

B区囚人B
……

B区囚人B
フンッ!

B区囚人B
!

A区囚人
ぐはっ……!

ロビン
(この囚人、強い!ほかの囚人たちが全部彼一人にやられた。)

B区囚人B
……死ね。

看守B
……

ロビン
(あの看守もかなり強い、でも、見た感じ防御しかしていないけど……)

B区囚人B
オラァ!

看守B
……くっ。

ロビン
(まずい、看守も倒された……)

ロビン
(もう私しか残ってない、でもここで彼と戦ったとしても、あとでどう説明すれば……)

B区囚人B
……あとはおめぇだけだ。

ロビン
(どうする、本当にやるしかないのか。)

B区囚人B
……

アンソニー
ふんっ。

B区囚人B
……すばしっこい奴だ。

ロビン
(アンソニーが、私を助けた?)

アンソニー
お前たちが誰だかはしらないが、こんなことはするべきではない、ましてや私の目の前でな。

B区囚人B
へへ、もうすぐ死ぬってのにまだ他人の心配事かよ、中々の紳士だね、アンソニーさんよ。

ロビン
(いつの間にッ!?)

B区囚人B
へへへ、お嬢ちゃん、悪く思わないでくれよ、恨むんならあんたの運の悪さを恨むんだな。

B区囚人B
安心しろ、アンソニー以外は殺したくねぇ、しばらくここで寝てな。

ロビン
(まずいッ!)

ロビン
あがっ……

ロビン
(やられた……)

ロビン
(意識、が……)

B区囚人B
……それじゃあ……もてなして……アンソニー……

B区囚人B
……死……


ミュルジス
まさかメイヤーさんの料理の腕前がこんなにすごかったとは思わなかったよ。

メイヤー
ふふーん、意外でしょ。

ミュルジス
でも、ほかの殺し屋の暗殺に巻き込まれて気絶しちゃったとはね……

ミュルジス
アンラッキーなこった。

メイヤー
そうだね、ツいてなかったね。

ミュルジス
じゃあその現場はこの後どうやって収まったの?

ミュルジス
アンソニーが勝ったのはまあ予測できるけど、でも仮にも刑務所内で起こった暗殺でしょ、はいおしまいで終わるはずないよね。

メイヤー
うん、でもそのときロビンはまだ気絶していたから、視点をカフカに切り替えるね。

ミュルジス
えっ、カフカもあの囚人に気絶させられたんじゃないの?

メイヤー
あー、彼女が言うには気絶のフリをしていたらしいよ。

ミュルジス
あぁ……なるほどね、彼女らしいっちゃ彼女らしいね。


アンソニー
言え、誰がお前たちを送り込んだ?

B区囚人B
へ……へ……誰が喋るかよ……クソッタレ

B区囚人B
……

アンソニー
気を失ったか。

アンソニー
この人たちはまさか……

アンソニー
……まあいい、今考えても意味はない、先にこの囚人らの状況を見てみよう。

囚人たち
……

ロビン
……

アンソニー
どうやら殺さなかったのは本当らしいな。

カフカ
……

アンソニー
それにこちらのお嬢さんも……

アンソニー
誰か知らないが、先ほど私を助けてくれた……

アンソニー
感謝する、名も知らぬお嬢さんよ。

カフカ
カフカって呼んでいいよ。

アンソニー
ん?無事だったのか?

カフカ
おっと、まだ動かないでね、身体を右へどいて、監視カメラを遮るようにね。

アンソニー
これでいいか?

カフカ
オッケー、これで監視カメラはカフカを捕らえられないはずだ。

カフカ
部屋掃除のときの観察が功を奏したよ。

アンソニー
君は誰だ?

カフカ
さっき言ったじゃん、カフカだよ、君を助けにきたんだ。

カフカ
でもツいてないなぁ、本来なら機会を窺って君にメモを残してやればことは済むはずなのに、まさかこいつらの仕込みに出くわすとはね。

アンソニー
どういうことだ?

カフカ
ここじゃあ話せないから、話ができる場所知ってる?

アンソニー
……確かに、看守たちが騒ぎを聞きつけこちらに来ているな、医務室に行こう、あそこなら耳も少ない。

パットン
これは一体何事だ!アンソニー、貴様何をした!

