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【明日方舟】サイドストーリー 孤島風雲 MB-5「危険なトレード」後半

ロビン
ロビン

私は一体どうすれば……

看守
看守

オホン。

ロビン
ロビン

何か用ですか、看守さん?

看守
看守

あぁ、ロビンさん、ずっとお会いできるのを待ち望んでいましたよ。

看守
看守

さしずめ今は暗殺を継続するべきなのか、それともアンソニーの脱獄に協力するべきなのかで悩んでいるところなのでしょうね。

ロビン
ロビン

……あなたは一体!?

ジェストン
ジェストン

名前はジェストンだ、ロビンさん。

ジェストン
ジェストン

そう緊張しなさんな、私も君と同じ、刑務所に潜入してアンソニーの暗殺を請け負った殺し屋の一人さ。

ジェストン
ジェストン

それでたまたまアンソニーさんが君に一緒に脱獄しないかって誘い話をしたところを聞きましてね……

ロビン
ロビン

……!?

ジェストン
看守

アンソニーさん、パットン隊長から怪我の具合を確かめに行けと言われまして。

アンソニー
アンソニー

……平気です、もう少しだけ待っててください、すぐ終わりますので。

ジェストン
看守

はい、わかりました、ごゆっくり。

ロビン
ロビン

あなたはあの時の看守!?

ジェストン
ジェストン

おや、憶えていてくれましたか、それはよかった、結構人に忘れやすいたちでしてね。

ジェストン
ジェストン

忘れられてしまったのでしたら、それはそれで悲しいです。

ロビン
ロビン

ず、ずっと盗み聞きしてたの?

ジェストン
ジェストン

フフ、そりゃあ私が君たち気絶した囚人たちをあそこまで運んでやったんですからね。

ジェストン
ジェストン

アンソニーさんは自分の「安全部屋」で声のボリュームを下げていましたけど、それでも私みたいな用心深い人にとっちゃ、筒抜けなんですよ。

ロビン
ロビン

要求はなに?

ジェストン
ジェストン

トレードしましょう、ロビンさん。

ロビン
ロビン

トレード?

ジェストン
ジェストン

そうだ。

ジェストン
ジェストン

アンソニーさんのあの手口は、さすがに賞賛せざるを得ません。

ジェストン
ジェストン

表面上では君にオリーブの枝を渡した、だが実のところ君がそれを受取ろうが受け取るまいが、彼にとってはなんの損害もない。

ジェストン
ジェストン

実に見事だ、この私でもナンバーワンだと親指を立ててやりたいぐらいだね。

ジェストン
ジェストン

しかし惜しいのが、彼は君の正体を見抜けていない。

ジェストン
ジェストン

さもないと、また計画を練り直さなければいけませんからね。

ロビン
ロビン

私の正体?

ジェストン
ジェストン

そうだ、それとロビンさんも、君も自分とアンソニーさんの間にある、事実上に存在する確執を見抜けていない。

ロビン
ロビン

一体何の話?

ジェストン
ジェストン

ロビンさん、君の父親がまだ意気揚々としていた頃、その時に勤めていた会社の名前を憶えていますか?

ロビン
ロビン

ブラッククラウド。

ジェストン
ジェストン

そうです、ブラッククラウド貿易株式会社。

ジェストン
ジェストン

あんたの父親はそこの社長だった、だが事業が一番ピークを迎えているときに、ブラッククラウド貿易社は突如と倒産した。

ジェストン
ジェストン

その後、彼がいくら努力しようと、事業は好転することはなかった、それで一蹶不振してしまう、酒に溺れ、今日に至るまで、未だ病院のベッドで手術費用を待ちわびている。

ロビン
ロビン

……

ジェストン
ジェストン

ではブラッククラウド貿易社を倒産させたのは誰だかご存じですか?

