アークナイツ ストーリー翻訳

【明日方舟】オムニバスストーリー「この地の外で ホシグマ 一話完結」

ホシグマ
ホシグマ

(あくび)

ホシグマ
ホシグマ

布団をきちんと畳んでっと、これでよし。

ホシグマ
ホシグマ

通信機、鍵、コート……

ホシグマ
ホシグマ

盾は……いいか、相棒、今日はしっかり休んでくれ。

ホシグマ
ホシグマ

靴はこれにしよう、ん、いや、違うな、やっぱりこっちの限定版のを履いたほうがいいか?

ホシグマ
ホシグマ

あ、こっちもいいな、今日の服とも似合ってるし。

ホシグマ
ホシグマ

……

ホシグマ
ホシグマ

うーん、いややっぱりこっちにしよう。

スワイヤー
スワイヤー

(ジト目)

ホシグマ
ホシグマ

Missy、ちょうどよかった、どっちが似合ってると思います?

スワイヤー
スワイヤー

アタシに聞かないでちょうだい、今アンタを見てるだけでムカムカするのよ。

ホシグマ
ホシグマ

どうしたんですか、あまり機嫌がよろしくないですね。あの日ですか?

スワイヤー
スワイヤー

※龍門スラング※!

スワイヤー
スワイヤー

朝っぱらからアタシのところに来て何の用よ!?アンタの靴を眺めるため?そんなたくさんコレクションした靴なんてアタシからしたらどれも一緒よ!

ホシグマ
ホシグマ

一緒なわけないじゃないですか、モデルも材質もてんで違う……はぁ、言ってもわかりませんもんね。

ホシグマ
ホシグマ

お互い宿舎で寄せ合ってるお隣さんなんですし、助け合いだと思ってくださいよ。

スワイヤー
スワイヤー

んなこと知らないわよ!

スワイヤー
スワイヤー

いい!?アタシ今日はオフなのよ!あと三分で六時になるわ、この警報ボタンを押せば、即刻アンタをお縄にかけてあげられるのよ!

スワイヤー
スワイヤー

残業したいならすればいいわ、毎日そんな風に仕事してたらいずれハゲ散らかすわよ、アタシを巻き込まないでちょうだい!

ホシグマ
ホシグマ

残業は勘弁してほしいですね、せっかくの休日なんですし、近衛局の残業代だってそんなに多くない上に、むしろケチですし。小官はあのチェンみたいな仕事マシーンじゃないですしね。

ホシグマ
ホシグマ

それにMissy、あなたにだけは言われたくないですよ?さっき近衛局から戻ってきたばっかりじゃないですか、バンッておもいっきりドアを閉めた音が聞こえましたよ、ていうか響いてました。

スワイヤー
スワイヤー

ああもううっさいわね!イライラしてんのよこっちは!

スワイヤー
スワイヤー

溜まりに溜まった仕事に、レユニオンの置き土産、あのクソネズミの要件も……肝心な時にあのクソ龍はいないし、手が空いてるとでも思ってるの?

スワイヤー
スワイヤー

昇進したアンタを上はどっかに異動しようとしてるし、どこに異動するつもりなのよ?特別督察隊をよくわからん奴らに任せてもいいって言うの!?

スワイヤー
スワイヤー

ああもうムカつくッ!

ホシグマ
ホシグマ

まあまあ、落ち着いてください。ウェイ長官だって何も考えなしにしてるわけじゃないですから、きっとあなたを鍛えてあげてるんですよ。

ホシグマ
ホシグマ

将来の近衛局はあなたが支えてもらわなきゃいけまませんからね、いずれ、ですけど。

ホシグマ
ホシグマ

Missyならきっとできますよ。

スワイヤー
スワイヤー

……アンタ……またそんなこと言って、当然じゃない!

スワイヤー
スワイヤー

で、でも本来近衛局を支えるのは……本来は……

ホシグマ
ホシグマ

ちょっと、また泣き出すのは勘弁してくださいよね。

スワイヤー
スワイヤー

泣くわけないでしょ!

スワイヤー
スワイヤー

見てなさい、あのクソ龍が帰ってこないんだったら、いずれ近衛局をアタシのものにしてやるわ。どいつもこいつも見てなさいよ。

ホシグマ
ホシグマ

はは、それは期待ですね。

スワイヤー
スワイヤー

ん、いや、ちょっと待って、アンタさっき、アタシが帰ってきた時のドアの音を聞いたって言った?じゃあアタシが一晩中寝ていなかったことも?

