちっ、本当に慰めることが出来ない。何を言ったら彼女は元気になってくれるんだ?

…そ、それでも少なくとも今は立ち上がっただろ。
もしかして舌がもつれたか!?

…それは間違っていると思ったんです。少なくとも最初はそう思っていました。

何が間違っているんだ?

今がそうです。

私達がこの学校に閉じ込められてもう8日が経ちました。全てが少しずつ悪くなっています。

全てはあの火災のせいだ。あの火さえなけりゃ…。
その火が一つの食料庫を燃やした後、第四高校の貴族生徒どもは結成した団体で別の食料庫を選挙、強奪を始めた。
庶民の学生の間でも食べ物の争いをよく見る。
合奏では既に殴り合いや落書きの跡が至るところで見られるようにあり、夜中には他の所から鳴き声や叫び、罵声が聞こえてくる。

私もそう思いますが、あの火は遅かれ早かれ現れていたのでは無いかと。

なぜ?誰かが絶対に火を点けただろうってことか?

いえ、どうやって説明をすればいいのか…分かりませんが。

あの人が無かったとしても似たようなことが起きて、私達をパニックにさせた。…私はそう思います。

それはおかしいだろ。火は悪人が放ったに決まってる。悪人ってのは…。

悪人は常に存在しています。

…。
私は彼女の言うことは間違っているとは思うが、どうやって彼女に反論をすれば良いのか分からなかった。

以前本で読んだことがあるのですが、人間の天性は邪悪なんです。

不思議に思いました。文明社会を築き上げてみんな秩序と道徳に従い生活をしていることに。ならば何故私達は邪悪なんでしょう。

私はそう思って勇気を出して立ち上がって、みんなを組織して秩序を維持したいと思ったんです。

ですが全てがもっと悪くなっただけでした。私には何も出来ませんでした。

私は秩序を立たせることが出来ませんでした。人を助けることも出来ませんでした。あなたがいなければ私はすでにクラスメイトに殺されていたかもしれません…。

私は本当にやくたたずです。
彼女の声は鳴き声を帯びているようだった。
ああああああ、もっと大変なことになってしまったじゃねえか!
まあ、社会、道徳、秩序なんてもんは分からねえが、彼女の持論は少なくとも分かるし、言いたいことは言ったほうが良い。

つまりお前は今みんなは悪いことをすると思っている、私もそうなのか?

…そういう意味では無いです。
彼女の口調は少し驚いていたような気はした。はあ、彼女は私にこの問題を聞いたに違いないだろうに。
私はよく喧嘩はするが、弱いものいじめはしねえ!

なあ、もう悲しまないでくれ、私が助けるから。

…助けてくれるのですか?

お前たちのリーダーだからな。お前は良いことをしたいんだろう、もちろん手伝うさ。

…ありがとうございます、ソニア。

そうだ、慣例に従ってリーダーが変わったのであれば、サークルに新しい名前を付けるべきだろ。何か案は無いか?

…それでは「ウルサス学生自治団」と呼びましょう。
…そうだよな、優等生のセンスを期待するべきじゃないよな。
でも、たまには素朴な名前に変えても悪くはねえだろ。

よし、これから私達のサークルは「ウルサス学生自治団」、私がリーダー、お前が軍師だ。

…はい。

彼女の口ぶりを聞いて少し安心した、そして当時の私は少し喜びを感じたんだよな。

お前は確かに何かを守っているようで、信頼されて、小説のヒーローのようで、自分が本当のリーダーになれる気がし始めたんだ。
誰だ?

私はお前だ。目はちゃんと見えてんのか?
ああ、彼女は確かに私と同じ顔をしている、でも何故私は自分に責められなければいけないんだ?
そして彼女の話しは私の心の中で考えていたことなんだが、どうにもすっきりしない、

私だってこんな話は好きじゃねえ。この夜を思い出す度に自分を嘲笑いたいほどにな。

私が間違っているのか、それともお前が間違っているのかだと?

分からねえ、聞く勇気もねえ。

…

お前は私が間違っているというのが怖い。私もお前が私は間違っているというのが怖い。

…。
突然、私の足元が底の見えない深淵になっていることに気付いた。
私は落下を始めた。
落ちている途中に私はかすかに断続的な音を聞いた。

アンナ、良く聞いて。ソニアだけでは私達全員を守ることは出来ないの!

私達は彼女達に参加するしか無い。

ソニアは貴族が嫌いなんです、ヴィカ。

あなたは私達全員の安全を賭けることが出来るの!?

私は…。
そして私は暗闇に飲み込まれ始めた。
二階の窓から飛び降り、しっかりと地面に落ちた。
正門に進むと彼女達に見つかってしまうので、私はこの道を行かなければならない。
私にはしたいことがある。このことは私にとって重要なことだ。
私はアンナの提案は理解しているし、ヴィカの提案も道理があるが、私は全ての貴族達と向き合えるほどに尊大では無い。
しかし、それは真正面からのぶつかり合いにしかならない。
今は夜だから、彼女たちはまだ寝ているに違いない。私が今のうちに彼らを全て解決してしまえば良い。
ああ、全部解決するのはちょっと無理かな。彼らのリーダーを見つければ良いはずだが、まず無理だろうな。せめてこのリーダーを解決すれば…。
(殴る音)

お願いだ、見逃してくれ!

助けてくれ!!

お前たちが隠した食べ物を出してくれよ!

私達は…私達は本当に食べ物が無いんだよ!