ロビン
ロビン

まさか……

ジェストン
ジェストン

その通り、サイモン一族だ、そしてアンソニーさんの誇りに思っている苗字も、サイモンだ。

ジェストン
ジェストン

もちろん、私の誠意が本物であると証明するために、すべてお話しましょう。

ジェストン
ジェストン

簡潔に言うと、六年前、サイモン一族とハイドブラザーズはあるもののために競い合っていた。

ジェストン
ジェストン

双方ともに相手を呑み込もうとしていたんです、しかし両者ともに実力は互角、それで表や裏での争いが徐々に過激になっていき、ついには流血事件へと発展した。

ジェストン
ジェストン

そして最終的に、ハイドブラザーズがリードし、サイモン一族は尽く闇に葬られた。

ジェストン
ジェストン

サイモン一族の家長、スミス・サイモンはこの危機的状況下に、自分の唯一のせがれであるアンソニー・サイモンを別の都市に移すと決行した。

ジェストン
ジェストン

しかし、キャストアイアン市に逃げたあとでも、可哀そうなアンソニー君はやはり捕らえられてしまった。

ジェストン
ジェストン

だが幸運なことに、キャストアイアン市がある州の法律では、逃亡犯の裁判は本人がいる州で行われるとのことだった。

ジェストン
ジェストン

つまり、彼はトームペア市に送還されることはなかった、裁判後、彼は本州の法律に則り、この州の州立マンスフィールド刑務所に収監されたってわけだ。

ジェストン
ジェストン

本当は、スミスがこのことを予見していたため、あえてアンソニーをキャストアイアン市で逮捕させたと思っていたんだがね。

ジェストン
ジェストン

だが実際は、アンソニーはハイドブラザーズのシマであるトームペア市に戻らなかったから、何事もなかった。

ロビン
ロビン

それが私の父さんとなんの関係があるの?

ジェストン
ジェストン

もちろんあるとも。

ジェストン
ジェストン

さっきも言ったが、サイモン一族は当時のハイドブラザーズの競争相手だ、一手間違えたとはいえ、死ぬ直前でも相手に噛みつく力は彼らにはある。

ジェストン
ジェストン

そして彼らが噛む着く対象の中には、君の父親の会社――ブラッククラウド貿易社が入っていた。

ジェストン
ジェストン

当時、君の父親はハイドブラザーズの最も有力な部下の一人だった、その上ブラッククラウド貿易社の業績もいい。

ジェストン
ジェストン

だがサイモン一族が一夜にして蒸発したように、ブラッククラウド貿易社もサイモン一族の悪あがきのせいで、同じく一夜にして蒸発してしまった。

ロビン
ロビン

……

ジェストン
ジェストン

しかし、君の父親ももちろん再起しようと思っていた、だが彼の競争相手がそんな機会を逃すわけがはたしてあるのだろうかね?

ジェストン
ジェストン

答えは、ノーだ。

ジェストン
ジェストン

クルビアの市場は、時には戦場よりも血生臭くなりますからね。

ジェストン
ジェストン

そして、君の父親はその後、二度と立ち上がれることはなかった。

ジェストン
ジェストン

つまり、アンソニーさんが脱獄してハイドブラザーズに復讐することは、いたって普通のことなんです。

ジェストン
ジェストン

しかし君はどうなんですか、ロビンさん?

ジェストン
ジェストン

もしハイドブラザーズがサイモン一族を葬らなければ、サイモン一族も死に物狂いで君の父親の会社を潰すことはしなかった、と仮定することはできます。

ジェストン
ジェストン

また、もしサイモン一族が一足先にハイドブラザーズを潰していれば、あのスミス・サイモンはあのハイドブラザーズ以上に寛大な取り組みをしたはず。

ジェストン
ジェストン

より平和的な方法でハイドブラザーズ傘下の企業を処理してくれたでしょうね。

ジェストン
ジェストン

だが歴史にもしもはありません。

ジェストン
ジェストン

今の結末は――サイモン一族が君の父親のブラッククラウド貿易社を潰したって事実だけです。

ジェストン
ジェストン

そして君が暗殺する対象は、アンソニー・サイモン、あの一族の最後の生き残りだ。

ロビン
ロビン

それらを比較していいものとは思わない。

ジェストン
ジェストン

ええ、もちろんだとも、これが正義だとは言いませんよ、ロビンさん、こんなもの断じて正義などではありません。

ジェストン
ジェストン

もし悲劇は比較していいものなのであれば、アンソニーさんはハイドブラザーズに借りがある、だがそれ以上に君の借りのほうがよっぽど大きい。

ジェストン
ジェストン

だがだからとて君の復讐が彼の復讐より劣っているとでも?