スワイヤー
スワイヤー

なら何でアタシのとこに来ているのよッ、それでよくもわざとじゃないって言えたもんねッ!?

ホシグマ
ホシグマ

ちょっ、ちょっと、落ち着いてください。

ホシグマ
ホシグマ

自分を追い詰めし過ぎていないか心配して来ただけですってば。最近仕事三昧で、お互い全然顔を合わせてないじゃないですか。

ホシグマ
ホシグマ

あ、朝ごはんまだじゃないですか?朝食買ってきましたよ、あなたの大好きな焼き麺も、少し食べてから寝てくださいね。

スワイヤー
スワイヤー

ふんっ、余計なお世話よ。

ホシグマ
ホシグマ

はいはい、わかりました、余計なお世話でしたね、じゃあこれいりませんね?

スワイヤー
スワイヤー

食べるに決まってるでしょ!寄越しなさい!

スワイヤー
スワイヤー

ちょっと、二つ多く買ってるわよ?そんな量、一人で食いきれないでしょうが。

ホシグマ
ホシグマ

え……この二つですか?いやぁ、癖で買っちゃうんですよね。

スワイヤー
スワイヤー

……

スワイヤー
スワイヤー

三種キノコの肉炒めに、海鮮ソース、クズイモのトッピング。……ふんっ、こんなものアイツしか好んで食べないわ。

スワイヤー
スワイヤー

ここの麺あんまり美味しくはないわね、味は薄いし、野菜も少ないし、まあまあね。次は近衛局ビルを曲がったところにある二軒目のを買ってきなさい、外に青い看板を下げてるところよ、あそこのほうが美味しいから。

ホシグマ
ホシグマ

はいはい、わかりましたよ、次はそこの店のを買ってきますね。とりあえず食べちゃってください、ちょっ、そんながっつかないで、むせちゃいますよ。

スワイヤー
スワイヤー

(あくび)

スワイヤー
スワイヤー

そうだ、アンタ今日どこかに行くの?どうせ目が覚めちゃったんだし、アタシも連れて行きなさいよ。

スワイヤー
スワイヤー

スワロフスキーのネックレスが買いたいの、新商品よ、JOKERシリーズのね、先週出たばっかなんだから。

ホシグマ
ホシグマ

へぇ、チェンが前から気にいってたヤツですか?

スワイヤー
スワイヤー

そう、それよ、あのナリにしてはいいセンスしてるわ、服とかネックレスとかに関してはアタシ以上にいいセンスしてたわねアイツ。

ホシグマ
ホシグマ

チェンを褒めるなんて珍しいですね。

ホシグマ
ホシグマ

でも、ネックレスを買ったはいいもののつけても二三回だけですし、高い給料と、金を取らない近衛局の宿舎があったからよかったですけど、でないと生活もままならないですよ。

ホシグマ
ホシグマ

しかし、Missyが小官にデートのお誘いとは?珍しいこともあるんですね、初めてじゃないですか?

スワイヤー
スワイヤー

ほかにいなかっただけよ、好きでアンタを誘ったとでも?

ホシグマ
ホシグマ

ですよね。あ、真面目な話、そろそろ出ないと遅れちゃいますので先に出ますね。

スワイヤー
スワイヤー

ちょっと、どこに行くのよ?待ちなさい、お化粧をしてくるから!

ホシグマ
ホシグマ

いいですって、化粧しなくても十分お綺麗ですよ、「マダム」。

ホシグマ
ホシグマ

誘ってくださってありがとうございます、でも今日は遠慮しておきます、ちょっと散歩しに行くだけですから、ついて行ったところで何もありませんよ。今度ドライブに誘いますから。

ホシグマ
ホシグマ

今日はもう寝てください、あまりクマを残し過ぎると、簡単には落ちませんよ。

ホシグマ
ホシグマ

今日はちゃんと休んでてくださいね、スワイヤー。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

長官、おはようございます!

ホシグマ
ホシグマ

おはよう。お疲れ様。朝飯は食ったか?美味しい店をおすすめされたから、ついでに買ってきたぞ。

ホシグマ
ホシグマ

まったく、休日の早朝だと言うのに、ビルの中は人だらけじゃないか。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

例の事件以来、ずっとこの調子ですよ、はぁ。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

ホシグマ長官だって、数時間出て行ったと思ったらまたトンボ返りじゃないですか、今日お休みだったはずでは?

