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【明日方舟】サイドストーリー 孤島風雲 MB-8「激闘の末」前半

ジェストン
ジェストン

よくもまあこんな大騒ぎを起こしてくれましたね、アンソニーさん。

ジェストン
ジェストン

私が事前に君たちの計画を察知していなければ、止めようがなかったでしょう。

ジェストン
ジェストン

お前がジェストンか?

ジェストン
ジェストン

ええ、その通りです。

ジェストン
ジェストン

何度かお会いしたこともあるのですが、もう一度自己紹介を。

ジェストン
ジェストン

私の名はジェストン・ミラー、君の脱獄計画に立ちはだかる最後の障壁です。

アンソニー
アンソニー

ドゥーマは?

ジェストン
ジェストン

ここに。

B区囚人A
囚人A

……

ドゥーマ
ドゥーマ

アンソニー、ごめんなさい。

ドゥーマ
ドゥーマ

医務室であなたたちを待っていたら、この人が突然囚人たちを連れて入り込んできて……

カフカ
カフカ

ドゥーマ……

ジェストン
ジェストン

これほど鬱蒼とした場所に、これほど麗しいお嬢さんを独りで待たせるのはいささかどうかと思いましてね?

ジェストン
ジェストン

ですから少しだけ彼女を保護させていただきました。

ロビン
ロビン

ジェストンさん……

ジェストン
ジェストン

おや、ロビンさん、どうやら失敗してしまったようですね、残念です。

ジェストン
ジェストン

それとも、暗殺を実行しなかったとか?

ロビン
ロビン

私は……

アンソニー
アンソニー

彼女は失敗した、お前の手下では相手にならん。

ジェストン
ジェストン

しかしあなたは彼女の一命を取り留めた、いやはや、真の紳士とはまさにあなたのことを指すのですね、アンソニーさん。

アンソニー
アンソニー

減らず口を。

ジェストン
ジェストン

まあいいでしょう、では単刀直入に。

ジェストン
ジェストン

アンソニーさん、こちらのお嬢さんを死なせたくなければ、こちら側に来てください。

カフカ
カフカ

……

ジェストン
ジェストン

おっとカフカさん、そこで動かずにジッとしててくださいね。

ジェストン
ジェストン

あなたはコソコソするのが得意だったはずですね、あまりドゥーマさんを傷つけさせることはしないで頂きたい。

カフカ
カフカ

チェッ。

アンソニー
アンソニー

……

(アンソニーが前に出る)

ジェストン
ジェストン

そう、そこでジッとしててください。

ジェストン
ジェストン

君たち、彼を囲め。

(囚人達がアンソニーを囲む)

ドゥーマ
ドゥーマ

アンソニー、彼の言うことに耳を傾けないで。

アンソニー
アンソニー

喋るな、ドゥーマ、必ず助け出す。

ジェストン
ジェストン

こんな危機的状況でまだ冷静でいられるとは、大したものですね、アンソニーさん。

ジェストン
ジェストン

こちらの思惑も、こちらが同情心を動かされて見逃すわけがないことも君なら分かっているはず。

ジェストン
ジェストン

アドバイスとして、このお嬢さんを救うことを諦め、君の今までご自分を偽装してきた教養も諦め、私を殺しにかかってみては如何でしょうか。

アンソニー
アンソニー

だ―ま―れ。

ジェストン
ジェストン

いつまでもつのでしょうね?

ジェストン
ジェストン

それと、ロビンさん。

ロビン
ロビン

え?

ジェストン
ジェストン

これから、アンソニーさんを殺して、ご自分の任務を遂行して頂きたい。

ジェストン
ジェストン

君が先ほどアンソニーさんとどういった取引をしたかも、どういった心境の変化が生じたかも私には関係ありません。

ジェストン
ジェストン

もしこの金が欲しければ、もし君の父親を救いたければ、今こそが君にとって最後の、最高のチャンスですよ。

ロビン
ロビン

……

ロビン
ロビン

私は……

ジェストン
ジェストン

父親のことを、何もかもズタボロになってしまったご自分の暮らしを、君の未来を、君の願望を思い出してみてください。

ジェストン
ジェストン

もし私であれば、躊躇しません。

アンソニー
アンソニー

一体何を企んでいやがる?