助けて、助けてくれ!
私は彼らを救うつもりは無い。
私にはやることがあるからという訳じゃない。実際、もうどうでも良いんだ。
こんなこと、もうここ2、3日は至るところで起こっている。
私は何人かは助けはした。今ではもう教室に隠れている生徒はアンナが連れてきた同級生よりも多かった。
だからアンナはヴィカの提案を考えないといけなかったんだ。
だが、アンナは貴族が好きではないということを理由にこっちに来たということは知っていたが、実際のところ彼女は一番貴族が嫌いだ。
最初の食料庫が焼かれてからというもの、残りの一つは貴族の雑踏どもに占拠されてしまっている。他の学生達は仕方なく互いに争いをしている。これは彼女が一番見たくない状況だ。

アンナは貴族には関わりたくない。
でも、彼女にそう思わせない方法は無い。ならばいっそうのこと彼女の悩みを根本から消してしまえば良い。
そう思いながら前に進み、鳴き声を背にした。

ん?あの木は昨日はまだ倒れていなかったはずだが、誰がこんな時に木を切って…!?
急に足がつまずき、転びそうになった。
頭を下げて見ると、それは倒れた道路標識で、その字はもう読めないほどに落書きに覆われていた。

ちっ。
私達が閉じ込められてからというもの10日も経っていないが、学校の光景はまるで何年も経ったかのように荒んでいた。
でこぼこの壁、訳の分からない落書き、ゴミ、血の跡…。
正直、私はこんな日々が嫌いだが、これがいつ終わるのか分からない。
私は頭を振って前に進んだ。貴族の雑踏共の基地、最後の食料庫は前にあるこの倉庫だ、
そして、そこに私が立っているのを見た。

誰だ?

私はお前だ。
何故か、私は驚きすらしなかった。

次にお前はこの倉庫に突っ込む。

お前はあいつらのリーダーを直接探そうとはすが、お前は潜入が得意な人ではない。お前はあいつらを驚かせてしまい、貴族どもの包囲に向き合わなければならない。

お前はとても強い、ソニア。お前はあいつらの包囲を突破しそうになる。

だが。

お前はいつも無鉄砲だ。ろうそくをひっくり返してしまい、そして…

バーン――
もう一人の私は突然姿を消して、私の視界は真っ赤に染まった。

私は第二の火災に火を点けたんだ。

第二の火災は貴族の雑踏共の拠点をぶっ壊しはしたが、学校の最後の食料庫を消失させた。

全てが取り返しの付かないことになった。アンナによれば、この火はその後の学生間の無差別な混乱極まった闘争の全ての傷害を解決していた。

第四高校の貴族共は全員いなくなったぞ!さっさと奪ってしまえ!

あそこで貴族共を見たぞ!今のうちにあいつらを全員殺してしまえ!

三日間ご飯を食べられなかったんだ、食べ物を探すのを邪魔するな!

何だと!?

死ねって言ってんだよ!

全校が火災前より混乱をし、安全なところは無くなった。

自治団のメンバーも何人か行方知れずになってしまった。

死ね!

これは俺のだ!

あ、う、助け…

ある日、私にはいつなのか分からなかったが、レユニオンが急に去っていった。

だが最初から、レユニオンは私達を離れさせないようにした以外は何もしていないんだ。学生達はあいつらが出ていったことに気付かないようで未だに混乱している。

彼らは混乱を楽しんでいるようだった。

おい、レユニオンの守衛どもも行ったようだぞ!

うん…

もう出ていってもいいんだ、アンナ、どうしてあまり嬉しそうじゃないんだよ。

レユニオンがいるかどうかにもう意味が無いからよ。

最初の火災から、もう彼らがいるかどうかなんて意味を持たなくなっているの。

しかし、私達はまだ混乱を避けて通るような準備が出来ていない中、翌日、天災が降ってきた。

天災は全ての人を震え上がらせた。

その時になって初めて学校の中は学校の外よりも悲惨だったということを実感したんだ。

まさか、天災…

一体何が…

うわああああああああ、怖い!怖いよ!

アンナ、今の内に脱出をするべきだ!

だけど…私達は何処に行くべきなのでしょうか?

その後、私達はオリジ二ウムが蔓延していない市街地を逃げ回り、難民を避け、レユニオンを避けた。

最終的に私達はロドスアイランドの小隊に救助をされ、ロドスアイランドに来たんだ。

誰だ!?

…

学生!?

武器を持っているぞ!

…死ね!

待て、俺達は難民を救助しにきたんだ!

…何?

そう緊張するな。俺たちはロドスアイランドっていう組織だ。もうお前達は安全だ。

私は生きていられるんだ、私達は生きていられるんだ。

だが、私はアンナの悩みをかき消すどころか、彼女の願いを台無しにしてしまった。

ソニア、火事さえ無ければ学生は今のようにはなりませんでした。

わ、わざとじゃないんだ!

ソニア、あなたのせいではありませんが、事前に相談をしてくれれば…

お前を安心させたかっただけで…。

ズィマー、私はあなたをこれからも信じたいです。

でも私はお前とどう話をしたらいいか分からないんだ。

お前は有罪なんだよ。

そんなわけが。

お前が死ね。

私はこれ以上罪は犯しはしない。

あなたが私を見逃してくれたのは罪悪感があったからでしょ。

私はお前を殺したくはない。

そんなに真面目に考えるなよ。ただミスをしただけなんだからさ。

このことを考えない訳にはいかない!

お前が憎い。

私は…

うわあああああああああああああああ!!!!

….あああああああああああああああ!

うっ…

おえええ…!

またこの夢か。

アンナ、私は…。

私は…
茶髪の少女は洗面台に腹ばいになって窓の外を見た。今夜は月が綺麗だ。