アンソニー
それはこちらの質問です、パットン。

アンソニー
この囚人たちが刑務所に紛れ込んで私を殺そうとしました。

アンソニー
一体なんのつもりです?

パットン
なんだとォ!?

看守B
本当です、パットン隊長、この二人の囚人がアンソニーさんを囲んでいる場面を目撃しました。

パットン
なに?お前はこいつらの見張り役ではなかったのか!?

看守B
私もこの囚人二人に倒されましたので、この囚人たちは結構……いやかなり強かったです。

パットン
チッ、この役立たずが。

パットン
こんな事態、どう所長に説明してやればいいんだ!?

アンソニー
まずは現場を片付けましょう、パットン。

アンソニー
この二人は刺客です、そちらで処理してください。

パットン
オホン、しかしですね、アンソニーさん、私たちにも監督身分がありまして、君の一言で事態をどうこうするわけにも……

アンソニー
分かっています。

アンソニー
傷を受けたので、私はひとまず医務室に行きます、ほかの人たちも気絶させられたので、一緒に医務室に連れて診てもらったほうがいいでしょう。

パットン
もちろんもちろん。

パットン
お前たち何をボーっとしているんだ、この二つの死体をとっとと安置所に運ばんかね、ほかの人もここから運び出せ!


看守
は、はい!

看守
了解しました!


ドゥーマ
看守たちはもう行ったよ、アンソニー。

ドゥーマ
何が起こったの?みんな慌ただしかったわよ。

アンソニー
私も知りたいとこです。

アンソニー
よし、ここなら安全ですよ、カフカのお嬢さん。

アンソニー
ドゥーマは私の友人です、この刑務所内で信用できる人と言えば、彼女しかいません。

カフカ
じゃあまず、お嬢さんって言うのやめてくれないかな、ちょーっと背が小さいだけだし。

アンソニー
これは申し訳ない、カフカさん。

カフカ
……君、囚人のくせに、外にいる連中よりも礼儀正しいのね。

ドゥーマ
アンソニーはそういう人よ、誰に対しても礼儀正しいの。

カフカ
なるほど、腕っぷしもいい上に、礼儀も正しいときた、どうりでほかの連中が君を敬っているわけだ。

アンソニー
恐縮です。

アンソニー
では、次はこちらの質問です。あなたは私を助けにきたと言いましたよね、つまり、私を暗殺しに来た連中の来歴もご存じと?

カフカ
うーん……その前に、先に一つ質問させてほしいんだけど。

アンソニー
どうぞ。

カフカ
自分の家族、それと君の父親が自分の苗字で命名したサイモンコーポレーションに何が起こったかは理解している?

カフカ
知ってるんだったら、話が早いから助かるんだけど。

アンソニー
……父が十数件もの告発を受けたことは知っています、簡単に片づけられない問題が背後に潜んでいることも理解しています、ただ時間がなかったので具体的なことはあまりよく知りません。

カフカ
知ってるのであれば、話がはやい、サイモンコーポレーションは非……非なんだっけ?

アンソニー
非合法、ですか?

カフカ
あっそうそう!非合法密輸源石製品罪!とにかく会社は直接差し押さえられ、会社のコアメンバーも全員刑務所に入れられたんだ。

カフカ
だから君の家族はみんなまだトームペア刑務所で服役してると思うよ。

アンソニー
……

ドゥーマ
アンソニー……

アンソニー
……大丈夫です。

アンソニー
私たちはとっくに覚悟を決めていましたので。

アンソニー
家族がまだ死んでいないのであれば、嬉しい限りです。

アンソニー
それで、やったのは誰です?

カフカ
ハイドブラザーズだよ。

アンソニー
ハイドブラザーズ、やはりですか。

カフカ
ちょっと待って、サイレンスはなんて言ってたかな……そうそう、君の家族、つまりサイモン家と彼らは元々とある業界でのライバル関係だった。

カフカ
双方ともに業界内の50%のシェアを占めていたから、摩擦もしょっちゅう起こっていた、そして彼らは君たちのもう一方のシェアも独占したいと考えた。

カフカ
んでそっちから手を出したってわけ、簡単でしょ。

アンソニー
……ハイドブラザーズ。

アンソニー
父からよくその名前を聞かされました、あちらの会社に取引先として赴いたこともあります。

ドゥーマ
ほんの少しの私利私欲のためにここまでするなんて……

アンソニー
私も似たような話はちらほら聞いたことがあります、しかしまさか本当に我が身に降りかかるとは思いもしませんでした。

ドゥーマ
アンソニー、大丈夫?アーツで精神安定させましょうか?