ジェストン
ジェストン

何を企んでいると?

ジェストン
ジェストン

見ればわかるじゃないですか?ただ君を殺すだけの目的であれば、刑務所内でいくらでもチャンスはあった。

ジェストン
ジェストン

ただそれではあまりにもつまらない、そう、つまらないのです。

ジェストン
ジェストン

私にとって人殺しはさして趣味というわけでもないんですよ、アンソニーさん。

ジェストン
ジェストン

私にとって、最もおもしろいと思う部分は、変化です、人が選択を迫られた時に過去を捨て去らなければならないあの瞬間です。

ジェストン
ジェストン

だから私はロビンさんに囁いたのです、ロビンさんの変化を、彼女の堕落っぷりを見るために。

ジェストン
ジェストン

だからぜひ君の変化も、この状況下で君の家族のために、君の目的のために、今までのすべての矜持を捨て去るところが見たい、君の牙を私に見せてください!

ジェストン
ジェストン

さあ、フリはもうやめましょう、アンソニーさん、さあさあ、正体を見せてください。

ジェストン
ジェストン

君の家族を、君の謂れのない罪を、君が受けた屈辱を、君が脱獄する目的を思い出してみてください。

ジェストン
ジェストン

このままこんなところで死んでもいいのでしょうか?

ジェストン
ジェストン

たかが知り合って数年しか経っていない女性のために自分の命を投げ捨てるのですか?

ジェストン
ジェストン

さあ立ってください、アンソニーさん、ロビンさんを押しのけ、ドゥーマさんのことなど忘れ、私に襲い掛かってこい、そして私を殺せ!

アンソニー
アンソニー

どいつもこいつも自分と同じ変態と思わないことだな、ジェストン。

ジェストン
ジェストン

自分は特別だとは思わないことですね、アンソニー。

ジェストン
ジェストン

五秒だけ差し上げます、ロビンさん、タイムリミットになったときは、私自ら殺ります、そして君も、ここで死んでもらいます。

ジェストン
ジェストン

ロビンさん、君の父親の手術代はまだまだ山のように積みあがっています、しかし今のアンソニーさんは一文無しですよ。

ロビン
ロビン

アンソニー、私……

ジェストン
ジェストン

四。

ジェストン
ジェストン

アンソニーさん、君のご両親は刑務所でそれはそれは惨いイジメに遭われています、見るも無残な暮らしを送っていますよ。

アンソニー
アンソニー

……親父、おふくろ。

ジェストン
ジェストン

三。

ドゥーマ
ドゥーマ

アンソニー、私のことはいい、ここで死んではダメ!

B区囚人
囚人A

フンッ!

ドゥーマ
ドゥーマ

あがっ……

B区囚人A
囚人A

クソアマが、俺が注意していないスキに自殺しようとしやがって。

ドゥーマ
ドゥーマ

ロ……ビン……ダメ……

ジェストン
ジェストン

私の想像以上に気骨がある方ですねドゥーマさんは、いやはや尊敬に値しますよ。

ジェストン
ジェストン

しかし残念ながら、彼女の思い通りにはなりませんでしたね。

アンソニー
アンソニー

ジェ―ス―トン。

ジェストン
ジェストン

素晴らしい表情です、アンソニーさん、実に素晴らしい。

アンソニー
アンソニー

……

ジェストン
ジェストン

気になるんです、何があなたの意志をそこまで固くしているのか?

ジェストン
ジェストン

まさかご自分の死が残りの人の善遇と交換できるとでも思っているのですか?

ジェストン
ジェストン

君にとってそれほど信条は大事なものなのですか?

ジェストン
ジェストン

それとも、まだ何か一手が残っていると?