ジェストン
ジェストン

あんたの苦しみが彼の苦しみに劣るとでも?

ジェストン
ジェストン

いいや、違う。

ジェストン
ジェストン

苦しみは平等だ。

ジェストン
ジェストン

君の父親が味わった悲しみを思い出してみてください、君にも彼を死に追いやる理由は十分ある、違いますか?

ロビン
ロビン

私は……

ジェストン
ジェストン

それと、もう一つ考えてみてみましょう、ロビンさん。

ジェストン
ジェストン

この事件によりリアリティを増すために。

ジェストン
ジェストン

サイモン一族はもうすでに滅んだ、仮にアンソニーさんが脱獄できたとしても、彼が君に報酬を与えたとしても、最終的に本当に復讐が成功できたとしても――

ジェストン
ジェストン

彼は君に何を与えてやれるというんですかね?

ジェストン
ジェストン

君に今急いで必要としている手術代をくれるのでしょうか?

ジェストン
ジェストン

君の父親を最先端の病室に移して治療させてくれるのでしょうか?

ジェストン
ジェストン

アンソニーさんはスミスのビジネスの才能を遺伝しているかもしれませんが、そんな短時間の間では彼とて叶えられません。

ジェストン
ジェストン

だが私なら、君が必要としているものを与えてあげられる。

ジェストン
ジェストン

よくよく考えて答えを出してくださいね、ロビンさん。

ロビン
ロビン

ロビン
ロビン

あなたは……

???
???

よくよく考えてくださいね、ロビンさん。

ロビン
ロビン

あなたは……私の雇い主!?

ジェストン
ジェストン

そう、私です。

ジェストン
ジェストン

君の経歴にはどうしても同情してしまう、だが君の性格も理解している、他人から情けをかけられたくない性格をね、生憎私も他人に情けをかけたくないもんでね。

ジェストン
ジェストン

だから君のためにトレードを用意したんだ。

ロビン
ロビン

……なんで私にそんなことを教えるの?

ジェストン
ジェストン

もちろん、最初は君と接触するつもりはなかった、ただアンソニーさんの一手でそうせざるを得なくなってしまってね。

ジェストン
ジェストン

もう一度褒めさせて頂きたい、ここで生活していると、私とてもう少しでアンソニーさんの気迫に折れてしまうところでしたよ。

ジェストン
ジェストン

それに君にこれらを教えなかったとしたら、君はそのチープな同情心のせいで頭が麻痺して彼を助けるほうを選ぶかもしれなかったからね。

ジェストン
ジェストン

仮に今日君を単純に騙したとしよう、アンソニーさんが君の父親の会社を潰したとね、でも君はおそらくそう遠くない未来で彼の話から真実の全貌を聞き出す可能がある。

ジェストン
ジェストン

ならその時になれば、私は邪悪で疎遠なヤツとして君の目に映ってしまうだろ?

ジェストン
ジェストン

だから君が知るべき真実をすべて教えて、君自身に選ばせてあげようと思ったわけだ。

ジェストン
ジェストン

君は過去のことを一旦置いておいて、このシンプルな選択を悩めばいい――

ジェストン
ジェストン

見返りもない同情心で彼の脱獄に協力するのか、それとも私が約束する利益のために俺私に協力するのか?

ロビン
ロビン

……

ドゥーマ
ドゥーマ

ロビンさん、それで考えてくれた?

ロビン
ロビン

……私も入る。

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