ホシグマ
ホシグマ

そうだが、まだやることが山積みだからな。

ホシグマ
ホシグマ

そんなことより、本当に大丈夫か?なんかフラフラしてるぞ……飯でも食べて、休憩室で少し横になるといい、エナジードリンクは控えろ、身体によくないぞ。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

あぁ、ありがとうございます長官。でも平気です、コイツを片付けた後は帰って寝ますから。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

(おおあくび)

ホシグマ
ホシグマ

そうか、じゃあこれ以上うるさくしないようにしよう、自分でもしっかりコンディション整えておくんだぞ。

ホシグマ
ホシグマ

みんな本当にご苦労だ。これを乗り越えたら、飯を奢ってやるからな。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

飯はありがたいですけど、それより給料上げてほしいです。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

ついこの前ロドス事務所の人と会いましたよ、アイツ俺にまた昇進したって自慢しに来たんですよ……チッ、なにが自慢だよ、ちょっと俺より休日が少し多いだけじゃねぇか……

近衛局隊員
近衛局隊員

……ロドス?

近衛局隊員
近衛局隊員

それって、俺たちが共同関係にあった頃の、しかもチェン長官を連れて行ったヤツのことか!?

近衛局隊員
近衛局隊員

アイツとっくにロドスに逃げ込んだんじゃなかったのか!

ホシグマ
ホシグマ

あー……それって現地に置いてるあの事務所のことだろ?

ホシグマ
ホシグマ

彼ら確か人員募集も担ってたな、この前街の若い連中が冷やかししに行ったら、逆にバイトさせられたんだっけか?

ホシグマ
ホシグマ

彼らの口車には敵わないな。

ホシグマ
ホシグマ

お前もいちいちちょっかいを出すなよ、あそこの事務所に残ってるスタッフは全員龍門の市民だからな、苦情を言われたらたまったもんじゃない。

ホシグマ
ホシグマ

帰り際に街のやんちゃ共にも一言言ってやれ、もう冷やかしするなとな。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

]ちょっかい出しませんよ。みんなも分かりきってることなんですから。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

ウチらとロドス、関係はそこそこいいし、たまに一緒に飲みにだって行くぐらいですよ。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

あそこやけに変な奴らが多いんですよ。現地のスタッフ以外とも、たまに外でも他の連中とばったりでさ。なんだか訳ありみたいだったから、ウチらも職業病でついつい見張っちゃうんですよ。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

先週だってラテラーノ修道会の娘が一緒に……いやいいや、アイツら飲みだすと止まんないからな。

近衛局隊員
近衛局隊員

え!?アンタこの前べろんべろんの酔いつぶれたと思ったら、ロドスの奴らと一緒に飲みに行ってたのかよ!?おまけといわんばかりに俺に吐きやがってさ!

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

え……そんなことあったのか?

近衛局隊員
近衛局隊員

あったんだよ!

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

分かった、分かったから、俺が悪うございました。今度のお前が彼女とデートする時の休みは俺が取ってやるから、これでいいだろ?

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

あともうちょい、コイツを乗り越えれば、この再建区画のスケジュールを提出すれば、取ってやるから。

近衛局隊員
近衛局隊員

分かってるって……ぶっちゃけると、これを乗り越えた日にゃ、俺も彼女とお別れだろうな……ハハ。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

へッそいつぁいい、休みが増える。

ホシグマ
ホシグマ

お喋りはそのぐらいにしろ。手を動かしたらどうだ。

近衛局隊員
近衛局隊員

こいついっつもこうなんですよ、もう慣れましたけど。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

言ってろこの野郎。

近衛局隊員
疲労困憊の近衛局局員

長官も、せっかくの休日なんですし、ここでたむろってないで、早く帰って休んでくださいよ。

近衛局隊員
近衛局隊員

そうですよ、ここは俺たちに任せてください!

ホシグマ
ホシグマ

ふむ、どうやら私は歓迎されてないようだ、お前たちに追い出されるとは思わなかったぞ?

近衛局隊員
近衛局隊員

い、いやぁ、そういう意味じゃなくてですね……!

ホシグマ
ホシグマ

はは、分かってるさ、ビクビクするな、ただの冗談だ。私はちょっと様子を見に来ただけだ、ついでにおつまみを置いておこうと思ってな。

ホシグマ
ホシグマ

ほらっ、焼き麺だ。じゃあ頑張ってくれ、私は先に帰らせてもらうぞ。

ホシグマ
ホシグマ

ふぅ、疲れた。

ホシグマ
ホシグマ

何徹もしてないのに、もう身体が鳴ってる、どうりで調子が悪いわけだ。

ホシグマ
ホシグマ

まさか歳か?いやそんなまさか、私だってまだまだ若い……

ホシグマ
ホシグマ

……

ホシグマ
ホシグマ

はずだよな?

