(サイレンスが戻ってくる足音)
ただいま。
サイレンスさんもう平気なの?
平気、それとあなたに感謝を言わせてほしい。
どうして?
なんとなく。
そ、じゃあ、続ける?
さっきはどこまで話したの?
アンソニーがロビンにオリーブの枝を差し出したとこまでだよ。
ちょうどメイヤーさんとアンソニーの超絶テクニックで盛り上がっていたところだったよ。
……それはたぶんただ単に考えすぎだと思うよ。
もしくは、当時の彼はそんなこと思ってもなくて、ただ単にロビンに善意を現したとしたら?
うーん、その可能性も完全には否定できないんだけどね。
でも単純に優しい人は、この大地では生き長らえれないんだよ、サイレンスさん。
……まあいいや、話が脱線しちゃうし、メイヤーからどこまで話したの?
カフカとアンソニーが話し合って、アンソニーが脱獄を決意したところ。
あとロビンが医務室で目覚めて、アンソニーが脱獄チームに彼女を招待したところまでかな。
それと、サイレンスさん、あなたがどこでアンソニーの手掛かり情報を掴めたのかがすっごく気になるんだよね。
情報は私の先生からもらった。
ん?まさかパルヴィス主任も一枚噛んでるの?
……いや、彼とはもうしばらく連絡は取っていない。
たぶん彼もこの事件のことは知らないと思う。
ライン生命を出たあと、私は過去に気にならなかった情報をもう一度洗い直したんだ。
そしたら、サイモン一族の尻尾を掴めたってわけ。
ほほう?
この一族は極めて短時間で闇に葬られた、それにデータも正確に改竄されていた、だから普通の人からしたら、データにはまるで変化がないように見える。
でも改竄したとしても何かしらの痕跡は残る。報告書と、統計データ、これらを照らし合わせれば、ズレを見つけ出すことができる。
最初はちょっと試してみようってぐらいの気持ちでデータを洗ってみただけだったんだけど、こんなことが隠されていただなんて思いもしなかった。
偶然に発見されたってことか……いや、それとも必然か。
でも、どうしてデータを洗い直そうと思ったの?
ライン生命も、私の先生も信用に置けなくなったから。
それは「炎魔」事件がきっかけで?
いや、そうじゃない。
「炎魔」はサリアを辞職させた、その後に起こったことならきっとミュルジス主任のほうが私より詳しいと思うけど。
……なるほど。
いやね、こっちは適当に聞いてみただけだったんだけど、本当に私にそんなこと教えちゃってもいいの?
あなたが聞きたかった情報なんでしょ?
隠すことは苦手なんだ、ミュルジス主任、だからしばらく悩んだ末、あなたには包み隠さず全部話そうって決めた。
先生のことはあまり好きじゃないけど、でも彼が言ったある言葉はずっと憶えてる――
「陰謀家が最も恐れているものは、誠実さだ。」
……
どうやら私は悪モノ扱いされちゃったみたいだね。
いいや、ロドスでの生活時間は私にあることを教えてくれたんだ、あれはつまり、自分を反対するすべての人が悪人とは限らないってこと。
だから、あなたは悪い人じゃない……サリアもそう。
ただ言えるのは、私とあなた、私とサリアはお互いのことを理解できないんだよ。
……あはは、そうかもしれないね。
ではミュルジス主任、続きを聞く?
もちろんさ、ちょうど盛り上がるところだからね。
あっ、でも物語ももうそろそろ終盤なんじゃないの?
てことは、あの時、アンソニーの脱獄チームのメンバーは大方固まった感じかな?
アンソニー本人でしょ、納棺師のドゥーマでしょ、カフカでしょ、臨時雇い人のミーナでしょ。
最後にロビン、これでみんなで力を合わせて脱獄してはいチャンチャンって感じ?
いや、そんな簡単には終わらないよ。
え?
それにロビンは脱獄チームには加わらなかった。
えぇ?
でもその後、カフカはドゥーマとアンソニーと一緒に脱獄方法を模索して、そこにロビンが加わったことは確かだけどね。
でもことはそんな簡単には終わらない。
一体何が起こるの?
あなたが前に言ってたハイドブラザーズの助っ人を憶えている?
憶えてるよ、彼がどうしたの?
ロビンを見つけたんだ。