
なぁ、状況はどうなってる?

良くはないな。下層部は魔族野郎数人だけとなったが……

彼らだって百戦錬磨の傭兵だ、手強いぞ、彼らがたった一つのネジだったとしても、そのネジで百もの殺す方法を見出してくるからな。

作戦能力を比べたら、お互い五分五分だ、だがこちらの人数は、彼らの半分しかしない。

そのーなんだ、だがしかしはないのか?もう足が何も感じなくなっちまってさ……

あるにはあるぞ、「だがしかし」傭兵部隊の内部で分裂が発生した。少なくとも外にいる連中はそうだ、だが下にいる連中については、俺にも分からん。

いいニュースとは言えねぇじゃねぇかよ、あ、イテテテ……ったく容赦ないぜさっきの奴ら……

とりあえず応急措置で耐えろ。ほかのことで頭いっぱいにして、注意力を分散させるんだ。

……上もどんどん熱くなってきているな。さっきから、上の騒ぎがどんどん大きくなってきておっかないぜ……それに、よ、なんて言うか、息がしづらいって言うかさ。

注意力を分散しろとは言ったが、それについて考えろとは言ってないぞ!

……アーミヤ、アーミヤたちは大丈夫なんだろうか?それにあの龍門の警官さんも、あー、一回しか会ったことないけどさ……でも彼女らがあれと対峙してると思うと……あれと……えーと、なんだったっけ?

もういい、訳分からんことまで喋り出してきやがって、どうやらだいぶ血を失ったよう――待て、通信だ。

僕です、今もうすぐ地上に到達しま――

……状況はどうなってる?敵は?

幸運でしたよ。さっきのタワー頂上で爆発したアーツが火山の噴火みたいに僕たちが防衛していた階層を呑み込んでいったんです、そのスキに何人か哨戒をやっつけましたけど、残りは下層の空き地に撤退していきました――

奴らはてっきりそこを死守すると思ってたが……

きっとみんな予感したんでしょうね、上で「アーツ」をも超える何かが起こっているという予感が――

なっ……なんだ!?

うわああ――

俺に掴まれ!

なんだ……炎が、炎が辺り一帯に!?ここに可燃物か何かが置いてあるのか!?

高温……情報通りだな、これはタルラの仕業だ……!

考え耽ってる場合か!どうする!?

ッ――こっちだ、ほかと合流する!ちょっと待て、足はもう大丈夫なのか!?

注意力が分散してるから平気だ!

全通信を確認、死傷は今のところナシ!

焦らないで、傭兵たちもそう遠くまでは逃げていない、彼らも事態を確認して、機会を窺っている……

今はあのコントロールタワー頂上で突如爆発が起こって……しばしの静けさに陥っただけ。

こんな状況を静けさって言えます!?あ、アーミヤさんたちは無事なんでしょうか?

うーん……タワー頂上があんな騒ぎだから、相対的に静かと思っただけなんだけどなぁ。

や、やっと――!

警戒を緩めるな、まだ――

――

な、なに急に黙り込んだんだよ?おい――?

それに上なんか見上げてどうした?頂上になんか……

……ちょっと待て、あ、あれは……光の玉?火……火の玉?ヘイロー現象?なんだありゃ?

アーツだ。

……あれがアーツ?

あ!俺記録をしていたんでした、最初の轟音のあと、炎と高温気流が建物のドームを崩壊させ、塔の下から肉眼で観測したそれは、まるで……
まるで落日の残光のよう。
波のように襲い掛かる感染者の死のよう。
憤怒のよう。
まさに滅びようとするこの都市のようだった。

……俺あんたらより感性低いと自負してるけど、今だけは何が言いたいのかはわかるぜ、マジで。

あれがレユニオンリーダーの……

高温と炎か。

しかし高温と炎とて……あんな恐ろしいものではないはずだが。

うん、あの光は、あの人の……あの二人の、いや、もっともっと、もっとたくさんの怒りなんだ……

あれが……タルラ?

違う、あれは、彼女だけじゃない、彼女一人だけじゃないと言うべきか。情報にあるレユニオンのリーダーはもはや誰だって知っている、でも今私が見えているあれをあの若い龍と連想できそうには到底思えない……

上で……上で一体何が起こっているのでしょうか?

……

……分からない。

アーミヤさん……

そんなことよりコントロールタワーにまだ誰かいるか!?

います!

なら援護しに行くぞ!

待て!頭を下げろ!

――敵がコントロールタワーを離れたぞ!仲間のもとに行くぞ!

ここを封鎖するんだ、連中に援護を受ける機会を与えるな!

ど、どうしましょう!?

戻ってアーミヤの援護に行ったほうが――

――いや。

あれはアーミヤだけが……アーミヤにしかできないこと。彼女ならできる。きっと。

私なら彼女を信じる。私がここに立っているのも、そのため。

それに……

私と約束してくれた、有給取ったら一緒にお出かけしてくれるって……リーダーたるもの約束を破っちゃいけないでしょ。

……分かった。

ならアーミヤが凱旋するまで、コントロールタワーを死守するぞ。せめて、ケルシー先生が到着するまでは持ちこたえる。

俺たちで――

うわっ――おい、何かが空にある、えー、なんかを斬ったぞ!

――あんたらも聞こえたか!?また何かが起こったぞ!

……あれは剣?そうだ、確かあの龍門の警官も剣を使っていたような……

け、剣一本で繰り出せられるものですかあれ?

……私はコントロールタワー外にいるサルカズ傭兵を阻止しに行く。君たちは塔の中に戻って、残りの人たちを救助し、まだ崩れてない撤退用の通路を確保しに行って。

あんた一人でこんな大勢のサルカズを止められるわけがないだろ?

俺が彼女につく。

お前たちは戻れ、早く。

……ロドスの兵数が少ない、ほかの小隊に連絡、一網打尽にするぞ。俺たちはこっちで……

なるべく迅速に防衛線に突破口を開ける、奴らの死が俺たちにとって最高の褒美だ。

早く行け!

……わかった!

……久しぶりだね、こうやって二人っきりで待ち伏せして、肩を並べて戦うのは。
歴戦を経た二人のオペレーターは息ぴったりとそれぞれの武器を握りしめた、サルカズの重厚な脅威はじりじりと押し寄せてきた。
両者ともにじっと前を見据えていた。

……そうだな。

それと有給の件だが、荷物持ちはご所望かな?