ホシグマ
ホシグマ

はぁ、考えるのやめよう……

(バイクのエンジン音)

ホシグマ
ホシグマ

よぉ、相棒、お前はどう思う?久しぶりに走らせてあげるからな、今日は郊外のレースに行って、なまった身体を整えような。

ホシグマ
ホシグマ

む、今日はマフラーの音がおかしいぞ、まさかお前も歳なのか?

ホシグマ
ホシグマ

いや、そんなことないだろ、お前まだ新しく出たばっかりだしな。70vv。

(バイクをふかす音)

ホシグマ
ホシグマ

お前より新しいシリーズがまた出たのは確かだけどな。安定してフラつくこともなし、走ること電光石火の如く、あそこの広告はいつも素晴らしいものだよ。

ホシグマ
ホシグマ

またもう一台欲しくなってしまった、ただ値段があまりにもな。安心してくれ相棒、お互い少しだけ我慢しよう、給料もそんなに高くないんだ、いつまで金を無駄にするわけにはいかないからな。

ホシグマ
ホシグマ

お前が時代遅れになるにも、私が引退するにもまだまだ早い、私たちはベストコンビだもんな?

ホシグマ
ホシグマ

……

ホシグマ
ホシグマ

なぁ、チェンってどうしていっつもあんなにぶっきらぼうなんだろうな?

ホシグマ
ホシグマ

ロドスでの生活はもう慣れたのだろうか?喧嘩とかしてないよな?たぶんもうしただろうな。人付き合いができないわけではないが、自分から積極的に……

???
???

それは違う。

ホシグマ
ホシグマ

――誰だ!

???
???

チェン殿は陳腐で頑固なお方ではない。

???
???

必ずしも強情とも限らぬ。

ホシグマ
ホシグマ

なんだ、誰かと思えば。シラユキ殿……だったか。

シラユキ
シラユキ

(頷く)

シラユキ
シラユキ

ホシグマ長官。

ホシグマ
ホシグマ

お構いなく、シラユキ殿はなぜこちらに?

シラユキ
シラユキ

夫人が、暫くここを発った。ここの守備に当たれと命じられた故。

ホシグマ
ホシグマ

なるほど。

ホシグマ
ホシグマ

確かシラユキ殿は以前夫人の命令によってロドスに行かれたはずでしたね?

ホシグマ
ホシグマ

様子はどうでしたか?アーミヤさんたちは元気にしていましたか?それとドクターも……いつも遮蔽物にべったり張り付きながら指揮を取っていて、慌ただしくも聡明なあのお方も。皆さんの様子はどうでしたか?

シラユキ
シラユキ

元気溌剌、意気高揚としていた。

シラユキ
シラユキ

それに騒然としていた。

シラユキ
シラユキ

誠に騒がしい。

ホシグマ
ホシグマ

あははは、元気そうで何よりです。

ホシグマ
ホシグマ

シラユキ殿もロドスには好印象を抱いているようですね。

シラユキ
シラユキ

確かにロドスはいい。

シラユキ
シラユキ

チェン殿も。

シラユキ
シラユキ

……心配はいらぬ。

ホシグマ
ホシグマ

おや、シラユキ殿からもそう言われるとは……今の小官は満面哀愁さを漂わせているのでしょうか?そんな顔してます?

ホシグマ
ホシグマ

いや、もし本当にそうだとしたら、今朝Missyにっとくに顔を引っ掻きまわされていたはず。

シラユキ
シラユキ

……

ホシグマ
ホシグマ

心配しないでください、シラユキ殿。チェンのことならそんなに心配していませんよ。

ホシグマ
ホシグマ

本当です。チェンは確かに率直で、意志も頑固すぎるところはありますけど、実際意外にも心は繊細ですからね。

ホシグマ
ホシグマ

知り合ったばかりの時はまったく想像もつきませんでしたけど、一緒に過ごしていくうちに徐々に分かってきました。思いつめることさえしなければ、どこに行ってもちゃんと暮らしていけると信じていますから。