アンソニー
アンソニー

……この刑務所で暮らす中、俺は多くの信条に背いてきた。

アンソニー
アンソニー

ここの獄卒連中におだてられ、パットンに威を借りられ、殴りたくもない人を殴った、過ごしたくもない生活を過ごしてきた。

アンソニー
アンソニー

だが信条なんてもうどうでもいい。

アンソニー
アンソニー

これは俺の問題だ。

アンソニー
アンソニー

俺は俺の目的のためにドゥーマを犠牲にしたくない、ただそれだけだ。

ジェストン
ジェストン

君の家族が君を待っているにも関わらずにか?

アンソニー
アンソニー

てめぇが俺の家族を口にする資格なんざねぇ。

ジェストン
ジェストン

まだなすべき復讐とやるべきことがあるにもか?

ジェストン
ジェストン

一人の友人の命に比べれば安いものだ。

ジェストン
ジェストン

それで自分の命が失ってしまうかもしれないのにか?

ロビン
ロビン

アンソニー……

アンソニー
アンソニー

自分で物事を考え、一つ一つ選択し、その選択に責任を負うべきだ。

アンソニー
アンソニー

でなければ、己の運命を背負えなくなってしまう。

アンソニー
アンソニー

もう一度自分を見つめ直し、考え、自分は一体何がしたいのか考え直すんだ。

ロビン
ロビン

アンソニー……

ジェストン
ジェストン

それは残念です。

ジェストン
ジェストン

では、二。

ロビンはゆっくりと歩きだした。

彼女はアンソニーの側へとゆっくりと向かった。

ジェストン
ジェストン

一。

ジェストン
ジェストン

ロビンさん、君の苦しみは理解できます、ですが君の意志で選択しなければいけませんよ。

ロビン
ロビン

アンソニー。

アンソニー
アンソニー

どっちを選んだとしても、後悔だけはするな、ロビン。

ロビン
ロビン

うん。

ロビンの手にしたナイフを振り下ろした。

しかし、ナイフを宙で手から離れて出てきた。

彼女の目的はアンソニーでは無い!

B区囚人A
囚人A

グハッ!

ロビン
ロビン

アンソニー、ドゥーマは私に任せて!

A区囚人A
囚人B

チッ!そうはさせるか!

カフカ
カフカ

へっへェ、ここまで我慢してた甲斐があったってもんよ!

A区囚人
囚人B

いつの間に!?

(ナイフで切れる音)

A区囚人
囚人B

……グハッ……

ロビン
ロビン

アンソニー!

アンソニー
アンソニー

オラァ!!!

(アンソニーがジェストンを殴りつける)

ジェストン
ジェストン

それが君の残りの一手ですか?

ジェストン
ジェストン

ロビンさんが君の側につくと断定して?

アンソニー
アンソニー

いや、おそらくてめぇが示した報酬がそんなに美味しくなかっただけだと思うが。

ジェストン
ジェストン

本当にそれでいいのですか、ロビンさん?