アンソニー
いいえ、ありがとうございます、ドゥーマ。

アンソニー
言ったはずです、覚悟は決めてあると、ただことが急過ぎましたからね。

アンソニー
あなたを信じましょう、カフカさん、こんなことでそちらが私を騙す理由などあるとは思えませんし。

アンソニー
であれば、あの刺客たちもハイドブラザーズが遣わした者たちなのでしょう、彼らはなぜ今更こんなことを?

カフカ
それはカフカも知らないなぁ、でもカフカの経験に基づくと、あれだけで終わるとは思わないね。

カフカ
きっともっとたくさん暗殺に寄越してきていると思うよ、つまり、これは始まったばっかりって思っておいたほうがいいかもね。

アンソニー
……

アンソニー
ではあなたはどうなのですか?刺客から私を守るためだけに来たのではないのでしょう?そちらの目的はなんですか、カフカさん?

カフカ
カフカの?うーん……どっから説明すればいいかなぁ、とにかくカフカは君を脱獄させる依頼を受けてここに来たんだよ。

アンソニー
……

カフカ
外に出て復讐したいとは思わない?

カフカ
君の判決は終身刑、しかも仮釈放のないやつなんでしょ。

カフカ
もしここを出たいのであれば、選択肢は一つだけ、それは――脱獄するしかない。

カフカ
そしてカフカがその脱獄を助けに来たってわけ。

カフカ
もちろん、ここを出たくない、ここで一生を過ごすのであれば、無理はしないよ。

ドゥーマ
脱獄って……ここから無事脱獄できた人っていないのよ。

カフカ
まあまあ、そう言うけどさ、ものは試しって言うじゃん。

アンソニー
……あなたは刑務所に入ってしばらく経ちますよね、カフカさん。

カフカ
ん?そうだけど。

アンソニー
なら私の噂も耳にしたことがあるでしょう。

カフカ
うん、みんな君がこの刑務所内の最強で最も自由な囚人って言ってたよ、ほとんどの囚人は君のことすごいって。

カフカ
んでカフカも改めてそう思う、こんなときでも冷静に保てられているんだもん。

アンソニー
……しかし実際そんなものではありません。

アンソニー
たとえ私がみなが言うような魅力的な人格を持っていたとしても、所詮は囚人です、ここの看守や所長を折服させるのは不可能です、私は今ある地位に座るべき人ではありません。

カフカ
まあ、それは正しいんだけど、でももうそうなっちゃったことはしょうがないよ。

アンソニー
そして実際、私は看守たちからの優遇を受けられています。

アンソニー
私が知るのは、所長自ら看守たちに、「よくもてなすように」と言われたそうです。

アンソニー
ずっと思うところがありました、私はキャストアイアン市に着いて捕まってしまい、この刑務所に入れられた、もしかしたら父は最初からそういう狙いだったのでしょうか?

アンソニー
父は何かを予見し、事前に私をここに送り込んだと。

アンソニー
いつもそう思っているのです。

カフカ
あー、サイレンスもそんなこと言ってたなぁ、でもそれはただの可能性の一つにすぎないって言ってたよ。

アンソニー
サイレンスとは、あなたのバックに潜んでいる人に名前ですか?

カフカ
あ……まいっか、そうだよ。

アンソニー
あとでその方に感謝を述べさせてください。

アンソニー
とにかく、あなたの言う通り、今のところそれは可能性の一つに過ぎません、もし真実が知りたいのであれば、ここから出る必要がありますね、これは私にしかできないことでもありますから。

ドゥーマ
アンソニー、本当に彼女に教えちゃってもいいの?

アンソニー
問題ありません。今のところはあなたを信じます、カフカさん、なのでこちらも包み隠さず教えましょう。

アンソニー
あなたが来ていなかろうと、私がとっくにここでの生活に慣れていたとしても、いついかなる時でもここからの脱出を考えていました。

アンソニー
ここでは自分の欲しいものなら大半は手に入ります、しかしここから出られる方法は終始手に入らずじまいでした。

アンソニー
なのでお願いするべき立場はこちらのほうです、カフカさん。

アンソニー
どうか私の脱獄に協力して頂きたい。