シラユキ
シラユキ

チェン殿はお利口だ。

シラユキ
シラユキ

口は犀利ではあるが、腕前は確かなもの。

シラユキ
シラユキ

彼女に騙しなど通用せぬ。

ホシグマ
ホシグマ

あはは、その通りですね。

ホシグマ
ホシグマ

あんな人、見たことあります?彼女を怒らせたらまるで法を犯してしまったように叱りまくって、正論さえ掴んでおけば誰彼構わずと、怖いもの知らずですよ。

シラユキ
シラユキ

チェン殿は……率直なお方だ。

ホシグマ
ホシグマ

チェンのあの性格、昔から変わらずずっとあの調子なんですよ。

ホシグマ
ホシグマ

義理人情に厚く、もし侠客漫画だったら、主役は間違いなく彼女ですね。

ホシグマ
ホシグマ

ただ、血肉踊る物語は面白いですが、それによって負った傷が痛むのも、確かです。

ホシグマ
ホシグマ

彼女が見るに堪えない傷を負ったところはしょっちゅう見てきました、そしていつも思うんです、本当にそこまでする意味はあるのか?と。

ホシグマ
ホシグマ

そこまでする価値なんてありませんよ。本心はですよ、正直に言うと、本当にそこまでする価値はないと思います。

ホシグマ
ホシグマ

彼女が損をするとかは別に心配していません、ちょっとぐらい損しても別に悪いことではありませんから、ただあまりにも損をすれば痛い目を見るのは確かです。

ホシグマ
ホシグマ

心配なのはそれで思い詰めて、押しつぶされてしまうのではないかって。

シラユキ
シラユキ

……

シラユキ
シラユキ

チェン殿の心は寛大だ。

シラユキ
シラユキ

ましてや心の蟠りも今や解いた、何物にも阻まれぬ。

ホシグマ
ホシグマ

シラユキ殿もよくご存じで。ウェイ長官と夫人には筒抜けなんでしょうね。

シラユキ
シラユキ

ホシグマ殿も、また侠客なり。

ホシグマ
ホシグマ

小官がですか?いえいえ、そんなことありません、自分のことは自分が一番よく理解していますから。

ホシグマ
ホシグマ

若いころは世間知らずで、夢ばかり見ていました。

ホシグマ
ホシグマ

カッとなって騒ぎを起こしたことも少なくありません、侠客の熱血がまったくなかったとは言えませんが。

ホシグマ
ホシグマ

しかし熱血物語が終えれば、少年はもはや少年ではなくなります、どうすればいいんでしょうね?物語もその後の話を書くこともありません、書いたところで読者に罵られるだけ、ただの無駄、だったらいっそう書かないほうがマシです。

ホシグマ
ホシグマ

物語は一番いいタイミングで終わりを迎えられます、しかし現実はそうではない。

ホシグマ
ホシグマ

小官みたいな侠客がいても、いくら世間に好かれる何かを備えていたとしても、世間に歓迎されることはありませんよ。

シラユキ
シラユキ

己を卑下する必要はない。

シラユキ
シラユキ

……

シラユキ
シラユキ

これをご覧あれ。

ホシグマ
ホシグマ

これは……漫画?

シラユキ
シラユキ

太金通り、二番目の市街地に書店がある。本月の新書。

シラユキ
シラユキ

これをホシグマ殿に。

ホシグマ
ホシグマ

……珍しいですね。

ホシグマ
ホシグマ

ありがとうございます。しかしシラユキ殿も読まれるのですか?

シラユキ
シラユキ

貴殿も読まれれば自ずとわかる。

シラユキ
シラユキ

では。シラユキはこれにて。

ホシグマ
ホシグマ

……

ホシグマ
ホシグマ

(この漫画……)

ホシグマ
ホシグマ

(新人漫画家のデビュー作、二番目の読者人気を誇り、業界内の漫画家先生たちの激推し……)

ホシグマ
ホシグマ

(面白そうだな。表紙のキャラクターが主人公かな?)

(本をめくる)

ホシグマ
ホシグマ

(なんか、どこかで見たことがあるような……)

ホシグマ
ホシグマ

(……)

ホシグマ
ホシグマ

(この大盾を持ってるデカいヤツって……)

ホシグマ
ホシグマ

あ、はは。なるほどそういうことか。どうりで。

ホシグマ
ホシグマ

いい度胸してるな。ただちゃんと弁えてもいる、画力も中々。

ホシグマ
ホシグマ

まあいいか。そういうことにしておこう……

ホシグマ
ホシグマ

この先チェンに会ったら、どう呼べばいいんだろ?