ジェストン
ジェストン

私の目には君はなんの未来もない道を選んだように見えるが。

ロビン
ロビン

父さんがあんな風になったのは確かにサイモン一族が一夜で潰したせいでもある、でもその後立ち上がらなかったのは父さんの責任だ。

ロビン
ロビン

ずっと知っていた、でも認めたくはなかった。

ロビン
ロビン

そして私も……こんなことなんてしたくなかった。

ロビン
ロビン

アンソニーは逃げ出した後父さんの治療代をどうにかするって私に約束してくれた。

ロビン
ロビン

でもそんなことはどうだっていい。

ロビン
ロビン

もうアンソニーは殺さないって誓った、アンソニーが私を助けてくれないとしても、別の方法を考えればいい。

ロビン
ロビン

もしこんなことで父さんの病気の治療が間に合わなかったんだったら、私は……

ロビン
ロビン

私は自殺する、地面に潜って父さんに謝る、役立たずな娘でごめんねって、父さんに謝る。

ロビン
ロビン

それが私の選択だ。

ジェストン
ジェストン

……

ジェストン
ジェストン

美しい、実に美しい。

ジェストン
ジェストン

なんという感動的な覚悟なのだろうか、ロビンさん。

ジェストン
ジェストン

そういった覚悟で私たちの間に交わされた小さな契約を背いたというのであれば。

ジェストン
ジェストン

君を責めなどしません、むしろ賞賛の拍手を送ってあげたいものだ。

ジェストン
ジェストン

しかし私からも一点だけ言わせてください。

ジェストン
ジェストン

私がいった未来などないというのは、君たちの「脱獄後」の未来を指しているのではありません。

ジェストン
ジェストン

今を指しているのです、今現在を。

ジェストン
ジェストン

君たちに脱獄が成功する未来など訪れませんよ。

アンソニー
アンソニー

そんなもんやってみなきゃ分からねぇだろうが!

ジェストン
ジェストン

いえいえいえ。

ジェストン
ジェストン

君の武力は確かに強力だ、私も認めよう、アンソニーさん。

ジェストン
ジェストン

それに私にとって、人殺しにしても、暴力にしても特別おもしろいものでもありません。

ジェストン
ジェストン

ですのであなたに「やってみせない」ためにも、ドゥーマはただの第一段階にすぎません。

ジェストン
ジェストン

そして第二段階は――

アンソニー
アンソニー

ぐッ……あぁッ……

カフカ
カフカ

うわぁぁぁッ!

ドゥーマ
ドゥーマ

アンソニー、カフカ、大丈夫!?

アンソニー
アンソニー

問題……ない……

ジェストン
ジェストン

自分たちに付けられた枷を忘れてしまったのですか?

カフカ
カフカ

クソォ、こいつ、本当に用意周到だな。

ジェストン
ジェストン

お褒め頂きありがとうございます、カフカさん。

カフカ
カフカ

この野郎、最初からロビンを騙すつもりだったんだろ!

ジェストン
ジェストン

とんでもない、私はただ万が一に備えていただけですよ。

ジェストン
ジェストン

ロビンさんが成功していれば、私も多少は楽にはなる。

ジェストン
ジェストン

仮にロビンさんが失敗したとしても、ほら、こうして彼女のために別の策を用意しておきました。

カフカ
カフカ

いいこと言ってるように聞こえるけど、お前が彼女を巻き込んだんじゃないか!

ジェストン
ジェストン

はは、私は一度も彼女の蟠りが見たいという目的を否定したことなどありませんよ。

ジェストン
ジェストン

しかしカフカさん、君だって商売をした身、であれば分かるはずです、もし彼女を巻き込まなかったなら、彼女は父親の治療代を揃えることなどできたでしょうか?

ジェストン
ジェストン

可能性は低いでしょうね。

カフカ
カフカ

チッ。

ジェストン
ジェストン

ほら、反論できないでしょ、違いますか?

アンソニー
アンソニー

ッ……ロビンが……てめぇ側についたほうが……よかったかもしれないのは……認める。

アンソニー
アンソニー

だが彼女はそうしなかった。

アンソニー
アンソニー

そ、れ、で、十、分、だ。

アンソニー
アンソニー

オラァ!!!

ジェストン
ジェストン

こんな状況でも戦うつもりなのですか。

ジェストン
ジェストン

まあいいでしょう、なら私自ら君の最後の幻想を打ち砕いてあげましょう。

ロビン
ロビン

アンソニー、私も加勢するよ!

カフカ
カフカ

チッ、アンソニーほどパワーはないけど……

カフカ
カフカ

え……みんな気を付けて、あいつの手が……

カフカ
カフカ

あいつの手が、黒く変色したぞ!

ジェストン
ジェストン

いやはや、なんという温かな一幕なのだろうか。

ジェストン
ジェストン

この一幕を私自ら粉々に粉砕できると思うと……

ジェストン
ジェストン

たまらなく興奮するなァ、アンソニーィィィ!

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