ホシグマ
ホシグマ

チェンオペレーター?

ホシグマ
ホシグマ

うーん……

ホシグマ
ホシグマ

案外、似合っているかもな。

(バイクのカーブ音)

ホシグマ
ホシグマ

……

ホシグマ
ホシグマ

(スピードが足りないな。)

ホシグマ
ホシグマ

(この先は……曲り道か。ちょうどいい、もう一シフトを上げるとするか。)

(バイクのエンジン音)

 

一本角の鬼が大きく息を吐いた。
長い間こうして激しい風の中を駆け抜けることをしなかったからだ、跨っている愛車も轟々とエンジンを響かせている、年若い頃の生意気だった血もこのゴールに向かって駆け抜けるように目を覚ましたようだった。

――背後にもう一頭の機械の野獣が突如と咆哮を響かせるまでは。
龍門近衛局のホシグマ長官もハッと我に返った。

ホシグマ
ホシグマ

ん?

ホシグマ
ホシグマ

(誰だ……?)

ホシグマ
ホシグマ

(音が後ろから、近づいている。)

ホシグマ
ホシグマ

この私に追いつくとは、中々やるな。

(バイクのエンジン音)

ホシグマ
ホシグマ

ヒュー、あのボディラインにエンジン音、コマーシャルで流れてた最新のモデルじゃないか、しかも改造済みとは。

ホシグマ
ホシグマ

頑張ってくれよ相棒、私たちも負けてられないぞ。

(バイクのエンジン音)

ホシグマ
ホシグマ

(変だな、いつの間にこんなすごいヤツが現れたんだ、しかも私の知らないヤツだと?)

ホシグマ
ホシグマ

(それにまるで……)

ホシグマ
ホシグマ

(「深夜の無人の街道を駆け抜け、瞬く間に曲り道に現れるゴーストライダー」みたいだ。)

ホシグマ
ホシグマ

(待て、それだとバイクが合致しないぞ。まさか、あのゴーストライダーって……)

ホシグマ
ホシグマ

……嘘だろ?

(バイクのエンジン音)

ホシグマ
ホシグマ

……ふぅ。

ホシグマ
ホシグマ

さすがです。小官の完敗ですよ。

(フミヅキが寄ってくる)

フミヅキ
フミヅキ

いいレースでした。さっきの曲がりがよかっただけです、バイクの性能が良くなかったら、超えられませんでした。

フミヅキ
フミヅキ

こんにちは、ホシグマ督察。

ホシグマ
ホシグマ

夫人には敵いませんね。

フミヅキ
フミヅキ

あら、さして驚かないのですね。

ホシグマ
ホシグマ

驚いてはいますよ、さっきはスピードが速かったもので、あの曲がりを過ぎるまで、夫人とはわかりませんでした。

ホシグマ
ホシグマ

夫人の元の相棒を見れば一目でわかるんですけどね、間違えるはずがありません、しかし今日の相棒は初めてですね。

フミヅキ
フミヅキ

では罰金の切符を切るつもりかしら?

ホシグマ
ホシグマ

ご冗談を。ここのサーキットは元からメンバー限定で、レーサー専用ですから……それで切符を切られるんでしたら、小官も免れませんよ。

フミヅキ
フミヅキ

ふふ。いつもご苦労様です。

ホシグマ
ホシグマ

いえ、当然の責務ですから。

フミヅキ
フミヅキ

……

フミヅキ
フミヅキ

どうしたのですか、ホシグマさん、何か言いたげな顔ですね?

ホシグマ
ホシグマ

いえ……大したことでもありません。

ホシグマ
ホシグマ

ただ、ここの風は気持ちがいいと思っていただけです。

ホシグマ
ホシグマ

アクセル全開にしたら、きっと最高に心地がいいんだろうなと。

フミヅキ
フミヅキ

そう、その通りです!

フミヅキ
フミヅキ

仕事で押しつぶされそうになる時、ここで風に当てれば、本当にサッパリするんですよ。

フミヅキ
フミヅキ

でも、言いたいのはそれではありませんね?

ホシグマ
ホシグマ

はぁ……夫人にはお見通しですね。

ホシグマ
ホシグマ

今考えているのは――

ホシグマ
ホシグマ

ウェイ長官がここ数日下に停めてある、彼の趣味に合ってないあのデラックス版ウォーターアロー35のカラフルなバイク、長官のものではありませんよね。

タイトルとURLをコピーしました